俺は今、気分転換に租界にある公園に来ている。ブリタニアブリタニアってうるさいから少し静かで落ち着ける場所がここだ。
エリア11。
それが敗戦国日本に付けられた名前。
敗北した日本は多くのものを奪われた。
国、名前、そして尊厳を奪われた。
そして今もブリタニアに日本人は奪われ続けている。
「おい、そこの屋台。食べ物を寄越せ」
「は、はい。そのー…お金は?」
「俺は寄越せと言ったんだ、払うわけがないだろう」
「し、しかし……」
「くどいぞ。俺はブリタニア人だぞ」
「わかりました……」
また奪われた。
ブリタニアという国にブリタニア人は腐らせられている。ブリタニアが人を腐らせる。
「まったく、ブリタニアは腐ってやがる」
「それは俺も思うよ」
突然聞こえてきた声に驚いたが、声のした方を見てみるとアッシュフォード学園の貴公子ルルーシュが居た。
「なんだ、ルルーシュか」
「そういう君は女子生徒に人気のラライじゃないか」
「そっくりそのまま返すよ、ルルーシュ」
ルルーシュは軽口をたたきながら俺の座っているベンチの隣に腰を下ろす。
「どうしてこんなとこに来たんだ?」
「それはこっちのセリフでもあるよ。…俺はモチベーションのためかな?」
「俺は気分転換だよ。モチベーションって例のアレのことか?」
「まぁね」
本当はたまたま立ち寄っただけだろ?ルルーシュ。掛けチェスの帰りだろ?そう言いたかったが言うのはやめた。意味ないし。
「で、資金集めは順調?」
「そこそこ貯まってきてるよ」
「テロリストを操作出来るぐらいに、か?」
「最低限にはね」
やれやれと肩を竦めて言うルルーシュ。それを見て俺もやれやれと肩を竦める。
「ルルーシュ、君はテロリストが命令通りに動いてくれやしないと言えばわかるかな?」
「実体験か?ラライ」
「そうだよ。まったく、今まで司令塔が居なかったんだろうさ、命令通りに動いてくれやしない」
「なるほど。ならば金も意味をなさないというわけか」
「チェスの駒のように操れるとは思わないことだね」
「難しいな」
「あと、ルルーシュには悪い癖がある。なんだと思う?」
「……さっぱり」
ルルーシュは検討も付かないといった風に肩を竦める。まるで自分には悪い癖がないとでも思っているかのようだ。そんなルルーシュを見て俺はため息をつく。
「はぁ…。君は圧倒的有利にたつと慢心する。」
「そんなことはない」
「キミならこう言うだろう。「ははは!やれる、やれるではないか!」とね」
「………言うな、おそらく」
「それに加えてプライドも高いし負けず嫌いだ」
「……。」
「もし、戦略を単騎のゴリ押しで壊されたらプライドが許さないよね」
「……許せないな」
「アクシデントに弱いとこも治さないとな」
「……善処しよう」
ニヤニヤしながらからかう俺と少し俯いて静かにため息をついているルルーシュ。
まぁ、共犯者とルルーシュは言ってくれたからには助言はいくらでもするつもりだけどね。
「ルルーシュなら一から組織を立ち上げた方がゴールに近いと思うけどね」
「…しかしスタートは遅くなるぞ」
「なら小さいテロ組織を懐柔して大きくしていくのが現実的でベストなプランじゃないかな?」
「まったく…簡単に言ってくれる」
「出来るでしょ?ルルーシュなら」
「出来なくはないな。何かしらのきっかけさえあればすぐにでも出来るさ」
「そうなったら俺も参加するからね」
「だめだ」
「参加するからね」
「まったく…」
気分転換に来たのに結局、気分転換にならなかったなぁ。ルルーシュのせいだ。ルルーシュが悪い。……うん。ナナリーちゃんに会って癒されるか。そうだ、それがいいね。ルルーシュに責任を取ってもらうということで。
ベンチを立ち上がって両手をあげ伸びをしながらルルーシュに言った。
「ねぇ、ルルーシュ。久しぶりにナナリーちゃんに会いたいなぁ」
「……仕方ないな」
「ナナリーちゃんにクッキーでも買って行こうかな?」
「要らん。家にあるからな」
「用意周到だね」
「……まったくだ」
着いてこいと言わんばかりにベンチから立ち上がり歩き出す。それに俺はついて行く。
「いつになったらナナリーの気持ちに気付くんだ……あの馬鹿は」
「ん?何か言った?」
「なんでもないよ」
ルルーシュside
今日も儲かったな。
やはり、貴族は金の出しが良くて助かるな。チェスは弱いし、プライドが高いからふっかければいくらでも出してくる。思ったより早く終わってしまったからそこの公園にでも寄ろうか。
公園のベンチを見ると見知った奴が座っている。
ラライ・コーリング。
俺の数少ない気の許せる友人であり、共犯者でもある。そしてナナリーの想い人でもある。彼の生い立ちはそれなりに酷く、日本とブリタニアの戦争の時にブリタニアの攻撃で家族を失った。そして優しい日本人に助けられ今日まで過ごすことが出来ている。故に、ブリタニアという国のあり方を憎んでおり、ブリタニア人でありながらブリタニアを憎むという、俺と一緒だった。
アッシュフォード学園に通っており、人当たりもよく、成績優秀、スポーツ万能、容姿も良いというかなり優れた人物だ。まぁ、女子生徒にモテてるという自覚がありながらそれを利用していることを考えると性格が良いとは言えはしないが。そこは俺も一緒だからあまり強くは言えない。
そして、俺が元ブリタニアの王子であることを知っている。その事に関しては完璧に俺の早とちりによる自爆である。
「はぁ、どこかに王位継承権を剥奪された王子が皇帝にクーデターでも起こさねぇかなぁ」
「なっ、き、貴様!なぜそれを知っている!」
「ん?どうしたのルルーシュ君?」
「どうしたもこうしたもあるか!」
「え?いや……その反応、もしかしてビンゴ?」
「あっ……」
といった具合である。
馬鹿だ。
俺はものすごく馬鹿だ。
過去に戻れるなら過去の自分を殴りたいぐらいには恥ずかしい過去だ。
まぁ、このことがあったからこそラライといえ友人を手にすることが出来たともいえる。それにしても独り言がピンポイント過ぎるのが悪い。
このことから俺がアクシデントに弱いことがわかったから良い経験である。
あとはナナリーがラライに惚れてしまっていることだな。
確かに奴は優しいし、気を使えるし話も上手いしナナリーのことを考えた遊びも出来る。男との接触の少ないナナリーが惚れてしまうのも無理のない話ではない。むしろ、ラライでよかったと思ってはいる。ナナリーがよく笑うようになったのはラライのおかげだし、俺が居ないときでもラライがナナリーの傍に居てくれた。だから、あいつは良い奴だ。
しかし、ナナリーからの好意に一切気づかないとはどういうことだ。なぜ、気づかない。そこを除けば良い奴だ。
せっかく見かけたんだ。話かけるか。
「腐ってやがる、ブリタニアは」
「それは俺も思うよ」
そう答えて俺は隣に腰を下ろす。
「なんだ、ルルーシュか」
「そういう君は女子生徒に人気のラライじゃないか」
「そっくりそのまま返すよ、ルルーシュ」
軽口を叩くと、軽口が帰ってくる。こういう所が話していても楽しいと感じるのだろうな。
色々と話しているとラライは立ち上がり、両手をあげ伸びをしながら俺にこう言った。
「ねぇ、ルルーシュ。久しぶりにナナリーちゃんに会いたいなぁ」
「……仕方ないな」
「ナナリーちゃんにクッキーでも買って行こうかな」
「要らん、家にあるからな」
「用意周到だね」
「……まったくだ」
ベンチから立ち上がり、さっさと歩き出す。ラライは俺に着いてくる。
「いつになったらナナリーの気持ちに気付くんだ……あの馬鹿は」
「ん?なにか言った?」
「なんでもないよ」
ナナリーにはサプライズとして黙っておこう。ナナリーなら事前に連絡してくださいって少し怒ってから嬉しそうにするはずだから。俺はナナリーを応援するつもりだが、あくまで応援だけだ。さすがに意中の相手くらいは自分で落として貰わないとな。
だから、早く気付けよ、ラライ。