戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ 作:ブネーネ
―――本当の私とは一体何者なのだろうか。
スオムス義勇独立飛行中隊のウルスラ軍曹、カールスラント技術省のウルスラ技術中尉、それとも人類連合軍のウルスラ中尉?
私がいつ、私になってしまったのかは今でも見当はつかない。分かっているのは私のたった一つの望みを叶える為にこうして掌の上で踊らされようとも抗おうとしている事。
無事昇格の手続きを終えて戻って来たバルクホルン少佐を含めたウィッチ全員を講堂とも言えるような501JFW基地のブリーフィングルームに呼び集めて貰う。
人類連合軍から正式にプロジェクトマリッジに関する情報の開示許可を得た為、人類連合軍の名代として派遣されている私がその発表を行う事となった。
「全員資料は手元に渡っていますか?問題がないならこのまま始めさせて頂きます」
プロジェクトマリッジ、FAFの一部隊である特殊戦五番隊と人類連合軍直属の第501統合航空戦闘団の蜜月のような関係を願い組まれたプランである。
「ウルスラ中尉、具体的には何が変わるんだ?」
「特殊戦に新たに部隊が追加される事で501JFWが特殊戦から直接的な支援を受ける事が出来ます。レコンウィッチ隊『ミラージュ』、各種ストライカーを用いて空と陸から支援を行う事が可能なウィッチ部隊です」
「ちょっと待て!何でFAFにウィッチが居るんだ!!」
「そうですわよ!あり得ませんわ!!」
「それにつきましては機密事項に当たるので中尉である私からは何とも……責任を負う覚悟があればFAFまでよろしくお願いいたします」
FAFに軍籍を置くFNウィッチ達ではあるが、実はその存在は人類連合軍を除いて非公開でありFAFを管理する国連にも公開されていない。
レコンウィッチ隊を501JFWの下に置くのは公式記録の上では人類連合軍のウィッチとして扱う際に都合がいいからだ。
例えば天津少尉を始めとするFNウィッチはFAFでは一介の軍人或いはフリップナイトの生体ユニット、人類連合軍では一般のウィッチとして扱われる事になっているが彼女達の正体が露見する場合は秘密裏に処分される。
つまりFAFでは天津風とは機体の事でありそのような軍人は存在せず、人類連合軍はFAFとは無関係のウィッチが戦死したとして発表するだろう。
本来彼女達は悲惨な生い立ちを経て過酷な生活を送る筈だった、それを私が持てる権限を以てFAFから譲り受けて出来る限りの援助をしているのだ。
勿論素直に聞いたところで答えるつもりは無い、例えこの様な事実を知ったところでただ知るだけだ、暗部を知らない人間に出来る事等何もない。
「……分かった。もういい、続けてくれ」
「了解しました。レコンウィッチ隊は空戦においてはFAFの戦闘機、或いはジェットストライカーを使用する事が可能です」
手元のリモコンを操作してフィルムを切り替える、スクリーンに映し出されるのは
「共同技術開発センターが製造した試作品である強化装甲陸戦ストライカーBAX-4です、武装は主にガトリング砲。これまでの歩行脚は両脚部に装着しますがBAX-4は全身を覆う様に装着します。各パーツは脊柱を模したメインフレームを介していますので全身の装甲を一つのユニットとして扱う事が出来ます。これにより全身の筋肉の動きを補助して筋力、瞬発力を向上、全身のユニットをサスペンションの様に扱う事で高所からの落下や衝撃に対しての耐久力を向上、装甲も対ネウロイ装甲の試作型を利用する事で防御力を向上、四輪の装輪ユニットよって悪路でも走破可能、BAX-4は各種オプションを搭載可能なので空挺降下から滑空しての奇襲、後方からの火力支援、偵察、牽引車を装備して人員輸送、補給、陣地構築などの汎用性も兼ね備えた新世代型の戦闘偵察陸戦脚です」
「スゴイ!!」
「画期的どころか革新的だ!これは何両使えるんだ?」
「三両のみです」
「何故だ?これを量産すればそれこそ戦場で優位に立てる性能だろう?」
バルクホルン少佐の言うとおりなのだが、それが出来ない理由というものがある。
「仰る通りだと思いますがBAX-4の純粋な戦闘力は低いのです、少なくとも一両二両では大規模戦闘での戦局を変えられません。そしてコスト的問題が大きいのです、試作型対ネウロイ装甲に加えて通常の歩行脚よりも遥かに多いパーツ、BAX-4の運用に耐えられる素材の確保、製造と整備両面でのコストの高騰が抑えられません、予算を下さい」
「じゃあ何で作ったのー!?」
「ルッキーニ少尉、こういうモノは予算がある内に作れるものを作っておかないと技術の発展なんて出来ないんですよ。まあ人類連合軍もFAFも金持ち父さんではありませんからね、そもそも資金を得て権力を振るえない様に常に制限を受けていますし仕事をして収入を得ていても資産で言えば僅かばかりのものです」
「ウジュ……わかんない」
「親の手伝いをして貰った少しのお小遣いとアルバイトだけで一人暮らしをしているようなものです、その上で税金等で収入を減らされて貯金も碌に出来ずに何とか生きている状態ですね」
「うっわー……そう聞くとえぐいなぁ」
「そうは言っても実際にBAX-4は出来ているわけだろ?予算は何処から出ているんだ?」
「ウィッチ用の戦闘機開発すると言って予算を貰って、元々あった戦闘機を改造して浮いたお金で作りました」
「うわセコイ!」
「どの組織でもやってる事ですよ、とりあえず開発すると言って適当に兵器を作って余った予算を流用するんです」
「あー……ウルスラがこの前持ってきた試作品*1とかストライカー*2って予算獲得の為だったんだ!」
「ソ、ソウデスヨネエサマ、アタリマエジャナイデスカ」
「ウルスラ中尉、声が震えているぞ」
別に失敗兵器ではありませんし、ただ時代を先取りしすぎただけですし、それにそれで浮いた予算があるから無駄ではありませんでしたし……。
「ではBAX-4をグレードを落として量産できないのか?」
「であれば安い既存の歩行脚を量産した方が元を取れます、BAX-4は破壊力に秀でた歩行脚ではありませんから」
「だったら何が得意なんだ?」
「機動力と小回りを活かした市街地や施設、森林等の見通しの悪い地域の制圧ですね、やろうと思えばパルクールも出来ますよ。他にも要救助者の救援活動も行えます」
「なんだか…対人間用の兵器みたいダナ…」
事実その通りではあるが兵器は使い方次第である、真に厄介なのはネウロイよりも人間なのだからいざという時に動ける人間と兵器が必要だ。
人は陸の上の生き物だ、ウィッチだっていつまでも空に浮いているわけにはいかない。その点でBAX-4の性能はお墨付きだ、ガリアの市街地、アルンヘムに潜伏していたネウロイの駆逐を命じられた際には三十分も経たずに殲滅して見せたのだから。
「ともかく、これで501JFWは対地戦闘においても有利をとれます」
「成程な、それで?他に何か特記事項はあるのか?」
「あとは資料をお読みいただければと思います、その上で質問がある方はどうぞ」
「ハーイ!」
「どうぞ、イェーガー大尉」
「レコンウィッチ隊の装備は私達でも使えるのか?例えばこのフリップナイトって奴とか!!」
「規格はユニバーサル仕様ですのでウィッチであれば乗る事自体は可能ですよ、まあ501JFWの皆様が乗るような事はないでしょうが」
「何で!?」
「何分機密事項が多くて…皆さまの新装備を作る予算が溜まったらまた検討しますのでご容赦と予算を下さい」
「ウルスラ……どれだけ予算が欲しいのさ……」
「そうよね……予算は大事よね……」
「うわ!?ミーナに飛び火した!?」
政治や統合軍と交渉できるのは今現在ではミーナ大佐のみ、いざとなれば予算獲得の為のキャンペーンも必要になるだろう。
基地の見学とか時期に合わせた祭りとか、あとはサインやレコード、その気になればグラビア本等もあるだろう、504JFWの隊長のセクシーカレンダーが確か裏で取引されていましたし。
「ゴホン、他に質問はありますか?」
「特殊戦との連携という事だが、合同演習等は行うのか?」
「ええ勿論、色々と実際に運用してみないと分からない事も多いでしょうから。後程マニュアルもお渡しします」
「了解した」
「他にはありますか?……無ければ終了します。何か分からない事があれば私はしばらくFAFロマーニャ基地とこの基地を行き来しますので気軽に聞いて下さい」
今日の仕事は終わりだ、後は精々共同技術開発センターから送られるレポートに目を通して今後の為に根回しをする位だろう。
少なくともこの基地でやる事はもうない、そうなれば出来る限りは早めにここを離れたい、何故なら―――この人に会わなければならないから
「ウルスラ」
「……お姉さま」
僻地に飛ばされた私とは違う真の天才、輝かしい功績と勲章を誇るレコードホルダー。私は姉を誇るべきだ、しかし今の私は誰よりも姉を恐れている。
「ウルスラ、少し痩せた?」
「最近、忙しかったものですから」
「そうなんだ?ダメだよ、ちゃんと食べないと。ウルスラは熱中すると周りが見えなくなるからね」
「そうですね、実は最近睡眠も余り取れていなくて」
「ホント!?ダメだよーウルスラ、私なんて二度寝してトゥルーデに怒られてばかりなんだから!」
「フフ…お姉さまは変わっていませんね」
そう何も変わっていない、変わったのは――――私だ。
強い姉さま、優しい姉さま、人気者の姉さま、そんな彼女の私の全てを見透かす様な目が何よりも恐ろしい。
「すいません姉さま、この後行かねばならない所があるのでこれで失礼します」
「ん、分かった。ゴメンね引き留めて」
「すいません…それでは」
あの人が私をウルスラと呼ぶたびに心が震える、早く行かなくちゃ、私がこらえきれなくなる前に。
「ウーシュ」
それでも、大好きな姉さまから呼ばれればこの足は止まってしまう。
「辛くなったら、いつでも来ていいからね」
「姉さま…ありがとうございます」
「ん、それじゃあね!ウルスラ!!」
私に背を向けて去っていく姉さま、いつだって私の先を歩いて私を連れて行ってくれた姉さま。
私はもう姉さまの知っているウルスラではないかもしれない、それでも姉さまを護り、その力になれるなら私は一向にかまわない。
ストライクウィッチーズや特殊戦に協力するのもその為だ、私は世界の何を犠牲にしても姉さまを助けたい。
私は今日も世界の闇の中で抗い続ける、それが例え誰かを裏切りその思いを踏みにじる行為だったとしても。
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