川神百代 1,2倍
源義経 1,7倍
松永燕 1,8倍
武蔵坊弁慶、マルギッテ・エーベルバッハ 2,4倍
黛由紀江 2,7倍
和泉恭也 4,6倍
以下略。
これは決勝ラウンド開始前に生徒間で行われたトトカルチョの倍率だ。鉄板の武神川神百代、源氏の英雄源義経、西の武士娘松永燕、義経の右腕武蔵坊弁慶、欧州の猟犬マルギッテ・エーベルバッハ、剣聖の娘黛由紀江・・・・実に六人、恭也よりも格上と周囲が認知していた。
ふ
そんな中で迷わず恭也に賭けたのは円城寺とヒュームぐらいなものだろう。
そしてこの戦いを見ていたほとんどの川神学園の生徒たちは始めて知る事になる、『和泉恭也』と言う強者の力を、それがどれほどのものであるかを・・・・
―水上舞台―
井上の試合開始の合図と共に動き出す選手、九鬼と風間、一子と岳人、マルギッテと弁慶、義経と黛、そして・・・・
『おぉーっとぉ!!これはぁああっ!!?』
今、俺の目の前には二人の強者。向かって右側に武神、川神百代。左側に松永燕。
「・・・・いやいや、早速二対一ってどうなんです?」
「あのヒュームさんが私たちよりも強いと言った男の実力が見たいだけなんだよ、なぁ燕?」
「そうだね、ヒュームさんの言葉通りなら一番危険な相手は和泉君なわけだし」
直江は・・・・静観か、能力的にも狙うは漁夫の利。ヤバイと思えば直ぐに海に飛び込むだろうな・・・・『多分』。
「・・・・やるしか無い、か」
ヒュームさんがこちらを注視している、手は抜けない。祖父の力を知る彼の前で下手な事をしようものなら祖父の名をも貶める、それだけは出来ない。例え己が貶められようとも・・・・だ。
「行くぞ!!和泉ぃ!!」
「んじゃ、ネバッと行きますか!!」
―――
side とある二年生
今年も始まった水上格闘戦、下馬評通りのモモ先輩か、ニューフェイスの義経か松永先輩か。皆の興味はそこだろう。鉄板でモモ先輩、対抗馬が松永先輩、穴馬で義経で大穴が弁慶かマルギッテ。少なくとも皆はあの光景を見るまでそう思っていたはずだ。
「行くぞ!!和泉ぃ!!」
「んじゃ、ネバッと行きますか!!」
2-Fの和泉恭也、東西交流戦までは2年の最強戦力と呼ばれた男だが交流戦では十勇士の鉢屋とかいう忍一人を撃破するに留まり他に目立った活躍は無く、義経ら源氏トリオが転入してきた事もあり二年最強の看板は撤去された・・・・そんな共通認識を持たれる程度の実力者にモモ先輩と松永先輩が同時にかかっていった。
皆、それがどんな意味を持つかは知らないがあの二人の共闘と言う珍しいものが見れると言う感覚だけを持っていたのだ。
「『和泉流体術・虚空』」
喧騒の中、俺は僅かに拾えた呟き。次の瞬間、川神百代と松永燕と言う二人の強者は確かに地に足をつけていたはずなのに『宙に投げ出されていた』―――
――――――
二人の歩幅はほぼ同じ、そして踏み込んできたタイミングもほぼ同じ、その瞬間を狙って二人の脚を俺は払った。武神の脚を左の脚で、松永先輩の脚を左手で。
『!!?』
宙に浮き上がった二人を眼で捉える、少しづつ少しづつ、感覚が戻りつつある。
「『
空中ならば身動きらしい身動きは取れないし万全のガードなど出来ない。そこに躊躇わず二人に対して拳を打ち出す。
「うわぁーっ!!?」
「ぐぁっ!!」
松永先輩が一度跳ね、二度跳ね、そのまま海へ。武神も一度跳ね、体勢を立て直そうとする動きは見せたが距離が足らずにそのまま海へと落下する。
「先ずは二つ」
観客席が静まり返る、最初の脱落者がこの二人だなんて予想できなかったんだろうな。まぁここで足を止める理由は無い、そのまま踏み出し向かうは九鬼と風間のところだ。
「むっ!?」
「うぇっ!?」
両者の間を抜けるように駆け、すれ違いざまに二人のハチマキを奪い取る。
「これで四つ」
速度を落とさず曲がり、島津と犬子の方へと突進する。九鬼と風間の時と同様に間を最高速ですり抜けながらハチマキを取る・・・・つもりだった。
「なにぃっ!?」
「危ないっ!!」
「!?」
予定通り島津のハチマキは奪えたがまさかの犬子にハチマキを奪おうと伸ばした手を避けられてしまった。あれに反応したというのか?とすればこちらの想定の上を行く動体反射、もしくは直感力を持つ事になる。どうやら犬子ちゃんは磨けば光り輝く原石だったようだ。
「次は無いがな」
「きゃうん!?」
即急停止して犬子ちゃんが慌てふためいた瞬間にハチマキを奪還、したところで・・・・
「うわぁあああああっ!!?」
『おーっとぉ事態を見守って静観していた直江選手に弁慶に投げ飛ばされたマルギッテ選手が直撃ぃ!!マルギッテもろとも直江が落下ぁあああ!!』
直江・・・・お前と言う奴は・・・・
「という訳で、お相手願おうか?和泉」
「・・・・」
この時点で残り四人、俺と弁慶と義経、黛・・・・義経と黛が牽制しあっている今ならば・・・・だがきっと目の前の弁慶がそれを許さないだろう。が、そうは問屋が卸さない・・・・『最速』にして『最多』が和泉流の売りなのだから。
「・・・・(๑≧౪≦)てへぺろ」
「は?」
弁慶が唖然とした表情を浮かべた瞬間、一歩バックステップで距離を空け弁慶が反応する暇すら与えずに義経と黛のところへと駆け出している。
「刀無き時は己が体をも刃とすべし・・・・和泉流・・・・」
停止したのは弁慶、義経、黛の中間地点、ここなら三人全員相手でも手刀で届く。
「『狗神』」
――――――
side ヒューム・ヘルシング
「『狗神』」
おぉ、俺は覚えているぞあの技を。確か俺の依頼で俺が将監と共にロシアに飛んだ時だ、確かあの時はロシア軍の赤子共に囲まれたのだったなぁ・・・・『狗神』、かつての剣豪佐々木小次郎が得意とした上下切り返しの技燕返しを間合いに入った相手全てに最小の動きで仕掛ける技だったか?まぁ本来は喉笛を狙う技らしいが・・・・あれを避けようとして避けることの出来る赤子などそうそういるまい、俺とて避けれるかどうか・・・・だな。
「ヒュ、ヒュームよ・・・・何が起きたのだ?」
隣に座る紋様が驚愕に眼を見開きながらも現状把握に務めるべく俺に質問を、全く。赤子全てが紋様や英雄様、和泉恭也のようであったならばマープルもあんな戯言は言い出さなかっただろうにな。
「最小限の動きによる切り上げと切り下ろしです紋様、それを三人のこめかみに的確に命中させ三半規管を揺らしまともに立てない状況にしたのです」
「しかし相手は義経に弁慶、それに黛だぞ?」
「以前、梅屋で私が話した事を覚えておいでですか?」
「刀無しでも武神よりも強い、と言う話か?しかし・・・・」
信じられない、まぁ普通はそうだろうな。誰よりも強いから『武神』と言う称号を与えられるのだ、それを同年代の、しかも今まで名の知られていなかった男がそれよりも強いと言われたところで到底信じられないだろう。
「正直、和泉恭也が刀を持ったならば・・・・この私とて危ういでしょうな」
「そこまでか・・・・うむ、うむうむ」
む?紋様が妙に眼を輝かせているぞ?しかも俺はこの眼を何度も見て来た、そう・・・・帝様の眼だ。
「和泉恭也に松永燕、黛由紀江、それに他にも名が知られておらんだけで良き人材は川神にまだまだいるのだろうな・・・・よし!それら全て、我らが九鬼に組み込んでくれる!!フハハハハッ!!」
本当に、これだけの覇気を放てる赤子がもう少し多ければ・・・・な。
――――――
倒れ伏す義経、弁慶、黛。三人が三人とも何が起きたのかわからないと言う表情を浮かべている。
「ま・・・・俺にも譲れないもんがあるんでな、悪く思うな」
そう言ってハチマキを回収する。
『優勝は!!2-F、和泉恭也ぁあああああ!!!二年の
井上の優勝宣言に大歓声が巻き起こる。まぁこういうのも悪くはない。用意された小舟に動けない三人を乗せ海岸へと戻る。
「おい和泉」
「あいも変わらず人の背後に出るのがお好きなようで、何用です?」
もはや振り返る事もせずに、小舟を漕いでいる。どうせヒュームさんなのだろうから。
「今の戦いは中々良かったぞ、若かりし頃の将監を思い出した」
「褒め言葉ですね、受け取っときます」
「ふっ・・・・だがまだまだ赤子だ、精進することだな」
それだけ言い残して消えたヒュームさん。それから俺はゆっくりと視線を己の手に向ける。
「・・・・昔、爺さんが言ってたな」
《良いか恭也、お前が剣の道を忘れようと思うのは勝手じゃ。ワシにも責任があった・・・・じゃがのう、本気で忘れようと思うならば武の道そのものを捨てよ。そうでなければお前は必ず、戻ってくる・・・・ワシは、それを願うがね》
「・・・・俺も、一歩前に踏み出さなけりゃねぇか」
生まれた心境の変化を肯定するために、これからを戦い抜くために・・・・俺は『再び剣を握ろう』。
ちなみに水上体育祭は2-F優勝で終了しましたとさ。
気が付けばお気に入り登録が300を超えていました!六話と七話の間に何があったんだろう・・・・
正直水上体育祭編は書き方が微妙だった気がします。
とまぁ次回からは恭也の帰省編を二話ほどやってから模擬戦編に突入したいと思います!これからも皆様温かい目で読んでくださいね!