戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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21話

FAFロマーニャ基地の特別病棟、その特殊戦用の個室の病室でミーナ中佐はずっと眠っていた。私が声をかけても、501の皆の事を話しても。

三日に一度だけ治癒魔法と見舞いの為にベネツィア戦線が忙しい中で皆が私をここへ送り出してくれる、これは何よりも大切で必要な事だからと。

私は病室の花瓶を洗うと新しく持参した花を挿した、ミーナ中佐は頭に機械のセンサーを取り付けられ患者着を着たままベッドの上で寝たきりになっている、私が居ない間は特殊戦所属の看護師の担当が面倒を見てくれているらしい。

ブッカー少佐という特殊戦の軍人さんがミーナ中佐は今難しい立場にあるから回復に専念できるように充実した環境を整えたと教えてくれた。

今日も治癒魔法をミーナ中佐にかけ続ける、もし意識に変化があればモニターに反応がある筈と言っていたが時間をかけても波は水平に近いままだった。

しかしいつまでも治癒魔法をかけるわけにはいかない、似た症状の深井中尉にも魔法をかけなければならないからだ、どちらかが目覚めればもう一人も目覚めさせる事が出来るかもしれないとお願いされたから。

また来ますとミーナ中佐に挨拶をしてから病院を後にして特殊戦の事務所、ブッカー少佐の執務室の扉をノックする。

「どうぞ」

「失礼します」

雑多な荷物が持ち込まれているブッカー少佐の執務室、その窓に近いデスクの傍に今日も深井中尉が車いすに座って佇んでいた。

「宮藤軍曹、今日もよろしく頼む」

「はい少佐、精一杯頑張ります」

使い魔と一体となり治癒魔法を深井中尉に掛け続ける、彼の身体には既に怪我はないので頭に魔法を集中して魔力を込めていく。

十数分に渡る全力での治癒魔法は今日も変化を齎すに至らなかった、元々治癒魔法に絶対の自信があるわけでは無いがここまで変化がないと何よりも申し訳なく感じてしまう。

治療を終了して使い魔と分離するとブッカー少佐がココアの入ったコップを持ってきてくれた、砂糖入りの温かいホットココア。

「今日もありがとう宮藤軍曹」

「はい、いいえ申し訳ございませんブッカー少佐」

「謝る事はない、君は良くやってくれている」

「そうでしょうか、ミーナ中佐も深井中尉もずっと同じままで……」

「同じと言う事はないさ、少なくとも二人が体調を崩す事は無かった。深井中尉の大怪我も傷一つなく見事に塞がっている、特殊戦に欲しい位だ」

そう言って少佐は無意識になのか頬の古傷を掻いていた、非情で冷徹な人間を集めた特殊戦の人間、深井中尉の事を想うブッカー少佐はそうとは思えなかった。

「魔法力がある程度回復するまでゆっくりとするといい」

「ありがとうございます、ブッカー少佐」

「それまではそうだな……宮藤軍曹、少し話を聞かせて貰ってもいいかな」

「私でよろしければ、でも難しい話はあまりできません」

「なに、精鋭部隊の501JFWに所属する君の意見を聞かせて貰いたいんだ、君はジャムについてどう考えている?」

「ジャム……ネウロイの事ですよね」

「その通りだ、君がネウロイについて感じる事や疑問などがあれば是非教えて欲しい」

私みたいな人間に質問を投げるくらいにはネウロイとの闘いは特殊戦としては上手く言っていないのかもしれない、正体不明の敵、人類の敵、それがネウロイ。

「私は元々一般人です、軍学校も出ていないですし元々実家の跡を継いで医者になるつもりでした」

死んだはずの父から届いた欧州からの手紙、そして坂本少佐スカウトを経て私は501JFWのウィッチになった。

「最初の内は飛んで撃つだけで精一杯、私にはネウロイと戦う確固たる意志も無かったんです。だから坂本さんに聞きました、ネウロイって何なんですかって」

最初は険悪な雰囲気だった501JFWの皆、故郷を奪われたペリーヌさんやミーナ中佐達が戦う敵の事が分かれば、何から皆を守ればいいのかを知る事が出来るのかと考えたのだ。

「……坂本少佐は何と?」

「坂本さんは『ネウロイは段々強くなっていく』って言ってました、でもそれが学習からくる進化だけとは思えないって」

「ネウロイは学習していないと言う事かな?」

「分かりません……でも坂本さんはネウロイが本当に人類を滅ぼすつもりなら地球はとっくに滅んでるって言っていました、それをネウロイが分からない筈がないとも」

「それはそうだろうな、FAFとやり合える力を持っているわけだから」

「はい、なので坂本さんはこう結論付けました。『ネウロイは人間が嫌がる事をする習性かそれに基づく何かしらの思惑がある』と」

「…………」

「私には意味が分かりませんでした、でもずっと気になっていて、ブッカー少佐なら分かりますか?」

「……多分、今ははっきりとは言えないが。この話を他の人にした事は?」

「ありません、こんな話をしても変な顔をされるだろうと思って」

「ありがとう宮藤軍曹、とても参考になった」

「いえ、こんな話でよければいつでも」

「そうか、ところで宮藤軍曹、君が戦う理由は見つかったのか?」

「はい、私は皆を護りたいんです」

 

 

 

 

宮藤軍曹が退室した後、深井中尉を看護師に預けて俺は戦術作戦ブリーフィングに参加する為に格納庫へ向かっていた。

ジャムが人間の嫌がる事をする習性とそれに基づく思惑を持つという坂本少佐の言葉、少しだけ俺には思う事があった。

俺はその説を正解とは思っていないが同時に考えさせられることが幾つかあった、それはジャムの思惑を此方が把握する事が出来れば戦局を変える事出来るのではないかという事だ。

そして思惑が在るならジャムには知性がある、もしそうなら我々の様な本能を持つ有機的な中枢神経や合理的を目指す無機的なコンピューターとどちらに近いのだろうか。

これまでの情報やグレイシルフから考えればジャムは機械寄りだろう、しかし蜂や蟻のように多くの個体が一つの生命体の様に振舞う『超個体』としての存在であれば我々人類や有機生命体に近い。

或いは両方を兼ね備えた意思を持った機械と言えるかもしれない、それはまるで―――雪風等に代表される機械知性体の様ではないか。

機械に人間は必要ないと主張し続けたコンピューター、人類を駆逐せんとばかりに襲い掛かるジャム。

ゾっとするような考えだった、それと同時になぜ人類が未だ生存しているのかがより気になった、坂本少佐の考えていたように何故今人間を滅ぼさないのかだ。

きっとそこにジャムに勝つためのヒントがある、そして今その最重要な情報を握っているのが未だ目覚めぬ零なのだ。

俺は戦術作戦ブリーフィングで雪風を無人で戦闘区域にて偵察任務に参加させる事を提案し承認を得た、しかし偵察任務で問題がなければ零を乗せる事は黙っていた。

ブリーフィングを終え高官が退室していく中で俺は情報軍団のアンセル・ロンバート大佐に呼び止められた。

一筋縄ではいかない情報軍団、しかも零の身柄を欲しがる連中だ。俺は一度クーリィ准将に報告に行くフリをしてその場を離れる、クーリィ准将はアイコンタクトで後で全て報告せよと告げて来た。

「お待たせしましたロンバート大佐」

「いえ、突然声をかけたのは私ですから、態々時間を割いて貰って申し訳ない」

アンセル・ロンバート大佐はFAFの暗部である情報軍団の代表とも言える人物だ、実際あまり公に出来ない部分で動いている姿も何度か確認されている。

「深井中尉の容体は如何ですかな?」

「……早急に復帰出来るように努力しております」

「そうしてくれると私も助かるよ少佐、せっかく特殊戦に譲ったナイトウィッチが無駄になってしまうかもしれないからな」

ロンバート大佐は零の復帰を望んでいる?いやそうではない、目覚めようがそうでなかろうが大佐にとっては差がないのだ、むしろ目覚めた方が尋問しやすいと考えているのかもしれない。

「ナイトウィッチ、今度配属されるのは夜間偵察に長けているウィッチなのですか?」

「おや、クーリィ准将から聞いていないのかね。Night()ではなくKnight(騎士)だよ」

「申し訳ございません、初耳でした」

「確かに重要機密の一つではある、仕方ない事だ。しかし余り周りに触れ回らない様にした方が賢明だよ」

「気を付けます、他には何か」

「明日、コードネーム雪風が無人飛行する件で私も是非見学させて頂きたい」

「……了解しました、ロンバート大佐」

「スケジュールは後で伝えるよ、話は以上だ」

「それでは失礼いたします、大佐」

ロンバート大佐が何を企んでいても全ては明日だ、明日雪風の無人飛行を成功させれば零を乗せる事が出来る。

当日にジャムが襲来するとは限らないが雪風を餌にしてでも誘い出す、その後は雪風に任せる事になるだろうが雪風なら何があっても帰還するだろう。

絶対にミスは許されない、雪風のメインコントロールシステムと完全自立飛行におけるアルゴリズムの最終チェックを念入りに行う必要がある。

作業は夜を徹して行われ後は作戦時刻を待つだけとなった、雪風は無人で飛行できるように組まれたプログラムを噛まされてその行動は逐一戦術コンピューターを通してリアルタイムでモニターされる。

ブッカー少佐は最終点検を終えると雪風に対していつも零や他の隊員に投げかけていたように『グッドラック』を入力し離れた。

メイヴに搭載されたエンジンに火が入りタキシング、発進許可と共に滑走路を駆け抜け離陸速度に到達した瞬間に凄まじい速度で急上昇して飛び去っていく。

スクランブル発進でもない偵察任務で雪風はまるで放たれた猟犬のように空の彼方へ消えていった、それを雪風がジャムに関わらない任務から解放され、これまでの鬱憤を晴らすべく振舞っているのだと感じた。

そして深井中尉は目を開いていた、点検から雪風の発進に至る一部始終を格納庫から目を向けることは無かったが零は雪風が分かるのだ。

或いは先程の光景は雪風が零を呼んでいたのかもしれない、零に聞こえる様にジェットを全力で吹かせてまで、早く戻ってこなければ置いて行ってしまうぞとばかりに。

しばらくして雪風が見えなくなると零の瞼が降りてしまったが聞こえていると信じて話しかけた。

「行こう零、雪風の戦う姿を見に行こう」

車椅子を押して零と共にFAFロマーニャ基地の地下に存在する特殊戦の司令センターへ移動した、そこには雪風の飛行状態が送られてくる。

クーリィ准将やロンバート大佐達も既に到着している、後はなるようになれという事だ。

 

十数分後にジャムが出現する。雪風――――戦闘偵察任務開始。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は生も死もなくここにいる。外に一切の関心を持たず、そして流れる時間すらも無関係だった。

 

 

 

――――目覚めよ、と呼ぶ声を聞くまでは。

 

 

 

 

 

 




少し久しぶりの投稿です!気付いたら総合評価が700PTどころか800PTに到達して感動の嵐です!目指せ1000PT!!!

ちなみにジャム(ネウロイ)とかの設定は既に練り終えているので失踪するにしても公開はすると思います。

私のVmaxスイッチがオンになるので感想と評価を心よりお待ちしております。
その他疑問などがあれば感想やメッセージにて受け付けております。
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