戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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番外編 1904年1月1日午前0時
ジャムの正体とその考察 A


 

―――1904年1月1日午前0時 記録開始。

 

 

 

「本日はお集まり頂きありがとうございます」

俺達はウルスラ中尉に呼ばれて戦術コンピューターが置かれているシェルター区画に集まっていた。

シェルターの中には俺と深井中尉、クーリィ准将、ミーナ中佐、そしてウルスラ中尉の計五人のみ、あえて言うのであれば機械知性体である戦術コンピューターがいるが入室と同時に細工をされてこの部屋の記録は一切保存れないようになっていた。

「俺達を集めて何の用だ。それもこんな場所で、態々細工までして」

「お時間を取らせてしまい誠に申し訳ございません深井中尉、しかしこれは我々の今後に必要な話なのです」

「必要とは一体何の話なんだ?」

「ブッカー少佐、あなたが以前501JFWと特殊戦が協力体制を取れるようにしたいという話についてよ」

それはこんなところでなければできない話なのだろうか、しかもその上で明らかに場違いなのがウルスラ中尉だ。

確かに彼女はフェアリィ星人の中でもFAFに深く関わっている人間と言えるだろうがさすがに部署が違う、准将が連れて来たのだから意味はあるとは思うのだが。

「その件ですが、准将はもし深井中尉とミーナ中佐が目覚めたなら、そして貴方に覚悟があるなら准将がなんとかして見せると言っていましたがもしやこの事ですか?」

「そうよ、少佐の覚悟は決まったのか?」

「覚悟と言われましても……何に対して覚悟をすればいいのか分からず終いでして」

「それじゃあ改めて聞くわ、『ブッカー少佐は今後、ジャムを打ち倒す為に己の全てを捧げるか否か』」

「もし否であれば?」

「あなたは今からここを去る事になりスオムス*1辺りで働く事になるでしょう、そして深井中尉達とはお別れよ」

「事実上の左遷と島流しですか、深井中尉とお別れとは?」

「深井中尉とミーナ中佐は既に無関係ではないのよ。だから二人は強制参加よ、言ったでしょう?貴方に覚悟があるのであればと」

深井中尉とミーナ中佐に共通点があるとすれば深くジャムと関わりその実態の一部を目撃した事だろう、それに引き換え俺はただ見ているだけ―――いやそれすら出来ていなかった、当事者ですらなかったのだ。

もう置いてきぼりは御免だ、俺にもまだ出来る事があると信じてこの道を歩んできた、これはつまり又と無いチャンスなのだ。

「……俺が言いだした事です、今更無しとは言いませんよ」

「いいだろう、その言葉忘れるなよ」

「話は終わりましたか?そろそろ話を進めたいのですが」

「准将、今更ですが何故ここにウルスラ中尉が居るのですか?」

「お前も調べて分かっただろう、この問題を解決する為には人類連合軍の上層部に掛け合う必要があると」

「改めましてブッカー少佐、私が少佐が言うところの人類連合軍の上層部です」

「ウルスラ中尉が人類連合軍の上層部なの!?」

「正確には人類連合軍の窓口や代理人と言うべきですが、概ねその通りです」

相応しくないと思える程の笑みでウルスラ中尉が応える、今まで自分を利用していた組織の一人が目の前に居ると知れば彼女にも思うところはあるだろう。

「君が人類連合軍の上層部との間に立って執成してくれるというのか?」

「執成すというより、もういつでも実行に移せる段階にありますよ」

「准将から頼まれたのか?」

「違うわ、あなたが私に話を持ちかけるより前に既に計画が進んでいたの」

「ウルスラ中尉、これはどういう事だ?」

ミーナ中佐のようにその思惑を利用して自分達の計画を進める前例があるが今回の件は俺と准将、そして特殊戦のネットワークを調査しなければ分からない筈の情報だ。

「今日は皆さんの疑問にお答えしようと思ってきたので丁度いいですね。人類連合軍は元々人類の為に色々な事をしているのですが表立って動けないので代わりにやってくれる人を探しているんです、今回も元々は501JFWを補助しようと計画していたんですが特殊戦が丁度よく協力して下さるようなのでお任せしようかと思ったのです」

「何故人類連合軍は表立って動かないんだ、それに加えてフェアリィ星人の中で最高峰の戦力を抱え、各国に発言権を持ち、FAFとの関係も深い。そもそも人類連合軍は一体何なんだ」

「それを話すには長くなりますよ、そしてジャムの正体についても話す必要が出てきます」

「ジャムの正体だと?お前はジャムを知っているのか?」

「その通りです、我々はネウロイが一体何者で何処から来たのかを知っています」

「それじゃあ、ジャムとは一体何なんだ」

 

 

「ジャムは、ネウロイは神様なんです」

 

 

 

昔々、西暦よりももっと昔の話です、そこには現代よりもエーテルに満ちた時代がありました。

我々の文明以上に魔法を使いこなすその時代では一部の人間が男女関係なく、そして動物も魔法を使う事が出来ました、もしかしたら植物や無機物も魔法を使えたのかもしれません。

その過去の文明をここでは古代文明と仮称しますが古代文明は豊かで満たされていて、それでいて厳しい時代でした。

必要は発明の母といいますから優れた魔法技術はその時代を人類が生きていくために必要な能力だった、古代の人類は魔法を用いた独特な価値観と概念で人類の繁栄を遂げたのです。

魔法が使える一部の人類は魔法使いと呼ばれ、魔力を通して空を飛び、病を跳ねのけ、その身に余る膂力を振るい、未来を見通し、それ以外にも様々な奇跡を起こしました。

それでも未だ科学の存在しない厳しい時代です、しかし古代人はあらゆる現象と対話し、恐れ、崇める事で『神』との遭遇を果たします。

これによって天と地が齎す災害であったり避けられぬ運命であったり、様々な艱難辛苦を神と共に乗り越える事が出来ました。

そしてある時古代人の前に異形の怪物である『怪異』*2が現れました、何処より現れ人を襲い国を滅ぼすそれは人類にとって明確な脅威でした。

人類は怪異に対抗する術を求めました、そして怪異に襲われながらも時は流れて新たな神が誕生し、神は怪異の正体を伝えました。

怪異とは悪神であると、人類に益を齎す善神が在れば人類に災禍を齎す悪神もまた存在するのだと。

神に対抗できるのは神の力だけ、人類は最も新しく優れた神に信仰を集めその巫女に神の力を降ろしました。

そして奇跡を起こす力と神の力を得た巫女は鑑の助けを受けながら怪異との長く厳しい戦いの末に怪異を退治する事に成功し人類は生き残る事が出来ました。

 

 

 

「この怪異、つまり古代に表れたジャムは一度駆逐されているのです。そして神の力を下ろし怪異を退治した巫女が現代のウィッチの祖先と言われています」

「色々聞きたい事が増えたが…まずその怪異とジャムは同じ存在なのか?」

「ほぼ同じ存在だと人類連合軍は考えています」

「その人類連合軍と古代文明に一体なんの関係があるんだ?」

「それがですね……」

 

 

 

怪異と巫女の激しい戦いの末、理由は不明ですが一度古代文明は滅びてしまいました。

恐らくは再び新たな神が現れた事でそれまで存在した神が駆逐されたことで文明が滅ぼされたのでしょう、旧き神は名前も姿も忘れ去られてしまいました。

そして時代が変わると同時に起こるそれは人類が神との契約を打ち切るまでに発展し、人間と神の蜜月のような関係はいつしか終わってしまった。

しかしそれを快く思わない人類も存在した、それはかつての古代文明の知識を受け継ぐ人類であり怪異の再誕を確信していました。

そのグループは神の存在についてある程度の知識があり、少しばかりの奇跡と神秘を保ち続け、いつか訪れる怪異を滅ぼすべく動き続ける秘密結社のようなグループでした。

『我々』はネウロイに対抗する為には神の力が必要であることは分かっていました、しかしその為には消えてしまった神との対話を果たす事もまた必要でした。

だから私達は古代の神を探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、探して、探し続けました。

壁画や書物、古代の建造物や土器や神器を時に買い漁り、時に掘り返し、そして押収や強盗などの犯罪行為であっても繰り返し行いました。

神秘の薄れた現代で過去の神を探すという事が何よりも滑稽な事と知っていながらも止まる事なく続け、そして秘密結社は内部で派閥が分かれる事になりました。

一つは過去の英知と神秘を探し続ける懐古派を、もう一つは過去に見切りを付けて現代においての神を探し出す革新派を。

再び時は流れて我々は一つの結論に辿り着きました、悪神である怪異が新たに生まれるならば、善神たる神を新たに生み出す必要があるのだと。

ここで秘密結社はアプローチを変えて各派閥が持ち寄った情報を基に神というシステムを解剖する事を決定しました、そしてそれを通して人間を知る事もまた並行して行われました。

結論から言えば神を生み出すシステムの基礎となったのは人間が持つ、現象を捉える認識能力の一つであるという事でした。

人間の言う世界とは自分の外にあるのではなく、外から与えられた外部刺激によって自分の内側に世界を作るというものでした。

古代の人類は無明の世界で生きているも同然でした、だからこそあらゆる現象や理屈に名前と形を与えて対象を理解しようと神と呼ばれる存在を作り上げました。

雷を裁きや豊穣の象徴ととらえる事で雷は恐れだけではなく必要とされ人類からの信仰を集めるに至り神となった、こういった自然や現象が形になった神を外の神と暫定的に呼びます。

一方で内なる神とは人間が正しい行いをする為に生まれる神です、俗に言えば風習、慣習、ルール、法律、宗教等です、これらは人類の正しさを支える信仰を得ています。

神とは、人間の罪や恐れ等の負や闇から生まれる。

神とは、人間が望み生まれた試練と罰与える者である。

神とは、人間が優れた人間性を保つ為に生まれる「正しい」指標である。

神は人間がそれを信じる事で生まれた世界のルールと法則である。

神が人間を救うのではない、人間が神の代行者として人類という種族を繁栄させる。

つまり神とは人間が『正しく』ある為に人間が生み出したアバターだった。

そして人類の善意から生み出される善神と違い、怪異やネウロイは人間が人間を滅ぼす悪意から生まれる人類悪だったのです。

よって改めて過去の神を探す行為は最も愚かである事が分かりました、過去と現代では文化や常識、宗教などが別物なのだから古代文明の神は生まれないのです。

それは悪神であるネウロイも同じこと、彼等は現代の負の側面から生まれ出る新たな人類悪である事が予想されました。

では秘密結社は善神を生み出すには何が必要なのかを考える必要がありましたがここで問題が発生します、現代では『科学』と呼ばれる神が急速に信仰を集めていました。

神秘を隠し、あらゆる現象や物に名前と理屈を与え一部の人間にしか制御できない奇跡や能力を出来る限り封印する事を求められた現代の最高神の御業。

この神が存在する限りエーテルを利用する事は可能でもかつての魔法や神秘を操る事は出来ませんでした。

そこで秘密結社は常識を捻じ曲げ、科学の世界にパラダイムシフトを起こし科学の神と魔法の神の融合を図り新たな神を生み出す事にしました。

そして選ばれたのが現代では絶滅危惧種となっていたウィッチでした、ちなみに彼女達が箒を用いるのは悪を『祓う』という意味があり、それは正に過去に悪神を駆逐した魔法使いの系譜でした。

現代では精々が空を飛び、人よりも力持ちであった程度のウィッチ*3を基に信仰を集めて善神を生み出しネウロイを駆逐する事が秘密結社の新たな指標となりました。

ここで初めて人類連合軍の基礎となる組織が結成され、ウィッチの有用性と存在意義を大々的にアピールする事で信仰を集める事にしました、それでもオラーシャ帝国の様にウィッチの存在を嫌う国*4もありましたが利益で黙らせました。

こうしてウィッチの存在は科学の世界から『承認』される事となり、神秘と奇跡を振るう善神の巫女が生まれネウロイと戦う事が出来る様になりました。

そして遂に怪異の再来となるネウロイが生まれます、秘密結社の人間は人類が存続する為に動き出し、表で活動出来るように一つの組織を立ち上げました。

その名を人類連合軍、その組織は人類の希望と成るべく誕生した組織だったのです。

 

 

「本当は鑑についてとか名の無い神についてとかジャムの汚染とか色々あるのですが、大まかに言えばこういう事です」

「……つまり人類連合軍とは元々ジャムと戦う為に過去から存在した組織だったと」

「そうです、そして我々が撒いた種を育てて収穫したのがストライクウィッチーズです」

「つまり私の思惑を利用した訳じゃなくて、どのような形であれストライクウィッチーズは誕生したのね?」

「その通りです」

「そしてFAFとストライクウィッチーズが結託する事もかなり初期から考えられていた」

「概ねその通りです」

「では改めて聞くがジャムに勝つためにはどうすればいい」

「そうですね―――では問題です、ここにマッチがあります、世界からマッチを消す方法を考えて下さい」

「マッチじゃなくて、ライターを使えばいい」

「深井中尉、いい答えですね。でもそれだけでは駄目です」

「マッチのネガティブキャンペーンを打つとかどうかしら」

「ミーナ中佐も素晴らしいです、便利な道具があって、更にマッチを使う事をナンセンスにしてしまえばいい、でもまだ足りません」

「マッチを回収し、マッチを見つけ次第処分する」

「ブッカー少佐も流石ですね。つまりはジャムを上回る戦力を持ち、ジャムを生み出す悪意や狂信を削ぎ、最終的に悪意が生まれる源を断つ必要があります」

「出来るのか?そんな事が」

「その為の我々であり、人類連合軍であり、ストライクウィッチーズです」

長々と語られた真実の話はかなり荒唐無稽であった、しかしウルスラ中尉があくまで一介の中尉に収まらない存在である事は確かだった。

「それでは皆さん、これから記憶を封印します」

「何だと?それは一体どういう事だ」

「ジャムに関する知識は精神を汚染されます、フェアリィ星における感染拡大を防ぐ為にご協力をお願いいたします」

「ちょっと待て、ならば何故説明した!」

「これは保険です少佐、無知は時に罪ともなり得るのです。大丈夫です、必要な時が来れば自ずと思い出す事も出来るでしょう」

そう言うとウルスラ中尉の手が光初め、それが振るわれた時俺達は倒れた。

成程、ウィッチの固有魔法だけで説明出来ない力、これがウルスラ中尉が言っていた神秘と呼ばれる技術なのだろう。

彼女の言葉を信じるのであれば今倒れた三人はともかく、未だ立っているウルスラ中尉とクーリィ准将は記憶を失わないのであれば二人は彼女の言うところのジャムの汚染を受けている。

そもそも二人が本人であるという確証もないのだ、零の言っていたジャムが製造した人型のコピーの可能性がある。

考えてみれば俺は誰から呼ばれてどうやってここまで来たのかすら記憶がない、それに気付けなかったのは重大なミスだ。

つまりこれはジャムそのものによる攻撃なのか?ジャムが己の意志で俺達にコンタクトを取って来た?

しかし何であれ俺達の記憶が無くなってしまうのであればもう意味はない、しかし思い出す事が出来るのであれば最後までこの光景を目に焼き付けよう。

 

 

 

―――忘れるな、ウルスラ中尉とクーリィ准将を疑え、忘れるな。

 

 

 

 

 

―――1904年1月1日午前0時 記録終了。

 

*1
地球でのフィンランドに相当する

*2
SW一話等を参照

*3
本能寺の魔女等を参考

*4
ブレイブウィッチーズのサーシャ大尉の様な状態




零「話が長い」
ウルスラ「ジャムは悪い神、私達は良い神、ジャムは神で殴って殺せ」
零「OK」

ちなみにジャムの全貌まで書くとかなり長くなるのでここまでです、あとは本編やジャクスン女史が解明してくれるでしょう。

評価バーも赤く染まった上に埋まって感無量です。あとは推薦だけですね!!(強欲)
私のVmaxスイッチがオンになるので感想と評価を心よりお待ちしております。
その他疑問やリクエストなどがあれば感想やメッセージにて受け付けております。
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