戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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33話 終

それは雷雲を突き破って現れた、全幅1400mのバンシーⅣの雄大なその姿、遠近感が乱れる程の巨大な鉄の鳥が空に浮かんでいる。

「ちょっと待って!?私達ロマーニャから来たよね!?何でバンシーⅣがこっちに向かって飛んでいるのさ!!」

「飛ぶと言うより…こっちに落ちて来てませんか!?」

「特殊戦からの報告は無かったわ!通信妨害?いや先程まで通信出来ていた…?」

「ウルスラァ!どうなってるのさ!!」

『ああ、姉さま。申し訳ございません、イレギュラーな事態が立て続けに起こりましてそちらに集中していました』

「それは後でいいわ、現状を報告して頂戴」

『バンシーⅣがネウロイに乗っ取られました、深井大尉達は脱出済み、あとはバンシーⅣを撃ち落とすだけです』

全幅1400mの巨体と9650tの質量は7.92x57mmモーゼル弾では止められないだろう、例えここにリーネさんとサーニャさんが居ても焼け石に水だ。

『ご安心ください、FAFからICBMが発射されています。これでバンシーⅣを木端微塵にすれば最悪の状態は回避できます』

「私達の任務は、ICBMの撃墜阻止かしら?」

『その通りです、その為にストライクウィッチーズはネウロイの警戒を―――』

『それは困るなぁ、ミーナ』

インカムに割り込む男の声、ブッカー大佐でも深井大尉でもこれまでに会ったいけ好かない高官の声でもない。

親し気に私の名前を呼ぶ男は――――()()()()()()()()()()

「クルト……あなたは…死んだはずじゃ…」

『そうだね、だからこそずっと傍に居たよ。今だってホラ、君の目の前に居る』

私の目の前には大空とバンシーⅣしかない、固有魔法を使って内部を走査すればバンシーⅣの中に慣れ親しんだ気配を感じた。

「あなたはそこにいるのね?」

『そうだよ』

『止めて下さいミーナ大佐、ICBMが残り10分でバンシーⅣを撃墜します』

「五分だけ、五分だけ消えないで」

「ちょっと待て!突然どうしたんだミーナ!」

「ミーナ!!」

「ミーナ大佐!!」

「貴方達は動かないで」

501の仲間を置いて私はファーンを加速させる、いくら近づいてもバンシーⅣの大きさが変わらない様に見える程の巨体。

バンシーⅣからの迎撃等は見られずあっさりと近付く事が出来た、バンシーⅣを上空から旋回して観察するとゲートに穴が開いているのが見えた、ミラージュ隊が侵入する際に開けた穴だろうか。

いつでもシールドを張れるようにMG42を構えながら降下していく、バンシーⅣの格納庫にタッチダウン、格納庫には薄暗く広々とした空間が広がっていた。

激しい戦闘があったのか重厚な隔壁が破られたような跡もあり、―――彼の気配を除いて―――気配を感じられない空間というのは只管に不気味であった。

「銃を下ろしてくれないか、ミーナ」

「嫌よ、貴方の口から直接話を聞かせて貰うまでは」

相手の発言を受け入れた時点で立場が明確になる、交渉とは自分の要求とスタンスを崩さない事だ。

クルト・フラッハフェルト、数年前に失った恋人、しかし彼の姿は当時の服装も含めて何も変わっていない様に見えた。

奇跡的な再会なのに今はこうして銃を向けている、彼は以前のように穏やかな表情で私に話しかける、私の呼吸の乱れを悟られないように問い詰める事にした。

「それで、何を聞きたいんだい?」

「貴方がいなくなってから、全てよ」

「今日が久しぶりの再会だよ、それまで僕は死んでいた」

「嘘よ、雪風が居なくなったあの日にも貴方は居た。深井大尉が言っていたわ」

「それは違うよ、あれは深井大尉がみた幻覚さ」

「どういう事?」

「深井大尉は特別な目を持っている、他の人には認識できない物も彼には見えてしまう。あの時は君の話に引っ張られて人影を僕だと勘違いしているだけさ」

「今の貴方は幻覚ではないという事かしら?」

「僕は多分君にしか見えない、だから僕は幻覚以外の何物でもない」

「あなたはネウロイなの?」

「ネウロイの手下と言う意味では、そうだよ」

彼の言葉を信じるならば先程の通信はトゥルーデやエーリカには聞こえていないのかもしれない、幻聴を聞き前触れも無く飛び出して幻覚と会話する私は既に精神異常者という事か。

「嘘ね、全部嘘」

「僕の言葉が信じられないかい?」

「私を遺して勝手に死んだ時から貴方はずっと嘘つきなのよ」

「そうだね、僕は嘘つきだ。でも本当の事だってある、君に贈ったドレスと歌は本当の僕が遺した最後の思いだ、大事に受け取ってくれ」

一瞬頭の中が白熱し引き金に掛けた指が一瞬力が入る。その姿で、その顔で、その声で私の思い出を汚すな。

相手の言葉を信じてはいけない、目の前の男はネウロイだ。死人が生き返るのであればこの世の常識など全てが覆ってしまう。

「時間が無いわ、貴方の目的は?」

「コイツをネウロイの巣に落とすのさ、これだけの質量がぶつかればネウロイの巣だって壊せる」

「貴方の嘘なんて私にはすぐに分かるのよ、ネウロイの貴方なら殺せるわ」

「君の方こそ嘘をつくのを止めた方がいい、僕は君の嫌がる事が分かるんだ、君に僕は殺せない」

舌打ちを何とか堪えた、人を小馬鹿にした態度が何より私を苛立たせる、そして何よりその言葉が私の本音を捉えていた事が何よりも癪だった。

「時間の無駄だったわね、私は帰るわ」

「まあ待ちなよ、一つだけいい事を教えてあげる」

「……つまらない事を言うなら容赦はしないわ」

「これは本当の事さ。実はこの作戦を考えたのは僕たちじゃないんだ。天と地が交わる時―――」

突然の銃声と彼の身体から膿の様な粘液が撒き散らされた。呆然とした顔と驚愕、射線を追ってみれば全身を漆黒の装甲で覆ったを赤い光を波打たせた人型の生物がそこに居た。

X-11の初期型かと思ったが、よく見ればそれがBAX-4を纏ったミラージュ隊のウィッチだと分かった。

『話は終わりましたか?大佐』

「―――貴女が強制的に終わらせたのでしょうウルスラ中尉」

『五分経ちましたので、いい加減そこから離れて下さい』

「……ええ、分かってますとも」

バンシーⅣの格納庫から離脱、彼の姿形は既になく水たまりの様になった粘液が残るだけだった。

さようなら、もう二度と会えない人、もう二度と会いたくない人。

「ミーナ!何故勝手に行動した!脱出できなかったらどうするつもりだったんだ!」

「ごめんなさいねトゥルーデ、私が行かなくてはならなかったの」

「…話は後で聞かせて貰うぞ」

「ええ、いつか話すわ。ウルスラ中尉、ICBMの残り到達時間は」

『残り二分です』

「バンシーⅣに攻撃は…駄目だよね」

『今軌道をずらされるとICBMが無駄になる可能性があります』

「見てるだけ…ですのね」

「いつでも動けるように準備しましょう、504JFWもローマ防衛の為に既に備えているわ」

「もしもの時は、だね」

一秒一秒が過ぎていく中、いつもは大した感覚もなく過ぎていく120秒が凄まじく長く感じた。

そして遂にその時が来た、ICBMの単弾頭再突入体がマッハ21でバンシーⅣに着弾する―――その直前でバンシーⅣが黒色の肌に覆われる。

命中したICBMの爆風が胴体を貫通するもすぐに傷跡を埋める様に損傷が修復されていった、X-11における空母赤城同様、ネウロイに乗っ取られた証だ。

『バンシーⅣは健在、更に加速を開始。目標はベネツィアのネウロイの巣、到達まで推定20分です』

「ミサイルが飛んできたの気付きませんでした…いや気付いたら命中してたというか…」

「失敗ね…ウルスラ中尉は504JFWに状況を報せ!501はネウロイと化したバンシーⅣを撃墜する!」

『それは許可できません』

「……それは誰の判断かしら」

『人類連合軍です、もし余計な行動が原因でロマーニャにバンシーⅣが落ちればロマーニャとFAFとの政治問題になります』

「ただ見ているだけの方が問題になると思わないのかしら?」

『ロマーニャにバンシーⅣを落とさない事が重要なのです、ミーナ大佐のおかげでネウロイの目的がネウロイの巣にバンシーⅣを落とす事だと分かりました』

「それが欺瞞であると考えないの?今ならまだ落とせる、落として見せる」

『ローマに落ちると判断した時は我々も最終兵器を出します、オペレーションニフ用の決戦兵器ですが止むを得ません』

オペレーションニフ、ベネツィアのネウロイの巣を落とす為の総攻撃による攻略作戦、それを失うという事だ。

「それっておかしくないかしら、もしこの事態を予測出来ていたなら問答無用で最終兵器を持ち出してでもバンシーⅣを落とすべきだった。これは人類連合軍とFAFが起こした不祥事よ」

『その通りです、ですので501JFWは関係ありません。501JFWは撃墜に失敗した、それでいいのです』

「もしあなたの言葉を信じるのであれば、バンシーⅣは元々ネウロイの巣に落とすつもりだったのね。そしてネウロイはそれを受け入れた!それがオペレーションニフの内の一つの作戦なのね!?」

『それを大佐が知る必要はありません』

「ふざけるな!!!!」

それは事実上の背信行為であり、回線を通して会話を聞いていた全員が絶句していた。

「貴女達は!世界を救おうとか戦争を終わらせるなんて考えてない!厚顔無恥で誰よりも傲慢!ネウロイと取引?悪魔に私達の命を売り渡して自分達は利益を貪って!いいわ、それがあなた達の考えならば私達はバンシーⅣを撃墜する!最悪の事態だけは回避して見せる!!」

『それは私達に対する反抗とみなしてもよろしいでしょうか』

「何とでも言いなさい、あなたの思い通りにはさせない」

『そうですか、それではさようなら』

その言葉を火切りにして私達の装着していたファーンは突如として同時に飛行術式を形成出来なくなり海面に向けて落下を始めた、シールドを張って損傷は免れたものの一度海に落ちれば離陸は叶わない。

「ウルスラ中尉!!!」

「ウルスラァ!!一体何をするのさ!!」

『これぐらいの備えはいつだってしていますよ、貴女達は人類連合軍の駒です、意にそぐわない駒は必要ありません』

「貴女は……貴女達は!絶対に地獄に落としてやる!!」

『そうですか、それでは餞別代りに最後に一つだけお教えしましょう。プロジェクトマリッジは特殊戦と501JFWが連携を取る為のプロジェクトではありません』

 

 

 

――――大いなる天と地の婚姻、それこそがプロジェクトマリッジの真の内容です。

 

 

 

プロジェクトマリッジはこの時の為に作られた隠れ蓑、その上でこの作戦に最適とされた私達は作戦遂行の邪魔にならない為の捨て駒だった。

こうなる事はあらかじめ決まっていた、恐らく人類連合軍とFAFの何処かの派閥の結託して行った事だ。

真の目的はバンシーⅣをネウロイに譲り渡す事、抱えきれないほどの核物質と共に。

「私達は…今まで……何の為に」

『後ほど救出艇を向かわせますが501JFW隊員は全員拘束します、それではごきげんよう』

それを機に通信は途絶えた、バンシーⅣはネウロイの巣に墜落しすさまじい衝撃と津波を引き起こすが巣の周りの住人はとうに避難している為に被害は最小限に留められた。

私達は人類連合軍の兵士によって拘束、反抗の意思が見られれば無警告での射殺すると告げられ一人ずつ軟禁される事となる。

オペレーションニフは予定通りに決行、総攻撃の日は近い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャック、キャビン内のシステムをチェックしてくれないか。妖風が眼にしみる、涙が止まらないんだ」

 




あけましておめでとうございます。
多分次の章くらいで一度終わりになると思います。
次はストライクウィッチーズ×ディエンビエンフーのクロスオーバーを書けたらなぁと思っています。

私のVmaxスイッチがオンになるので感想と評価を心よりお待ちしております。
その他疑問などがあれば感想やメッセージにて受け付けております。
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