戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ 作:ブネーネ
「ウルスラ中尉、出撃準備が完了しました」
「了解しました、指示があるまでバンシーⅣから一定の距離で待機していて下さい」
「了解」
現在バンシーⅣには深井大尉達が侵入している、それを現在外部から観測しているのがミラージュ隊の支援隊だ。
第一段階、特殊戦のスーパーシルフによってバンシーⅣの外部偵察
第二段階、深井大尉及びトム・ジョン大尉によるバンシーⅣの内部の偵察、異常があれば解決に向けて動く事。
そして第三段階、第二段階の成功またはイレギュラーが発生した場合に残った戦力を以て雪風と乗員二名を無事に回収する。
現在バンシーⅣを直接視認できる距離にて無人操縦で飛行中のフリップナイト一機と私達が乗っている大型輸送機を改造したC-31S『スレイプニル』が待機している、もしもバンシーⅣの内部で問題が発生した際にはBAX-4を装着したFNウィッチが突入して事態の収拾にかかる手筈だ。
今回のミッションで恐らくネウロイが介入してくるだろう、これまでの雪風に起きた事態を考えれば簡単に想像できる。
むしろブッカー大佐は分かっていなかったようだがこの任務の最大の目的はネウロイを誘い込む事も考えられている、バンシーⅣと引き換えにしてでもジャムとコミュニケーションをとる為に。
なおこのミッションを企てたのはクーリィ准将とロンバート大佐だ、正確にはロンバート大佐が何かしらを企てていたのを知った准将が計画を横取りしたのだ。
もっと言ってしまえばロンバート大佐が計画を横取りされてもいいように計画を組み、准将に計画を奪われても漁夫の利を狙えるようにしたというのが正しいか。
何はともあれ准将の許可の下に我々は雪風と二人の装備したアナライザーの状態を監視しながら待機している。
現在飛行中のC-31Sは特殊戦の空中基地としても運用できるように大改造が施されている、運用の問題上フローズンアイこそ搭載していないが長距離通信の中継を行えるように大型の回転式レーダードームを装備したり、機械知性体程ではないが情報解析の為に十分な性能を持ったコンピューターも搭載しており空飛ぶ前線司令部に相応しい機体だ。
他の機材が詰めなくなるがやろうと思えばフリップナイト三機を格納できる、主翼と胴体部を含む各部の換装が可能なこのC-31Sの汎用性とキャパシティの賜物だ。
今回は突入用の機材の為にフリップナイトは積んでいないが、やろうと思えば501JFWのウィッチ全員と補給物資を積んでウィッチの魔力が続く限り支援する事も出来るのだ。
おかげでまた予算を使い切ったので人類連合軍かFAFから予算が下りるまで装備の開発は延期中である。
それはともかくバンシーⅣには異常は見られない、雪風から送信されている解析のログを漁っても致命的な問題は発生していない様に思われる。
しかしネウロイは来る、むしろ既に潜伏しているだろう、ネウロイには人の嫌がる事をする習性があるからだ。
バンシーⅣという厄介な火種を利用しない筈がない、そして恐らく潜伏しているネウロイもまた対象にとって致命的な攻撃を仕掛ける事が予想されている。
<check on danger Lt.>
―――そして、それは現れた。
「ウルスラ中尉、雪風が異常を発見した模様です。ジャムセンスジャマーを展開、メッセージを受信した深井大尉はバンシーⅣのロワデッキに向かっています」
「深井大尉はバンシーⅣの原子炉区画へ向かった模様」
「フリップナイトと当機もジャムセンスジャマーを展開させて下さい。総員警戒態勢、このままバンシーⅣに接近します、異常が明確に確認出来次第ウィッチを突入させます」
「了解」
そうは言ったが最早状況は確定的、雪風が基地に対地攻撃を行った時と同じだ。
「ブッカー少佐、こちらスレイプニル、雪風が異常をキャッチしました」
『こちらでも確認した、ジャムか?』
「十中八九、ジャムでしょう。雪風も特殊戦です、自分を脅かす状況でなくジャムが関与していなければ自分には関係ないですませるでしょうから」
『ストライクウィッチーズを動かすか?』
「501JFW基地の防衛はレイフと待機のウィッチに任せてミーナ中佐の固有魔法をお借りしたいと思います」
『分かった、要請してみよう』
「スレイプニルはこれより先行してBAX-4を投入します」
『大丈夫なのか?ジャムを刺激する事にならなければいいが』
「もし雪風と二人を狙っているなら以前の様に妖精空間に隔離するか既に動いている筈です。バンシーⅣがネウロイに乗っ取られればそれこそ侵入が困難になります」
『了解した。俺も突入のプロじゃないからな、貴官に任せる、ただし全員生きて戻って来い』
「ありがとうございます、大佐」
『グッドラック、エンド』
ブッカー大佐の許可を得たならすぐさま行動するべきだ、スレイプニルの後部にある格納庫にて突入前のブリーフィングを始める。
「皆さん、出撃の許可が下りました。最優先目標は雪風と深井大尉の救出、次にジャムの情報を得る事が出来る物資の回収です」
「了解しました、作戦と装備はこのままで?」
「プランAのままで行きます、その後は臨機応変に行きましょう。それでは突入の準備を、スレイプニルをバンシーⅣへ」
スレイプニルが加速を開始、バンシーⅣの直上に付けた状態で機体をバンクさせる。
それと同時に下方に傾けた側の格納庫のゲートを開く、先程雪風が格納庫に降りた際に滑走路のゲートは再度閉鎖したまま開く様子が見られない為、強制的にゲートを貫通して侵入する。
格納庫からせり出す様に展開されたのは突入用に設計された円筒状のロケット、対地下施設突入用ロケット『アンダーバンカー』だ。
元々は名前の通り地下にある施設に突入する為の兵器だ、バンカーバスターの様に深く潜り込み任意の位置でロケットを停止させることで直接地下にウィッチを送り込む事が出来る。
今回はバンシーⅣの構造データを入手している為ゲートとミドルデッキを貫通させて直接ロワデッキに存在するバンシーⅣの格納庫まで突入する。
一応衝撃吸収用のサスペンションやゲル等の緩衝材を搭載している為衝撃で乗員が負傷する事は余り無いがそれでも一定の体格と訓練が必要である、しかし今回は訓練済みでありBAX-4を使用するのでその心配はない。
「バンシーⅣ、迎撃行動みられません」
「アンダーバンカー、データ入力完了、行けます」
「了解、ウルスラ中尉……いえ、
「―――了解、カウント3、2、1…射出!!」
アンダーバンカーが固定されたままロケットブースターに点火、推力の確保が出来た時点で切り離されて放たれた矢の如くワイヤーを引いてバンシーⅣの外装に穴を開けた。
バンシーⅣのゲートとミドルデッキの甲板を貫いた瞬間にグラウンドブレーキと呼ばれる貫通防止用のフックを展開し格納庫に楔の如く突き刺さる事で急停止、ロケットの中はすさまじく揺さぶられるがバンシーⅣの内部に無事侵入した。
ロケット下部がパージされ天津少尉が飛び出すと同時にクリアリング、ジャムセンスジャマーを展開した雪風を確認。
「クリア」
そしてスレイプニルからワイヤーを伝って装備を格納した小型コンテナが下りて来る、中から銃器やシールド等を取り出して装備しワイヤーを切り離す。
「このまま深井大尉とトム・ジョン大尉を救出に向かう、なにかあれば秘匿回線で通信、通信終わり」
BAX-4は足底部のゴムパッドとそのサスペンションの吸収能によってカタピラを下ろした高機動モードでも無ければ足音や駆動音一つしない、それも相まってバンシーⅣの酷く静かな空間はいっそう不気味だった。
マスターキーは預かっている、電子ロックされた鉄扉を開けて中央区画まで進めば後はどうとでも進める、一先ずは階段を駆け上がりブリッジまで向かった。
さすがに限られた空間の中でガトリングは使用できない為に取り回しのいいアサルトライフルに換装している、アナライザーとリンクさせた頭部を覆うようなヘルメット一体型のHMDにマップを表示させながらブリッジまで駆け上がる。
状況クリア、ブリッジは無人で静かさを湛えたままであった。
しかしトム・ジョン大尉が見当たらない、周囲を見渡すとブリッジの壇上にある電算室に向かう壁面のドアが開いたままになっていた。
ラダーを昇って電算室に侵入するも人の気配はなし、忽然と置かれたままの端末が置かれているだけで―――。
バンシーⅣが揺れる、先程まで静かだったのが嘘だったかの様に下層からエンジン音が響き渡る。
「スレイプニル応答せよ、こちら天津少尉。電算室で作業していた筈のトム・ジョン大尉は行方不明、バンシーⅣが突然様子が変わったが何があった」
『こちらスレイプニル、バンシーⅣが加速を開始、針路も予定航路から外れている。このままでは重力に引かれて落下します』
「了解、プランCに移行する」
『了解』
「全くさぁーFAFの問題なんだからFAFが解決すればいいのに」
「既にFAFは動いているわ、でももしもの問題が発生した時に動けるウィッチは私達だけなのよ」
「それはそうだけどさぁ?」
「いい加減にしろハルトマン、どうせ言っても変わらん」
「はーい、りょーかい」
「それにしてもバンシーⅣが狙われるなんて」
「核ミサイル一発で大惨事だ、バンシーⅣが落ちたらどうなるか予想もつかん」
ブッカー大佐からの要請を受けてミーナ大佐を初めとするウィッチ達は六つの軌跡をロマーニャの空に残して飛び続ける、目標はバンシーⅣ及び潜伏するネウロイ。
―――バンシーⅣのロマーニャ最接近まで残り30分。
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