真剣で剣聖に恋しなさい!   作:槍槓

12 / 15
一月も間を空けてしまって申し訳ありませんでした。仕事やら腹が痛いやらネタ切れやらで中々執筆が進みませんでしたがようやく、再開です。


第十二話 剣聖VS剣聖

初戦の九鬼軍対松永軍は九鬼軍の勝利に終わった。端的に言うならば燕さんが『敢えて』全戦力を遊ばせていたように思う、統制もなければ決まった命令系統もないためか両者兼ね備えた九鬼軍に集団戦術の利を以て押し切られてしまっていた。

一瞬大和の策かとも思ったがこれは間違いなく燕さんの策だ、大和ならばここまで悠長な策を取ることは無い。全体を見据えて初戦を棄てるなんて大胆な真似をしてのけるのは川神学園広しといえども松永さんか冬馬ぐらいなものだろう。

 

続く源氏軍対福本軍。福本軍の用意した謎の助っ人により源氏軍も旗を脅かされるも義経、弁慶、与一、クリス、マルギッテと五枚看板のエース陣を突破するには至らず敗走。結局は福本軍が敗北となった。なんとなくではあるが謎の助っ人に関しては長宗我部、大友が口を噤んだ事によりおおよそ予想がついたので対策も戦うまでには立てられるだろう。

 

さて、他の事も考えなければならないが今回は目の前の事に集中するとしようか。

 

「・・・・さて、大まかな方針は聞いていますが具体的な作戦を提示していただけますか?初戦は大将の実力を示すためにも全権を恭也君にお預け致します」

「分かった。今回の主攻は俺と一子、忠勝だ、防衛の主将は礼二さんを。冬馬と小雪、要、長宗我部、大友は待機だ」

 

とりあえずは俺の指示で各所に散る兵士たち、この場に残ったのは主攻の一子、忠勝と防衛側の礼二さんだ。

 

「俺が防衛の主将なのは良いが・・・・正直黛のお嬢さんに突っ込まれたら無理だぞ?俺だって鉄火場離れて長いし・・・・」

「大丈夫です、俺が真っ向から由紀江ちゃんを討ちますんで」

『は?』

 

全員が眼を丸くした、実際の俺の実力を知るのは礼二さんだけ。しかも礼二さんが知っているのは自分が師範代だった頃の俺の実力だ。

 

「由紀江ちゃんはまごう事なき武蔵軍のエースだ、それをこの軍の大将である俺が撃破、そこまで出来なくとも抑え切れればあちらの士気は僅かなりとも下がる。一歳だけとは言え若い連中だからな、メンタルへの影響は結構出ると思うんだ」

「しかし・・・・相手は剣聖の娘だぞ?」

「俺だって剣聖の孫だ、現剣聖に先代剣聖が劣るとは思っていないし何より・・・・俺が由紀江ちゃんに劣っているとは考えていない」

 

そう、敢えて言うならば俺はこれから先誰にも負けるつもりは無い。モモ先輩にも、燕さんにも、由紀江ちゃんにも、要にも、そして自分自身にも。

――――――

配置はいたってシンプル、旗を中心に礼二さん率いる50名が円陣を組んで防御体勢。残る90名を率いて一子と忠勝が俺の脇を固めると言うものだ。

 

「あちらは考え込んでいますねぇ」

 

いつの間にやら小雪を伴い俺の隣にまで進んできていた冬馬が心なしか愉快そうにしている。

 

「だろうな、これまでの二戦で大将が前に出たのは源氏軍ぐらいだ。それも源氏軍には義経だけじゃなくて弁慶、与一、マルギッテといたから出来た事だしな」

「我が軍は総大将一人でもやってみせるぞ、と言う脅しも兼ねたわけですね?恭也君は中々極悪です」

「否定はしないさ、あー一子、忠勝」

『?』

「俺が前に出たら両翼から大きく迂回しろ、巻き込まれるからな」

「ああ、分かった」

「了解!」

「冬馬と小雪は下がれ」

「はい、ではご武運を」

「うぇーい!キョンキョンも頑張るのだー」

 

味方との距離良し。まぁ本気出して巻き込みましたーなんて洒落にならねぇもんな。

 

「開戦五秒前!!」

 

学園長の宣言が響き渡る、とふと視線を向けた先には羨ましそうな視線をするモモ先輩が。

 

「悪いな、先に戦ってくるぜ」

 

常日頃から由紀江ちゃんと戦いたいと公言していたモモ先輩には悪いが先に戦って先に倒すのは俺だ。

 

「始めぇいっ!!」

 

開始の合図と共に俺が踏み出すと、あちら側からも踏み出す影が一つ。意図は違えど打つ手は同じ。

 

「だよなぁ、まぁあれだ・・・・本気で仕合おうや」

「戦友たちがため、推してまいります」

 

互いに持つ剣はレプリカだがどれほどの技術力を持っているのだろうか、本物とわずかな差異しか感じない程の質感と重量だ。

 

「和泉流・・・・」

「黛流・・・・」

 

俺と黛の技を打ち出すタメのその瞬間、俺と由紀江ちゃんには全ての時間が止まって見えたはずだ。俺がそう感じたのだ、きっと由紀江ちゃんだってそう感じたはずだ。

 

「『絶影』」

「『阿頼耶』」

 

――――――

side 松永燕

 

まさかのしょっぱなからクライマックスとはね。

 

「和泉流・・・・」

「黛流・・・・」

 

周囲の全てを威圧し突き刺すような気が二人から放たれ、今にも一歩を踏み出そうとしていた他の子たちがたたらを踏む。そうなるよね?私だってあの場にいたらそうなるもん。

 

「『絶影』」

「『阿頼耶』」

 

今、ここで巻き起こる激突は間違いなく現時点での日本最強の若手剣士を決めるための戦い。恭也君も黛さんも共に放つは最速の一撃。

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 

二人の姿が交差し、刀を振り抜いた状態で静止する。

 

「っ・・・・!!」

 

先に膝をついたのは恭也君、脇腹を抑えて刀を杖がわりにしている。武蔵軍から歓声が巻き起こってるけど・・・・それって早合点だと思うんだよね~?

 

「・・・・お見事でした、恭也・・・・さ・・・・」

 

黛さんの身体が前のめりに倒れこみ、音もなく地面へと倒れふした。やっぱりね?でも・・・・私は今の戦いが見えなかったのにどうして恭也君の勝ちを確信したんだろう?そりゃあ可愛い後輩だし、気に入っているとは思っているけど・・・・んん?

 

――――――

全く、ギリギリもいいところだった。こっちの一撃を深く叩き込むためにこっちも浅いとは言え一撃をもらうハメになったしな。

 

「敵の主戦力は討った!!この好機を逃す必要は無い、全軍攻めあがれぇええええっ!!!」

 

とにもかくにも体力もギリギリだし、残った力を振り絞って全軍に号令をかける。

 

「っ右翼!攻め上がるぞ!!」

 

俺の言葉に真っ先に忠勝が反応し、部下を叱咤して攻め上がる。

 

「左翼!大将の頑張りを無駄にするんじゃないわよ!!」

 

続けて一子が檄を飛ばして自ら先陣を切り突撃をしかけている。

 

ならばもう一発ぶちかまそうか・・・・

 

大砲(おおづつ)、構えぇ!!」

「っ!?」

 

突然の俺からの号令に大友が戸惑いながらもしっかりと愛用の大砲を構える。

 

「目標、敵牙門旗・・・・射ぇっ!!」

「大友家秘伝・・・・『国崩し』ぃぃいっ!!!」

『ぎゃあああああああっ!!?』

 

流石は大友、ルール上殺傷力は相当抑えられているが大砲の特性は威力そのものよりも爆音と範囲の広い爆発による威嚇だ。撃破出来なくても良い、経験の足りない若手連中は・・・・それだけで壊走してくれるから。

 

「くっ!こうなれば此方が総大将を討って・・・・ダメージを負った和泉であれば此方とて・・・・!」

 

乱戦の最中、心が俺の目の前まで迫っている。確かに、これだけボロボロにやられた状態なら俺を撃破しての判定勝ちが唯一の勝利条件だ。ただ・・・・

 

「舐めんなっ・・・・『浮舟返し』!」

「にょわぁああああああっ!!」

 

しゃがんだそのままの状態からフリーな左手一本で心を投げ飛ばす。

 

「旗ぁ落としたぞ!!」

『それまで!和泉軍の勝利!!』

『う・・・・うぉおおおおおおおおおっ!!!』

 

忠勝の宣言と同時に学長の勝利宣言が声高らかに響き渡り、直後ウチの奴らの大歓声が追うように響き渡る。

 

「すっげぇな和泉!」

「お前とならトップになれる!!」

「これからも頼むぜ大将!!」

 

一斉に俺に群がってくる男子連中・・・・すっげぇむさ苦しい。

 

『和泉君って・・・・かっこいいかも・・・・』

『うんうん、自分だってダメージあるのに直ぐに指示だして・・・・』

『普段はクールなのにこういう時に熱血・・・・』

『でも冬馬君も・・・・ああ』

 

なんだろう、女子が寄り集まって何かを言っているが聞こえてこない。

 

「ガハハハハッ!さすがだな、和泉!」

「うむ、この大友にも活躍の場をくれて嬉しく思うぞ!」

「いやいや、坊ちゃんがあそこまで強かったとは・・・・元師範代としちゃ嬉しい限りで」

 

長宗我部、大友、礼二さんの助っ人組が男子をかき分けて現れる。

 

「さすがでした恭也君」

「なんかこうーズバッ、って・・・・とにかくすごかったのだ!」

「恭也君すごい強いじゃない!!」

「ま、膝をついた時にはびっくりしたがな」

 

冬馬、小雪、一子、忠勝らも集まってきた。

 

「まぁ心配していませんでしたけどね?」

 

と、最後に要が微笑みながら寄ってきた。

 

「よし、とりあえずお前ら俺を下ろせ!」

 

俺を胴上げしかけていた男子連中を押しとどめる。

 

「まずは初戦、ご苦労だった・・・・と言っても俺のわがままで大した出番も与えてやれなかった。皆に本格的に戦ってもらうのは次からになる」

 

興奮冷めやらぬ喧騒の中、俺の軍の連中だけが静まり返って俺の言葉を待っている。

 

「臆するな、前を向け、倒れるならば前へ倒れろ後ろへ倒れるな、お前らの背中は俺が守る、だからお前らも俺の背中を守ってくれ」

 

「俺たちが・・・・最強だ」

『っオォオオオオオオオオオオオ!!!』

 

周囲の喧騒すら吹き飛ばす大歓声、これで良い。俺の実力そのものは印象づけた、と言っても燕さんあたりは気にしていなさそうだけどな。とにもかくにもこれで下地は出来上がった、後は勝ちを重ねるだけだ。

 

「次に備えて今日はゆっくり身体を休めてくれ、明日から本格的に動き出す・・・・以上だ!」

 

そう、本番は次からだ―――

 

――――――

side 女子生徒たち

 

放課後、とある空き教室にて。

 

「と、言う訳で!!」

 

バンッと黒板を叩く一人の女子。教室内には収まりきらないぐらいの女子たちがここには集まっている。

 

「私たちはここに!『和泉恭也を支え隊』結成を宣言致します!!」

『いぇええええええええ!!』

 

和泉軍に所属する女子は70名、そのうちの30名・・・・冬馬ファンでは無い・・・・一子の伝手で参戦していた女子たち。人知れず・・・・30名+予備兵30名の女子六十名によって今日、『和泉恭也を支え隊』がなぜか結成されていた。

 

「ふふふっ」

 

ちなみに栄えある会長の名前は・・・・『円城寺要』だったそうだ。




恭也君マジパネェ・・・・既に釈迦堂さん、まゆっちを撃破した恭也君の快進撃はどこまで?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。