戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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26話

買い出し組がFAFロマーニャ基地に来たのは食料等の購入が目的でもあったが、やはりミーナ中佐の様子を見に行くのが一番重要だった。

ミーナ中佐は既に退院しており体調的には問題ない状態だった、それでも中佐がFAFロマーニャ基地に残留しているのは501と特殊戦の融和計画を進める為であった。

中佐は現在、特殊戦に割り当てられている宿舎の一室に泊まりながら他の軍団から何とか情報を手に入れようと必死の取り調べを受けていた、何せ一度501JFW基地に戻ればFAFは手が出せなくなる為である。

先日のFAFロマーニャ基地にて起きたジャムの内部工作、当時のファーンⅡの異常はAICSによるモノと判明しそれを弄る事が出来る可能性は二つ挙げられた。

一つはジャムが遠隔による電子戦によってAICSのプログラムを不調にさせる事、もう一つは直接人かコンピューターによってAICSに異常が出るように細工をする事。

前者は非現実的である可能性が高い事とメイヴに搭載されたFAF最高峰のECCMを突破してプログラムの改変や物理的な操作が行われた可能性が低い事から一度見送られている。

よって後者である可能性が高いがプログラムの改竄はロマーニャ基地のコンピューターによって否定された為、AICSの改変は人間の手によって行われたと判断されていた。

FAFではメンテナンスや給油等の整備に関して誰がいつ行ったかのデータが電子的に記録されている、よって誰が戦闘機の整備を行ったか判明しているのだが先日の事故で戦闘機ごと容疑者の地上要員が吹き飛んでしまった。

吹き飛ばす前に拘束すれば良かったのだがジャムが紛れ込んでいる可能性が判明した瞬間に要請した雪風と特殊戦の戦術コンピュータによって対地攻撃の認可が通ってしまった。

AICSは飛行前であれば異常を示さない為破壊された機体の解析は遅々として行われている状態であるそして容疑者を絞り込めてもそこからの発展が難しい。

FAFのシステム軍団や情報軍団、管理部の保安局等は今見えざる敵と戦い続けていた。

「ミーナ!調子はどう?」

「エーリカ!それに皆も。……ごめんなさいね、基地を長く空けてしまって」

「いえ、気にしないで下さいミーナ中佐。私達だってネウロイのせいで基地を空けてしまった事もありますし」

「あれは……仕方ない事よ、本当に貴女達が無事でよかった」

「ミーナ中佐はまだ戻って来れないのカ?」

「ええ、ちょっと話が長引いちゃって。でも別に辛い事は無いわよ?坂本少佐も協力してくれてる事だから」

「え?坂本少佐がお出でになってますの!?」

「少佐は今人類連合軍とFAFの間に立って色々動いているみたいね、いつかまた会えるかもしれないわよ?」

突如として消えた501JFW元戦闘隊長の坂本少佐は秘密裏にFAFとの交渉役として動いていた、しかし実際のところは人類連合軍に対しての諜報活動の任に就いているのだろうとミーナ中佐は考えていた。

元々人類連合軍は自らとして動く事は余り無い、人類連合軍直属の各JFWはともかくとして戦場には統合方面軍、FAFの技術を利用する時は協同技術開発センター、そして補給等の操作を行う際は別名義の組織が動かして世界中の動きをコントロールしている。

今回の特殊戦と501JFWの融和案は人類連合軍が望む限り通るだろう。そして坂本少佐は言うのだ、私達は仲間なんだ、一通り情報を吐き出しやがれと。

そして恐らく坂本少佐は今、人類連合軍、特殊戦及びFAF、501JFWの三重スパイとなっている。つまり人類連合軍がこの融和案を認可するという事は人類連合軍が公然とFAFにスパイを送り込める口実となる。

善意と悪意のせめぎ合い、状況を改善しようとする全てが人類連合軍の掌の上で転がされているだけにすぎない、それこそ私に対するこれまでの圧力すらこの融和策の為に利用する為である可能性すらある。

正直なところ胃薬と向精神薬の服用が多くなっている、いつだって逃げ出したい気持ちで一杯だ、それでもこの役割を続けるのはそれが私に課した誓いだからだ。

ネウロイから故郷を取り戻しクルトの墓を作ってやらねばならない、そうしなければ私も彼も平和の安寧で微睡む事は許されない。

「そう言えばミーナってここで何やってるの?」

「501JFWの今後を考えて特殊戦と連携を取ろうと思っているの、その打ち合わせをしているのよ」

「特殊戦と協力なんて可能ですの!?」

「いつも見ているだけだもんナー、いやバルクホルン少佐とかミーナ中佐とか何度か助けられてるけどさぁ」

「特殊戦はそういう部隊だもの、彼等は彼等の仕事を熟しているだけなのよ。それを嫌うのはお門違いだわ」

「ミーナってさぁ、変わったよねー。―――誰よりも特殊戦を嫌ってたのにさぁ?」

思わずミーナ中佐の体が硬直する。確かにその通りだ、特殊戦のスーパーシルフを凶鳥(フッケバイン)と呼び特殊戦を死神と言い放ったかつての自分とは大違いだと自覚はしている。

エーリカ・ハルトマンという少女はそのいつもの態度とは裏腹に観察眼に長けていた、その彼女が言い切るのであれば言い逃れする事は不可能だろう。

私が彼等に対する認識が明確に変わったのは恐らく重秘匿案件であるX-11案件*1に巻き込まれて失踪したあの時から、そして長い眠りから目覚めた時から。

眠りから覚醒した自分は余りにも目覚めすぎていた、ズレていた感覚がまるで調和を取り戻した様な曖昧な浮遊感。

あの異常な空間は恐らく五感で構成される世界とは別の要素を含めて構成されていた、あるモノがなく、ないモノがある世界だ。

それは深井中尉も同じだろう、恐らく中尉と私は同じ経験を通して同じ価値観を共有した、そして何より深井中尉という人間の一部を知った。

果ての無い白い部屋で檻に入れられて横になる翅の生えた女と鉄格子を挟んで檻の外で座り込む深井中尉、深井中尉は立ち上がれば何処へでもいける、そして彼は彼女の檻を開く鍵を握っていた。

「確かにそうだけど……誤解も解けたしもういいのよ、今はそれどころじゃないから」

「そぉ?だったらいいけどさー」

部屋に響くノック音、この部屋に用事がある人間は限られている。

「どうぞ」

「失礼します、ミーナ中佐。……おや君達は」

「ええ、501JFWのウィッチです。紹介するわ、この方は特殊戦五番隊の戦隊指揮官のジェイムズ・ブッカー少佐です」

「初めまして少佐、私はペリーヌ・クロステルマン中尉ですわ」

「エーリカ・ハルトマン中尉です」

「エイラ・イルマタル・ユーティライネン中尉だ、よろしく少佐」

「ああ、よろしく。ミーナ中佐、少しくらいなら時間を作ってもよろしいのですが、如何しますか?」

「いえ、このままで構いません。皆は席を外して頂戴、ごめんなさいねせっかく顔を出してもらったのに」

「大丈夫、ミーナの具合も良さそうだし」

「ええ、お忙しいのであれば私達は失礼いたします」

「じゃあなミーナ中佐、また来るからなー」

三人が退室したあと、ブッカー少佐が溜息を吐く音がハッキリと聞こえた。

「何か面倒な案件ですか?ブッカー少佐」

「いや、あのように幼い少女達が戦場に出ていると思うとな……何年経っても違和感が拭えないよ」

「あら、私は違うのかしら?」

「い、いや。ミーナ中佐は大人びているからな、実際話していても年齢不相応に思えるよ」

「色々言いたい事はありますけど、大人になるしかなかったもの、そうじゃなきゃ政治なんてやってられないわ」

「そうだな、だが君はまだ子供でいられる。平和になったらやりたい事はないのか?」

「そうね…ベルリンを、そして故郷を取り戻したら退役して歌を歌いながら故郷の復興でもしようかしら」

「ああ、それは良いな。俺も平和になったら地球で百姓でもやるかな、畑ばかりの何もない故郷でブーメランでも飛ばしながら」

「深井中尉は戦争が終わったらどうするのかしら」

「あいつはそんな事を考えてもいないだろう、しかし今にして思えば地球に帰れば面倒な事になるかもしれないな」

「そうなの?」

「アイツは色々な事を知りすぎた、地球に帰れば今のミーナ中佐とは比べ物にならない扱いを受けるだろう。そう考えれば零はもうここで戦い続けるしかない、逃げるところなんてもう何処にもない」

「なら、帰らなければいいのではないかしら。平和になったらこの星で暮らせばいいのよ、ジャムがいなくなってもすぐにFAFが無くなる訳ではないでしょう?」

「……そうだな、だったら俺もこの星で生きていくのもいいかしれんな」

「ならコンサートのチケットを用意しておくわ、二人で是非聞きに来て」

「勿論だ……さて、その為の仕事をしよう、人類連合軍からの命令が届いた」

「そう、遂に融和計画が始まるのね」

FAF特殊戦五番隊と501JFWの融和計画、通称プロジェクトマリッジとしてFAF本部、人類連合軍ともに連名で認可が下りた。

組織は501JFW司令部直属の特殊戦という形で運用される、特殊戦と501JFWの立場は対等であるがそれでも501JFWの下に就くのは地球防衛国際条約を順守する為である。

そしてマリッジプロジェクトには協同開発技術センターも参加する、501JFWと人類連合軍が母体である限りFAFでは持てない陸海の装備を開発し運用できる為である。

つまり上手くいけば501JFWと特殊戦用の陸上偵察及び強襲部隊や最新のフリゲート艦や空母等を運用できるかもしれないという事だ。

「なお、この計画を実施するにあたり俺とミーナ中佐は大佐に昇格する。俺は二階級特進の前払いだ、仲良くやろうミーナ大佐」

「ええ、よろしく頼むわ」

「ちなみに特殊戦五番隊の戦力はそのまま引き継ぎだ、そして深井中尉は大尉に昇格して特殊偵察ウィッチ隊*2の隊長となる、本人は大層不服そうにしていたがな」

「レコンウィッチ隊ね、内訳は?」

「雪風を始めとして直掩のレイフ一機とフリップナイトを三機の計五機。メンバーは深井大尉とナイトウィッチ一人+α。そしてメイヴのFOは適宜変更する、場合によっては501のウィッチが乗る事になるだろうが殆どないだろうな」

「理由は?」

「だれもFOの経験はないだろう?それにこれを見てくれ、これが新たに開発されたフリップナイトの詳細だ」

先程から手に持っていた書類を受け取り流し見ながらページをめくる。

「恐らく今後は素質のあるウィッチと一定の水準に満たないウィッチは将来的にフリップナイトシステムを運用する事になるだろう。フリップナイトの魔力のタンクとして」

「……良く言えばどのようなウィッチでもネウロイと一定以上に戦う事が出来るシステム、ウィッチの戦力を均一化する事で扱いやすくする」

「人類連合軍が作ったシステムだ、いずれ全体的に採用されるかもな」

「結局メイヴのFOは空席なの?」

「いや、一時的に天津少尉が搭乗することになる。実はフリップナイトがまだ揃っていなくてな」

「ワンオフ機ともなればそうでしょうね、それで他には?」

「いや特にない。おめでとう大佐、これでFAFから釈放だ、その資料を持たせるから帰りの機の中で読むといい」

「ありがとうブッカー大佐、今後ともよろしく」

「ああ、よろしく頼むよ」

 

*1
人型ネウロイに関する案件の総称

*2
Special Reconnaissance Witches Force




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