週が明け模擬戦に関する動きが本格化し始めた。メンバーの勧誘だ、今はまだ各軍幹部格の勧誘ではあるがその時点で既に学内はかなりの盛り上がりを見せている。当然、それが所属する軍を選ぶ基準にもなってくるのでみんなが注意深く見守っているところでもある。
―和泉軍:戦略フェイズ―
「では一子さんは既に誘ったのですね?」
「ああ、とは言っても保留と言った感じだからな。性格的な相性も考えれば源氏軍に流れる可能性もあるしな」
という訳で俺と冬馬は現在屋上にて作戦会議中だ。
「本当ならば準を引き入れたかったのですけれどね」
「ま、アイツにも色々あるんだろうがな」
それでも福本軍とは・・・・
「ん?メールだ・・・・冬馬、弓兵確保だ」
「円城寺さん、ですか」
「まぁな、椎名や矢場先輩、武蔵みたいな弓道部メンバーや与一みたいな若干規格外な奴の相手も十分に務まるだろう」
なにせ壁越えだしな、アイツの怖さは俺が良く知っている。
「外部助っ人の方はどうなっています?」
この模擬戦、学内での150人の兵士に加え外部からの助っ人が三人まで許可されているのだ。これにより多様に富んだ戦略を編み出す事が出来る。
「ああ、西方十勇士に声をかけてな。長宗我部と大友が力ぁ貸してくれるそうだ」
「近接と遠距離のパワータイプですか、あと一人はどうしますか?」
「今ツテを頼ってオファーとってる最中だ、確定したら紹介してやるよ」
「成程、では矢張り学内の戦力ですか」
そう、そうなのだ。兵士そのものは冬馬のファンやら何やらがいるから集められるが矢張り将は選びたいし少しでも多い方がいい。
「あ、ここにいたのね」
屋上の扉を開けて現れたのは一子だ。
「一子、どうした?」
「えっとね・・・・宜しくお願いします!」
「・・・・は?」
「だから、模擬戦!恭也君私に来て欲しいって言ったでしょ?それで考えて考えて・・・・恭也君と一緒に戦えるなら面白いし勉強になるかなって、だから・・・・」
思わず、冬馬と二人で顔を見合わせる。そして揃って破顔。
「前線の将一人確保だろ?」
「ええ、後は万能型の指揮官が一人いれば・・・・」
「それは心配すんな、一子。ちょっと頼まれてくれるか?」
「始めての指示ね!ドンと来て頂戴!!」
無い胸を張る一子を微笑ましく見ながら、一つの指示を飛ばした。
――――――
翌日の放課後、場所は俺の住んでるアパートに和泉軍の主要人物たちが集合していた。
「まぁ適当に座ってくれ」
先ずは総大将の俺。
「まさかお呼ばれするとは、次はデートですね」
軍師の冬馬。
「冬馬がターゲットロックオンなのだ」
冬馬に引っ付いて参加した榊原。
「小雪も一緒なのね、良かったわ~」
一番槍候補の一子。
「質素倹約、まさしく武士みたいな部屋ですねぇ~」
弓兵の要。
「ま、ごちゃごちゃしてるよか良いだろ」
一子への指示により篭絡してきた万能型のゲン。
「ンガハハハハッ!!これは手土産のなるとだ、良ければ食ってくれ!」
助っ人その一、四国が生んだタフガイの長宗我部。
「本番まで時間があるとは言うが・・・・ワクワクしてきたな!」
助っ人その二、大筒使いの爆裂娘大友。そして・・・・
「ま、出来る限りやってみせるさ」
助っ人その三、元和泉流師範代の細川礼二さんだ。数年前に引退し今は琵琶湖の湖畔でペンション経営をしているのだが実力は今もなお壁越えはしていなくともトップクラスだ。個の武はもとより指揮官としての才能も持ち合わせているこれ以上ない人選と言える。
「さて、冬馬。現状の他の軍の戦力を」
「ええ、既におおよその調べはついていますのでこれからそれを話して行きます」
敵を知り己を知れば百戦危うからずと言うことで先ずはこちらの戦術云々よりも適性勢力の力を把握すべきなのだ。
「先ずは英雄率いる九鬼軍、こちらにはあずみさん、妹の紋白さんが。助っ人として従者部隊からステイシー・コナーさん、桐山鯉さん、武田小十郎さんの三名が参戦しております、最大の武器は英雄のカリスマにより尽きる事のない物量でしょうかね」
特記戦力は無くとも兵士が怪我をしても補充仕切れるだけの予備兵がいる、それは長期戦である模擬戦において強みの一つである。
「続いて義経さん率いる源氏軍、こちらには弁慶さん、与一君、クリスさん、マルギッテさんと女子剣道部の北畠さんが。助っ人として狩猟部隊の隊長格三名が参戦を決めています」
エースクラスのスリートップに現役軍人と将来有望な軍人候補、これは非常に厄介だ。
「そして松永燕さん率いる松永軍、こちらには風間君、大和君、椎名さん、他水泳部の村上さんを始めとした無頼漢に分類される方々が。助っ人として十勇士の毛利さん、裏街の不良の顔である板垣家の次女と三女だそうです」
元々予測のつかない翔一がいるのに大和が知略で補佐。面倒なことこの上ない状況だな。更に毛利を引き入れた事で遠距離戦の弱点も補っている。
「次が武蔵小杉さん率いる武蔵軍、ここには矢場先輩、不死川さん、黛さんが参加しています。助っ人として武蔵家の使用人三名ですね」
由紀江がいる上に兵士は一年を中心とした構成、前半は大した驚異にはならないが後半が最も厄介だろう。場馴れしてきた頃が一番怖い。
「最後に福本君率いる福本軍、準や島津君を始めとした男子のみが参加してます。外部助っ人として十勇士の鉢屋さん、そして覆面の人物が二人」
ある意味ここも怖い。この軍の原動力は『欲』だ、それだけに一時的な爆発力は恐らく六軍中最大級だ。その代わり下がり幅も凄まじいだろうが・・・・
「生徒会長とかがまだ所属表明してねぇか」
「ええ、南條会長に関しては松永軍、源氏軍、武蔵軍が積極的に動いていますね。彼女を引き入れると言う事は粒ぞろいの骨法部をも引き入れる事になりますしね」
骨法部の面々は他の武闘系部活よりも全体の練度が高いため引き入れる事が出来れば即戦力としての期待もできるのだ。
「まぁあの会長の事だ、きっと『面白そうなところに』つくだろう」
そもそも去年の就任の時点で『HAHAHA!この学園ヲ!mottomotto、面白くするのDA!!』って大音量で宣言してたし。
「しかし・・・・色々と吹っ切れた眼をしていますね、恭也君は」
「そうか?」
「ええ、しかも名前で呼び合おうとは・・・・フラグですね?」
「そんなフラグはノーセンキュー」
詰め寄ろうとしてきた冬馬を手で押しのける。
「若が再び刀を持つとは・・・・感慨、深いですなぁ」
「礼二さん」
礼二さんが師範代を辞めたのは俺の事件があった直後の事だったから当然あの事件の事もこの人は知っている。
「こっちこそ感謝する、とっくの昔に和泉流から離れたのに・・・・」
「いやいや、若からの要請なら世界の果てまでも行きますぜ!」
「・・・・本音は?」
「・・・・最初は、仕事もあるしーってグズってたら・・・・嫁に、薙刀で殺されそうに・・・・」
目のハイライトを消しながら顔を青ざめさせている、あの頃と変わりない恐妻家のようだ。
「ま・・・・何にせよ頼もしいメンバーが今ここに集ってくれた」
皆の眼を見る、それぞれが心の奥底からギラギラとした闘志を発している。
「この軍は最強だ、なにせ皆がいるからな・・・・だからこの模擬戦・・・・勝つぞ!!」
『おぉおおおおおおおっ!!!』
いよいよ模擬戦――――――開幕――――――
さぁ次回から本格的に模擬戦パートですね。そして燕ルートなはずなのに立つ冬馬フラグ・・・・なんでぇ?