真剣で剣聖に恋しなさい!   作:槍槓

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第十四話 想い

―――

side 松永燕

 

何が起きたのか分からなかった、剣を握った時の鬼気は想像以上だったしそのあとの攻撃も入ったように見えた・・・・見えたのに。

 

「・・・・・・・・」

 

次の瞬間、恭也君は吹き飛ばされていた。壁に叩きつけられてピクリとも動かない、恭也君の姿だけが周りの空間から切り離されたように眼に映る。

 

「嘘、だよね?」

 

モモちゃんと恭也君は絶対に超えたい壁。正直、そう言うキャラじゃ無いってのは自分で分かっててもずっとそう思っていた。モモちゃんはスロースターターだったからだけどそう言う悪癖の無い恭也君なら項羽も倒してくれるんだって・・・・そう思ってたのに。

 

「恭也・・・・君?」

 

いつの間にか頬を熱い液体が伝う、涙だ。なんでだろう?悲しい?どうして?わからない・・・・だけど、だけど・・・・

 

「・・・・許さない」

 

口を突いて出たのはそんな言葉、普段の私なら絶対有り得ないぐらいに殺気と怒気の篭った声。どうしてだろう?でも一つだけわかるのは恭也君がやられてすんごく私が怒ってるって事、だから・・・・私は当然のように校庭へと降り立っていた。

 

―――

side 円城寺要

 

呆然と、見ているしかなかった・・・・いや、できなかった。

 

「和泉・・・・君?」

 

館長以外で自分を認めてくれた、始めての同年代で始めての異性。今でもあの時の事は覚えている、東西交流戦。館長以外に実力を晒す気は無くそれで構わないと思った、少なくとも天神館の中に自分に適うだけの実力者なんていなかったし自分より格下の中で競う必要なんて無い。

例えそれが川神学園相手でも同じ、いいところ武神と剣聖の娘ぐらいだったろうけどどちらも学年は別、同学年に強い奴なんていない・・・・そう思っていた時だった。

 

『まーたつまらなさそうな眼ぇしてんな、円城寺』

 

『川神学園に、和泉恭也って野郎がいるらしい』

 

『俺は見た事ねぇから分からんが・・・・師匠の話だとかなり強ぇらしいぜ』

 

暇つぶしに、その程度だった。それで東西交流戦への参加を決め、遊軍として動き目標の男子を見つけた。こそこそと工場の隙間を移動していた、きっと石田が狙いだったんだろう。静かに矢を番え狙いを絞る。

 

『こそこそする奴なんてどうせ・・・・』

 

一矢で終わる、そう思い矢を放ったのに・・・・その思惑はあっさり覆された。

 

『え?』

 

避けられた。偶然かと考え放った矢が全て避けられ、しかもこちらの位置を見切った。冗談などの類では無く背筋がゾクッとした。彼は何者で、どんな生き方をしてきて、どう自分を鍛えてきたんだろう?そう興味が湧いた自分を止める事なんて出来るわけが無く直ぐに川神学園に転入し早速彼の事を調べた。

調べれば調べるほどに謎だらけ、なのにその人柄に惹かれていく。気が付けば惚れていた、和泉恭也と言う人間そのものに。異性に対するそれとは違うものの・・・・だ。

 

『もっとあの人のそばで、もっと・・・・見たい。共に戦いたい・・・・』

 

女性としてでは無く一人の人間として、和泉恭也の傍にいたい。

 

「・・・・あの人を傷つけたのは、誰?」

 

だからこそ許せない、逆恨みなのはわかっている。これは戦いだ、仇がどうのこうのなんて言っても仕方ないのはわかっている。それでも・・・・私は校庭へと降り立つ、生涯の主と見定めた漢のために。

 

――――――

体がうまく動かない、意識が揺れている、俺は何をしていた?なぜ身体が動かない?

 

「・・・・・・・・」

 

ああ、思い出した。俺は項羽に挑み・・・・負けた、慢心していたとは言わない。先手を取るための最善手を打ってそれが失敗した・・・・全て自分の責任だ。

 

「うぁあっ!!?」

「かっは・・・・っ!!」

 

自分の両側に、轟音と人の叫び。どちらも聞き覚えのある声・・・・思い目蓋を開いて左右に交互に視線を向ける。

左には要、天神館にいた俺が知り得る最高の狙撃手。いつの間にか川神学園に来て、いつもふと気が付けば近くで何かをしている少女。

右には燕さん、器用で策を好む知性派の武術家。要と共に川神学園に来て、最近気が付けば近くで笑いかけてくれる先輩。

 

どちらも最近、俺と言う存在の中で大きくなりつつある人。

 

どちらもその戦闘スタイル故に傷だらけなんて有り得ないのにボロボロだ、数多のかすり傷に流れ出る血、ああ・・・・二人とも美人な顔が勿体無い・・・・?涙?なんで?誰だよ泣かせた奴・・・・

 

「そろそろ諦めたらどうだキサマら?それよりもそこの雑魚よりもキサマらは骨があるな、特別に我が軍の将として迎えてやろう!」

 

おぉう、中々に幼稚な発言してやがる。ってか雑魚か、まぁ・・・・一撃もらっただけでこのありさまだもんな。

 

「断ります、私がこの世で仕えるべきお方はただ一人ですから・・・・」

「私も断るよ、だって今の清楚ちゃんとは仲良くできそうにもないもん」

 

要に仕えたい人がいる?俺始めて聞いたぞそんなの?そして誰とでも仲良くできる燕さんが清楚先輩と仲良く出来ない?なんで?

 

「なっ!?キサマらぁ!!断るからには相応の理由があるんだろうな!!?」

 

まぁ最もな質問だ、まぁ相応の理由があったとてこの覇王ちゃまにそれを許容する器があるとは・・・・

 

「私がお仕えするべきは和泉恭也ただ一人」

 

WHY?

 

「だって恭也君を傷つけたから」

 

なんだって?

 

俺が、理由?なんで?俺のために涙まで流しながらボロボロになってんの?

 

「・・・・」

 

何やってんだよ俺、女の子二人泣かせて。んでもってボロボロになるまで戦わせて、その間自分はのうのうと気絶してて?――――――ふざけんなよ、俺は何様だ?

 

「・・・・・・・・んな・・・・・・・・」

 

細かい事はどうだっていい、重要な事実はただ一つで俺が取るべき行動もただ一つだ。

 

「ふざ・・・・んな・・・・・・・・」

 

俺の弱さが二人を泣かせてしまった。

 

「ふざけてんじゃねぇぞ・・・・俺ぇ・・・・」

 

だからこそ、今一度無茶でも無謀でも俺は立つ。

 

「もう、一戦だ・・・・項羽・・・・」

 

ケジメをつけるために。

 

――――――

side 項羽

 

今なんといったこいつら?この雑魚が理由で、俺の勧誘を断るだと?

 

「・・・・っ」

 

ふざけるな!そう口に出そうとした瞬間、思わず俺は口を噤んだ。微かに動いた雑魚の手、庇うように立つ二人は気づかんだろうが先程まで止まっていた気の巡りが再び・・・・いや、先程よりも活発になっている。静かにたちあがり、振り絞るように声をあげた。

 

「もう、一戦だ・・・・項羽・・・・」

 

始めてだ、あそこまで俺の一撃をモロに受けて立ち上がってきたのは。九鬼揚羽や釈迦堂、細川とかいった男たちも強かったが俺の一撃で沈んで立ち上がる事はなかった。九鬼の従者共だってそうだし黛や他の連中だってそうだった、今まで戦っていた二人だってまともに食らっていないだけでまともに決まれば他の奴と同じ運命をたどっていただろう。だがこの男は立ち上がってみせた・・・・何なんだ?

 

「何なんだ・・・・お前は・・・・」

 

思わず、口をついて出た言葉。だが、男はその言葉にニヤリと口元を釣り上げた。

 

「和泉恭也だよ、覚えやがれ」

 

男・・・・いや和泉、お前はただ倒されただけの雑魚から再び立ち上がった一人の戦士として俺の記憶に刻まれた。だからこそお前が望むのならば今一度矛を交えねばならんだろう。

 

「よかろう!来い、和泉恭也!何度だって俺はお前を叩き伏せてやろう!!」




恭也、復・活!!次回恭也の逆襲が始まる!!
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