戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ 作:ブネーネ
「ミーナ隊長!お帰りなさい!!」
「ええ、宮藤さんただいま。あら?司令室でシャーリーさんが仕事してるなんて……竹井中佐とバルクホルン少佐は何処へ?」
「ええと、竹井さんは人類連合軍の本部で、バルクホルンさんはカールスラントの司令部に行ってます」
「なる程、それじゃあ帰りが遅くなるわね、シャーリーさんも代行ありがとう」
「いやぁ!二人がいないから仕方なく!そう仕方なくやっただけですから!」
「まさかシャーリーさんに書類仕事が出来るなんてね、今度から予習として仕事を幾らか任せようかしら」
「え゛!?」
本人は隠す事もなく嫌な顔をするが当然だ、これからプロジェクトマリッジが始まりこれまで以上に忙しくなるのだから。
「シャーリーさん、仕事は粗方済んだのかしら?」
「はい、勿論であります中佐殿!」
「私は今日付けで昇進して大佐よ、それに補給の物資に個人の品を混ぜてたら営倉行きよ?」
「ほんの出来心です!大佐殿!」
「ちゃんと提出できる書類だけ残して後片づけをしなさい。私は一度自室に戻るわ、私宛の書類とか届いていたかしら?」
「そのあたりは竹井中佐とバルクホルンが処理していました!」
「そう、なら問題なさそうね。それじゃあ後はよろしくね」
久しぶりに戻った自室には所々少しばかり埃が溜まっていた、数ヶ月ぶりに帰って来たのだから無理もない、それに機密事項に触れる物もいくつか置いてあるのだから入出は許可されなかったのだろう。
プロジェクトマリッジは竹井中佐から引継ぎを受けてからになるだろう、私も空けていた間の業務の処理とリハビリをしなければならない。
とは言えども私が居ない事は人類連合軍は知っているのだから私でなければならない案件は振られていないだろう、だからもしあるとすれば明日からだ。
とりあえずはトゥルーデが早く戻れるようにカールスラントの司令部に連絡を入れておく事、部屋の空気を入れ替えて布団とシーツを取り換えながら今後の事を考える。
プロジェクトマリッジ、ブッカー大佐から手渡された資料によると特殊戦の能動的協力を得られる様になるという。
そもそもFAFの一般の部隊の戦闘機は基地周囲の偵察と迎撃のみ地球国際防衛条約において許可されている、よって501JFWと協力できる戦闘機は特殊戦にしか存在しない。
そして今回のプロジェクトにはフリップナイトシステムの実戦テストとして攻撃に参加する事を許可されている。
501JFWはいつも通りに任務を遂行し、特殊戦は偵察に従事、レコンウィッチ隊は501JFWの許可を得て特権*1の下に戦闘の援護を行う事が出来る。
一例で言えばウィッチ五人で出撃中、計五機からなるレコンウィッチ隊は偵察用の一機から二機を残して余ったフリップナイトを増援として動かす事が出来るという訳だ。
これならウィッチの数が限られている今でもローテーションに余裕を持たせる事が出来る、実質的な戦力の増強だ、本音を言えばあと半年は早く欲しかったのだが。
しかしこれまでと変わらず襲来するネウロイに対して迎撃しか出来ないのであれば根本的な解決には結びつかない、ネウロイの巣に対しての一大攻勢が必要だ。
統合方面軍は融通が利かずに非協力的にも思えるが無能ではない、方向性は違ったがかつての重秘匿名称ウォーロックもガリア解放の為の兵器であった事は間違いないのだから。
それ程までにトラヤヌス作戦の影響は大きかったのだ、一つの国の人民の殆どが退避しその隣国に至るまで余波を齎したあの事件は。
何はともあれ一度特殊戦の人間とウィッチ達の顔合わせをするべきだ、大々的にパーティーを開くのもいいかもしれない、人類連合軍の確実な協力を得た今であれば補給も潤っている。
今晩の食事の時にでも予め軽くプロジェクトマリッジについて触れておこう、方向性だけ決めておいてトゥルーデが帰って来る頃に始められるようにするのがいいだろう。
これからの未来が明るくなる事を祈りながらベネツィア基地の廊下を歩いて行った。
しかしそんな少し浮ついた気分もすぐに落ち込む事になる、それが次の日の朝の出来事であれば猶更。
「しばらく501JFW基地に来られない?」
「ああ、特殊戦としての協力はするが俺とレコンウィッチ隊はしばらくFAFロマーニャ基地で留守番だ」
「他の特殊戦のメンバーは強力してくれるの?」
「特殊戦機にB-14レイフを付ける、自由に使ってくれ」
特殊戦の暗号回線にてブッカー大佐からの連絡、態々この回線を使用するという事は他の者には聞かせられない何事が起きている。
「君にこうやって話を打ち明けるのは、君が信頼できる人間と信じているからだ」
「機密保持は徹底してるわ、FAFの方で何か問題でも?」
「バンシーⅣ、知っているか?」
「FAFが空に浮かべている空中空母でしょう?……ちょっと待って、まさか占拠だとか蜂起されたとか言わないわよね?さすがに国際問題になるわよ」
「そういった話じゃないと信じたいがちょっと面倒事がな、FAFが調査に入るんだがそれに特殊戦が協力する事になった」
「そう……それじゃあパーティーは延期ね」
「出鼻を挫くようで申し訳ない。一度落ち着いたら成大にやろう、ブッカースペシャル、最近は中華にも手を出してるんだ」
「ふふ…楽しみにしているわ」
通信終了、特殊戦の面子を紹介できないのは残念だがこっちも受け入れの準備をしなくてはいけないので猶予が出来たと喜んでおこう。
「ミーナ中佐、失礼します」
「ああ、竹井大尉。私が留守の間ありがとうございました」
「いえこれぐらい、私達は501JFWにお世話になってばかりでしたから」
「流石は扶桑の三羽烏ですね、よく501を運営して下さいました」
「それはミーナ中佐が残してくださったウィッチの性格や得意不得意をまとめたマニュアルがあったからですよ……ミーナ中佐はこうなる事を予想しておられたのですか?」
「そうね……ベネツィア戦線に来てからは色々あったから」
「報告書や戦闘記録は拝見させていただいてますよ、ミーナ中佐の苦労は相当だと思います」
「知ってくれている人が居るだけでも報われるわ、504JFWは大丈夫なのかしら?」
「504JFWはメンバーの構成上、ロマーニャの政府の発言力の影響が大きいですから、現時点でもロマーニャ皇室のバックアップで何とか動いている状態であまり独立した部隊という気がしないのです」
「私達もロマーニャ皇室に随分と助けられているから……足を向けて眠れないわね」
504JFWはロマーニャ皇室直属の精鋭部隊である赤ズボン隊が構成員の大部分を占めている、よってロマーニャ軍のバックアップを優先的に受ける事が出来るのだ。
しかしその反面ロマーニャ政府の言いなりになっている場合もある、主任務がロマーニャ防衛であることが幸いだが。
トラヤヌス作戦に501JFWや502JFWではなく504JFWが選ばれたのはその地理的な近さと潤沢な支援、そしてロマーニャという国として実績を得るという思惑だったのかもしれない。
もしトラヤヌス作戦が成功すれば計三部隊がそれぞれネウロイの巣を破壊したという実績に加え、カールスラント、その先のオラーシャ解放作戦の為の道も開く事が出来た。
けっして無謀な作戦ではなかった筈なのだ、ネウロイの巣がネウロイに奪われるなんてイレギュラーさえなければ。
「竹井大尉はこれから基地に戻るのかしら」
「ええ、ウィッチは貴重ですから。501JFWが羨ましいです」
「もしかして、人類連合軍の上層部から聞いたのかしら?」
「ええ、プロジェクトマリッジ。504JFWのウィッチにも協力を要請するかもしれないと言われました」
「504JFWに協力を?」
「はい、どうやらプロジェクトマリッジはヴェネツィアのネウロイの巣攻略作戦の為のプランでもあるようです。トラヤヌス作戦の再来が起これば統合航空戦闘団一つでは太刀打ち出来ませんから、人類連合軍はFAFを利用してでもネウロイの巣破壊に動くつもりでしょう」
「つまり総攻撃の日は近い、ということね」
「オペレーション・ニフ…人類連合軍はX-11案件同様に何か強力な兵器を持ちだすかもしれません」
「X-11……トラヤヌス作戦の際に情報を得たのね、確証はあるのかしら?」
「攻略作戦について知ったのは美緒の報告を受けたからです、『後で知る事は先に知っても問題ではない!!』と笑ってましたよ」
「それって大問題よね?」
「ええ、一応説教しておきましたが美緒にとっては馬耳東風で……」
というより総攻撃による攻略作戦について私が聞いていないのだが、美緒は何を考えて動いているのだろうか。
何にせよ特殊戦の協力が無ければプロジェクトマリッジは無く、それが無ければ攻略作戦であるオペレーション・ニフもないのだから備えて待つくらいの事しか出来ない。
成るように成れという事だ、何かあれば人類連合軍を問い詰めてでも動けばいいだけの事、それぐらいの裁量権は持っている。
今日と言う日に足踏みをしていられない、カールスラント奪還の為にまずは自分の体力と勘を取り戻す事が先決だ。
ファーンST-W型にも慣れなければならない、今日もシャーリーさんに協力してもらうとしよう。
恐らく決戦の日は近い、そしてそれが今後を決める。
―――攻略作戦の失敗とはすなわち、ロマーニャ及びベネツィアの奪還を無期限で諦めるという事と等しいのだから。
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