プレゼント・マイクの説明会後
A~Gの七か所の試験会場に別れた受験生達はそれぞれジャージなどの動きやすい服装になり試験会場の入り口で待機していた
雑談、準備運動、深呼吸等々、受験生達はそれぞれ行動する中、光は一人離れた所で瞳を閉じて佇んでいる
視界を閉じてジッと動かないその姿を見る者からにしては精神統一に見える程に無駄のない佇みだ
しかし他の受験生たちが目を引くのは彼の姿にも要因はあった
下半身にはジャージのズボンに運動靴とありたいな格好だが問題は上半身、そう上は何も羽織っていないのだ
ジャージの上着はちゃんと持っている。しかしその上着は腰に結ぶ様に巻きつけてあるだけ
何人かは小声で露出魔やら目立ちたがりなどと罵倒しているがそれ以外はむしろ光の鍛え抜かれた肉体の方に目が行っていた
しかし彼らは直ぐに思い知った。何故上半身に何も羽織っていないのかを
(集中しろ・・・今までやって来た今の自分に出来る事を出し尽くせ俺)
『ハイ!――スタァァァァァトッ!!!』
「ッ!」バシュ!
それは反射的に動きだし、プレゼントマイクの合図を聞いた瞬間、彼の背から“翅”が生えた
それは勢い良く振動し一気に開いた入口へと飛びたって行き、仮想市街地を駆け抜ける
『どうしたどうした?!実戦に合図はねぇぞ!!動けているのは一人だけか?!』
プレゼント・マイクのその言葉を聞いて我に戻った他の受験生たちも仮想市街へと遅いスタートをきった
背に生やした翅の動きをコントロールし仮想市街地を低飛行で飛び回る光の前についに仮想敵と接触を果たす
『目標を補足ーーブッコロス!!』
人工音声で叫びながら突っ込んで来る、2と記された四足歩行の仮想敵
その存在を見つけた瞬間、既に光の拳は仮想敵に放たれ――そして
『ブッコ――』
人工音声の台詞を言い切る前に仮想敵のメインカメラの頭部に拳がめり込み、後へと吹っ飛ぶ
同時に後に居た1と書かれた仮想敵に吹っ飛ばされた2Pがぶつかって態勢を崩す
そこを見逃すはずも無く一気に距離を詰めて態勢を崩した1Pの頭部に急降下の踵落としを放つ
『ブッ――!』
「ふぅ・・・ふぅ・・・翅のコントロールに問題無し、もう少し力を上げてみるか」
そう言ってもう一度力むと今度は翅では無く左右から1本ずつ腕が生える
しかし生えてきたそれは人間の腕では無く甲虫の様な鋭い引っ掛け爪を持つ“虫の腕”だ
これが彼、月欠 光が持つ個性『虫』である
しかしこの個性は何の虫がモデルかなのか未だに分かっていないし本人も全てを把握しきれてはいない
しかし今はこの試験の合格の為だけに彼はまた行動を開始する
▼▼▼
試験開始から7分が経過
光の中では既に掛かった時間など頭には無く、ただひたすらに仮想敵を倒すことだけに集中していた
しかし出だしのスタート直後は良かったがそのあとから来た他の受験生たちに仮想敵を倒されたりなども相次ぎハッキリ言って自分が倒したのかどうかすらあやふやだ
(くそッ遠隔の攻撃手段がある個性持ちは強いな・・・特にあの影使い君、やるね)
チラッと視線を動かすその先には鋭い目つきに赤い瞳の黒い鳥のような顔をした風貌の受験生が自分の中から出てくる影の様なモンスターを使って仮想敵を薙ぎ倒している
「へっ・・・負けられねぇ!!」
負けじと仮想敵にくってかかりポイントを稼いでいく
そしてついにそれは姿を現した
「ッ?!な、なんだと・・・!」
巨大な地響きと共にそれは姿を現した
巨大な仮想敵
例の0P妨害仮想敵、それはビルを薙ぎ倒しながら進んでいた
1~3Pの仮想敵と大きさを比べるのもおこがましい程の大きさであり、その規模は間違いなく災害レベル
立ち向かう受験生などいる訳がなく、見える範囲でも受験者達は逃げ惑っていた
「・・・」
逃げ惑う受験生の中、光は一人唖然とした表情で巨大仮想敵を見ていた
光の考えは甘かった
妨害用の仮想敵。プレゼント・マイクの説明を聞いて他より高性能のロボか大量に現れるだけの2択のどちらかと内心少し甘く見ていた
まさにこれはリアルアクシデント、またはイレギュラーの再現なのだ
「ねぇ君」
逃げ惑う受験生の中で一人、緑髪の女性が光の人間の手の方を掴む
「早く逃げた方がいい、潰されてしまうわ」
彼女の問いかけに光は反応出来ずただひたすらに巨大仮想敵を見ながらブツブツと呟いていた
「逃げる・・・ポイントは0・・・倒しても無意味・・・無意味とはなんだ?・・・これは試験・・・時間は何分だ?・・・Plus ultra・・・更なる受難・・・受難を越えた先・・・新たな可能性・・・戦い・・・闘争・・・武のきw」
「ケロッ」
「ぶっ!」ベシッ
頬に伝わる衝撃にて目を覚まし、周りを見渡すと緑髪の少女の存在に気づく
「誰きみ?」
「今は逃げる事が大事よ。このままじゃあ巻き込まれて、ッ・・・」
「おっと、なんか知らんうちにだいぶボーッとしてたか」
建物の崩壊による振動で態勢を崩した緑髪の少女を支えながら巨大仮想敵の方を向くとかなり接近していた
(こりゃあ逃げるより向かい討つか。だけどこの子がなぁ)
「おい!何やってる二人とも!早くそこから逃げろ!!くそっ黒影!二人を回収しろ!」
『アイヨー!』
「(おっ良いところに)ちょっとごめんな」ダキッ
「ケロッ?!」
緑髪の少女を抱きかかえて(※お姫様抱っこ)影のモンスターの前まで来てから少女をパスする
「影くんこの子頼むわ」
『オワッ!?アブネ!!』
「お、おい!お前はどうする気だ!?」
「さすがに逃げるにはボーッとし過ぎたし、それに逃げる機会はあったのに俺に声かけたその子や助けに来てくれたお前のためにもあいつをやらないと俺の気が済まん」
「何言ってる!?時間経過までもうすぐだ!それまで逃げ切ればいいだろう!」
「まだ逃げ切れてない奴が居ないとも限らないしあいつがどんな武装してるかも未知数だ。ならここで叩き潰す方が手っ取り早い、任せろ必ず俺は」
ーー“勝つ”
その言葉と同時に光の周りから淡く光る蝶が出現する
(はっきし言って勝てるかなんて分からねぇ、出来ればこの技もあんまり使いたくないが・・・Plus ultra、この受難、受けて立つ!!)
「舞えよ胡蝶 その幻影我が身となりて」
淡く光る蝶は次々に集まりやがて光と姿形瓜二つの分身体を作り出した
四本の腕を構え、手の平に純白の光りが溜まりだし分身体の手の平にも同じ現象が起きる
「行くぜ必殺・・・」
ーー“月気弾”!!
手を突き出し無数の光弾が巨大仮想敵の頭部目掛けて飛んでいき巨大仮想敵の頭部を直撃
0Pは程なくして活動を停止した
「な、なんだと・・・」
「ケロッ・・・」
遠くで見ていた2人は開いた口が閉じず、0Pを倒してしまった彼の背ばかりを眺めていた
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ッ」
ーーしゃあアアアアアアアア!!!
活動停止した0P仮想敵を前に空に向かって叫ぶ光
受難を越えて彼は更なる一歩へと歩みを進めたのだ
極での分身って蝶が作り出した分身だと勝手に思ってる
そして主人公は常、土の構えです