戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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23話

「覚えていない?あの騒ぎを全て?」

「正確には、まるで悪い夢を見て居た様だと」

「ふふ、夢なら良かったんだけどね」

今回の事件はFAFロマーニャ基地内部で話を片付ける事が出来ない程の大騒動となった、なにせ雪風の対地攻撃を受けてFAFロマーニャ基地の各所に大量の損害を出したからだ。

滑走路の近くに建てられた格納庫は点検の為に納めされていた機体の爆発に巻き込まれて倒壊し、任務に従事していた人間に死者を含む多くの負傷者を出した。

「参謀会議は如何でしたか」

「散々もいいところ、実質的につるし上げだけどあそこまで見え透いた三文芝居は中々見れないわ」

「三文芝居、ですか」

「ええ、情報軍団のロンバート大佐は証拠をでっち上げて、システム軍団のグノー大佐は形だけの批判を投げて来た。幸いにも今回の件はFAFのセントラルコンピューターによって『暴発事故』として処理されたから気が楽だったけど」

「暴発事故ですか、あれだけの事が起きていながら」

恐らく重要機密であろう書類を准将から手渡されると中にはシステム軍団のグノー大佐の見解として、事故原因は【特殊戦によって行われたシステムの改竄によって発生した】と記されていた。

ただし当時飛行していたのはB-3雪風ではなくB-14レイフであったと作戦中の記録は全て書き換えられており、今回の事件は『システム軍団の無人機飛行実験におけるイレギュラーによって発生した暴発事故』と最終的なジャッジを下された。

つまり今回の特殊戦五番隊と雪風の責任をFAF本部のシステム軍団に押し付けた形になる、しかし気になったのはその後に追記されたシステム軍団は深井中尉の早期復帰を求めるという一文だ。

「何故システム軍団が深井中尉の復帰を要求したのでしょうか」

「責任を引き取ってやるから深井中尉と雪風の件に一枚噛ませろという事でしょう、彼等も深井中尉と雪風の存在が必要不可欠だと考えたのよ」

「ですが情報軍団なら話はまだ分かります、何故システム軍団まで深井中尉に関わろうとするのでしょうか」

「ブッカー少佐、今回起きたこの事故を処理したのは誰か分かるかしら」

「情報軍団ではないのですか」

「FAFのセントラルコンピューター、つまりこの一件は本部の暗黙の了解を得ているのよ。そして今回の事件で一番重要なのは深井中尉が自分よりも雪風を信頼し、雪風と機械知性体がロマーニャ基地に対してジャムと呼んだ事」

「……システム軍団は機械知性体が何を考えているのかを把握しきれていない」

「そう、もしも雪風と機械知性体に異常や問題がないのであれば、FAFにジャムが紛れ込んでいる事になるわね」

考えうる中でも特に最悪なケースであるジャムによるFAF内部の破壊工作、これが罷り通れば今後の戦況は最悪だ。

「私が会議に出ている間に雪風と戦術コンピューターが探っていた505th迎撃部隊の異常な急減速の原因は分かったのかしら」

「505th迎撃部隊はあの後二機とも墜落してしまい文字通り全滅、現在はスクラップになった機体をシステム軍団に回して解析にかけています、雪風の映像記録等も洗ってはいるのですが根本的な原因は未だ不明です」

「そう……深井中尉とミーナ中佐の事情聴取はどうなっているのかしら」

「大まかには調書に纏めました、こちらです」

クリップボードに挟まれた書類には二人の体調や精神状態、そして失踪中に何が起きたかをタイムライン毎に纏められていた。

「これは本当に深井中尉達が話した事なのかしら、意訳ではなくて?」

「はい、一応ボイスレコーダーでも記録していますが概ねその書類の通りかと」

ジャムに攫われた事、深井中佐はジャムの作った人間の姿をした化物を撃った事、深井中尉を撃ったのは深井零だった事、バーガディッシュ少尉はジャムに殺されてチキンブロスにされてしまった事。

「……私も事情聴取に加えて貰うとして、これが本当であればジャムは人間に化けてFAFに侵入している事になるわね、しかしそれを探すのは我々の仕事ではないわ」

「しかし雪風は探し出すでしょう、その為に深井中尉とミーナ中佐を目覚めさせたのですから」

「それでも正常とはいかないようね、この診断結果を見る限りは」

そうなのだ、確かに零とミーナ中佐は目覚めた。しかしグラスゴー・コーマ・スケール*1では正常であり、見当識も十分保たれているのだが二人と話していると違和感を覚えるのだ。

特殊戦隊員に共通するズレた人間性とは違う、聞かれた事には答えるし命令をすればその通りに動くがそれがあくまで指示された事に対して無意識のそれに対応する部分が反応して反射の様に動いているだけのように感じる。

これはミーナ中佐も同様で、意識が回復した事を501JFWの隊員に報告したが彼女達も今のミーナ中佐に会えば恐らく同じような感想が帰って来るだろう。

「つまり完全復帰とはいかないわけね。ブッカー少佐、今はジャムの事を気にするよりも深井中尉達を元に戻す事に集中しなさい」

「であれば二人を雪風に乗せるプランを提案致します」

「許可します、タイミング良くシステム軍団のグノー大佐が無人機のDACT*2に雪風を仮想敵として指名したから利用させて貰いましょう」

「これもシステム軍団に借りを返す為でしょうか」

「それもあるけど今回のフライトテストの試験機はあの『フリップナイト(打ち払う騎士)』なのよ。私のところにもやっと情報が降りて来たの、他の部署から報告が来たのはのは多分ワザとでしょうけどね」

前々から予告されていたナイトウィッチ、正しくはフリップナイト・ウィッチを用いた半自立型の戦闘機の情報が載せられていた。

機体はFRX-00を流用したフリップナイト仕様の機体にウィッチが一人搭乗して運用される、しかしここで重要なのはあくまで機体操縦や任務をこなすのは機械知性体でありウィッチはあくまでサポートに徹するという事だった。

「グノー大佐は確か完全無人型の戦闘機を開発していた筈では」

「FRX-99を制作していた頃ならフリップナイトも無人機になっていたのでしょう。しかし貴方がFRX-00誕生の切っ掛けを作ってしまった。そこにFAF本部と情報軍団と人類連合軍の思惑が入り込んで計画が狂ったのでしょう、だからあんなに貴方に食って掛かったのよ」

「おかしな話だ、有人機を要求した俺には人間は要らないと言われたのに、無人機を要求したグノー大佐は有人機の責任者にされてしまうなんて」

「それを思惑ごとに噛み砕いて整理してみればまた違う景色が見える、今は難しいでしょうけど」

「……とりあえずテストフライトの擦り合わせに入ります」

「よろしい、何か状況に変化があれば速やかに報告する事。退室してよし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は突然、コックピットに座ってコントロールスティックとスロットルを握っている自分に気が付いた。

Gスーツを着てフライトグローブやヘルメットを装着済み、口元にはマスクが装着されており、ディスプレイの表示を見れば高度12000メートルを巡航速度で飛行中であった、オートパイロット。

キャノピーの閉じたコックピットに甲高い警告音が鳴り響いている、外部接続機器に異常あり。

しかしハーネスやホース等の装備が正しく取り付けられている事は搭乗する時に確認されている筈だ、考えられるのはFO席に座る彼女の方に原因がある可能性がある。

「……ミーナ中佐、ハーネス等の装備に異常はないか」

「異常と言われても他の人に取り付けて貰ったから分からないわ、変なところはないと思うけど」

そう言われて初めて原因が分かった、一度自分のハーネスを取り外してから再度装着するとモニターの警告表示が消灯した。

目覚めよ、目覚めよ、目覚めよ、と雪風が俺をずっと呼んでいた、それは正常であるにも関わらずワザと警告を表示させた雪風の声だった。

初めて雪風から呼ばれてジャムに向けて攻撃を指示した時から朧気ではあるが意識はあった、同じ状態にあったミーナ中佐とはミッションの再確認をした方がいいだろう。

「ミーナ中佐、ミッションの内容は把握しているか」

「一応理解はしているつもりよ、ブッカー少佐が無理やり雪風に私を乗せた理由も」

雪風のディスプレイの表示が今回のミッションに関する詳細のデータに切り替わる、俺達の会話を聞いていたようだが随分とこのミッションに関心を持っているらしい。

「深井中尉、一応言っておきますけど私にはジェット機どころかジェットストライカーの操縦経験は無いわよ」

「今回は模擬戦闘任務だ、情報の収集と解析は全て雪風がやる。インテリアを弄らなければ問題ない」

「私はもう目覚めたけど、ここに居る必要があるのかしら」

「丁度いいから俺達がどうやって飛んでいるか体験してみればいい、その特等席からな」

そのまま巡航速度で目的のポイントまで進み今回のフライトテストを上空から観測している空中指揮管制機、FEP-1ACCとのコンタクトを雪風が自動的に開始する。

今回の任務はシステム軍団の開発したフリップナイトと呼ばれるFRX-00のコックピットをフリップナイト仕様に換装した一応は無人機のフライトテスト及びFRX-00を操る俺達を仮想敵とした模擬戦闘だ。

ウィッチではあるが人間を乗せて運用する無人戦闘機という、考えすぎて馬鹿になったのではないかと思うような発想だが恐らくは予算獲得等の目的があるに違いない。

今回の任務では互いに模造の兵装を装備しているだけの非武装状態ではあるが相手のフリップナイトには新型の高性能なレーザー機関銃を模したガンカメラを搭載している。

フリップナイトのレーザーは文字通り光速で、それが当たる距離とタイミングであればカメラでパシャリとなって撃墜判定を貰うと言うわけだ。

その為にフリップナイトのレーザーの照射範囲に入らない事を徹底しなくてはならないのだが、結果から言えば俺は三度撃墜されて任務は終了となった。

「久しぶりだな、深井中尉。一日で三度も撃墜された気分はどうかな?」

確かにブランクはあるし体力も落ちているが俺はまだ飛んでいる、生きているのだから負けていない。

特殊戦の任務の為に製造されたメイヴの特性上あくまでマニューバよりも一撃離脱の為の加速性能に優れている、そもそもジャムとのドグファイトは何よりも避けるべきなのだから今回の勝負はナンセンスなのだ。

だからこの場合はそもそもアウトレンジからのミサイルでフリップナイトかフリップナイトを操る管制機を撃墜すればいい、出来なければ初めからしない。

「好き勝手に言われているわね」

「ただのゲームだ、どうということはない」

「嘘よ、ネウロイとの闘いに絶対はない、気持ちのいい言い訳が思いつかなくて少しイライラしている」

俺の動揺をコントロールスティックが捉えたのか、雪風は以前のように乱気流に巻き込まれたとディスプレイの表示を出した、雪風が俺に一々それくらいで動揺するなと呆れているように思えた。

しかしミーナ中佐は俺に気安く話しかけて来るが一体どうしたのだろうか、俺も気付けば形ばかりの敬語も外れている。

一時はかなり恨まれていた筈だが同じ経験を得てシンパシーを感じているとでも言うのか。

そしてミーナ中佐に言われてしまえば俺も考えている事もある。い高性能な機体に雪風の様な高性能な機械知性体を搭載した無人機はいずれ人間を戦場から駆逐するだろう。

ジャム戦争に人間が必要なのか、ジャックは人間に仕掛けられた戦争を人間が放り出す訳にはいかないと言っていたし、俺も一度は納得したが改めて考えれば答えになっていない様に感じる。

「グノー大佐、一ついいか」

「何だね深井中尉、負け惜しみの一つでも聞かせてくれる気になったかね?」

「もしFAFが無人機だけになったら、人間はジャムに勝てるのか?」

「……人類が存続しているかはともかくいずれは勝てるだろう。それよりも君はまだ、死ぬために飛んでいるつもりなのかね」

「……」

俺の無言から何かを悟ったのかそれっきりグノー大佐が話し始める事は無かった。彼は本当に無人機が必要だと思っていて、確かに無人機は人間を越えていくのかもしれない。

 

 

 

――――それでもあの時、俺を雪風は呼んでいたんだ。

 

 

 

ハッキリとした理由はまだ分からないが、例えそれでも俺はまだ飛んでいたいんだ、この雪風と一緒に。

 

*1
意識の覚醒レベルを示す指標

*2
異機種間空中戦闘訓練




次回でナイトウィッチ編終了です、その次は外伝かジャムの正体編になると思います。

私のVmaxスイッチがオンになるので感想と評価を心よりお待ちしております。
その他疑問などがあれば感想やメッセージにて受け付けております。
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