戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ 作:ブネーネ
501JFWが結成されて初めて就いた任務はガリア戦線、ネウロイの巣から週に一回ほどの頻度で現れる航空型ネウロイの撃墜だった。
あの頃は出来たばかりの組織でダイナモ作戦の傷痕が残るミーナもトゥルーデも皆が焦っていて、初めて会う人間同士の関係も今より浅かった501JFWは非常に危うい状態にあった。
私だって無関係では居られない、それでもミーナとトゥルーデから目を話すわけにはいけない私には出来る事には限りがあって、あの時501JFWに宮藤が来なかったら今このベネツィア戦線で戦い続ける事は不可能だったと思う。
今のベネツィア戦線は異常だった、もしもネウロイを一機でも撃ち漏らせばロマーニャは決して軽くない損害を受けることだろう。
一度ではあったが私達五人を一時とはいえ後方送りにした核武装型ネウロイ、これが例えば重要な補給拠点を爆撃されれば補給は今以上に困窮した事だろう、FAF軍人曰く核物質はネウロイの瘴気の様に土地を汚染するらしいので土地の復旧もかなり時間がかかるという話も聞いた。
私達は魔力の障壁があったから今のところ問題なく復帰したが坂本少佐の病状は重く、無念にもリタイアせざるを得なくなってしまった、僚機を失わない事を目指す私にとっては非常に許しがたい事態だった。
一週間に二回以上、多いときは四回程訪れるベネツィア戦線のネウロイ達、同じネウロイが現れる事は余りないがまたあの核武装をしたネウロイが現れないとは限らない。
どれもこれも自分達の様なエースでなければ越えられない出撃であった、しかし我々の敵はネウロイだけではない。
常に後手に回り、臨機応変を求められる事によって蓄積する疲労とストレス、特に実戦経験の浅い宮藤やリーネ達はそれが顕著に見られパフォーマンスが低下する事もあった。
そして食料やストライカー等の補給が非常に心細くなっていた事、一時期は破損したストライカーや武装を放棄する事すら厳重注意となる有様だった。
しかし補給の件は私の妹であるウルスラ、そしてロマーニャ皇室との関わりがあったルッキーニと504JFW隊長のフェデリカ中佐によって解決の目途がたった。
501JFWが再結成して早四ヶ月、慌ただしく日々が過ぎていっても人類連合軍へ提出される報告書の締めはいつもと同じ、ベネツィア戦線異状なし。
「結構ピンチだよね……これ」
以前ミーナとトゥルーデと話していた様に現状維持は不可能であり、ジリ貧が解消されてもウィッチの替えが効かないのは変わらないままだ。
解決手段は幾つか存在する、一つはウィッチの数を増やす事だがそもそもベネツィア戦線はJFW三部隊による布陣が敷かれている、その上で新たな人材を要求しても上層部はいい顔をしないだろう。
さらに新たに加わるウィッチには幾つかのハードルを超えて貰う必要がある、即戦力であり実力と才能があり、そして何より協調性がある事だ。
任務の特性上少数で動く特殊戦と違って私達には協調性が重要だ、独り善がりのソロプレイは簡単に命を落とす、501JFWの初期メンバーだったラウラ・トート少尉もトゥルーデの苦言によって――不本意ではあったが――異動させられている。
当時のトゥルーデもそこそこ危ない感じだったけどね、あんまり弄ると顔を真っ赤にして怒るから口には出さないけど。
それはともかくそんな人材をみすみす手放す部隊は無く、尚且つ新人をこの激戦地に呼んで教育と援護を行いながら育てる余裕はない。
つまりはこのままの状態で遣り繰りしていく他ない、あれ?結局ジリ貧のままじゃない?
しかし遂にノイエカールスラント合同技術開発センターから501JFWに支援物資が届いた、こういうのが得意な私の妹が開発した新世代型のジェットストライカーだ。
ファーンST-W型、STはストライカーユニットを意味し、その後にバージョンを示す英字を付けるのだが、初めからWが付けられているのはウルスラが世界初の採用機にはストライクウィッチーズをもじって付けたかったらしくあくまで501JFW専用という訳ではないとの事。
こうして501JFWにジェットストライカーが来たわけだが何せ初の採用となるので実戦のデータが無さすぎる、501JFWでどのように運用されるかも決まっていないのだ。
「あーもーめんどくさーい!!……なんて言ってられないよね」
人には役割というものがあると私は思っている、私が後ろに下がってだらしない姿を見せているのもそういう役割を演じているからだ、7割位は素が出ている気もするけど。
でも今ミーナはずっと眠ったままだ、いつ目覚めるのかも分からない、でもミーナは絶対に帰って来る。
「だからミーナ、私もミーナも分も頑張るからね」
「全員揃っていますね、それでは会議を始めます」
ブリーフィングルームの壇上に立つのは501JFW臨時司令となった竹井醇子大尉だ、ただし臨時司令の内は中佐として扱われる。
竹井大尉もかつては扶桑海事変を乗り越えた古強者であり、坂本少佐と同じくリバウの三羽烏に数えられる扶桑の英雄の一人だ、その英雄に対して不満はない。
本来であればトゥルーデが司令となりイェーガー大尉が戦闘隊長となる筈だが、司令は人類連合軍とのやり取りが必要である為に現状それが可能で501JFWと交流のあった竹井大尉が人類連合軍から推薦されトゥルーデはそれを受け入れた。
彼女もあくまでミーナが戻ってくるまでの繋ぎとしてのスタンスを保っている為501JFWは空中分解せずに維持できている、いずれはこの様な事が起きない様に部隊内で教育が行われるだろう、例えば先述通り気儘なシャーリーが戦闘隊長を出来る様にするとか。
「今回の会議は、ジェットストライカーを501JFWでどのように運用していくかの確認です」
「竹井中佐、ジェットストライカーに切り替える際に何が問題として上げられるのか?」
「そうですね、その話に入る為にはジェットストライカーの利点と欠点を考えねばなりません」
竹井中佐が黒板にその内容を書き出していく、ファーンST-W型は後出されるであろうジェットストライカーの基礎となるべく様々な任務に対応出来る様に開発されている。
各部にハードポイントを備えておりロケット弾やガトリング等の武装や増槽を取り付け可能、そして試験的な装備として疑似魔導針発生装置を標準搭載している。
疑似魔導針は所謂レーダーの事で、訓練が必要だがネウロイの発する特殊なノイズやレーダー波を探知したりウィッチ同士や様々な施設との長距離通信を可能にする、さらに基地からの電波誘導を受ける事が出来るので緊急時でも生存能力が向上する。
さらに統一されたストライカーユニットを使用する事で整備性も抜群だ、非常時であってもニコイチ、サンコイチが出来るので継戦性も向上する。
そしてジェットストライカーの利点と言えばやはりその速度と膂力の強化による火力向上だ、それではジェットストライカーの欠点とは一体何か。
「例えば航続距離と燃費の問題、これはジェットストライカーの欠点というよりはレシプロストライカーが優れているという利点です。サーニャさんの様に夜間哨戒を行う際等の早期警戒機としての任であればレシプロストライカーの方が有効ですね」
サーニャの広域探査魔法ならネウロイ出現時の距離は関係ない、スクランブル発進するウィッチにこそジェットストライカーが必要になる。
加えてジェットストライカーは戦闘力は高いが地上部隊との連携等の汎用性や細かい制動、限られた空間で動く際にはレシプロストライカーの方が有利である。
「威力偵察ならジェットでもいいかもな」
「つまり基本的にはジェットストライカー、特殊な任務ではレシプロストライカーも使うという事だな」
シャーリーとトゥルーデも真剣に考察している、意地を張らなければ気が合う二人ではあると思うんだけど普段がね……。
「一応ジェットストライカーの航続距離を延ばすプランも協同技術センターから届いています、推進剤とロケットブースターを合わせた緊急発進用の増槽、コードネームは【V1】、汎用式非魔力依存の『プロペラントパック』です。後は爆撃機を改造してウィッチを投下するプランもあります。ついでにストライカーユニット二組を横並びに繋げて四発にした二人で装備するユニット案もウルスラ中尉から届いているのですが」
えぇ……………。
「駄目だろ」
「駄目ですわ」
「駄目じゃない?」
「あの……駄目だと思います」
「赤トンボ*1じゃ駄目なんですか」
「絶対に途中で折れるだろソレ」
「燃費良くても実質一人分の手が減るよね」
おお妹よ、何故FAFの技術力に触れてその発想が出てしまうのだ、悪い技術者に汚染でもされたのだろうか。
「それは忘れるとしてジェットストライカー用の新武装が届いています」
続けて黒板に用紙が張り出される、そこには幾つかの武器の画像と詳細が並べられている。
「まずはカノン砲ですがBK-5 50mmカノン砲の汎用性とメンテナンス性を向上させる為に開発されたMG213 30mmカノン砲です、反動も軽減されリボルバー式になっているので信頼性も上がっています。これは問題なければリネット曹長に使用して貰おうと思います」
「は、はい!頑張ります!」
「次にリトヴャク中尉も使用しているフリーガーハマー及びロケット弾、これは元々優秀な兵器なのでジェットストライカーのハードポイントに取り付けて全員が使える様にするプランが出ています。ウルスラ中尉は任務に合わせてウィンドウ弾やVT信管を搭載したロケット弾等を発射できるように計画中との事です」
「なあ竹井中佐、何でウィッチ用のFAFミサイルを開発しないんだ?」
「単純に技術的問題じゃないかしら、出来るならもうやっているでしょうし」
「成程」
「そしてMK108 2連装30mm機関砲、これはカノン砲と比べて弾数も多いのでこちらを通常は使用する事になるでしょう」
「数で押してくるタイプはどうする」
「その場合はロケット弾の一斉射と機関銃での掃討となります」
「ふむ、ジェットストライカーによって武装と弾薬は多く持てるようになるからな、MG42を置いていく必要もないか」
結論から言えばジェットストライカーにはロケット弾を装備、加えて火力の高いMG213かMK108のどちらかを選択し加えて機関銃も装備するという事だ。
適正で言えば反動を制御できるトゥルーデと天性の狙撃の才能を持つリーネはMG213を使う事になるだろう、しかしこれは実際に運用してみなければならない。
何故ならこれからは積極的なドグファイトではなく、ウィッチ特有の一撃離脱戦法や編隊を組んだ攻撃の場面も多く出て来るだろう。
新たなフォーメーションと訓練メニューを組みなおし、摸擬戦を以て実証するしかない。
習うより慣れよという事だ、実践あるのみ、しばらくはレシプロストライカーで出撃しつつ形が出来たらジェットストライカーで出撃だ。
「他に質問がある方はいますか?なければ会議を終了します、解散」
皆さま評価、お気に入りありがとうございます!!
私のVmaxスイッチがオンになるので感想と評価を心よりお待ちしております。
その他疑問などがあれば感想やメッセージにて受け付けております。