なんでもありだぜ
時の経過とはあっという間だ
雄英入試試験を見事合格したあの日から数ヶ月の経過などあっという間に過ぎていくものだ
中学を卒業し、雄英高校入学の準備に追われて、ついに入学当日がやって来たのだ
雄英の制服を見に纏い、荷物が入ったカバンを背負い、両親に見送られながら自宅から出発した
▼▼▼
「教室の扉もでけぇ……」
無駄に広い校舎を歩いてようやく辿り着いた指定された教室【1-A】
その前に佇みながら、光は目の前の大きな教室の扉を見上げて呟いた
規格外の肉体が多い“異形系個性”持ちにも対応する為なんだろう。所謂バリアフリーであり、手で掴んでも想像以上に扉が軽い
「さーてどんな奴らがi「机に足を掛けるな!! 歴代の先輩方や机の製作者に申し訳ないと思わないのか!!」
「思う訳ねぇだろうが! どこ中だこの脇役が!!」
教室の扉を開けた瞬間、眼鏡と典型的な不良染みたクラスメイトが何やら言い争いを始めていた
ピシャリ
「…大丈夫かよ俺の雄英生活」
扉を再度閉めてため息混じりに呟く
「あ、あの、大丈夫…ですか?」
声を掛けられて振り向くと緑髪の少年が心配そうな表情で声を掛けてきた
確か試験説明でさっき不良と言い合いしてた眼鏡に指摘されてた少年だったか?
あんまり気にしてなかったが彼も試験、合格したんだな
「いや、なに…新しい高校生活の不安とちょいと戦ってただけだ。気にすんな」
「そ、そうなんだ」
苦笑しながら緑髪の少年、緑谷出久くんと共に再度教室の扉を開けて俺は自分の指定された席を探す
緑谷出久は眼鏡となにか話してるが気にしないでおこう
「む、お前は実技試験の時の…」
「お、かっこいい影使い君じゃん。お前も合格したんだな」
「常闇踏陰だ。それを言うならあの巨大仮想敵に向かって行ったお前には負ける、胡蝶の使い手よ」
「月欠 光だ好きに呼んでくれ常闇」
「ふむ…闇と光、本来なら相容れぬ者同士かもしれないが共にこの雄英で勉学に励む学友。よろしく頼む」
「お、おぅ」
実技試験時に俺と蛙吹梅雨を救おうと戻って来た少年、常闇踏陰
なんだか喋り方が古風というかちょっと変わった奴だなと思った
「月欠ちゃん」
「うえぃ?!……って梅雨ちゃん?」
「見知った人が二人居たから声をかけたわ」
「む、あの時月欠の近くに居た女子か」
「蛙吹梅雨よ」
「蛙吹か「梅雨ちゃんと呼んで」……俺は常闇踏陰だよろしく頼む蛙吹」
「相変わらずだな梅雨ちゃん」
背後からいきなりの声に情けない声が出たが、声をかけたのは梅雨ちゃんだった
なんの縁か、あの実技試験で知った3人が雄英高校の入試試験に合格しクラスメイトになるとは誰が予想出来るだろうか
そんな奇縁に不思議な気持ちになっていると
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ?」
教室内に響く男性の声
声の低さから明らかに生徒の声のモノではなく、タイミング的にも考えられるのは担任の筈なのだが
その声の発生源にいたのは人の面を付けた“寝袋”……では無く寝袋に入った男性だった
「……何故寝袋?」
「気にするべき点はそこじゃないわ月欠ちゃん」
俺の疑問に対しツッコむ梅雨ちゃん
そんな事も関係なく男は寝袋から出てきた
「はい、静かになるのに9秒かかりました。時間は有限――君達は“合理性”に欠くね」
寝袋から出てきた黒い服、ボサボサ髪の男
同時にその男の異様さも感じ取っていた
(教室への接近、全然気づかなかったな)
「俺は担任の“相澤 消太”だ……よろしくね。そしてこれ着てグラウンドに出ろ」
そう言って(何故か)寝袋の中からジャージを取り出しそれを生徒に配り始めた
「し、質問宜しいでしょうか!」
「却下」
説明会同様に眼鏡が質問に挑むが、自分を担任と言った相澤先生は有無を言わさずそれを却下した
配り終えた担任はそのまま教室を出て行ってしまい残された者達も取り敢えず指示に従うしかなく、急いでグラウンドへ向かう事になった
▼▼▼
「個性把握テスト!!?」
辿り着いたグラウンド。そこに既にいた相澤先生の説明に誰かが叫ぶ
「入学式は! ガイダンスは!?」
「ヒーローにそんな悠長な事している時間はない。――雄英は“自由”な校風が売り文句“先生側”もまた然り」
クラスメイトの女子の問いも素早く一蹴する相澤先生の言葉通り、担任によって入学式すら参加の有無があるようだ
まさに“自由”であり、そう言う意味ならばこの状況も納得するしかないと納得――というよりも諦めた
“Plus Ultra”――良き受難を
入試説明で言ったプレゼント・マイクの言葉を思い出す
あの時はマイク的に激励の言葉に思われたが、その言葉の真価は入学してから発揮された言葉だったようだ
確かに普通の学校・ヒーロー科と同じならば、わざわざ雄英を選ぶ意味がない
そう思いながら光は一人、静かに納得していた
「そして今からやる個性把握テストは“体力テスト”と同じ内容。ただし個性“解禁”のな」
『個性解禁……!?』
相澤先生の言葉に、再び周りがざわつき始める。しかし当然と言えば当然の反応だろう
街中での“個性”の無断使用が禁止されている世の中
中学の体力テストも基本的に“個性”の使用は当然禁止。素の身体能力のテストだった故に相澤先生の言葉は新鮮どころか理解に苦しむ者もすらいた
「なんだよ……すげぇ面白そう!!」
「個性が使えるってすげぇよ! 流石ヒーロー科だ!」
相澤先生の言葉に重りでも外されたのか、一部騒ぎ始めるクラスメイト
「面白そうとか……あんまり言わない方が良いと思うぜこういう場合」
光は、はしゃぐクラスメイトたちを少し呆れた様に見てしまう
まぁ、あの受験から解放され、この雄英に入学出来たのだから仕方ない反応とも言える
しかし
―ーお友達ごっこがしたいなら他所へ行け
ーー君たちは合理性に欠くね
自己紹介をする前に聞いたあの時の相澤先生の口調と目つき、もし相澤先生が最初に感じた印象通りならばと光は面倒ごとの匂いを感じ取っていた
そして、それは的中する
「“面白そう”……かーーヒーローになる為の三年間を、そんな腹づもりで過ごす気なのか?」
相澤先生の言葉に全員の動きが止まる
何故か、迫力が今までとは違うと感じたからだ
「良し……ならトータル成績最下位は見込みなしと判断。――“除籍処分”にしよう」
「はあぁぁぁぁぁぁ!!?」
相澤先生の言葉に叫ぶ者がいた
あの倍率を勝ち抜き、その学校の入学式に除籍処分の危機に陥るなどと、誰が想像できただろう
まず無理であり、いくら何でも横暴としか感じない
「待って下さい! そんな事――」
「生徒の如何は先生の“自由”だ。――これが雄英のヒーロー科だ」
生徒の反論の言葉も一蹴する相澤先生
他の生徒も理不尽と抗議するが、自然災害も敵も理不尽が当たり前なのだ
――“Plus Ultra”乗り越えて見せろ
その相澤先生の言葉を最後に、クラスメイトは皆黙り込んでしまう
だが一人――“緑谷 出久”だけは覚悟を決めている
勿論、それは光も同じだ
「……この良き“受難”乗り越えて見せる」グッ
相澤先生の言った通り、これも“Plus Ultra”だ。ならやること1つ乗り越えれば良いのだ
光は始めから覚悟を決め、この雄英に来たのだ
父と同じヒーローに。誰かを守る事に“命を懸けれる”強き英雄〈ヒーロー〉になる為に
「ほう……」
そんな光の呟きが聞こえたのか、相澤先生が意外そうに呟きながら“個性把握テスト”は始まった
▼▼▼
【第一種目:50m走】
(スタート直後に翅を展開…一気に飛ばす)
実技試験と同じ様に開始と同時に翅を生やしてからの飛行スタート
記録は4秒08
「……スタートダッシュは良かったが翅のコントロールをミスっちまった。4秒を切れなかった」
「3秒04の飯田天哉に負けてはいるが、十分な速さだ月欠」
「そうね」
常闇、梅雨ちゃんからは十分過ぎると褒めてくれるが光自身はあまり納得行く結果にはならなかった
ちなみに飯田天哉は不良と言い合いしてた眼鏡で個性はエンジン。そのタイムは常闇が言った様に3秒04とこのA組でトップの速さだった
【第二種目:握力】
この種目では腕を複製した障子目蔵が540㎏の記録を叩き出す
光は虫の腕を生やし握力計を握ると“メキッ!”という鈍い音と共に握力計を破壊して測定不能となった
皆が驚くも当然だが一番記録を出した障子も驚いていた
「…人間部位でやれば良かったな、ヤベェ」
「握力には自信があったがまさか握力計を破壊する程とはな。月欠の個性、背中の翅やその腕から見てーー虫の個性か?」
「まあ…そういうものだと思ってくれ。俺はまだこの個性をよく分かってないんだがな」
――?
光の言葉に全員が疑問を浮かべる
自分の個性だと言うのにそれをよく分かっていないとはーーしかし光はそれ以上の事は何も話そうとはしなかった
そんな疑問にも考える暇は無く、どんどん種目をこなしていった
【第三種目:立幅跳び】
【第四種目:反復横跳び】
【第五種目:ボール投げ】
その後の種目
立ち幅跳びは翅で飛び、相澤先生に呆れられながら記録は無限
反復横跳びは特に個性を生かせるものは無く平均的
ボール投げは投げでは無く、虫の腕で殴り飛ばして記録は2080m。ボールを壊さないかどうか心配だったが大丈夫なようだ
そんな最中、やがて“ある三人”から強い視線を向けられる事に気づく
(確か、八百万 百と轟 焦凍……あと飯田と言い合ってた不良か)
光は気付かれない様に三人の方を見るが、八百万と不良こと爆豪は悔しさを滲ませている事からライバル視なのはよく分かる
だが問題は轟の方だ。表情は変えず、観察する様にずっと見ているがその眼力からは、執念の様なものを感じれる
「月欠、見定められているようだな」
「あぁ…ライバル視って奴かね?」
「強者の運命、という奴だな。――爆豪は想像できるが、八百万と轟。あの二人は“推薦組”らしい。だから一般組のお前が気になるのだろう」
常闇の言葉に光は納得する
一般入試でもあれなのだ
推薦組という事は、それだけでも実力を認められた者達
その中で選ばれた八百万と轟にとって、一般で入学し、現在のテスト結果でそれなりに記録を出している月欠 光は気になる存在なのだろう
「50mは飯田に、反復は峰田に、ボール投げは麗日に負けてんだがな」
「…人には得意不得意はある」
小柄のクラスメイト――峰田は個性を上手く使い、反復横跳びは1位
女子生徒の一人ーー麗日お茶子は個性無重力によりボール投げ記録は∞
これには流石に無理だわ。と呆れながら常闇と話した
「緑谷46m……」
相澤先生の言葉に光は視線を移す
どうやら、今は緑谷がボールを投げていた様だが、どこか様子がおかしい
相澤先生も何か指導でもしているのか緑谷に近付き、あれこれと伝えていると、緑谷が何かに気付いた様に叫び始める
「ま、抹消ヒーロー“イレイザー・ヘッド”!!」
『イレイザー・ヘッド』――それが担任、相澤先生の正体
そのヒーロー名に周りは知らない者が大半で、光を含めても名前だけを辛うじて知っている者が何とかいるレベルだ
メディアを嫌うヒーローも世の中にはおり、知る人ぞ知るヒーローという奴だ
そして指導は終わったのか、相澤先生は緑谷から離れて二球目が始まろうとしていた
そんな光景に、緑谷と近い者達は心配する者や疑問に思う者もいる
「何か指導を受けていた様だな……」
「ハッ! 除籍宣告だろ!」
「うぅ……心配だよ」
「心配してる?――僕は全然!」
それぞれの反応の中、麗日に青山という名の生徒はそんな事を言っていた
――しかし、光もその言葉に同意見ではあった
「……まぁ同感だな。この状況で心配はなんの意味もなさないだろうぜ」
光の言葉に麗日を始め、周りにいた者達の視線が一斉に向けられる
特に爆豪の視線は尋常ではなく、親の仇を見る眼力だ。
「虫野郎……!」
「君は……月欠君!」
「おぅ、月欠 光だ。よろしく」
簡単な挨拶を交わした後、光は未だに投げない緑谷を見ながらゆっくりと話す
「皆がみんな、それぞれの努力をしてここにいるんだ。あの入試の篩いに掛けられて……そしてあの緑谷君は合格という勝利を勝ち取った。ならそれが答えだ」
「で、でも……あの地味目の人、まだちゃんとした記録出してないんだよ!?」
「ならそれも答えだろう。“個性”の努力が足りなかったんだ。つまり、ヒーローへの努力が」
光は見る限り、緑谷は自身の個性を扱いきれてないと判断している
相性の問題もあるが、それでもあの実技試験を乗り越える個性と技術があったのだと光は思っており、これで結果が出せないならばそれで終わり
「……まぁ、結果はまだ分からないがな」
「ハッ! 分かりきってんだろ! “無個性”の雑魚だぞ!!」
「無個性?――じゃあ救助活動Pだけで合格したのか緑谷君は?」
「そうに決まってんだろ、あんなクソナード!!」
理由は分からないが、余程緑谷が気にいらないのか
爆豪の緑谷に対する言葉は激しく感情的だ
だが、その言葉に光は少し納得できた
無個性ならば、あの怯えや焦りの様子は納得できる
思い出作りとして試験を受け、運よく救助活動Pで合格してしまったという感じなのか
「……運も実力の内とはよく言ったもんだ。だがーー」
何故だかは分からない。教室前の廊下で初めて彼、緑谷出久と対面した時
俺は俺らしくない感情が湧き出ていた
こいつとは“良い戦いができそうだ”等と
光が考えふけっている間、飯田の言葉によって空気は変わった
「無個性!? 何を言っているんだ! 彼が実技試験で何をしたのか知らないのか!? あの0Pの仮想敵を――」
――ぶっ飛ばしたんだぞ!
それと同時だった
緑谷の投げたボールが空高く跳んでいったのは
「……記録706m」
「ヒーローらしい記録出た!」
相澤先生の言葉に、麗日が嬉しそうに飛び跳ねる
投げた緑谷はどこか表情が苦しそうだが、少なくとも光による緑谷への認識は改まった
「……無個性、な訳がないか。あの0Pを倒したなら救助活動P だけでも合格出来たのは納得だ」
光はそう言い終えると、静かにその場を後にして次の種目に備えた
その後で爆豪が何か騒いでいたが、相澤先生によって拘束されてすぐに収まり、そのまま個性把握テストは進んでいった
――そして全種目を終えて結果発表
「結果発表だ……因みに除籍は嘘ね」
空中に結果を表示しながら相澤先生はそんな事を言い、何名かは壮絶な表情をしていた
「あんなの嘘に決まってるじゃない。……すぐに分かりましたわ」
唯一、八百万だけが嘘だと見破っていた様で、緑谷達を呆れた様子で見ていたが
(嘘?あの表情は嘘なんて顔じゃなかった……実力を認められたのか、“自由”だから止めたって事か?)
――雄英は“自由”な校風が売り文句
相澤先生の言葉が脳裏に過りながらも、もう終わった事だと思う事にしてお いた
そして全てが終わり、教室に戻ろうとする光に蛙吹と常闇が呼びかけて来た
「月欠ちゃん、早く行きましょ」
「教室で他の説明がある様だ。急いだ方がいい」
「…」
いつの間にか梅雨ちゃんと常闇から“友達”認定されている様で、不思議な感覚ながらも悪くないという思いを抱きながら返事を返す
「あぁ、今行く」
因みに“個性把握テスト”結果――月欠 光――順位1位
推薦組の八百万と轟を2位と3位に抑え、彼等からの注目度は更に上がり出した
――しかし、光のヒーローアカデミアは、まだ始まったばかりだ
まだ出てない蛮神要素が出せぬぅ