戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ 作:ブネーネ
1話
地球の南極に突如として現れた超空間通路の先、もう一つの地球でも人類は呼吸の様に争いを繰り返しながら進化と成長を続ける事で地球上の各地で繫栄していった。
もう一つの地球をフェアリィ星と俺達の世界の人間は呼んでいる。
そしてフェアリィ星における1914年に突如として現れた謎の生命体【ジャム】はフェアリィ星人に牙を剥き、大地を貪り、踏み荒らし、汚染しながら彼等を迫害しその版図を大きく広げていった。
フェアリィ星に再び争いの歴史が刻まれ、安寧の時から叩き起こされたフェアリィ星人は武器を手に立ち上がる事になった。
一方で俺達の地球では南極にて21年前に突如として現れた異なる星を結ぶ超空間通路、そこから正体不明の異星体ジャムが現れた。
これに対して人類は地球防衛機構を結成して押し返し、超空間通路を越えた先に見たのは地球にそっくりな星であった。
フェアリィ星と俺達の世界の人間は呼んでいる、ウィッチと呼ばれる人間が箒に跨らずに飛ぶ姿を誰かが妖精と例えた事から通称として根付くことになった。
こちらではジャムと呼ぶ異星体をフェアリィ星ではネウロイと呼び、人類の生存をかけて戦争を続けていたらしい。
これを地球ではフェアリィ星を新たなフロンティアとして歓迎する者もいた、特にアメリカ等の大国は超空間通路を独占し、フェアリィ星に自国の軍を派遣しようとしたがここで一つの問題が発生した。
地球にはある条約が存在する、宇宙法と呼ばれる国際法の元となった宇宙天体条約である。
これは「月その他の天体を含む宇宙間の探査および利用における国家活動を律する基本原則に関する条約」であり、この条約がある限り地球はフェアリィ星にいかなる国であろうとも軍隊を派遣する事が出来なかった。
よって地球防衛機構は国連から独立し、後の超国家組織フェアリイ空軍、通称FAFの前身となる組織を立ち上げる事で解決を図った。
一方でフェアリィ星側としても大騒動が起きた、ただでさえネウロイに侵攻されている中で異星人達との二正面作戦など無理難題であった。
FAFとしても設立こそしたがフェアリィ星での立ち位置を決めかねていた、前述の通り新たなフロンティアとしての占領を諦めていない派閥も無いわけでは無かったからだ。
最終的に、FAFとはつまり対ジャム戦を展開する組織である事を念頭に置きそれを継続する為の方策が提案された。
【フェアリィ星におけるジャム戦争への過干渉を行わず、フェアリィ星人、ジャム、ともに相手の実態を探る事】
幸いにもフェアリィ星人とはコミニュケーションを取る事が可能であり、交渉を行う事が可能であった。
FAFはフェアリィ星人との同盟を結び地球防衛国際条約を制定することなる。
占領や侵攻を行わない事を示す為、空軍のみを設置する事を決定しFAFは正式にフェアリイ空軍として運営される事になった。
―――ロマーニャジョルナーレ紙 1945年2月某日発行
人類連合軍総司令部直属の統合戦闘航空団(JFW)の一つ、ロマーニャ及び周辺国の防衛を任務とする第504JFW「アルダーウィッチーズ」及びヴェネツィア――現実のイタリア北東部に相当する国――軍により【ネウロイの巣】より発生した大規模侵攻から一帯の住人をヴェネツェアより避難させることに成功し、504JFWは最後まで殿を務め撤退の援護にあたった。
ネウロイによる更なる脅威に対して人類連合軍総司令部は人類初となるガリアを占領していたネウロイの巣の消滅を成し遂げた実績をもつ第501統合戦闘航空団「ストライクウィッチーズ」を再結成しこれを派遣することが決定した。
人類連合軍総司令部はこの件に関して――――――
ここまで読み進めていた新聞をブッカー少佐は丁寧に折り畳みデスクの上に放り投げた。
今回ヴェネツィアにて行われたトラヤヌス作戦決行に際してFAFも参加して行われた合同会議において説明されたのは以下の通り。
・501JFW所属のウィッチによって人類とのコミニュケーションが行えると思わしきネウロイ個体を確認したが、不慮の事故により相手の意図を確認する事が出来ぬままに撃墜してしまった。
・しかしネウロイの目的や行動指針を探る事が出来る可能性が浮上した為、ヴェネツィア公国付近に存在するネウロイの巣にアプローチをかけコンタクトを行うトラヤヌス作戦を決行する。
・作戦は人類連合軍主導で行われ、504JFWがその任務に就き総勢千人近くから構成される504JFW所属の三つの運営群がバックアップする。
・FAFは地球防衛国際条約に則り観察及び偵察行動を許可するが、人類連合軍からの要請を受けない限り作戦への介入は禁ずるものとする。
これを受けてFAFはFAFロマーニャ基地所属の特殊戦五番隊『ブーメラン戦隊』の派遣を決定する。戦隊指揮官のブッカー少佐によって選出された三機が高度25000mにて巣を囲うように旋回しつつ継続的な情報の収集を行う。
特殊戦用のスペシャルチューンを施されたスーパーシルフを使用し、装備はTARPS(戦術航空偵察ポッド)に加えてAAMを四発を装備し、自機に撃墜の恐れがある場合か、ジャムが超空間通路を越えて地球を襲撃する可能性が認められた場合にのみ使用が許可される。
結果は一部新聞でも触れられているがベネツィアのジャムの巣が新たに表れたジャムの巣に破壊されるという前代未聞のイレギュラーが発生、ジャムの大規模な侵攻を受けてベネツィアが戦場となった。504JFW及び運用群が交戦するも運用群は中破、504JFW所属のウィッチ隊に至っては半壊し総員撤退という凄惨な結果に終わった。
特殊戦は救出活動や援護は一切行わずに観測に徹底し、FAFとしては特に酷い重傷を負った一部の負傷者やウィッチの受け入れのみを行った。
そしてFAF側としても無傷とはいかず、むしろフェアリィ星やFAFを含む各方面を巻き込んだ重大な事件が発生した。
トラヤヌス作戦にイレギュラーが発生した際にFAFロマーニャ基地からは特殊戦の偵察機を追加で三機出撃を命じた。
ここでFAF側としてのイレギュラーが発生した。戦闘が一度終息し特殊戦機に帰投を命じたところ偵察に当たっていた特殊戦三番機【雪風】、つまり深井零少尉からの通信が入った。
―――所属不明のFAF機とのコンタクト、IFF――敵味方識別装置――に応答なし、雪風はアンノウン機を敵性と判断しこれを撃墜する。
結果から言えば雪風及び深井少尉は帰って来た、スーパーシルフはエンジンの片方を失い全身を至近距離で撃墜した敵機の破片によって切り刻まれ、パイロットの深井少尉はその余波でヘルメットのバイザーが割れて目の付近と右腕を負傷した姿で、フライトオフィサの収まっていた席はパイロットシートごと空で後部キャノピーは無くなっていた。
ここで問題だったのはFAF機同士で戦闘が起きた事もそうだが、結局撃墜したFAF機の所属が不明だった事だ。
FAF所属の戦闘機は保有数が制限されており、新しく一機製造するにも何重にも審査を必要とするほど厳しい管理が行われている。
その上でSAF-V以外にロマーニャ周辺を飛行する為のフライトプランは提出されておらず、各地に存在するFAF基地からはロマーニャへ向かう機が離陸した記録は見つからず機数の数も作戦前と同じであった。
そしてロマーニャ海軍がこの戦闘を捕捉しており、後日人類連合軍からFAFへの事実確認の問い合わせが行われる。
FAFにとっても寝耳に水の問題であり速やかな回答は行われておらず、現在雪風のパイロット深井零少尉は特殊戦副指令、クーリィ准将と共に取り調べと軍法会議にかけられている。
正しい事や事実だからといってそれが通るとは限らないのが組織や政治というもので、クーリィ准将も付いているから安心とも言い切れない。
そして俺の仕事も山積みだ。新しく最前線のベネツィアに設立される501JFWロマーニャ基地、俺はFAFロマーニャ基地特殊戦五番隊の実質的な責任者である為打ち合わせに出席することとなった、上辺だけだとしても人類連合軍との連携は必要となる。
俺は今日の分の偵察用フライトプランを纏め終えるとシフトに割り当てられた特殊戦隊員にブリーフィングを行い、手慰みにコンピュータ用のライトペンを弄りながら報告が来るのを待った。
フェアリィ星の南極、超空間通路を囲うように設立されたFAFの本部と言うべき六つの基地がある。その内の一つに設けられた第七小会議室にて深井零少尉は軍予審判事からの審理を受けていた。
「深井零少尉、何故シルフを撃墜した」
「あれはジャムだ、IFFも不明、緊急回線も使用して通信も試したが応答は無かった」
「IFFや通信機が故障していた可能性がある」
「そうだとして、俺は相手から攻撃を受けている。こちらが攻撃しなければ俺が死ぬ、敵でなかったとしても味方ではないなら、それは敵だ」
「しかし明らかにこの機体はシルフィードだ、自分でも見たのだろう」
「お前…貴方は自分の眼を信じられるのですか、俺は雪風の警告を信じた、雪風が敵と言うならそれは敵だ」
「―――弁護人として要求します、その撃墜されたシルフィードの所属は何処かを調べていただきたい」
リディア・クーリィ准将、フェアリイ空軍特殊戦副指令、事実上各国に配置されている俺達特殊戦のトップに当たる人物だ。
この人物が予審とは言え俺の軍法会議に出席するという事が、既に組織内での政治が行われている証拠に他なかった。
「そうだ、俺が見た限り戦隊マークもパーソナルマークも無かった」
「航空宇宙防衛軍団・防衛偵察航空団の機体と思われる」
「戦略偵察用のシルフなら高度40000メートルを飛んでるよ、25000メートルなんて高度を飛ぶわけがない、当然攻撃もしてくるはずがない」
「成程、そちらの要求は受け入れる、今日はこれで閉廷、深井零少尉は一切の作戦行動から離れて判決を待つ事」
そう言って軍予審判事が退席した後、腕を組んで不満げな表情を浮かべたクーリィ准将に呼び止められた。
「言葉遣いがなっていないな、深井零中尉、私の顔をつぶす気か?」
「待ってくれ、聞き間違いか?―――俺が中尉だと?」
「勿論無罪になればの話だがな、何よりよく無事に戻って来た中尉」
特殊戦のスーパーシルフは、通常使用されるスーパーシルフとは中身が別物の特注機だ、それが戻ってくればさぞ嬉しいだろう。
「准将、判決が下るまで私はどの様に扱われるのしょうか、軟禁でもされるのですか?」
「いや、お前にはブッカー少佐の補助を命じる」
「しかし私は地上勤務はともかく作戦行動を外されたはずでは」
「ブッカー少佐には今対ジャム戦とは関係ない仕事を任せている。特殊戦の仕事は何だ?深井中尉」
「…対ジャム戦において戦闘情報の収集に努め、友軍に対して一切の援護は行わない。そうして得られた情報を例え友軍が犠牲になり、全滅しようとも確実に持ち帰る事」
「よろしい、何より貴様には雪風に乗れない事が一番堪えるだろう」
ぐうの音の出ないまま俺はFAFロマーニャ基地へ戻っていった。
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