戦闘妖精雪風はストライクウィッチーズ世界の空を飛ぶ   作:ブネーネ

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2話

「深井中尉、これよりブッカー少佐の補佐を務めます。ヘイ、ジャック」

「おかえり、零―――中尉だって?それは目出度いな」

帰って来た零は体のあちこちに負傷こそあれどいつも通りの態度だった、そして階級が昇格すると言う事はやはり何かしらの意図によって例の案件が十中八九処理されるだろうと言う事も伝わった。

そんな中、零がハンガーに着いてからある一点から注視し続ける物があった。

「見つけたか零、雪風が戻ってきた、しかも以前のスーパーシルフよりも格段にパワーアップしている」

「あれ程破損した状態からよく数日でオーバーホールしたな、まるで新品みたいだ」

「みたいというよりほぼ新品だよ、雪風のコア以外はほぼ全部交換だ、FAFは地球防衛国際条約で戦闘機の保有数が決まっていてもパーツの保有数は触れられていないからな」

「俺が撃墜した奴も同じように作られた機体かもしれないな」

「どうした随分と引きずるじゃないか」

「ジャムだけでも精一杯なのに、また厄介事が増えるのは御免被りたいというだけだ」

「ふむん、しかし俺達は俺達の仕事をすればいい―――おっと雪風には乗せられないぞ、銃殺刑になっちまう、既に壁の前に立たせられている気分だ」

先程まで雪風のメンテナンスを行っていたPDAを作業台に戻すと雪風に未練のある零を俺のオフィスまで引きずっていく。

現代の地球と比べてフェアリィ星は未だ技術的に幼い部分もある、そしてフェアリィ星自体にも原始的な発電によって電気は通っているが限りもあるし安定しない。

よって戦術コンピューターや戦闘機に給電する為に原子力を利用した小型の発電施設も各基地に設置されている、これを緊急事態において核兵器へ転用できるのではという声も上がっているが少なくとも使用されたという発表は無い。

そして電力は優先的に戦闘機に搭載された機械知性体や基地の戦術コンピュータに回され、休む事なく情報のやり取りが行われる。

「クーリィ准将から聞いているかどうか分からないがベネツィアに新しく配属される501JFW司令との顔合わせに行く、日時は明日の1000時、お前は俺の補佐として随行しろ、こき使ってやる」

「501JFW?例のスペシャル部隊か」

「そうだ、ジャムの前線基地を滅ぼした唯一の部隊だよ、504JFWが実質機能不全に落ちたからその補填だ」

「俺が道化として見世物になっている内にまた随分と動いたな、負傷した504のウィッチ隊は後方へ下げられたのか」

「いやここの基地の病院に搬送された、治療後はロマーニャ政府が置かれているローマ防衛の任務に異動する事になるだろう」

「人類連合軍もよく認めたな、意地でも自分の管轄で治療するかと思ったが」

「ナイチンゲールは偉大だよ、それにこの世界では四肢を切り落とすにも十分に麻酔を使えない」

「ゾっとするな、とは言え麻酔は嫌いだ、脳を鈍らせたくない」

「そう思うならもっと静かに帰って来い、対地爆撃モードで戻ってきた上に死に体で基地は大騒ぎだった」

「ジャムとの闘いに絶対はない」

「その通りだ」

突如現れ人に害をなすもその生態、目的、文化や言語すら不明の異星体【ジャム】或いは【ネウロイ】、その名前すら人類が勝手につけた通称に過ぎない。

その理解の一端となる筈だったトラヤヌス作戦ですら結局はハチの巣をつついただけに終わった、ジャム戦争はフェアリィ星人との不和を抱えたままこれからも続くだろう。

敵の名前すら統一されないのが良い証拠だ、現実から目を反らして気付かぬふりをしたまま、握手をする筈の手には常に銃を握って向かい合っている。

「ブッカー少佐、1658時であります―――外に出ないか?ジャック」

「よかろう、許可する」

俺は作りかけのブーメランをもって二人で連れ合い外に出た、FAFロマーニャ基地の外縁の一部は海に面しているのだから投げる方向を、飛んでいく軌跡の予想を間違えればそのまま海を落ちていく、一度だけ偶々基地に寄ったウィッチに拾ってもらったこともある。

余り土の露出してない草むらの上に胡坐をかき、大きなナイフを抜き1メートル近い木製のブーメランの翼の形を測るように覗き込みながら削り始めた。

「俺の生まれた田舎とは違った雰囲気だが空気が美味い、少なくともここは工業ガスに汚染されていない。星の位置が少し違うのが気になるな、乙女座が歪んでいた」

「あんたはそこまでロマンチストだったか?あんたらしくないな」

そろそろ飛ばしてみろと零が視線で急かしてくるものだから、一度削り屑を吹いて飛ばしてから大振りに振りかぶった。

ブーメランが空を飛ぶ、その後ろで今日の午後からの哨戒任務に当たっているスーパーシルフが轟音を響かせながら編隊飛行で発進していく。

ブーメランに視線を戻すと10メートルは先の地面に落ちていくところだった。

「落ちた、風のせいか?」

「どんな強風でも、下手な投げ方でも戻ってくるのがブーメランだ、一度完璧なブーメランを作った事がある」

ブーメランを拾い上げると俺はまた翼の形を整える作業に戻る、零は退屈だったのか草むらの上で仰向けになった。

「壊れたのか、一度も見たことが無い」

「壊したんだよ、とは言え俺が一人で作った訳じゃなかった、FAFに入ってから何度もコンピュータと相談して人工知能を搭載したブーメランを作った、最後は―――」

そこで言葉を切ってナイフで頬を示した、零がほんの少しだけ驚いた顔をした。

「その頬の疵はブーメランで出来たのか」

「3針縫ったよ、その時の特殊戦の医師が不器用ですさまじく痛かった、医師に文句を言っても人員を監督しているのは俺だからその不始末の責任も俺が取る事になった」

整え終わったブーメランを俺は再び投げた、しばらくは水平に飛行していたが急上昇、しなやかに舞うように飛んでいたブーメランは軽やかに草むらに落ちた。

「機械は空を舞うには硬すぎる」

「それは皮肉か、それとも忠告か」

「俺がどう思おうと、俺の好き嫌いなんてお前にはどうでもいいことだろう」

一度は体を起こした零だが興味を無くしたように再び仰向けに戻った、もう何度かブーメランを投げた後に自然と解散して零に例の事件のレポート書く様に言い含めておくことも忘れない。

ジャム戦争は続くだろう、それでも俺はFAFロマーニャ基地の特殊戦五番隊、ブーメラン戦士達に必ず帰って来いと送り出し続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

異世界に存在するというもう一つの地球、見知らぬ装備と未知の技術の世界からやって来た異世界人、私は彼等の正体はネウロイなのではないかと疑っている。

ネウロイは黒雲に包まれた巣の中から現れるが、彼等は超空間通路と呼ばれる白雲の柱の中から現れた、怪しさで言えば同等だろう。

特に空を舞うあの風の妖精の名を冠する忌々しい戦闘機、奴らには凶鳥――フッケバイン――の名前がふさわしい。

歴史的な遺跡を大胆にも501JFWベネツィア基地に改造したこの場所は未だ手付かずの場所も残っている、全員が集まる頃には形になっているだろうが全体的に薄暗い。

その中でもマシな部屋にて私はもう一つの地球から来た人型異星人――エイリアン――と対峙していた。

「FAFロマーニャ基地所属特殊戦五番隊、ブーメラン戦隊戦隊指揮官ジェイムズ・ブッカー少佐であります。こちらは特殊戦パイロットの深井零少尉」

「連合軍第501統合戦闘航空団司令のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です、態々ここまでご苦労様です」

些細な嫌味に一瞬ブッカー少佐の眉がピクリと動くがその程度だった、エイリアンにも矜持はあるらしい。

特殊戦と呼ばれる彼等の口癖を知っているだろうか、俺には関係ないね、だ。

事実501がガリア防衛の任に当たっていた際に私の仲間が負傷し命の危機にあった際にも一切の援護も無かった、ただ彼等は見ていただけだった。

そんな彼等と一体何の連携が必要なのかと言えば、実質的には殆ど関係は無いに等しい。

地球防衛国際条約という条約があり、これはFAFと私達人類連合軍との関係性を示すものだ、その一部を抜粋すると

 

・FAFはその先進たる知識、技術、施設、物資等の提供を行う事を対価に地球――彼等の呼称を使うならばフェアリィ星――の一部の土地や資源等をFAFに提供し、またある条件と制限の下において独自の武力を持ちこれを行使する事を認める。

・FAFは地球において侵攻と占領を行わない事を示す為に空軍としての組織と認め陸上及び海上の戦力を著しく制限する。

・FAFは対ネウロイ戦における偵察及び観察、戦闘行動において特権を持つものとする。

・上記における特権とは作戦行動中にのみ自己判断においての行動を許可するものである、ただし同時に対ネウロイ戦においては人類連合軍が主導である為その作戦や任務内容を順守する義務を負うものとする、これに著しく反する場合FAF及び人類連合軍合同の軍法会議において処罰するものとする。

・FAFはネウロイの巣及びネウロイが占領する警戒空域に独断での干渉を禁ずる。

・ネウロイの攻勢が各FAF基地及び超空間通路を防衛するFAF本部が定める防衛エリアを超えた際はこれをFAFの判断をもって撃墜を認める。

 

要約すればFAF本部に危機が及ばないかぎり、FAFは唯の傍観者に過ぎないのだ。

そんな彼等と一体何の連携が必要なのか―――それは彼等に背中を撃たれないようにする為だ。

条約が一体どのような信頼をもたらすというのか、そもそも軍というモノはそこまで甘くない、しかし人類連合軍においては幸いにも元ウィッチも上層部に比較的多い為にある程度融通は利くし理解もある。

だがそれが別の軍、しかも別世界の人間達となれば思想や主張が変わればどうなるのか、例えば私が休息中にビスケットを食べようとしただけで射殺するかもしれない、又はミルクに毒を入れる事だってするかもしれない。

だから私は彼等に一歩も譲るつもりはない、私の仲間に手を出せば私がお前達を殺す、人類連合軍直属の組織の長の権力は伊達ではない。

「この度ロマーニャ防衛の任を501JFWが受けました、貴方達SAF五番隊はこれまで通り私の指揮の下にネウロイ観察と偵察の任務に徹し活動してもらいます」

「SAFが指揮下に入るのは501JFWの作戦行動中のみです、それはご理解いただけるかと」

「当然です、その作戦行動中に身勝手な行動を起こされては困るという事です、私の命令は絶対と思ってください」

「了解しました、特殊戦の責務を果たしましょう、他に注意事項等はありますでしょうか」

「501JFW基地には基本的に立ち入りを禁じます、必要があれば基本的に私から許可を取るように」

「了解しました、徹底致しましょう」

その後は事務的な手続きを済ませて終了となった、二人のエイリアンはヘリコプターと呼ばれる特殊な航空機に乗って501JFWロマーニャ基地を後にした。

「―――死神め」

忌々しい思いを一言で吐き捨てる、絶対に忘れない、私の大切な人を見殺しにした―――特殊戦なんて皆滅んでしまえばいい。

1940年、カールスラント帝都陥落から始まる大小ビフレスト作戦、そしてダイナモ作戦と呼ばれる一大撤退作戦が発令された。

当時は宮藤式のストライカーユニットがまだ十分な数が揃っていなかった時期でもあり戦力は不足どころかネジの一本ですら回収を望まれていた。

最前線へ転属される直前の夜、私はJG3(カールスラント空軍第三戦闘航空団)の司令として、彼は一整備士として向かう事になった。

彼からの思いを拒み切れず、その癖彼の目の前でドレスを燃やして見せる事もした。

中途半端な思いを断ち切れない甘さがあの一日を迎えると知っていれば例え彼の手足を奪ってでもガリアから脱出させた筈なのだ。

しかしそうはならなかった、事実上のMIA、クルト・フラッハフェルトはパ・ド・カレーの基地で消息を絶った。

 

 




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