真剣で剣聖に恋しなさい!   作:槍槓

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第十三話 項羽覚醒

各軍初戦が終了し第二戦までは一週間程の期間が空けられている。模擬戦自体が数年ぶりの開催と言う事もあり様子見なども兼ねての期間だ。この一週間の期間に色々と動く者は多い、更なる鍛錬に勤しむ者、一週間後に向けて謀略を張り巡らす者、負傷人員の交代要員確保に駆け回る者、そして・・・・

 

―川神学園・空き教室―

模擬戦期間中にも関わらず久々の競りが入った、依頼人に関する情報も無いのだがそれでも風間ファミリーに葵ファミリー、骨法部、弓道部、アメフト部、空手部、水泳部、柔道部、剣道部といつもと変わらぬあたりが集まっていた。

 

「今日の案件は食券200枚だヨ!」

 

麻呂が実家に帰ったとかで今日の競りはルー先生が一人で行っている。

 

「では依頼人の登場だヨ」

「えっと・・・・こんにちは」

 

現れたその人物に一同が息を飲む。葉桜清楚、クローン組の一人で最も謎多き文学少女。

 

「実は・・・・」

 

彼女の口から語られたのは自分の正体を知りたいとの事だった、文系だと信じて勉学に励んできたもののそれにしては必要不相応の力の強さ。もし自分が武力系であったのならばそちらを伸ばした方が良かったのではないか?との事らしいのだ。

 

「十枚!」

 

そしてこの競りは秒速で決まった、いつもどおりに相場破壊が得意な翔一が200枚から十枚と言う大暴落をやらかしたために誰も競り合う事が出来なかったのだ。

 

―三日後―川神学園屋上―

そしてそれからわずか三日後、フェンスがちぎれ、植え込みが吹き飛び、壁や床に亀裂が入った屋上から、俺は信じられないものを見ていた。

 

「もしや、と可能性を考えた事もあったが・・・・」

 

眼下では一人の女性と風間ファミリーの四人娘と小雪が立ち回っている。

 

「本当に・・・・覇王項羽だったとはな・・・・」

 

覇王項羽、俺もその可能性を考えていた時期があった。頭につけたひなげしの花、葉桜清楚をもじれば覇王、西楚・・・・だが以前より彼女の級友である京極先輩の言う通りに葉桜清楚は葉桜清楚であり他の何者でもないと言う意見に賛同しそのことは頭の隅に追いやっていた。

 

「やっほ、恭也君」

「・・・・燕さんっすか」

 

背後からの声に視線は切らさずに返答する。

 

「いやーまさかだよねぇ」

「どの口が言うんです?アンタならとっくに気づいてたはずだ」

「まぁね?ところで真正面から倒せると思う?モモちゃんもやられたけど」

 

そう、油断・・・・と言うよりは強敵との勝負を長く楽しむためのスロースターターと言う悪癖が災いしモモ先輩は既に遥か彼方まで吹き飛ばされてしまっている。現状、下で戦っている五人とここにいる二人、源氏組と学長、ルー先生が学内の戦力だ。が源氏組は九鬼の護衛、学長とルー先生は戦う力の無い一般生徒たちを避難させるために奔走している。

 

「今、礼二さんに頼んで俺の刀とってきてもらってます。挑むんならそれからで・・・・なんですその格好、新手のイメクラですか?」

 

ここに至ってようやく燕さんの姿を見ると黒のタイツに手甲を嵌めた姿でそこに立っている、なんというか・・・・スレンダーな身体のラインがクッキリ浮き出ていてイメクラ以外の何者にも見えない。

 

「こら、失礼な事言わないの。これが私の本気の時の装備なの」

「ま・・・・それ以上はツッコミませんがね」

 

ともあれ、あのレベル相手だと武器がないと厳しい。単純な戦闘力だけならばヒュームさんクラスだ、技術はモモ先輩とどっこいどっこいで荒いけど。

 

「それじゃ、恭也君と言う前衛を確保してから私も攻めますか」

「では、私もそれに乗らせていただきますね」

 

いつの間にやら要出現。

 

「・・・・いつの間に?」

「今し方です、和泉君を前衛にと言うことは松永先輩は『遠距離』と言う事で?」

「そうだね」

「ならば私と二発同時射撃なら、よけられる確率も下がるのでは?」

「・・・・うん、そうさせてもらおうかな?」

 

そうこうしているうちに項羽が五人を蹴散らし、更に血気盛んに取り押さえに入った生徒たちもあしらい、すんごいバイクに乗って学外へと出て行った。それと同時に九鬼関連であろうヘリが数代学内に乗り付ける。

 

「坊ちゃん!頼まれたモンです!」

 

ヘリの上から礼二さんが俺の刀を投げて寄越した。

 

「礼二さんは?」

「九鬼の方々に話がついたんで、このまま載せてもらって項羽と一戦交えてきます」

「・・・・無茶はしないように」

「へい」

 

ヘリが二台、去っていくのを見送りながら街の方へと視線を向けた。

 

「街中に実力者は・・・・釈迦堂さんと今行った礼二さんぐらいだろうが・・・・」

 

厳しいだろうな、身にまとう暴威は互角だろうが最低限九鬼で基礎鍛錬を積んでいた項羽と基礎鍛錬をサボりっぱなしだった釈迦堂さんでは結果は明らかだ。礼二さんも元々は壁越えの実力者だが昔ほどの鍛錬を積んでいたわけではないはずだ。九鬼の揚羽さんも向かったみたいだがあの人だって仕事が忙しい分でブランクがあるはずだ。となると・・・・

 

「最終防衛線はここ、か」

「ま、壁越え三人いれば何とかなるでしょ?」

「ですね、それで何とかならなければ・・・・どうしようもありませんね」

 

・・・・あ、揚羽さんやられた。ってかもう一つでっかい気配が・・・・

 

「なぁ、この気は・・・・」

 

後ろを振り向けば手甲を構える燕さんと矢を番える要。

 

『そこぉっ!!』

 

そして間髪入れず放たれる気弾と一矢、どちらも直撃したようだが・・・・

 

「・・・・ノーダメだな」

「っ・・・・タメが足りなかったかもね」

「少し、射点がズレましたか」

 

ああ、放たれるオーラが怒気一色。超キレながらこっちに向かってきてる。

 

「ここからは俺の出番か」

「恭也君」

「和泉君」

 

ひらひらと手を振りながら、屋上から一歩踏み出し校庭めがけて落下する。俺の着地とあっちの到着が五分五分かな。

 

「松永ぁあ!!円城寺ぃい!!」

「・・・・なんだろうな」

 

項羽になったら凄い子供っぽくなってる気がする。

 

「悪いがアンタの相手は俺だよ、項羽」

 

腰に差した数年ぶりの愛刀へと手をかける。

 

「んはっ!お前がだと?武神ですら相手にならなかったものをお前ごときがどうするというのだ?」

「決まってる」

 

腰を低く落とす、思い浮かべるは和泉流の剣。最速にして最多、それだけに全身全霊を注ぐ。

 

「『神威』っ・・・・」

 

放たれる五段同時斬撃・・・・釈迦堂さんレベルでも一発見切るのが限界、だったのだが・・・・

 

「んはっ!」

 

嘘だろ?三発防ぎやがった、しかも残り二発で大したダメージがはいってねぇ。

 

この時、俺には二つの不幸が降りかかる。

 

一つは今の攻撃で大したダメージを与えられなかった事、そして・・・・

 

「っはぁっ!!?」

 

もう一つは大技であったが故に回避動作を取るだけの余力が無かった事。

 

「っ――――――」

 

項羽の振るった戟を避けることなど出来るわけもなく、その一撃を横っ腹にモロに受けた。その衝撃、肺から空気が絞り出される感覚と共に、俺の意識は昏く暗い闇へと落ちていった―――




まさかの恭也君ピンチ!この危機を前に恋を自覚せぬ燕と『和泉恭也を支え隊』隊長要はどう動くのか!?
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