戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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四章 ナイト・ウィッチ【再編集済み】
18話


深井零中尉とミーナ中佐が救出されて早二ヶ月、彼等は未だに目覚めずにいた。

身体の傷は早期の治療と宮藤軍曹との固有魔法によって全快と言える程の回復を見せたが、問題は意識の方だった。

担当医師曰く植物状態や昏睡とはまた違った状態にある、あくまで極僅かながらも意識が存在し何かしらの刺激を受けると微細な反応を示すらしい。

しかし何に反応するのかは分からず、何を以て回復するのかは検討が付かない状態だ。

「すみません、今日も頑張ってみたのですが……」

「いや、感謝するよ宮藤軍曹。何より深井中尉の命があるのは君のおかげだ」

「すみません……」

宮藤軍曹の固有魔法『治癒魔法』は病気であっても治す事が出来るとの記録があり、直接俺が出向いて協力を願い出た。

今では三日に一度のペースでFAFロマーニャ基地に来てもらい零とミーナ中佐に治癒魔法をかけて貰っている、しかし良化傾向は見られない。

可能性は幾つかある、一つは高次機能を司る中枢神経の治療は不得意である事、もう一つは精神や意志という形に無いものは直せないという事。

そして口にこそ出さないがもしかしたらと思う事もある、恐らく彼等は既に治っていると認識されており、治っているものを治す事が出来ないのではないかと。

それが彼等の身体自身の反応なのか、それとも宮藤軍曹の使う魔法の判定によるものなのかは分からないが、もしそうだとしても一向に事態は全く改善される事はない。

この二か月で状況は幾つかの点で大きく変わっていた。

一つは先日の深井中尉達が一度行方不明になった件で特殊戦が無人戦隊になる案が白紙になった、よって特殊戦は以前と同様に有人機による偵察任務に従事する事となる。

そして以前に提出した特殊戦と501JFWが密接に連携するプランがクーリィ准将によってある程度評価され、参謀会議で承認されるように文章を作成せよとの指令を受けた。

この時非常に面倒な問題が発生した、501JFWと連携するという事はそれを取りまとめている上層部との話し合いが必要になるのだが人類連合軍という組織が協力する際に非常に厄介な組織だと判明したからだ。

それは新世代型ジェットストライカー、ファーンST-W型が完成しこれを501JFWに配備した事に疑問を感じて詳細を調べた結果それが判明した。

ファーンST-W型の開発者及び担当者はノイエカールスラント協同技術開発センター所属のウルスラ中尉だった、公式記録上のレコードホルダー、エーリカ・ハルトマン中尉の実の妹だ。

元々彼女はカールスラント技術省のジェットストライカーの開発部門に所属していたらしいがある日、人類連合軍とFAFの協同技術開発センターからヘッドハントを受けている。

その点については全く問題はない、しかし今回501JFWに配備するに当たって怪しい点が見られるのだ。

ハルトマン中尉は元々カールスラント技術省に居た頃からジェットストライカーを開発していた、それがユニット名Me262V1、バルクホルン少佐が二度も事故に巻き込まれた曰く付きのユニットだ。

そしてMe262V1のテストフライトの結果を受けて他の開発中だったジェットストライカーは安全性の見直しの為に開発が一度遅れる事になる、その遅れている間に完成し実戦に向けて配備されたのがファーンST-W型だ。

そもそも人類連合軍とノイエカールスラント協同技術センターの立ち位置はどこにあるのか。

協同技術開発センターはFAFと人類連合軍による魔導兵器の協同開発の為の組織という事だが、本来の人類連合軍はあくまでジャム戦争において複数の国家間での連携と協力を円滑にするための仲介組織に過ぎない。

武力や資源等はそのまま国の保有するものであるし、人類連合軍に各国に対して干渉を行える権力はない。

しかし意見を通す為に各国への根回しを以て独自に活動する事もある、その一つが人類連合軍直属の統合航空戦闘団だ。

そう、元々人類連合軍は軍や政治に関わる事はあっても軍隊ではないのだ、それがいつの頃からか徐々に軍事力と権力を持つ様になり世界最高峰の戦力である統合航空戦闘団を抱えるまでに至ったのだ。

そして今回のジェットストライカーの件、Me262V1の事故は本当に防げなかったものなのかという事だ。

これがもし故意に引き起こされた事故なら人類連合軍がカールスラント製のジェットストライカーの配備を妨害し、尚且つFAFの技術がを各国に提供せずに独占して自らの組織の強化を図っている事を意味している。

しかもFAFの陰の参謀とも言われる特殊戦のネットワークを以てしても人類連合軍の構成メンバーの全貌や組織の実態を掴めずにいたのだ。

ここから察するに人類連合軍の構成員として名前が分かっている人間は表向きの仕事に準ずる人間か、あるいは窓口でしかない可能性がある。

もしかすればミーナ中佐がこれまで人類連合軍の一般構成員から受けていた圧力などは正体不明の人類連合軍の上層部に対して、人類連合軍が強大な戦力を持つことに対しての八つ当たりを受けていただけに過ぎない可能性すらある。

これではミーナ中佐も報われないだろう、もしも自分の正義が体よく人類連合軍の思惑に利用されていたのであれば。

もしかしたらミーナ中佐は知っていたのだろうか、自分がこれまで戦っていた組織と闇の大きさを。

これを解決する為には人類連合軍の一般の構成員との話し合いでは不可能だ、なにせ一般の構成員の大半は各国の将軍級である。

各国の代表一人一人に根回しをして協力を取り付けるのはFAFであっても不可能だ、ミーナ中佐であっても一人では無理だろう。

つまりストライクウィッチーズの現状を変え、協力体制を整える為にはミーナ中佐を窓口にして501JFWの立ち上げに関わっている人間を辿り上級幹部に話を取り付けるしか方法がない、この様な事情があり501JFWと連携の書類は未だ未完成のままである、何せ人類連合軍の上層部との話し合いの場を設ける為の道筋が不明瞭なのだから。

クーリィ准将がこの事を知らないわけがあるまい、だからあえて一戦闘指揮官でしかない俺にこの件を任せて調べる様に仕向けた、まったく意地の悪い事だと一つ舌打ちをした。

話が戻るが更にもう一つ変わった点がある、FRX-00が正式にB-3雪風として特殊戦に配備された事だ。

先日の深井零中尉失踪事件、あの時零を探す為に飛ばしたFRX-00には特殊戦十三番機パイロットのサミア大尉と俺が乗っていた。

しかし突然FRX-00がコントロールを奪われてとてつもない速度で加速した、その時俺は今までに培ってきた経験によるものなのか嫌な予感がして咄嗟に首と頭を守ったが、ディスプレイを覗き込んで居たサミア大尉は急加速によるGで頚椎を折って死亡した。

コントロールを奪取してFRX-00を自分の所まで誘導した雪風は空中波のダミーを噛ませ、攻撃管制レーダーを用いて己の中枢データをFRX-00に転送した。

雪風と同じ特殊戦機の機能構造体を持つ機体同士だから出来たこの方法でも雪風にとっては油断できない状態だったに違いない、その証拠に転送が完了してまず初めにジャムを即時撃墜している、雪風の情報を他のジャム機に送信されるその前に。

その後雪風は自動操縦で基地に帰投したが、その前にFAFロマーニャ基地に投げかけたメッセージは異質なものであった。

 

〈DE YUKIKAZE ETA 2146.AR〉

 

こちら雪風、基地帰投予定時刻2146、以上。

雪風にとってFRX-00は自らを内包する機体を示すB-3ではなかった、だから自分は自分であると、雪風であるとしか記しようがなかったのだ。

そしてロマーニャ基地の戦術コンピューターはFRX-00を雪風である事を認め、そのまま改めてFRX-00と雪風は改めて特殊戦三番機となった。

 

 

 

「ブッカー少佐、開発ナンバーFRX-00及び形式番号FFR-44MR、メイヴの説明をさせて頂きます」

メイヴは無人機のFRX-99を有人機に改造した上でラムジェットストライカーユニットを追加で搭載し、フライトオフィサ席を換装可能なオプションとしてストライカーユニット型コックピットを取り付ける事が出来る。

これによってメイヴは気化燃料ジェットと魔導ジェットの計四発のエンジンを搭載する事になる、なおどちらも大気が必要であり、ジェットストライカーにはエーテルも欠かせない。

メリットとしてウィッチが搭乗する事によってシールドや強化された固有魔法を使用する事が可能になる上で機体強度を魔力で補強する事が出来る。

さらにウィッチの魔力を使用してジェットストライカーを使用する事で増槽のように燃料の節約が可能となり航続距離も増える。

そして飛行中に条件を満たす場合は新技術のラムジェットストライカーシステムを使用する事で上部二基と下部一基のエアインテークから取り入れた大気からエーテルと酸素をそれぞれ取り入れ、ジェットエンジンとジェットストライカーの燃焼効率を上昇させ短時間ではあるがマッハ3.4まで加速する事が可能になる。

デメリットとして、FRX-99で得られた機体軽量化の恩恵は失われている、ただしその上でもパイロットが首を折って死ぬ程の加速性能を保持しているので有人機としてはそこまで問題は見られない。

またその構造上フライトオフィサ席にウィッチが座る事になるので知識のないウィッチではFOの役目をこなせない、こちらはシステム軍団によって知識を持ったウィッチを用意されているので解決済み。

ジェットストライカーユニットは大気に含まれるエーテルを使用する為に大気が極端に薄い場所と地球では使用不可能、これについては対抗策を準備中。

「等々とあるのですが、一番大きいデメリットがあるのです」

「それは何かな、ハルトマン中尉」

「パイロットが一番機体性能に制限をかけてしまい、それならばとパイロットもウィッチにしてしまうと普通にジェットストライカーを使えばいいじゃないかという話になってしまう点ですね。ただでさえウィッチは貴重なのに、そもそもこの機体はFAFの訓練を受けたウィッチの搭乗が望ましいという点が本来であればとても厳しいのです」

「それはそうだろうな、そもそもFAFにウィッチは居ない事になっているからな」

「はい、なのでこの機体は量産に向いていません、今後もメイヴは限られた数で運用されることになるでしょう」

「君達は、協同技術開発センターはそれで構わないのか?」

「はい、私達としては量産型メイヴの為の技術検証機の意味合いが強いので問題ありません」

「動けば御の字という事か?随分と怖いものを作る、Me262V1の様にならない様に祈るよ」

「今回はFRX-99が元になっていますから新たに欠陥が見つからない限り心配はありません、というより余り言いたくはありませんが新型機には前代未聞の事故は付き物ですよ少佐」

「本当に安心させる気があるのか、気になってしょうがないね」

 

 

 

メイヴは現在無人飛行で偵察任務を行っている、並のパイロットでは雪風を操り切れない。

だから早く零、早く眼を覚ましてくれ。お前がずっと眠っている間に状況はどんどんと変わっているんだ、じゃないとお前、雪風においていかれるぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

FAFロマーニャ基地を訪れるのはこれが初めてではない、何度か物資の補給の為に訪れているし物珍しい物を求めて501JFWのみんなで休暇を利用した事もある。

特に異世界の文化を取り入れた物は私達にとってとても興味を惹かれるものだ、眺めているだけでも楽しいし、今も音に合わせて踊る花を見つけてつい足を止めてしまう。

待ち合わせの時間に少々余裕があるのはバルクホルンさんが気を利かせてくれたからで、本来であればすぐに基地に戻り緊急事態に備える所をこうして羽を伸ばさせてくれる、勿論ネウロイ出現予報が低い確率を示している時に限るのだが。

そんなバルクホルンさんの好意に甘えさせて貰いこうして少ないながら小遣いも持ち込んでいる、特に給料を全てガリア復旧に充てているペリーヌさんには紅茶の一つでも土産にしよう。

「み~やふ~じちゃん♪」

「ふえ!?」

首筋に当てられる突然の冷気に体が飛びあがる、勢いよく振り向けばフェルさんが悪戯が成功した子供のような笑顔で体を寄せていた、その手にはおそらくよく冷えた缶コーヒーが一つ。

「アハハ!驚き過ぎよぉ宮藤ちゃんったら!」

「フェル隊長……、さすがにいきなりは駄目ですよ」

「も、もう!びっくりしましたよ……」

先日まで一時的に501JFWに派遣されていた赤ズボン隊の三人がそこに居た、それぞれが手に持つ紙袋を見て恐らく補給で来ているのだろう。

「どう?ミーナ隊長の体調は」

「あまり経過は芳しくなくて…一体何が悪いのかも分からないまま……」

「宮藤ちゃん…」

フェルさん以外の二人も私を慰めるように背中に手を一つ、私とミーナ中佐を慮る様に目線を下げたフェルさんもいつもの勝気な表情を私に向ける。

「偶には息抜きも必要よ宮藤ちゃん、幸いな事にここには色々な物も揃って――――」

その時、フェルさんの声を遮る様にジェット音が一つ、FAFの戦闘機が飛び立っていく音が解放区画に響いた。

「あー…あれさえなければもっと人気が出るだろうにねぇ」

「そうそう!僕も地元でサッカーしてた時も上からゴゴーッ!ってさぁ!!」

「あれは…中々慣れませんよね…」

赤ズボン隊の三人は嫌な事を思い出したかのように溜息を吐く、せっかく私を励まそうとしてくれていたので何だかこちらが申し訳ない気分になる。

「私も比較的地元にFAFの基地が近かったのですが、慣れるものではなかったです」

「あれ?扶桑にもFAFの基地があるの?」

「扶桑海事変みたいな事もあったけど、それ以外は大きな事件は無かったような?」

「坂本さんから聞いた話だと、何でも輸送機を使って輸入した物を運ぶとコストが大きくなるから輸送船の中継地点として設置しているそうです」

「あれ、フェル隊長、FAFは海の乗り物禁止じゃないの?」

「海上における武力及び船舶の武装を禁止しているのよ、輸送船は含まれないわ」

「え!?ネウロイに襲われたらどうするのさ」

「そのためのフェアリィ空軍でしょうが。まあ被害を食い止められない事もあるみたいよ、最近もFAFの補給拠点の基地がミサイル一発で吹き飛んだらしいし」

「あーそれ私も聞いた!戦闘機が十機以上も吹き飛んだやつでしょ?でも基地再建は始まってるし、戦闘機の数が減ったようにも見えないしFAFってスゴイよねぇ、別に素人パイロットだけが乗っているわけでもないんでしょ?」

訓練は一日にして成らず、いつも坂本さんが言っている事だ。天才肌のルッキーニちゃんはともかく501のエース達はそれ相応の経験を積んで前線で活躍している。

「FAFだって人間…やはり無敵の軍隊ではないんですね」

「そりゃあ性能がいいのは認めるわよ、でもそれでネウロイに勝てるわけじゃないって事ね」

「やっぱり僕たちが戦わないとね!でもFAFならネウロイを蹴っても壊れないストライカーとか作れないかな?」

「そもそも蹴るのを止めなさい!!!」

姦しい三人の姿にクスリと失笑する、おかげで落ち込んだ気分も幾らか晴れた。

「皆さんありがとうございます、少し元気になりました」

「宮藤ちゃんには借りが在るからねぇ、困ったことがあったらまた言いなさい」

「ええ、機会があればいつか」

手を振って三人と別れる、時間を確認すれば集合時間まであともう少し、お土産を買う時間はまだ残されていた。

購入した荷物をトラックに積んでもらい運転手に出発の意思を告げるとシャーリーさんとは違う大人しい速度で走り出す、私の膝の上では音に合わせて花がゆらゆらと踊っていた。




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