日常とは奇跡と偶然の積み重ねである、と祖父は言った
俺もそう思うしそれが俺の人生観になりつつあると共に・・・・
人の努力は報われるものだけではないと言う事と、人は悪意に満ちた生き物だという事も知っている
それでも、その中にひと握りだけ善意を知る人々がいると言う事を俺は知っているし・・・・
そんな彼らと出会えた事は、俺にとって人生最大の宝だ
―2009年―川神学園―
武の総本山、川神院がある神奈川の政令指定都市である川神市。その川神院の総代であり現役最強クラスの一人として名が知れ渡っている川神鉄心。彼が経営するのがこの川神学園、国内有数の武闘派学園として有名であり何より注目を集めるのが『決闘』と呼ばれるシステムだ。
『競争』を理念とする川神学園独自のシステムで生徒同士の戦いを推奨するためのものだ。
そんな川神学園で俺、和泉恭也は忙しなくも暇をしない日々を過ごしていた。
この日までは―――
「今週末、福岡の天神館と学年対抗の200対200の集団戦を行う事に相成った。これを『東西交流戦』と名付ける事にする」
天神館学園とは川神鉄心の高弟の一人が設立した学園で歴史的には川神学園が古いのだが今では『東の川神、西の天神』とまで呼ばれるほどに成長している。
「ヒュホホッ!西の荒くれどもを手玉に取ってやるのじゃ!」
この珍妙な笑い方をするのは不死川心、日本の名門不死川家の息女でちょっとおバカで家柄至上主義のワガママ娘だ、妙に懐かれている。
「はいはい、やる気なのは良いが逸るなよー?お前そうやって調子乗ると直ぐにやられて涙眼になって敗走すんだからよ」
「なっ!?そ、そんなわけないのじゃ!!」
「はいはい、良いからおとなしくしてろ」
そんなもんだからあしらうのも手慣れたものだ。
「おーぅ!!恭也ぁ!!」
こちらに手を振りながら駆けてくるのは風間翔一、バンダナがトレードマークな学年一の元気野郎だ。
「どうした風間」
「九鬼英雄と葵冬馬、それに大和が呼んでたぜ?」
「なんで俺なんだよ」
「さぁ?」
こいつ、行動は凄まじく速いが肝心な事を忘れる事が多い。
――――――
風間から指示された教室へと来て見れば三人の男子が待ち構えていた。
「フハハハハッ!!待っていたぞ和泉!!」
金色のスーツに身を包み、額にバツじるしの銀髪男が九鬼英雄。世界有数の大企業九鬼財閥の長男であり二年の学年代表でもある男だ。
「東西交流戦に向けての作戦会議ですよ、和泉君」
少し褐色の肌に眼鏡の奥に知性を光らせるのが葵冬馬、ハーフ特有の顔立ちの良さから女子のファンが凄まじく多い。が、こんな顔して学年主席なのでこういう行事では軍師として活躍する。
「学年一の
やや中性的にも思える顔立ち、少し小生意気な目つきの直江大和。先の風間が率いる『風間ファミリー』と言うグループの軍師役で成績の良さよりは頭の回転の速さが際立つタイプでどちらかといえば俺は参謀だと思っている。
「過大評価だってーの、まぁ良い。それで?作戦会議っつったってロクな情報もねぇだろ」
「まぁな、相手側に西方十勇士っていう腕の立つ奴らがいるってことぐらいかな」
「後は戦場の地形図ぐらいでしょうかね」
「フハハハハッ!!配置を決めるぐらいには使えよう!!」
成程ねぇ。しっかし九鬼系列の可動凍結中の工場をそのまま戦場に使うとはスケールが大きい事だ、まぁ割と以前からそんなものか。
「・・・・要所防衛に三部隊と遊撃に二部隊、後は一部特記戦力に自由行動させりゃいいか?」
「さすが和泉君ですね、それが最も妥当な配置でしょう」
「となると・・・・誰を配置するか、か」
「んー・・・・」
俺が指定した要所は三ヶ所。一つは本陣として設定されているエリアに真っ向から来るルート、そこそこの広さと高低差がありここを防衛する指揮官には地形を読む眼とそれを活かす判断力が求められる。
一つは戦場を大きく迂回するルート、ここは障害物や激しい高低差があり進軍が難しいと思われるがそれだけに警戒しなければならない。なのでここの防衛には身軽な連中を配置するのが良いだろう。
そして最後は地下のメンテナンス用通路、ここは単純に狭いが本営近くまで一気に迫られる。少数精鋭で確実に護る・・・・そう、パワータイプの連中がいいだろう。
「中央ルートはゲンに任せりゃ良いだろ」
「ゲンさんか、うん・・・・いいかもな」
「源君ならば問題無いでしょう」
源忠勝、巷で噂されるレベルのツンデレ系健康型不良。基本的になんでも出来るイメージがあり実際能力的には万能型と思われる。何より目端が利くので過不足無く役目を果たしてくれるだろう。
「では迂回ルートは風間君などどうでしょう?」
「ふむ、風間ならばこの程度の地形は問題ないだろうな」
「だな、キャップなら問題無いさ」
風間は軽業師のような身体能力もある、自らを『風』と称するだけあって自由自在に高低差をものともせず駆け回る様は『風』と呼ぶにふさわしいだろう。
「地下ルートだけどさ、岳人とかどう?」
「島津かぁ?まぁ・・・・パワーは一級品だしな・・・・頭は足らんがある程度作戦預けときゃ持ちこたえるだろ」
「ですね」
島津岳人、風間ファミリーの一人でパワーだけなら学園内でも屈指の実力者。その代わりバカでエロいと言うマイナス要素で全てが打ち消されている。
「遊撃部隊二部隊だが・・・・お嬢と犬子で良いと思うんだよな」
「クリスとワン子か・・・・」
「では補佐に準とマルギッテさんをそれぞれに付けましょう」
お嬢、本名をクリスティアーネ・フリードリヒ。ドイツはリューベックからの留学生で騎士道精神溢れる堅物と甘いもの大好きアホっ子が同居する萌えキャラハイブリッド。でもなまじ能力が高いから色々とめんどい。
犬子、本名を川神一子。川神院の娘で元気の象徴であり日々多摩川沿いをランニングしている姿が目撃されている。こちらは犬キャラであり2-Fの三大マスコットの一人として頑張ってくれる。
井上準、葵冬馬を若と呼ぶハゲ。自他共に認めるロリコン・・・・そのくせ能力が高いからタチが悪い。ロリが絡むと能力が三倍になると公言しているが・・・・最近はそれが本当なのかも知れないと思い始めている。
マルギッテ・エーベルバッハ、お嬢の護衛で現役ドイツ軍人。ドイツ軍何やってんだよ!?と言うツッコミはもう諦めた。無駄に優秀すぎて扱いが面倒な戦闘狂。
「あ、そうだ。当日は恭也は自由に動いてくれ」
「ん?いいのか?」
「ええ、和泉君は部隊の枠ではなく個人で動いていただいた方が扱いやすいと思いますので」
「まー分かった、適当に敵将を討って回るさ」
メインになる奴らが十人いるんだっけか?ならそいつらを討ってまわればOKってわけだ。まぁ色々とやるさ。
――――――
さて、東西交流戦も一年と三年の部が終了し一勝一敗。今宵の二年の部に勝敗が投げつけられたわけだ、まぁ学園の名誉とかそんなもんは知らんが負けるのだけは嫌いだな。
「フハハハハッ!!」
開戦してから既に一時間が経過する、俺はとりあえず本陣待機することにした。いきなり動き回ったってしょうがないし・・・・
「きゃるーん☆」
ちなみに九鬼のとなりにいるメイドは忍足あずみ。○○歳の明らかに学生ではない年齢のお姉さん。
「ん?・・・・」
殺気を感じた、のは一瞬メイドだと思ったが違う。上と・・・・ゲンが防衛しているのとは違うルートか。
「心」
「なんじゃ」
「お前の出番だ、真正面は任せた。俺は上から落ちてきた奴をやる」
ポン、と心の肩を叩いた瞬間に正面方向の味方が吹き飛ばされた。
「敵本陣に一番乗りで報奨金っ!アップやぁああああああ!!!」
なんだろう、超俗物な発言しながらハンマー振り回す女が現れた。まぁ重量級なら心の方が得意だろう。
「ここ任せたぞババア」
「誰がババアですかー?殺すぞガキ」
相変わらずこのババアは二面性激しいねぇ。
「上からアホが降りてきてんだよ、ちょっとぶっ飛ばしてくるからそこで九鬼を護ってろ」
ババアが何やら言ってるが特に気にせず足に力を込めて飛び上がる。
「さて・・・・と」
気で足場を作りながら徐々に上昇していくと、相手の姿が見えてきた。見たまんま忍のような奴だ。
「悪ぃな、こっからは通行止めだ」
「むぅ!?なぜこんなところに敵が!」
驚くだろうなぁ、まぁ一般人からすれば上から降ってくるお前の方が非常識なんだが。
「ま、何はともあれ・・・・落ちろや!!『飛燕』!!」
空中で振り抜いた脚から燕を模した気の斬撃が忍者野郎を襲う。
「ぐむぅっ!?」
あたりはしたが被弾したのは肩、被弾した箇所を抑えながら更に落下する。忍者野郎は落下しつつも眼はしっかりと九鬼を捉えている。
「しつけー野郎だ、なら・・・・」
大きめに気の足場を作れば、そこに掴まり脚を溜める。
「角度よーし、風向きよーし・・・・『飛鷹』・・・・」
ぐっ、と一瞬踏み込めばそのままの勢いで足場を蹴り忍者野郎めがけて飛ぶ。
「『尖爪撃』ぃ!!!」
「なんっ!?ぐぁああああああっ!!!」
俺を振り切ったと思ってこちらから視線を背けていた忍者野郎の脇腹に俺の蹴りが突き刺さり、わずかなインパクトの直後に九鬼のいる場所から大分離れた場所に、まるで隕石のように落ちていった。
「っし、あっちも撃破したみてーだな」
「フハハハハッ!良くやったぞ、和泉!!」
「はっ、忍者野郎如きにステゴロで負けるかってーの」
そもそも忍者と言うのは本来暗殺とかが専業なんだから、仮にも武術家が真っ向勝負で負けたらアウトだろって話で。
「恐らく不死川が討ったのが宇喜多、お前が討ったのが鉢屋だな。既に前線でも毛利、大友、龍造寺、尼子と言った面子の撃破が確認されている、和泉!ここはもう良いからお前も前線へと行け!!」
「あいあい、総大将討って来いって事な」
ひらひらと手を振りながらゆっくりと歩き出す。
――――――
戦場中域、直江から総大将の位置情報を得た俺は狭くも無く広くも無い通路を変わらぬ足取りで歩いていた。極論こちらの総大将である九鬼さえ討たれなければ良いのだから急ぐ理由は無い、まぁ本陣が襲撃されたとかだったら急ぐけどな。
「・・・・?」
少し、違和感を感じ足を止める。
「・・・・」
視線、狙撃か?そう思って気の索敵範囲を広げるが範囲内に狙撃手は無し。
「・・・・気のせいか・・・・っ!!?」
ほぼ反射的に、だった。見えたわけではないが通路の左側へと身を寄せる、と今まで俺がいた場所に矢が突き刺さっている。もう一度、索敵を行うが範囲内に狙撃手はいない・・・・俺の索敵範囲は500ちょいだから・・・・
「おいおい、冗談だろ?」
同じクラスに椎名京と言う女がいる。風間ファミリーの一人で『天下五弓』にも数えられる弓の名手なのだが・・・・あいつが確か正確に狙える最大射程が200ぐらいだと言っていた。その倍以上の距離を軽々と当てて寄越す狙撃手が相手にいるということか。
「動けば撃たれる・・・・か、せめて・・・・ねぇな」
一瞬、脳内をよぎった思考を自ら否定する。
『敵将!!全て討ち取ったー!!!』
「・・・・ま、敵将一人なら十分な戦果だな」
味方からの勝利宣言と共にこちらを見ていた視線が消えたのを確認し、一つため息をつけば本営へと向かって歩き出すのだ。
―翌日―川神駅前―
皆が天神館側の生徒と交流を深める中、俺は真っ直ぐに一人の女子のところへと向かっていた。
「お前だろ、昨日の狙撃手」
女性は驚いたような表情でこちらを見ている。
「良く気づいたね?」
「さっき一瞬こっち見たろ?そんときに感じた視線が昨日のと同じだったんだよ」
「あはは、そっかそっか。でも出来るだけ他言無用でお願い、私があの距離で当てられるのを知ってるの館長ぐらいなんだ」
「事情があって力を隠しているタイプか、分かった」
世の中にはそういう奴も多々いる。十勇士の病弱そうにしているあいつなんかもそうだろう、まぁ一々そこのところをつっこむつもりも無い。
「俺の見立てじゃあんた、アイツと同じかそれ以上だと思うんだがね・・・・まぁいい、俺は和泉恭也だよろしくな」
「お褒めに預かり光栄、ってね。私は円城寺要だよ、よかったら連絡先交換してくれる?」
「ああ、構わん」
赤外線で互の連絡先の交換を終えると駆け出す円城寺。
「それじゃね♪」
ふぅ、とため息をつきながらそれを見送ると俺の肩が何者かに・・・・気配からすると複数にがっしり掴まれた。
「いーずーみぃいいいいいいい!!!」
島津を始めとした男子連中が血の涙を流しながら地獄の奥底から響くような声を出している。
「許さん!!お前を殺す!!」
「なんでだよ!」
その手を振り払って思わず逃げ出す。
「捕まえろー!!捕まえて奴のケータイの電話帳を消すんだぁああああ!!!」
すれ違いざまに学長に「このとおりなんで直帰します」とだけ告げてこの場から逃げ出し、慌ただしい一日が終わりを告げる。
これが、後に俺の右腕となる円城寺要との出会いだった。
どうも初めまして槍槓です。とりあえず書き始めましたものの・・・・大まかな話はまとまっているのにヒロインが未定!と言う割と非常事態に陥っておりまして(w
一瞬ヒロインのいない話でも良いかなーとも思ったのですがそれはそれでツマらん気がしたので今後話をまとめつつヒロインも決めていきたいと思います。