真剣で剣聖に恋しなさい!   作:槍槓

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本日二話目掲載


第八話 『過去』

さて、水上体育祭も終わり。無事分配金ももらった俺はとある目的を果たすため今日この後と土日を使って実家へと・・・・祖父に会いに行くため一人、電車へと乗り込む・・・・『はずだった』。

 

「いやぁ、ほら。剣術で有名な和泉流となれば見学もしたいもんでして」

「ふふふっ♪私たちから逃げようとしてもそうはいかないよん」

 

今現在、俺の両肩を掴んで離さないのは円城寺と松永先輩だ。

 

「かの有名な剣聖、和泉十段と会えるとなれば行かないわけにはいかないよなぁ?」

「はい、父上の先代に当たる剣聖となれば是非お会いしたいです」

「義経も、現代の剣聖に会って見たいぞ。ヒュームさんからも許可はもらった」

 

武神、黛、義経の壁越え三人娘。

 

「少しでも得られるモノがあるなら行くべきよね!」

「いやー!楽しみだよなぁ?」

「まぁ・・・・暇だしね」

 

犬子、風間、直江の風間ファミリー組。

 

「ま、たまには川神から出るのも悪くはねぇ。組織に追われる毎日、少しの気分転換も必要だ」

 

そして中二病全開の与一。

 

「・・・・円城寺、松永先輩・・・・どこから嗅ぎつけてきた」

「そりゃあ・・・・ねぇ?」

「うんうん、大分こそこそしてたしねぇ?」

 

クソッ、この二人に見つかったのが運の尽き。だが被害は少しでも減らさなければ。

 

「川神先輩、犬子ちゃん。俺は二泊三日で行ってくるんだぜ?二日も修行抜けていいのか?」

「鍛錬ならあっちでも出来る」

「うんうん、お爺ちゃんも『たまにはヨソの修行を見るのも修行』って言ってたわ!」

 

畜生!学長公認だと!?ならば・・・・

 

「直江、風間。ファミリーの他の連中はどうした?」

「岳人は湘南でナンパしに、モロもついて行った」

「京は実家に戻ったしクリスも親父さん来てるからこないってよ!」

 

くっ・・・・もはやこうなれば・・・・

 

「与一!お前は・・・・」

「義経を一人にすれば組織の連中に狙われるかもしれねぇしな」

 

ダメだ!中二病すぎて手のうちようがない!!あそこの剣士娘二人は・・・・多分無理だな、仕方ないか・・・・

 

「わかったよ、連れてくからおとなしくしてろ・・・・ってかお前ら旅費は?俺は長野まで戻るんだぜ?」

「問題無し!風間ファミリーは全額軍師に借りるぜ!!」

「トイチでな」

 

胸張っていうことじゃないなそれは。そして直江、場合によっては超暴利だぞそれ。

 

「義経と与一はお小遣いが余っているから大丈夫だ!」

「まぁな、ある程度遊び歩くのに困らねー程度にはもらってんだ」

「私は蓄えがありますので」

「私も、家の財布は私が握ってるしね♪」

 

まぁこちら四人はしっかり自前で確保しているという事で。

 

「んじゃあ行くぞ、はぐれんなよ?特に風間ぁ!」

「わかってるって!」

 

・・・・不安だ。

 

―夕方―

俺の実家、でもある屋敷の門前へと一行は到着していた。大きな門扉の脇にある小さな扉をどんどん、と叩く。

 

『はい、どちら様でしょうか?』

「藤堂さんか?恭也です」

『!若で!?』

 

勢いよく小さな扉を開けて、ちょっとガラの悪そうな男・・・・藤堂平太が現れる。

 

「久しぶりだな、藤堂さん」

「若こそお元気そうで!!後ろの方々は・・・・お客人ですかい?」

「ああ、学校の先輩、同級生、後輩たちだな。どうしても就いてくると言ってきかないので連れてきたんだ」

「そうでしたか!ようこそいらっしゃいまし!直ぐにご案内させていただきます!!」

 

ぎぃい、と巨大な門扉が音を立てて開いていくと見るからにガラの悪そうな人たちが道の両脇に列を作っている。

 

『お帰りなさいまし!若!!』

「な、なぁ・・・・恭也」

「なんです?」

 

顔を引きつらせながら声をかけてくる武神。

 

「これは一体・・・・」

「ああ、ウチの実家って土建屋なんですけどね・・・・その従業員たちです、『若』って呼ばれるのは跡取りが俺しかいないからって事らしいんですがね。ってか門の上に看板出てたでしょ?『和泉土建』って」

「いや・・・・どっからどう見てもこれは・・・・」

「ヤのつく人にしか見えませんね」

「はははっ、まぁ皆迫力ある顔だからなぁ・・・・」

 

昔は良く間違われる事もあったらしいが既にお馴染みとなっており、むしろ心優しく腕っ節も良いので何でも屋的な存在になっているらしい。

 

「恭也!!」

 

玄関の扉を開け放ち駆け寄ってくるとび職風の格好をしたこの老人こそ、俺の祖父でかつて剣聖と呼ばれた男、和泉将監である。

 

「会いたかったぞぉおおおおおおっ!!!」

「フンッ!!」

 

とりあえず飛びかかってきたので膝蹴りで顎を打ち抜いて迎撃する。

 

「ぐふぁっ!?」

『親方ぁああああっ!?』

「ふ・・・・ふははははっ、成長したじゃねぇか恭也ぁ・・・・」

 

地面で顎を抑えながら悶絶している祖父から視線を反らし、後ろからついてきている皆に語り始める。

 

「コレがかつての剣聖、和泉将監十段・・・・俺の祖父だ」

「んぉう?・・・・恭也、そこに並んでる娘さんたちは・・・・コレか?」

 

ピン、と小指を立てている祖父の顎にもう一発ケリを入れる。

 

「はべらっ!?」

「爺ちゃん、ちょっと黙ってようか?な?」

「ごめんなさい」

 

ふぅ、とため息を一つつきながら。

 

「まぁいいや、俺はちょいと用事があって帰ってきた。でここにいるほとんどが川神でも上の実力者たちでな、かつての剣聖を見たいと言うから連れてきた」

「恭也の用事はともかく、引退してしばらく経つジジイを見に来るなんてなぁ・・・・酔狂な子らじゃ」

「取り敢えず、一旦客間に行こうか」

 

――――――

客間、と言うか大広間へと皆を案内していると浴衣に着替えてきた祖父が上座へと恭也に差し向かいになるように座る。

 

「で?わざわざ戻ってきたぐらいじゃ、それなりの用事なんじゃろうが・・・・」

「爺ちゃん、俺はもう一度『剣の道に戻る事にした』」

 

その言葉に息を飲む一同をよそに、用意されていた茶を祖父が啜る。

 

「やっぱりの、最初から諦めたけりゃ武の道を捨てろと言うたじゃろうに」

「違いない、だが・・・・今更ながらに分かったよ。剣の道も武の道も、全て含めて俺の『道』だと言う事がさ・・・・」

「ふん、どうせヒュームのアホに焚き付けられたんじゃろ?」

「否定はしないよ」

 

愉快そうに笑いながら茶を啜る。

 

「ま、武の道を捨ててなかった分錆落としは殆ど要らんじゃろ・・・・と言うか、『アレ』を受け取りに来ただけじゃろ?」

「まぁな、『剣は己のモノ、故に技も人に教わるモノに在らず』・・・・だろ?」

「分かっとるじゃないか、待っておれ・・・・持ってくるでな」

 

ゆっくり立ち上がり部屋を出る祖父。

 

「なぁ恭也、アレってなんだ?」

 

皆を代表して質問してきたのは直江だ。

 

「俺の刀さ、ずっと前に剣を置いてからずっとあずけっぱなしだった」

「なぁ、一つ疑問に思っていた。あの梅屋での話からだ」

 

今度は武神からの質問だ。

 

「お前が剣を置いた理由はなんだ?ヒュームの爺さんの話だとお前は私よりもずっと強いんだろう?剣を使えば尚更・・・・」

「・・・・昔の話なんだけどさ、一人の少年がいたんだ。既にその頃には同級生どころか大人の上段者相手でも勝てるぐらい強くて、唯一勝てないのが祖父だけだったんだ」

 

全員が、おとなしく話を聞いている。風間ですら空気を読んでいるぐらいだから余程俺は深刻な雰囲気を出しているんだろうな。

 

「ある日の大会だった、強くて天狗になっていた少年はかなり手を抜いて戦っていた。それでも勝ててたし誰もそれを見抜けなかったと思っていた・・・・問題は・・・・対戦相手の中にそれを見抜くだけの眼力があり尚且つプライドの高い奴がいた事だった」

 

今でも覚えている、あの時の事は。

 

「集団で囲まれたんだ、『手ぇ抜くなんて何様だ!そんなんで俺様に勝って上に行くなんて許さねぇ!』って・・・・少年だって最低限試合以外で剣を振るうのがよくない事だってのはわかってた、だが・・・・囲んでいた集団はナイフを持っていた。金属バットもあった・・・・『やらなければやられる』『やられる前にやってしまえ』・・・・少年の頭の中を支配したのはそんな言葉だった・・・・次に、我に帰った時には血に塗れヘシ折れた竹刀を握り締め、道着も大量の血を浴び、周囲には少年を囲んだ不良連中が腕をへし折られ、喉を裂かれ、眼を潰され蹲っていて・・・・」

 

忘れる事なんて出来ない、自分を囲むように指示した奴の一言だった。

 

「『化物』、って・・・・そいつは言ったんだ。絶望したよ、ただただ自分は憧れた剣聖である祖父の背に追いつこうと強くなったはずなのに、祖父のように・・・・なのに俺は『化物』と叫ばれたんだ・・・・」

 

自然と手が震える、そう。忘れられないんだ、恐れられる事に対する恐怖を。

 

「なんでそうなってしまったんだろうって思った時に、『出る杭は打たれる』って言葉をついつい思い返してしまってな・・・・だから思ったんだ・・・・『出る杭が打たれるならば出なければいいんだ』って・・・・それから俺は剣を捨て今に至るってわけさ」

 

場が静まり返っている。まぁ無理もないだろう、面白くも無ければただただ胸糞悪い話なのだ。

 

「でもさ・・・・最近考え方が変わったわけよ、同じくバカみたいに強い川神先輩とかがさ・・・・慕われてるわけだろ?そしたら力なんてものは使い方一つで変わるんだなーって思ってさ、そしたら急に剣の道を投げっぱなしにするのが勿体無くなったんだ・・・・だから俺は再び剣を握る事にしたってわけさ」

「和泉君・・・・ちょーっとだけ訂正するよ?先輩として」

 

いつもは見せない真面目な顔をした松永先輩が、詰め寄ってくる。

 

「和泉君の気持ちはね、壁を越えた人皆が抱くもの。過ぎた力は身を滅ぼすし使い方を間違えたら周りの皆にも迷惑をかける・・・・でもね、それも含めてキミなんだよ?だから・・・・もう少しキミの力そのものと向き合いなさい、それと何かあったら相談する事!私だっているしモモちゃんだっているんだからね?」

「まぁ先輩だからなぁ?後輩に相談されれば乗るぞ?無論相談料は貰うがな!」

「よ、義経も・・・・その、相談されれば応じるぞ!」

「わ、私も!もしよろしければですが・・・・」

「もうまゆっちに相談すればバリバリパーフェクトに解決してやんよ!!」

「まぁーアレです、同じ壁を越えた者のよしみってことで」

「松永先輩、川神先輩、義経、黛、円城寺・・・・」

 

なんだ、いつの間にか俺の周りにはこれだけ人が集まっているんだな・・・・と。

 

「それと、和泉君のそれ!」

「へ?」

「相手の呼び方!他人行儀すぎるでしょ!」

「いや・・・・それは・・・・」

 

だって極端に仲良いわけでもないのにいきなり呼び方変えたりするのも・・・・

 

「少なくともここにいるメンバーの呼び方ぐらい変えてみようよ?ね、恭也君?」

「・・・・努力はする」

 

なんでだろう、妙に逆らいがたい何かがある気がする・・・・

 

―――

side 直江大和

 

「ねえ姉さん、あれどう思う?」

「どう見たってフラグだろ?しっかし燕がなぁ・・・・」

「どう見たって」

「どう見ても」

 

姉弟は、同時に呟いた。

 

『なぁ・・・・?』




という訳でここから始まる恭也君の燕ルート、予定では最終的には恭也君が主導権を握ります!!

そして皆様のおかげで日間3位でした!ありがとー!!
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