ゲーム中のカズめぐ成分が少な目だったので、カズめぐ欠乏症に陥った人向けです。
めぐみんがレオタードや魔法少女や対魔忍になってI字バランスしてくれる話です。
ゲームを買ってない人は買って次作発売に貢献してください。お願いします(切実)
「レオタード」「魔法少女服」「退魔忍スーツ」の内容になります。嘘です。
ゲームテキストに寄せたので薄味ですが、ゲーム本編に興味が湧いた人はPS4版とスイッチ版両方買いましょうw
ある日拾った不思議な石版。
素材と魔力を流すことで様々な衣装を作ることが出来る石版を巡る慌ただしい日々。
変わった効果を発揮する衣装を作れるということで好事家の貴族から無茶な依頼をされたり、それを聞きつけた一般の人からも需要に沿った衣装の依頼を受けたり…
そしてそれら衣装を作製するための素材を集めるという辛い辛い日々。
俺は疲れ果てていた。
いや、他のみんなもそれは同じだろうが、俺は普段から問題ばかり起こす仲間の尻拭いをしている。
それはこの激動の日々でも変わらず、いつも以上に疲れが溜まっていたのだ。
何かこう、見返りだとか、自分へのご褒美みたいなものが欲しいと思ったって罰は当たらないはずだ。
そう、俺は癒しを求めていた。
「と、いう訳でこの衣装を着てくれめぐみん」
「何が、という訳で、なんですか。嫌ですよ何ですかその衣装は」
「よくぞ聞いてくれた。これはな「踊り子として努力して来たけどありきたりな踊りにはもううんざり!誰も知らないようなダンスの衣装が欲しいの!」という依頼を受けて作ったものだ。その名も、レオタードという」
「レオタード?聞いたことのない衣装ですね、またカズマの国で使われる衣装でしょうか」
「これはバレエという美しい踊りを踊る人たちが着用する衣装なんだ。さぁ、めぐみんもこの衣装に着替えて俺に美しい踊りを…!」
「嫌です」
めぐみんは俺の力説など関係ないとばかりにぴしゃりと言い放った。
この依頼を受けて作ったという部分、実を言うと俺が考えた嘘だ。
俺は思ったのだ。
身体の柔らかい女の子を至近距離で見てみたいと。
あわよくば柔軟のお手伝いなんかりして、きゃっ!そんな強くされたら痛いよ!みたいなきゃっきゃうふふな事をしてみたいと。
そう考えたらもう止まらない。余った素材をやり繰りしてレオタードの作成に踏み切っていた。
そして、気付いた時には俺の手には純白のレオタードが握られていたのだ。
「そもそも何で私なのですか。踊りなんて私には出来ませんよ?踊りなら器用なアクア辺りが適任でしょうに」
「ふ、甘いなめぐみん。バレエというのは柔軟性がとても大事な踊りなんだ。猫のような重力を感じさせない身のこなしに体の柔らかさ。それらを満たしているのはめぐみん以外にいない!」
「力強く言われても嫌ですからねそんな体のラインが分かるような服。身のこなしが重要ならクリスがいるではないですか」
「いや、クリスにはもう断られた」
「ほう…。つまり私は都合の良い代わりという訳ですね」
まずい。
めぐみんの瞳に剣呑さが増す。
俺としてもクリスに着てもらおうと考えていただけにめぐみんを納得させる上手い言葉が思いつかない。
ええい、ここは勢いで通すしかないか!
「違うんだめぐみぃん!」
「何ですかその気持ち悪い声は」
「…違うんだめぐみん。確かに俺も最初はクリスに頼んで、断られたよ。だけどその時クリスはこう言ったんだ。私に頼む前にもっと他に適任がいるでしょ?カズマ君が本当に衣装を着せたい相手が。カズマ君が仲良くなりたいと思っている女の子が、って」
「そ、それはクリスに体よく断られただけです。そんな言い訳を信じるカズマはどうかしています…」
クリスにそう言われた俺が自分の所へ来た。
つまりはそういうことだとめぐみんも理解したのか、しどろもどろになりながら視線をふいっと反らした。
その頬は若干赤くなっている。
よし、イケる!
「それから俺は考えたんだ。俺が本当にこの衣装を着せたいのが誰なのかを。この衣装を着てくれるであろう女の子を。俺の事を憎からず想ってくれている女の子を!」
「な、なんですかそれは…。私は別にカズマの事なんか…。……でも、まぁ、そこまで言うならいいですよ。私がその衣装を着てあげましょう。…と、特別ですからね!」
ちょろ。
俺は黒い笑顔が漏れないように「ありがとう!流石はめぐみんだ!」とよいしょして着替えの為に部屋から出た。
§§§
「ほぅ…。ほほうほうほう…!」
「あ、あんまりじろじろ見ないで下さい」
着替えが終わったということで俺は再びめぐみんの部屋に入った。
そこには飾り気がないものの、材質の良さそうな白のレオタードを身に付けためぐみんが立っていた。
恥ずかしいのか自分の身体を抱きしめる姿は中々エッチだと思う。
これでもう少し出るところが出ていれば…。
「着心地はどうだ?シンプルな衣装だからこそ着心地は大事な部分だけど」
「着心地自体は悪くありませんが…色々…食い込む感じがして落ち着きません…!」
「それは実に良い」
「良くないですよ!」
めぐみんは衣装を身にまとった自分がどんな姿なのか気になるようで、うねうねと身体をよじって確認している。
俺の作ったレオタードはその度に股間とお尻部分の食い込みが激しくなるというパーフェクトな衣装のようだ。
「よし、それじゃあちょっとバレエのレッスンでもしてみようか」
「え!?なんですかそんなの聞いてませんよ!?」
「今言ったからな。大丈夫だよ、レッスンって言っても踊ってみろって言ってるんじゃない、生地の伸縮性を見たいだけだ」
「生地の伸縮性?まぁ確かに踊りをするなら伸縮性は必要ですが、一体どうやって確認するんですか?」
「うむ。めぐみんにはI字バランスというものをやってもらおうかと思う」
「I字、バランス?ですか?」
めぐみんはI字バランスがどんなものなのか分からないようで首をかしげる。
レオタードと言えばI字バランスだろう。間違いない。
「I字バランスっていうのは片足立になってもう片方の足は天高く持ち上げるバランスのことだ。Y字バランスの派生形だな。これが問題なく出来ればバレエの動きで障害になるものはないと言えるだろう」
「片足を上げる…ですか。こうでしょうか?」
「うぉ!?」
めぐみんはそう言うと左足をぐわりと持ち上げて片足立ちになった。
左足は天高く伸ばされているが、無理をしているようには見えない。
こ、こいつ予想以上に身体が柔らかいんだな。
うんうん、身体が柔らかい女の子って……なんだかエッチだ。ちょっと興奮する。
それに本人は気付いていないのか、はたまた服に意識を誘導されて恥ずかしさが消えているのか、大きく上げられた足の付け根の鼠径部から股間に至るまでばっちり俺に見える状態だ。
流石の俺もいきなりのI字バランスには顔を赤らめざるを…
「ってちがーーーう!!それじゃかかと落としだろうが!I字バランスは開脚運動なんだよ!足は横から持ち上げるんだ!」
「そ、そんな怒らなくてもいいじゃないですか!私は初めてやったのですから!」
「違うぞめぐみん!これは怒っているんじゃない!予想外の才能を持つお前を激励しているんだ!」
「さ、才能…?激励…?」
「そうだ!お前は俺の予想以上に身体が柔らかかった。間違いなく才能がある。だから俺は心を鬼にしてお前に指導しているんだ!」
「は、はぁ…」
めぐみんの食い込んだ鼠蹊部を見た俺は熱きパッションに目覚める。
エッチな姿を見るだけなら今のポーズでもいい。
だけど俺は思ってしまった。
完璧なI字バランスの状態で股間を凝視したいと!
「今から俺はコーチだ!俺のことはコーチと呼ぶんだ!」
「え、は?」
「なんだその気の抜けた返事は!もう一度!」
「は、はい!こ、コーチ!」
「うむ!」
めぐみんはまだ納得していないのか微妙な顔をしていたが俺の頑なな様子に口を挟むのは止めたようだ。
「さっきも言った様にI字バランスは開脚運動だ。さっきのめぐみんの振りあげは足の裏側の柔軟性が必要だったが、開脚の場合は内股の柔軟性が問われる。まずは足がどれだけ広げられるか見て見よう。足を広げて座ってくれ」
「わ、分かりましたコーチ」
めぐみんも設定に馴染んできたのか、俺の指示通りに床に座り込むと足をスッと広げた。
おお、やっぱりこいつ柔らかいな。
180度ではないが160度位まで広げることが出来ている。
「これ以上は…ちょっと。どうでしょうか、コーチ」
「うむ。やはりめぐみんには才能がある。これからその才能を伸ばそうと思う。俺の指導は厳しいぞ、付いて来れるか?」
「はい!コーチ、頑張りますのでご指導よろしくお願いします!」
すっかりめぐみんは石版で作った衣装の影響下にあるのか、俺の事をコーチとして認めている。
その信頼に応えるため、俺は足を広げるめぐみんの背後に回った。
「よし、それじゃあ背中を押していくからな。ゆっくりと内股の筋を伸ばしていくぞ」
「はい!」
俺はめぐみんの背中に手を当てて、ぐぐっと体重をかけて押していく。
めぐみんの背中は緊張からか、それとも柔軟で血流が良くなっているのか、いつもの爆裂散歩の時に感じる体温よりも高く、その熱が俺に伝わって否応にでもドキドキとしてくる。
くっ、やっぱりこいつ才能がある…!
男を惑わす才能が…!
「む、無理です!もうこれ以上は…!」
「うむ。それじゃあ今どこか突っ張っている感覚のある場所はあるか?そこがストッパーになっているんだ」
「そ、それは、コーチの言うとおり内股の部分ですけど…」
俺はめぐみんの開かれた足、その内股の部分を後ろから覗き込む。
内股は限界まで開かれた影響で筋張っており、開脚の妨げになっているようだ。
本来なら日数をかけて柔らかく伸ばしていく部分だが、先ほどのめぐみんの柔軟性を考えるにちょっと頑張れば180度開脚も目の前であると思える。
俺はめぐみんの背中に当てていた手を離してワキワキさせて笑みを作った。
そうだ、これは180度開脚の為、I字バランスの為だ。心を鬼にする。
「よし!それじゃあ俺がそこを揉み解して柔らかくしてやろう!お前は俺が導いてやるぞ!」
「え?コーチ一体何を言って……ひゃわああああああ!!??」
「もみもみもみもみもみ……!」
「ちょっちょおおお!?コーチ!?いやカズマストップストップ!!やめ、やめろおおッ!!やめないとはっ倒しますよッ!!」
「こらめぐみん。俺の事はコーチと」
「馬鹿なこと言ってないでやめて下さい!!」
俺の決死の内股もみもみ攻撃はあえなく正気に戻っためぐみんに制止させられる。
くそっ!もうちょっともみもみしたかった!でも凄く柔らかかったからヨシ!
「セクハラ!セクハラじゃないですかこんなの!何がコーチですか!!」
「おい、待てめぐみん。俺がただセクハラをしただけだと思ってないか?」
「セクハラだとは認めるのですね」
「…もう一度開脚してみろ。そうすれば答えが出る」
めぐみんは俺を警戒しながら再度足を開き、そして
「あれ!?凄い!さっきよりも広げることが出来ます!床べたーって出来ます!」
「当たり前だろう。俺がただセクハラする訳ないだろう。あれもI字バランスを達成するために必要なことだったのだよ」
「こ、コーチ…!」
めぐみんは俺の指導が間違いないということを認めたからか、再び俺をコーチと認めてくれた。
あ、危なかった。出まかせでも言ってみるもんだな。
「よし、それじゃいよいよI字バランスに挑戦するぞ。右手が壁に触れるように壁際に立ってくれ」
「はいコーチ」
俺はめぐみんに壁際に立たせ、足を上げる方である左側面を俺の方に向けさせた。
ここからが本番だ。
「さっきも言った様にI字バランスはY字バランスの派生型だ。まずはY字バランスを習得するぞ」
「はい!」
「そしたら左足を俺の肩に乗せてくれ。俺は段々と足を高くしていく。バランスが崩れそうになったら壁に寄りかかるんだぞ」
「え?でもコーチに足を乗せるなんて…」
「気にするな。これも必要なことだ、遠慮しないで俺に足を預けるんだぞ」
めぐみんは決心したようでこくりと頷き、左足をスッと持ち上げた。
「いいか、開脚だからさっき床でやったように足を開いて俺の肩に乗せるんだ」
「は、はい」
柔軟性は問題なくてもめぐみんはバランスを保つ筋力が足りていない。
まずは壁と俺の肩を補助にしてY字バランスの体勢を取らせてみることにした。
めぐみんの足が俺にとすんと乗る。
女の子の生足が肩に乗っているという状況は、何だかとってもいけないことをしている気分にさせられる。
俺はめぐみんの足がずり落ちないように抑えつつ、ゆっくりと立ち上がった。
「どうだ?辛くないか?突っ張るようならまたもみもみ…」
「必要ありません!…特に痛かったり苦しかったりはしません、大丈夫です」
肩に乗っためぐみんの足はピンと伸びきっている。
どうやらめぐみんの言うことは本当のようだ、残念。
「それで、ここからどうすればいいのでしょうか」
「今の状態で左足首を左手で掴むんだ。そして俺や壁の支えなく自立できればY字バランスの完成だな」
「分かりました、一度やってみます」
めぐみんはそう言うと俺の肩を乗った左足を掴む。
そして壁からも手を離して準備が出来たとばかりにこくりと頷いた。
俺はそれを受けてゆっくりとしゃがみ、めぐみんの左足の支えを外した。
「…で、出来ました!出来ましたよコーチ!」
「……ああ。素晴らしいな」
「はい!これもコーチのおかげです」
「本当に、素晴らしい眺めだ」
めぐみんは自分一人でY字バランスを完成させたことを喜びはしゃいでいるが、しゃがんだ俺の目前には別の景色が広がっていた。
開脚されためぐみんの股間。
それは正しく白銀の野原のように純白で、何者も近寄りがたい美しさがあった。
ここに自分の足跡を残したいような、無垢なままでいて欲しいような。
そんな不可侵の美しさがあった。
「コーチ!それでは次は何をしたらいいでしょうか!」
「おっと、そうだった。Y字バランスはあくまで前段階。次はいよいよI字バランスに挑戦するぞ!」
「はい!」
俺はめぐみんの呼びかけで股間凝視の至福から呼び覚まされる。
すっくと立ちあがって再びめぐみんの左足を俺の肩に乗せた。
「I字バランスはここからさらに足を身体の方に引き寄せる必要がある。まずは俺の補助ありで態勢を整えて、さっきと同じように補助を外すやり方でトライしてみよう」
「はい!」
俺はそう説明するとめぐみんの左足を肩に固定したままじりじりとめぐみんの方へ近づく。
こうすることで筋を傷めずに確実にI字バランスに移行できるからだ。
「ゆっくり…ゆっくり…」
「こ、コーチ…」
「なんだ?流石に痛くなったか?止めるか?」
「違います。その……距離が、近いなって……」
「え!?あ、そ、そうだなっ!だけどこれも必要なことだから我慢して…」
「いえ…別に…嫌じゃないです…」
めぐみんはそう言うと、ふいっと俺の視線から逃げるように顔をそむけた。
I字バランス移行のために俺がめぐみんに近づく。
それすなわち二人が密着するということであり、左足と言う防壁があるものの手を伸ばせばめぐみんを抱きしめられる距離になったことで否応にでも緊張が高まっていく。
な、なんだよめぐみん!嫌じゃないって!くそっドキドキが止まらないんだけど!!
「…………」
「…………」
意識してしまったが最後、もうさっきまでのような熱血指導キャラなんて出来るはずもない。
俺とめぐみんは黙ったままどんどん距離を狭めていき、ついに補助ありではあるがI字バランスの態勢にまでたどり着いた。
「(や、やばい!I字バランスやばい!!)」
肩に乗っためぐみんの足。
密着した二人。
身長差があるもののめぐみんは足が長いのか腰の位置はさほど変わらない。
つまりは大きく広げられためぐみんの股間が俺の股間のそばにあるということで…!
「そ、それじゃあ補助を外すぞ!左足を腕で抱えるんだ!」
「えっ…あ、はい……」
俺は絞り出すようにコーチとしてのキャラを復活させてめぐみんに指導する。
対してめぐみんは逸らしていた顔を俺の方に向けて、驚きと共に若干のしょんぼり顔を見せた。
「(ああああ何でちょっと残念そうなんだよ!やめてくれ!俺のなけなしの理性を削るのは!)」
俺の心の叫びが聞こえるはずもないめぐみんは、言われた通り左足を抱え込むように自身の身体に引き寄せた。
俺はそれを見て先ほどと同じようにゆっくりとしゃがんで……めぐみんの太ももとレオタードに包まれためぐみんの股間を凝視できるよう、膝立ちになった。
おお!おおおお!
俺は感動で涙を流す。
「壁から手を離して……やった!やりましたよコーチ!I字バランスが出来ました!」
Y字バランスでの股間も素晴らしかった。しかしそれはレオタード、ひいてはめぐみんの魅力を100%引き出したものではなかった。
「コーチ見てください!コーチの指導で無事に……コーチ?」
目前に広がったレオタードの白、その奥に眠るであろう肌色。
Y字バランスが白銀の大地だとするならI字バランスは雲海だ。
雄大に広がる白、白、白。しかしその下には確かに母なる大地が広がっているのだ。
そうだ、俺達はこの星に住む家族なのだ。この星を大切に想い、生きていきたい。
「……何を見ているのですか?」
「母なる、大地かな?」
「…私には股間を凝視しているようにしか見えないのですが」
底冷えするような声に俺は視線を上にあげる。
おおう、虫を見るような眼だぁ。
「め、めぐみんダメじゃないか。それじゃあI字バランスじゃなくて最初にやったかかと落とし……」
「天誅!!」
「ぐばらッ!?」
天高く上げられためぐみんのかかと落としが俺の脳天に突き刺さり、俺は母なる大地にキスをしたのだった。
§§§
「なぁ、だから頼むって。この衣装を着れるのはめぐみんだけなんだ」
「嫌です」
レオタード事件から数日が経った。
あの後俺は股間凝視男の名を欲しいままにしたのだが、まあそれはいい。
現在俺は再び新しい衣装をこさえてめぐみんの部屋に突貫している真っ最中である。
「この衣装はな「魔法使いの私ですが中々友達が出来ません。そんな私にも友達が出来るような、人気者になれるお洋服が欲しいです」って依頼が…」
「それなら依頼主に直接試着を頼めばいいじゃないですか。なんで私があの子に渡す衣装の検証をしなければならないのですか。というかカズマはその様子だと前回の件、まったく懲りてませんね?」
めぐみんはじとっとした目で俺を睨みつけるが俺が懲りるわけがない。
癒しを求めて衣装を着てもらったというのに結局はかかと落としをくらったのだ。
アクアにヒールをかけてもらったが俺が欲しいのはそういう癒しではない。
今回も嘘の依頼にかこつけてめぐみんに衣装を着てもらおうと交渉しているのだが、これが中々首を縦に振ってくれない。
「そもそも何ですかその衣装は。やたらとフリフリしていますが…」
「よくぞ聞いてくれた!これはな俺の国で「魔法少女」なる者が着用する衣装なのだよ」
「魔法少女?カズマの国では魔法使いはこんな妙ちくりんな格好をするのですか?」
「格好のおかしさをお前らに言われたくない。そして魔法使いではない。魔法少女だ。魔法少女と魔法使いには天と地ほどの差があるんだよ!」
「はぁ…」
俺の力説にめぐみんはまたかと言った風に気の抜けた声を出す。
「いいか?魔法少女というのはみんなの夢と希望を守るために日夜戦っている存在だ。そして魔法少女というのは周囲の人間には正体を隠して活動している。人から称賛されるために戦うんじゃない。大切な誰かを守るために戦う。そんな魔法少女は俺の国では大人気な存在なのさ」
「正体を隠して?なんでそんな面倒なことを?正体を明かした方が活動しやすいでしょうに」
「そんなの決まっている。周りの人間を危険に巻き込まないためだ。だからこそ魔法少女は「クラスのみんなには内緒だよ」と言って華麗に戦うんだ」
「正直良く分かりませんが、まぁカズマの国の物は良く分からないものばかりなので気にしないことにします」
めぐみん、というかこの世界の人達には魔法少女の崇高さは理解できないらしい。
魔法?スキルポイント貯めれば使えるよね?
正体を隠す?そんなのでおまんまが食えるの?みたいな。
それじゃダメだ。魔法少女が俺達を守ってくれるように、俺も魔法少女という存在を守らなければ!
「この魔法少女の衣装を着て人助けをする。正体を隠して。するとどうなると思う?」
「それは…まぁ噂になるでしょうね。変な格好をした人が助けてくれたって」
「そう!そして人気が高まった後に正体を明かす!するとどうなるか?みんな「お前が魔法少女だったのか!」となって人気爆上がり間違いなし!」
「いえ、それなら正体を隠す必要はどこにも…」
「そういう訳でめぐみん!是非お前にこの衣装の試着を」
「だから嫌ですってば!」
どうやらめぐみんはどうしてもこの衣装を着たくないらしい。
説得の方向性を変えてみた方がよさそうだな。
「頭のおかしい爆裂娘」
「あ゛?何ですって…?」
「お前のアクセルでの評価は「頭のおかしい爆裂娘」だ。正直、悪名この上ない」
「ふん!そんなことを吹聴している人たちはまとめて爆裂魔法の餌食にしてやりますよ!そうすればそんなことを言う人はいなくなりますね!」
「それで本当に解決になるのか?お前の頭がおかしいという事実は消せないんじゃないか?」
「頭がおかしいおかしいって失礼ですね。結局、何が言いたいのです」
「そんな時に役立つのが魔法少女だ。この衣装を着て魔法少女になるんだめぐみん。魔法少女は愛と希望の存在。お前が魔法少女になれば愛と希望に包まれた街の人達は正気に戻り、お前が爆裂狂だという誤解も解ける。結果、変な通り名も無くなるはずだ」
「なんですかその理屈は。何て言われようと私は…」
俺はめぐみんが断りの言葉を言う前に、顔を少しだけ背け、少しだけ気恥ずかしそうな表情を浮かべて続けた。
「それに……俺は我慢できないんだ。めぐみんが真っ当に評価されないのは」
「え?」
「強くて優しくて可愛らしい、俺の大切なめぐみんがいつまで経っても変な風に呼ばれるのは我慢できない!俺だってそんなこと言う奴らなんて爆裂魔法で一掃したいよ!だけどそれじゃダメなんだ。それじゃ、俺の、大切なめぐみんの評価は下がったままなんだ…」
「た、大切大切って連呼しないでください。それに私はカズマの物じゃ…。……でも、分かりましたよ、そこまで言うなら着てあげましょう。私の評価を上げるためですけどねっ!」
そう言うとめぐみんは恥ずかしそうにぷいとそっぽを向いた。
ちょろ。
俺は黒い笑顔が漏れないように「ありがとう!流石はめぐみんだ!」とよいしょして着替えの為に部屋から出た。
§§§
「ほぅ…。ほほうほうほう…!」
「あ、あんまりじろじろ見ないで下さい」
着替えが終わったということで俺は再びめぐみんの部屋に入った。
そこにはピンクを基調としたフリフリリボンマシマシのドレスに実用性皆無の短いワンドを持った、どこに出しても恥ずかしくない魔法少女が立っていた。
恥ずかしいのか自分の身体を抱きしめる姿は中々愛らしいと思う。
これでもう少し爆裂欲が低ければ…。
「動きやすさはどうだ?魔法少女は戦闘もこなすからな、動きやすさは大事だぞ?」
「意外にも悪くありません。動きの邪魔になるような装飾はないですし。…だけどこの短いスカートは何ですか!これで戦闘なんてしたらパンツが見えてしまうではないですか!」
「それは実に良い」
「良くないですよ!」
めぐみんは怒りに目をむいてふーふー俺を威嚇している。
お前の冒険者服だってスカート短くてパンツ見えるときあるじゃん。
「それに何ですかこのおもちゃのようなワンドは。これでは敵を殴り倒せないではないですか」
「魔法少女はそんなことしない!そのデザインは人気になった暁にはグッズ展開を視野に入れたものだ。全国のちびっ子が欲しがる夢のアイテムなんだよ」
「これを全国に?モンスターにやられる魔法少女の山が出来てしまいそうですね」
めぐみんの常識では魔法使いの持つ杖なりワンドというのは魔力を増幅する媒体という役割の他に、近接攻撃用の武器という側面もあるようだ。
そのため冒険者用の杖なりワンドは見た目に反して結構重い。
しかし衣装と一緒に渡したワンドは中身スカスカのデザイン重視の代物なので、めぐみん的には使えない物と判断されたみたいだ。
俺は考える。
どうにもめぐみんには魔法少女としての自覚が足らないらしい。
妙に現実的というか、魔法少女のくせに夢がない。
恐らくは魔法少女という未知の存在をこの世界の常識に当てはめているからだろう。
ならばここは魔法少女の持つ重厚な設定を教え込み、愛と希望に満ちた存在だと認識させる必要があると結論付けた。
「よし!じゃあ魔法少女の設定を深めていこうか。めぐみんは今一つ魔法少女という存在が何なのか理解していないようだからな」
「設定?さっきカズマが言った人知れず人助けをする奇特な人物、ではないのですか?」
「それで間違いはないがそれだけじゃない。要は魔法少女になった理由とかそういうバックボーンを詰めていきたい訳だよ」
「は、はぁ…」
めぐみんは「何言ってんだこいつ」みたいな顔をしているが俺は話を続ける。
「まず、めぐみんはどこにでもいる普通の魔法使いだった」
「いえ、私は紅魔族随一の魔法の使い手なので普通の魔法使いではありません」
「…紅魔族随一の魔法の使い手だっためぐみんはある日、異世界からやってきた俺と出会うことになる」
「異世界…。それはまた随分と突拍子のない話ですね」
「そして、俺からこの世界が「シャドー」と呼ばれる存在に脅かされようとしていること。そしてそれに抗うには魔法少女となることが必要だと教えられるんだ」
「初対面の人にいきなりそんな話を聞かされて信じるなんて、魔法少女って危機意識がずさんなのでは?」
「はい!という訳でお前はその日から「爆裂プリンセス!マジカル☆めぐめぐ」になったの!よろしくなめぐめぐ!」
「何ですかその名前は!?私にはめぐみんと言う偉大な名前が…」
「だから何度も言ってるだろ?身バレを防ぐための偽名だよ偽名。ちなみに俺はマスコットキャラクターのカズカズという名前だから間違えるなよ?」
めぐみんは、いやめぐめぐは魔法少女の重厚な設定に付いていけないのか「あぁ…もう訳が分かりません…」と頭を抱えて嘆いている。
ふふ、そうだ、そうやって出会った当初にマスコットキャラから色々説明された魔法少女は信じられずに頭を抱え悩むものだ。
めぐめぐも中々魔法少女らしくなってきたじゃないか。
「あ!めぐめぐシャドーだ!早速やっつけてみよう!」
「え!?シャドー!?か、カズマ!どこ、どこですか!?」
「カズマじゃないカズカズ!ほらあそこ!」
「なーお」
「ちょむすけじゃないですか!!何がシャドーですかぶっ殺しますよ!!」
「違うよ!あれはシャドーに乗っ取られてるんだ!…そういう設定だって言ってるの」
ベッドの上でうなうな毛づくろいしているちょむすけはシャドーに乗っ取られた悲しき獣なのだ。
俺はちょむすけを指さしてめぐめぐを鼓舞するように指示を出す!
「めぐめぐ魔法だよ!キミの魔法でちょむすけをシャドーから解放するんだ!」
「え!?わ、分かりました…!…黒より黒く、闇より暗き漆黒に」
「ちっがーう!!魔法少女は愛と希望の魔法を使うんだ!そんなクソッタレな魔法なんて使わない!というか飼い猫を爆殺しようとするんじゃない!!」
「なにをおお!?爆裂魔法をクソッタレとはいい度胸ですね!?いいでしょうシャドーの前にカズマを闇に返してあげますよ!!」
「だからカズマじゃなくてカズカズだって言ってんだろうが!!」
俺とめぐめぐは取っ組み合いの喧嘩を始める。
とても魔法少女とマスコットのやり取りには見えないが、これは魔法少女の尊厳を守る戦い。後には引けない。
「はぁ…はぁ…」
「ぜぇ…くそ…」
互いにぜぇぜぇと息を吐いて疲れたことで喧嘩は終わった。
くそっ、マスコットの首を絞める魔法少女なんていてたまるか。
ええと、どこまでいったんだっけか。
「…それで、カズカズの言う愛と希望の魔法とは何ですか?言っときますけど私のスキルポイントは爆裂魔法関連にしか使いませんよ」
「何でもかんでもスキルポイントで取得できると思うなよ。あと、俺はカズカズ。愛と希望の魔法には専用の呪文があるんだ。それを唱えればシャドーは浄化される」
俺はめぐみんの耳元に口を寄せてごにょごにょと呪文を教える。
めぐみんは呪文の内容に「えぇ!?」と素っ頓狂な声を上げていたが、俺が「さぁ、やってみようめぐめぐ」と言うと口をむにむにしながら呪文の詠唱を始めた。
「ぷ、プリティーラブリーみ、ミラクルぽんっ☆マジカル~め、めぐめぐ~シャインっ♡」
くるくると回転しながらめぐみんが呪文を唱え、最後にぱちっとウィンク!
ワンドを前に突き出してポーズを決めた。
めぐめぐは初めて魔法を使った感動にぷるぷると震えている。
「~~~~ッッ!!」
「す、素晴らしい…!」
その姿は誰がどう見ても魔法少女そのものだった。
やっぱりめぐみんにこの衣装を勧めて正解だった。
喧嘩をしている時はこいつには魔法少女は無理だと思っていたが、こんなアホっぽいこと全力でやってくれる女の子なんてめぐみんしかいないだろう。
「こ、これで満足ですか…………カズカズ」
めぐめぐはくるりと振り返るとそう聞いてくる。
その顔は真赤に染まり、無理をしてくれたことがすぐに分かる表情だった。
俺のために、無理をしてくれたのだ。
――――その事実に思い至った瞬間に、俺の理性は吹っ飛んでいた。
「きゃっ!?え!?か、カズマ!?なにいきなり抱き着いて…!」
「えっ…!あっ…こ、これは…。そ、そう!これがマスコットの役目なんだ!魔法を使った魔法少女のパワーを回復するためにマスコットは魔法少女に抱き着かないとダメなんだ!そういう設定なんだ…!」
「せ、設定…?」
衝動的にめぐみんに抱き着いてしまった俺はそんな苦しい言い訳を述べる。
自分でも軽率な行動だっただけにめぐみんに殴られると身構えていたが、一向に拳は飛んでこない。
むしろめぐみんの華奢ながらも柔らかい身体の感触が、俺の理性をどんどん削り取っている。
「め、めぐめぐ…?」
「…せ、設定なら仕方ないですね。そうです、そうしないとパワーの回復が出来ないのでしょう?なら、我慢してあげるとしましょう…」
「あ、あぁそうだ。ええっと……さっきのめぐめぐの魔法、最高だったぞ。えらいえらい」
俺は恐る恐るめぐみんの後頭部を優しく撫でながら語りかけてみる。
流石に怒られると思ったが、意外にもめぐみんは「はふ…」と気の抜けた声を出して俺の成すがまま撫でられ続けている。
何これ!?何でこんなラブコメっぽいことしてるの俺!?
魔法少女姿のめぐみんをからかって癒されようと思ってただけなのに、どうしてこんなことに…!?
混乱する脳内を表情に出さないように気を付けながら俺はめぐみんの拘束を解いた。
これ以上抱きしめていたらイケナイ段階まで事が進んでしまう気がしたからだ。
「よ、よし!これでパワーは回復したよ!もう大丈夫だ!」
「ぁ…」
しかし俺の気など知らないめぐみんは俺が抱きしめから解放すると、小さく残念そうな声を出した。
ああああやめろよ!童貞にはそういう仕草は刺激が強すぎるんだぞ!
「…………」
「…………」
突発的に起きてしまったハグに、俺達は黙りこむ。
こういう時に何て声をかけたらいいのか、俺の拙い女性経験では答えが出せない。
どうしようと途方にくれていると、めぐみんは恐る恐るといった表情で俺を見上げて言った。
「か、カズカズ…」
「え?あぁ、なんだいめぐめぐ?」
「しゃ、シャドーです!」
「え?」
めぐめぐはベッドの上のちょむすけを指さしてそう言った。
い、いや、ちょむすけのシャドーはさっき浄化したばっかり…
「さっきの魔法ではまだ浄化しきれていなかったみたいです!魔法を使いますね!」
「あ、あぁ…」
俺が反論の言葉を言う前にめぐめぐはちょむすけに向かってワンドを構え、愛と希望の魔法を唱え出した。
「プリティーラブリーミラクルぽんっ☆マジカル~めぐめぐ~シャインっ♡えいっ!」
くるくると回ってワンドを振って決めにウィンク。
先程よりも洗練されたその動きは熟練の魔法少女そのもの。
俺は思わず小声で感想を述べてしまう。
「か、可愛い…」
その声が聞こえたのか聞こえていないのか。
魔法を唱え終っためぐめぐは俺の方へ向き直って、何かを期待するようにチラチラと俺の顔を伺っている。
俺は鈍感主人公じゃない。
めぐめぐが何を思ってこんなことをしたのか、理解していた。
「め、めぐめぐ。魔法を使ってパワーが減っちゃったね。パワーを分け与えるから……こっちにおいで」
「はい…!」
めぐみんがちょこちょこと俺の前に進み出て、戸惑いがちに手を広げた。
俺もそれを受けて、ドキドキする心臓を抑え込みながらぎゅっとめぐめぐの身体を抱きしめた。
「はぅ…」
「め、めぐめぐ。今回の魔法も最高だったよ…」
「はい…」
「と、とっても………可愛かったぞ」
「は、はい…」
めぐめぐの耳が真っ赤に染まる。
ああああ何だよ!何で俺は女の子を抱きしめて「可愛かったぞ」なんて言っているんだ。
いつから俺はそんなイケメンムーブが出来るようになったんだ!
俺は脳内でごんごんと頭を打ち付ける妄想に駆られるが、腕の中のめぐみんは夢心地なのか時おり「はふ…」と熱い吐息を俺の胸に吹きかけている。
こ、これは…イケるのか?
俺の人生での正念場が今なんじゃないか?
やれ!カズマ!大丈夫だ最悪警察のお世話になるだけだ!なんてことはないだろ!
俺は内なる自分に後押しされて、胸に埋まっていためぐみんの顔を俺の方へ向け、唇を…
「パワー、充填完了しましたか?」
「え?……あ、うん」
「そうですか…」
俺が顔を上げさせたことをハグのおしまいと勘違いしためぐめぐは残念そうに体を離した。
……今更キスさせて下さいなんて言えない。
「それで、もう魔法少女はおしまいですか?」
「えっと…」
俺は考える。
またあのピンクな雰囲気に戻す方法は無いか、と。
ちらりとベッドの上のちょむすけを見たが流石に2回も同じ方法は芸がない。
くそ、ちょむすけの奴のんきに毛づくろいしやがって。足をピンと上に伸ばしてないで俺に妙案を…
そこで俺はピンと閃く。
そうだこの間の奴をやれば…!
「最後に登場の時の名乗りとポーズの練習をしよう」
「登場時の名乗りとポーズ?」
「ああ。シャドーが現れていきなり魔法を撃つんじゃなくて、きっちり名乗りとポーズを決めてから魔法を使うんだ。その方がめぐめぐの魅力を引き出せると思うんだ」
「なるほど。紅魔族の流儀に通じますし、その方が気合も入りますしね。やりましょう」
めぐめぐも俺の提案に乗ったのかそんなことを言う。
よし!これでまたいい雰囲気に出来るぞ!
俺とめぐみんはああじゃないこうじゃないと魔法を使う前のセリフを考える。
そして…
「哀れなシャドーよ。闇に還りなさい。我が名は爆裂プリンセス!マジカル☆めぐめぐ!」
シンプルにかつ紅魔族らしさを残して。
ビシッとポーズを決めるめぐみん。
カッコイイ系の名乗りの後にこびこびの可愛い呪文のギャップ。これでくらっと来ないお友だちはいないはずだ。
「うん。カッコイイよめぐめぐ。完璧だよ!」
「ふふ、ありがとうございます」
「でも、最後のポーズ、あれをもうちょっと変えてみようよ。その方がもっと良くなるかも」
「え?今のじゃダメでしたか?私としてはカッコイイポーズだと思ったのですが」
「うーん、悪くはないけどもうひと押しって感じがしたね。そうだなぁ………あっ、この間練習したポーズをやってみるのはどうかな?」
「この間練習したポーズ?そんなのやりましたっけ?」
「I字バランスさ!」
「I字…バランス…」
俺の言葉にめぐめぐはそれまでの明るい雰囲気を曇らせ、俺に疑わしげな視線を向ける。
この間の出来事がある所為か、警戒心を抱かせてしまったようだ。
「そんな目で見ないでよ!めぐめぐは実感ないかもしれないけどI字バランスはとっても難しいポーズなんだよ!そんな難しいポーズをカッコイイ名乗りの後にビシッと決めれば、みんなの人気者間違いなしだよ!」
「えぇ…?でも…」
めぐめぐは俺の言葉が信じきれないのかううんと悩んでいるようだ。
もうひと押しだ。
「それに…」
「…?」
「俺もめぐみんのI字バランス、また見たいなって」
「……!」
それまでのカズカズを意識した幼い口調から素の口調に戻る。
めぐめぐは突然の俺の直球の言葉に顔をカァっと赤らめていたが、意を決したのかこくりと頷いた。
「わ、分かりましたよ…。名乗りのポーズはI字バランスにしましょう。……だけど、この間みたいなことをしたら許しませんよ」
「分かってる。ありがとうめぐめぐ!可愛いよめぐめぐ!」
「…もう、調子のいい事ばっかり言って。本当にもう」
めぐめぐはてれてれと俺の視線から顔を背ける。
正直、最高に可愛いと思ったがそれを指摘するとへそを曲げてしまいそうなので言わない。
めぐめぐはスッと気持ちを切り替えて集中しだす。
俺も集中してI字バランスされても股間を凝視しないと心の中で誓う。
いざ…!
「哀れなシャドーよ。闇に還りなさい。我が名は爆裂プリンセス!マジカル☆めぐめぐ!」
キリッとした表情で名乗り上げるめぐめぐ。
そして…。
スッ
天高く伸ばされた左足。
あれから数日が経ったが、そのキレは損なわれない。
魔法少女の衣装に身を包んだめぐみんのI字バランス。
カッコイイし美しいし可愛いし、とってもエロい。
そんな姿を見せられて、我慢なんて出来るはずもなかった。
「んほぉ~I字バランスたまんね~」
気付けば俺はめぐみんの側面にしゃがみ込み股間を凝視していた。
短めのスカートでI字バランスをしたためかパンツもばっちりだ。
黒。黒かぁ。
魔法少女の清純さを表すには白がベストだけど、魔法少女が黒パンというのもギャップがあっていいかもしれない。
いや、実に良い黒パンだ。
俺はめぐみんの股間を見ながらうんうん頷いていると、上げられた左足が下げられておパンツがお隠れになってしまった。
何てことだ!パンツを隠すなんてとんでもない!
「…何か、申し開きはありますか?」
底冷えするような声に俺は我に返る。
おおう、虫を見るような眼だぁ。
「ええっと、これは、その…。そう!シャドー!シャドーの所為!シャドーに乗っ取られて仕方なく…!」
「そうですか……。哀れなシャドーよ!闇に還りなさい!めぐめぐシャインッ!!」
「ぷげらっ!?」
めぐめぐの持っていた魔法少女のワンドが俺の脳天に振り下ろされ、俺の中のシャドーは浄化されたのだった。
§§§
「なぁ、お願いだって、この衣装はめぐみんにしか似合わないんだって」
「…またですか」
魔法少女の騒ぎから数日が経った。
あの後俺は性欲にシャドーを宿す者の名を欲しいままにしたのだが、まあそれはいい。
現在俺は再び新しい衣装をこさえてめぐみんの部屋に突貫している真っ最中である。
「この衣装はな「義賊として活動している私だけど潜入に適した服が欲しいかな。戦闘も潜入もどっちもこなせるような衣装を希望するよ」って依頼が…」
「義賊という言葉には惹かれますが、それなら盗賊職のクリスに頼めばいいじゃないですか。私は魔法使いですよ?戦闘はともかく潜入なんてしません。というかカズマはその様子だと前回の件、まったく懲りてませんね?」
めぐみんはじとっとした目で俺を睨みつけるが俺が懲りるわけがない。
癒しを求めて衣装を着てもらったというのに結局ワンドを叩きつけられたのだ。
アクアにヒールをかけてもらったが俺が欲しいのはそういう癒しではない。
今回も嘘の依頼にかこつけてめぐみんに衣装を着てもらおうと交渉しているのだが、これが中々首を縦に振ってくれない。
「そもそも何ですかその衣装は。やたらと際どいと言いますか、変態チックと言いますか…、本当にこれで潜入するのですか?」
「よくぞ聞いてくれた!これは俺の国で「退魔忍」なる者が着用する退魔忍スーツなのだよ」
「退魔忍?また魔法少女みたいな妙な職業の人が出てきましたね。実はカズマの国ではみんなこういう妙ちくりんな格好をするのですか?カズマのジャージも変な恰好ですし」
「格好のおかしさをお前らに言われたくない。そして魔法少女と一緒にするな。魔法少女と退魔忍には天と地ほどの差があるんだよ!」
「はぁ…」
俺の力説にめぐみんはまたかと言った風に気の抜けた声を出す。
「いいか?退魔忍というのは妖魔の脅威から人々を守るために日夜闘っている存在だ。時には大規模な戦闘を、時には敵組織への潜入と、活動は多岐に渡る。その華麗で可憐な姿に俺の国の一部の人間からは絶大な支持を得ている存在なのさ」
「一部の存在?なんで一部なのですか?魔法少女のように色々な年齢層からの人気は無いのですか?」
「それには悲しい理由がある。R-18という大きな壁が未成年の参入を防いでいるんだ。それ故に一部の人からしか人気が無く、また任務内容から偏見の目で見られがちな悲しい存在なのさ」
「あーる18?正直良く分かりませんが、まぁカズマの国の物は良く分からないものばかりなので気にしないことにします」
めぐみんにはR-18がどういう意味なのか分からないようだ。
まあ意味が分かってしまっては退魔忍スーツを着てくれなくなってしまうので良しとしよう。
むしろ異世界でなら退魔忍という存在への偏見がなくなり、世間一般に退魔忍を浸透させることが出来るかもしれない。
馬鹿にされがちな退魔忍の地位向上を目標に、俺は熱意を持ってめぐみんに語りかける。
「この退魔忍スーツを着て義賊の活動をする。するとどうなると思う?」
「それは…まぁ噂になるでしょうね。変態が義賊をしているって」
「違うな!なんていかした奴が義賊になったんだと沸き立つのさ。そして次第に周りの冒険者たちも義賊に習って退魔忍スーツに身を包むようになる。いつしかここは退魔の里と呼ばれるようになるのさ!」
「ナチュラルに紅魔の里を馬鹿にしてませんか?」
「そう言う訳でめぐみん!是非お前にこの衣装の試着を」
「だから嫌ですってば!」
どうやらめぐみんはどうしてもこの衣装を着たくないらしい。
説得の方向性を変えてみた方がよさそうだな。
「影を纏い、闇に舞う」
「む?何ですって…?」
「退魔忍とは忘れがちだが文字通り「忍者」なのさ。忍者とは人知れず任務をこなす陰に生きる者たち。お前が好きそうな存在じゃないか?」
「ふ、ふん!そうやって私好みに脚色したって無駄ですからね。こんな際どい衣装なんて…」
「本当にそうか?人には変身願望と言うものがある。お前だって普段と違う自分になりたいんじゃないのか?」
「まどろっこしいですね。何が言いたいのです」
「そこで退魔忍スーツだ。いつもの後衛職魔法使いの自分から、戦場を縦横無尽に駆け回る退魔忍となることでめぐみんの違う魅力が引き出せること間違いない」
「どうせそういう流れになると思いましたよ。何て言われようと私は…」
俺はめぐみんが断りの言葉を言う前に、顔を少しだけ背け、少しだけ気恥ずかしそうな表情を浮かべて続けた。
「それに……俺はもう我慢できない。めぐみんがこの衣装を着てくれないと!」
「え?」
「この間の衣装の時から俺の中でめぐみんの存在がどんどん大きくなっているんだ!強くて優しくて可愛らしい、俺のめぐみんをめちゃくちゃにしたいって思わずにいられないんだ!……だけどそれはできない。だから俺は俺自身を抑えるためにめぐみんにこの衣装を着てもらって…」
「な、な、な、なにを言っているんですか!!そ、そんな大事なこといきなり言われても…。いえ、というか、それも私にこの衣装を着せたい嘘八百だって分かってるんですからね!毎回毎回そう都合よく私が乗せられると思わないで下さいね!」
あ、あれ!?
いつもだったらこれでめぐみんはちょろみんになって衣装を着てくれる流れになるはずなのに…
俺は思惑通り進まなかったことに狼狽し、だらだらと脂汗を流して焦り出す。
めぐみんはそんな俺の情けない姿に触発されたのか「でも、まぁ…」と言葉を発する。
「どうしてもって言うなら着てあげます。…………さっき言った言葉に、ほんの少しでも本当の気持ちはありますか?」
期待したようにめぐみんは俺を見上げて来る。
その顔は、強くて優しくて可愛らしい、ロリっ娘などと馬鹿に出来ない女の子の顔をしていた。
ドキドキと俺の心臓の音が早くなる。
「あぅ…う…うん。ある…よ」
「…そ、そうですか」
はっきしりない俺の返事に、頬を赤くしためぐみん。
気恥ずかしいのか、最後にはぷいっとそっぽを向いてしまった。
それを見ていると胸の奥が苦しくなって、嬉しくなって、何だかふわふわしてくる。
ちょろ。
俺ってばちょろ過ぎだろ。
俺は何だか恥ずかしくて仕方なくて、着替えの為と称して逃げるように部屋から出た。
§§§
「ほ、ほぅ…。ほほうほうほう…」
「いつものキレがありませんよ。どうしたんですか?」
「う、うるさいな」
俺をからかうようにクスクスと笑うめぐみんにどうしても口ごもる。
着替えが終わったということで俺は再びめぐみんの部屋に入ったが、先ほどの甘酸っぱいやり取りの所為でどうも歯切れが悪い。
それにめぐみんの恰好もいつにもまして扇情的だ。
レオタードよりも際どいスリットに腰や胸といった性アピールの激しい部分にはふりふりの飾り。
レオタードと魔法少女が融合したような、エロさと可愛らしさを両立したどこに出しても恥ずかしい退魔忍姿のめぐみんがいたのだ。
どもってしまうのも仕方ない。
照れている俺とは対照的に自信満々な姿は中々どうして誇らしげだ。
そういうところも本物の退魔忍っぽい…。
「え~と、それで動きやすさはどうだ?退魔忍は魔法少女以上に戦闘をこなすことになるんだが」
「見た目通り動きやすいですよ。魔法少女の服は普段着として比べてでしたがこれはクエストに出ても問題ないレベルですね。ただ、色々際どいので動いている最中にズレてしまうかもしれません」
「それは実に良い」
「…他の人には見せられませんけどね」
そういうことをさらっと言うなよ!
俺は言葉なく呻くが、その様子にめぐみんはふふっと蠱惑的に笑った。
こ、こいつ将来男を手玉に取る魔性の女になるんじゃないか。
急速にからかい上手になっていくめぐみんに焦りを感じる。
「それにしても何ですかこのおもちゃは?これでどうやって敵を倒すのですか?」
「それは俺の世界で「銃」って呼ばれている…まぁ杖みたいなものだな。そこから魔力で弾を撃ちだして敵を倒すんだよ。それは指摘通りおもちゃでそんなことは出来ないけど」
「ほほう、それは中々興味深い話ですね」
退魔忍の衣装の他に、今回も小道具として二丁の銃を用意していた。
めぐみんはその銃をまじまじと眺めては、敵を倒す振りをしているのか「穿て!」と銃を突き出して遊んでいる。
その様子からは先程までの男をたぶらかすような妖艶さは感じられない。
年相応の子供みたいな振る舞いだ。
俺は考える。
確かに扇情的な退魔忍スーツを着ながらも無邪気なめぐみんというのも素晴らしい。
しかし、退魔忍は本来ならアダルティな存在だ。
俺の精神衛生上では今のままの方が良いが、銃をくるくるして遊ぶような幼稚さは退魔忍に似つかわしくない。
ならばここは退魔忍という存在の悲痛な設定を教え込み、今一度魔性のめぐみんを呼び起こした方が良いのかもしれない。
俺はそう結論付けると遊んでいるめぐみんの注意を引くためにパンパンと手を叩いた。
「よし!それじゃあ退魔忍とはどういう存在かを今一度説明していこうか。めぐみんは今一つ退魔忍という存在が何なのか理解していないようだからな」
「説明?さっきカズマが言った妖魔と闘う影の存在、ではないのですか?」
「それで間違いはないがそれだけじゃない。影ということは人には言えない汚れた仕事もするんだ。そういう部分もめぐみんには知っておいてもらいたいと思ってな」
「は、はい…」
めぐみんは退魔忍にまさかそんな重い設定があるとは思っていなかったのか、ごくりと喉を鳴らして俺の言葉の続きを待った。
「退魔忍は妖魔と戦っているが妖魔は狡猾だ。悪しき人間と結託して勢力を拡大している」
「はい」
「そこで、退魔忍は敵地に売春婦として潜入することにした」
「え!?」
「そして娼婦として敵の妖魔や人間に好きなように犯される日々を送る」
「えええ!?」
「しかし最後には必ず敵を一網打尽にして帰ってくる。退魔忍は今日も無敗であったとさ。めでたしめでたし!」
「めでたくないですよ!?どうして敵に犯されるのが前提みたいな作戦なんですか!?無敗の概念が崩れてますよ!?退魔忍って頭悪いんじゃないですか!?」
「お、良く気がついたな。俺の国では「頭退魔忍かよ」という悪口が存在する」
「アホじゃないですか!!カズマの国は馬鹿ばっかりじゃないですか!!」
めぐみんは退魔忍のアホらしい行動に憤りを感じているが、俺の口車に乗って最終的に退魔忍スーツを着ているめぐみんも退魔忍の素質が十分にあるといえる。
悪い男に惚れてしまうんじゃないかと心配になるちょろさだ。
「はい!という訳でお前は今日から「退魔忍メグミン」な!得意な魔法は爆裂魔法、幼いながらも男をたぶらかすのに特化した退魔忍!」
「何ですかそれは!!私がいつ男をたぶらかしました!?私を誰彼かまわず男を誘惑する悪女みたいに言うのは止めて下さい!!」
現時点で俺を誘惑してるじゃんこの悪女め。
めぐみんの幼い体に際どい退魔忍スーツのギャップは非常に見ていてドキドキする代物だ。
俺がロリコンじゃなければ危なかっただろう。
「さて、退魔忍の説明はこれくらいにしてメグミンにはやってもらいたいことがある」
「な、なんですか?エッチなことはしません!しませんからね!」
「流石にそんなことはさせないっての。俺としてはせっかく退魔忍のコスプレしためぐみんを相手に写真撮影をしたいと思ったのさ」
「そ、それは魔導カメラですか!?」
俺はそう言うと懐からカメラを取り出す。
めぐみんが言った通りこれは魔導カメラという物で、原理は俺の世界のネガフィルムカメラに似ているが魔力を使って撮影するという代物だ。
「残念だけど魔導カメラのレプリカで中身は相変わらずスカスカだ。少しでも雰囲気を出したくて銃と一緒に自作したんだ。本物は本体もフィルムも高すぎて手が出せん」
「私としてはこんな姿を保存されてしまうことがなくてほっとしていますよ」
俺としても当初はあくまでお遊びで小道具として用意しただけの代物だったが、めぐみんの退魔忍姿を見ていると後世にこの姿を伝えなければならないという気がしてくるから不思議だ。
これが流出するリスクを自覚しながらもハメ撮りをしてしまう男の心情なのかもしれない。
「よーし、まずは銃を手の前で交差するよう構えてくれ」
「え?え?こ、こうでしょうか?」
「あ~いいよいいよ~決まってるよ~。目線くださーい。ほら笑って笑って」
「え?え、えへ」
突然始まったコスプレ写真撮影にめぐみんは混乱していたが、俺がどんどんと指示を出すと脳の処理が追い付かないのか言われるがままポーズを決め、にへらと笑顔を向けてくれた。
「パシャリ」と自分の口で効果音を出して写真を撮る振りをする。
うん、最初の一枚にしては中々いいんじゃないか?
写真なんて撮れてないけど。
「いいよ~めぐみん最高だよ~。今日も最高に可愛いよ~」
「な、なんですかいきなり。写真を撮る時はお世辞を言うしきたりでもあるのですか」
「そういう場合もあるけどめぐみんは素材がいいからな。本当のことを言っているだけだ」
「……………」
「おっ、照れてるのか?その表情一枚もらいまーす!」
「もう!カズマは本当にデリカシーがありませんね!」
「乗ってきたな!それじゃここでめぐみんの得意技I字バランスを」
「今日は絶対にしません!」
うんうん。やっぱり俺がからかってめぐみんが怒る。そういう関係の方が気が楽だ。
俺は内心で芽生えだしていた未知の感情に無理やり蓋をして、カメラのシャッターを切り続けた。
こうして俺達はしばらく俺の指示のもと退魔忍メグミンの写真を撮り続けていった。
最初の内こそ緊張しているのか固いポーズにぎこちない笑顔だっためぐみんだったが、俺が徹底して褒め続けると次第にはにかんだ笑顔を向けてくれるようになった。
さらにめぐみんは気付いているのかいないのか、段々と衣装に見合った際どいポーズも躊躇なくしてくれるようになっている。
コスプレイヤーのカメコなんて何が楽しいんだと思っていたが、やってみるとこれが存外楽しく、時間はあっという間に過ぎていった。
「はぁ、少し疲れました」
「ちょっと休憩するか」
しばし時間も忘れてコスプレ写真ごっこを楽しんでいたが、撮る方も撮られる方も意外に体力を使う。
俺達はめぐみんのベッドのへりに腰かけて休憩することにした。
いつもの自分以外になるというのは存外楽しかったようで、めぐみんは荒い息で肩を上下させているが表情はハツラツとしている。
「…………」
「…………」
ふと訪れた一瞬の静寂に、つい横を見る。
生き生きとしためぐみんの横顔が俺のすぐそばにある。
最近何だか妙に気になる、明るい笑顔が。
その横顔を見ていると、抑え込んでいたはずの感情が蓋を押し上げて再び顔を覗かせてくるのが感じられた。
や、ヤバい。全然意識してなかったけど、今俺女の子の部屋に二人きりでベッドに腰かけてる!
しかもめぐみんはとってもエッチな格好をしていると来てる。
あかん!ドキドキが止まらなくなってきた!
「あ、そうでした、カズマに聞きたいことがあるんですが」
「ふぇ!?な、なんでございましょう?」
「…どうしたんですか?いつにも増して気持ち悪いですよ?」
このアマ。
ドキドキしていた気持ちを返せ。
俺はつーんと唇を尖らせる。
「どうせ俺は気持ち悪いっての」
「怒らないでくださいよ。聞きたいことというのは他でもありません、カズマのことです」
「俺のこと?」
めぐみんは身体を捩って俺の方を向いて見つめてくる。
「魔法少女の時、カズマはマスコットという位置づけでしたよね?今の退魔忍ではカズマはどんな位置づけになるのですか?またマスコットですか?」
「俺の位置づけ…?考えてなかったな。そうだな…」
めぐみんが改めて聞いてきたのはそんな質問だった。
もっと、こう、好きな女の子のタイプだとか、私のことどう思っているのかみたいな質問がくると思っていた俺は、場の雰囲気に流されているのかもしれない。
今回参考にした退魔忍での位置づけを考えるなら潜入捜査の協力者である妖魔か、はたまた潜入先の娼館の主か、名もなき竿役か…
様々なキャラクターを頭に思い浮かべた俺は、ぽつりとめぐみんに告げた。
「故郷で帰りを待つ…恋人……かな」
「え?」
「はっ!あ、いや、確かにそういうキャラもいるけど別に俺がめぐみんと恋人になりたいとかそういう訳じゃなくて!いやいや俺何言ってんだろうな!そんなことは全然考えてないぞ!勘違いするなよ!!」
一人で自爆して、一人でテンパる。
もう頭の中はパニックで何を言っているのか分からない。
そんな俺を黙って見ていためぐみんだが、よほど俺の姿が滑稽だったのだろう。
お腹を抱えてうずくまり、くっくと堪えきれない笑い声を漏らした。
「ふふ…くふふ…!」
「…くそ、失言だった。笑いたければ笑えばいい」
「ごめんなさい。そうじゃありません。ただ………嬉しくなってしまって。カズマも一緒だったんですね」
「え?」
どういう意味だ、という俺の声を待たずにめぐみんは立ち上がり、俺の手を取って立ち上がらせた。
「それなら、今の私達は恋人同士ということですね?」
「え、あ、あぁ…」
めぐみんは俺を見上げて、微笑んでいる。
瞳は赤く、吸い込まれそうな程に綺麗で、俺はぼーと見惚れてしまう。
「なら、カズマ大変です。パワーが無くなってしまいました」
「パワー?」
「はい。撮影でパワーが無くなってしまったのです。だから、カズマに補給してもらいたいなって…」
魔法少女の時に行った口から出まかせの設定。
魔法少女はマスコットキャラからパワーを補充してもらうというもの。
あれは嘘で、今は退魔忍。何の関係もない。
ダメじゃないか設定に忠実でいなきゃ。
そう突っぱねることは、今の俺には出来そうもなかった。
「はぅ…」
「…………」
めぐみんの身体を抱きしめる。
正直に言おう。
俺は、ずっと、めぐみんをもう一度抱きしめたかったのだ。
魔法少女の衣装を脱いで日常に戻った後も。
日々のバイトの時も。
今日、退魔忍の衣装を見た時も。
また、あの心地よさを、心が満たされる感覚を、味わいたくて仕方なかったのだ。
我慢なんて出来なかった。
「……カズマ、私達は今、恋人同士なんですよね?」
「うん…」
「じゃあ、こんな変なことを言っても、許されますよね」
めぐみんは俺の胸から顔を離すと、背伸びして俺の耳元に口を寄せた。
「好きです、カズマ」
「………!!」
あぁ。ああ。ちくしょう。
心が震える。
腕の中のめぐみんが、愛おしくてたまらなくなる。
自然と抱きしめる力が強くなり、俺もめぐみんの耳元に口を寄せた。
「俺も、めぐみんが、好きだ」
「ふふ…」
たまらず返した返事に、めぐみんは嬉しそうに俺の胸に顔をこすりつけた。
「好きです」
「好きだ」
「好きです」
「好きだ」
キスもない。愛撫もない。
ただ抱きしめあって、愚直に愛の言葉を言いあう。
幼稚園児のような幼い求愛だが、俺達には等身大の愛のやり取りを続ける。
衣装によって即席の恋人になった俺達には、これが精いっぱいだった。
「………」
「………」
どれほどの時間愛を確かめ合ったのだろうか。
互いに何も言わずに身体を離した。
名残惜しさと晴れ晴れとした気持ちと、どうしようもない気恥ずかしさ。
俺はどうにも居たたまれなくなって「そ、それじゃあな…」と部屋を抜け出そうとした。
「カズマ」
そんな臆病な俺をめぐみんが止める。
「最後に一枚、写真を撮ってください」
「え?あぁ…」
俺の気の抜けた返事をくすりと笑うめぐみん。
そのまま左足をゆっくりと持ち上げて、
最近見慣れたI字バランスをしてくれた。
退魔忍の衣装に身を包んだめぐみんのI字バランスは、綺麗で、可愛くて、エッチで…
何も言わないめぐみんに対し、俺も何も言わないままカメラで写真を撮る動作をして返事した。
パシャリ
俺はその魅惑的な光景を心のフィルムにしっかりと焼き付けたのだった。
§§§
「…………」
夜。
バルコニーに出て一人、月を眺めていた。
思い出すのは昼間めぐみんと交わしたあれこれだ。
今にして思うと恥ずかしさで頭を掻きむしりたくなるような内容だが、考えれば考える程に不思議と心が穏やかになっていくのが感じられた。
忙しい素材集めの日々に対するご褒美として始めた行為だったが、今の俺は驚くほど心が落ち着いている。
目的は達成されたと言えるだろう。
つまりはもうめぐみんに依頼を受けたと称して衣装を着てもらう必要もない。
そんな事実が一抹の寂しさを与えていないと言えば、嘘になるが。
「…カズマ、そこで何してるんですか?」
「めぐみん…」
俺の存在に気付いたのだろう。
広間を抜けてめぐみんがバルコニーへとやってきて俺の隣に立った。
月を眺めていた、なんてこと俺のキャラじゃないと思って押し黙っていると、めぐみんは軽い口調で俺に尋ねてきた。
「それで、カズマの望みは叶いましたか?」
「え?」
「最近私に試着させた衣装の依頼。全部嘘なんですよね?」
思わず俺はめぐみんの方へ向き直る。
めぐみんは何を驚いているのだと言わんばかりの表情で補足してくれた。
「魔法少女の時にゆんゆんらしき人物からの依頼だと言っていましたが、当の本人はそんな依頼は出していないと話していました。それで、ああカズマがまた良からぬことを考えているな、と」
「…良からぬことって言い方はないだろ」
「女の子にI字バランスさせて股間を凝視するなんて、典型的な良からぬことでしょうに」
ぐぅの音もでない正論に論破される形で俺は再び口を閉ざした。
しかし内面で考えていたのは、全く別のこと。
見当違いの、逆恨みのようなガッカリとした失望だった。
めぐみんは俺が癒しを求めて衣装をあてがったと知っていた。
つまりはあの恋人同士の逢瀬は俺へのご褒美として用意されたものだったのだ。
文字通り、恋人のふり。
分かっていた。分かっていたはずなのに…。
その真実に思い至った俺は、自分で考えている以上にショックを受けて何も言えなくなってしまったのだ。
「おや?ろくでもないことを考えていますね?」
「……そんなこと考えてない」
「いいえ、考えています。カズマのことなんてお見通しですよ」
こいつ、俺がどうして気落ちしているかも知らないくせに。
お前の所為だっていうのに。
本当にどうしようもない悪女だ。
俺の内心の悪口が聞こえたのか、はたまた本当に俺の事なんてお見通しなのか。
めぐみんは俺の鬱屈した気持ち全部を包み込むような笑顔を浮かべて、嬉しそうに、恥ずかしそうに語る。
「じゃあカズマ。私が退魔忍の時に言った言葉覚えていますか?」
「退魔忍の時?」
「カズマも一緒だったんですね、って」
「ああ…」
そういえばそんなことを言っていた。
意味が分からなくてスルーしていたが。
めぐみんはすっと一瞬だけ顔を下に向けた後、顔を上げて答えを教えてくれた。
「私も、カズマと恋人同士がいいな、って思ってたんです」
「え…。あ…!」
めぐみんはイタズラが成功したような。
とっておきの内緒話を打ち明けた様な。
嬉しくてたまらないといった笑顔を俺に向けた。
俺はそう打ち明けられてどんな顔をしていたのか。
自覚する前にめぐみんの小さな体が俺の胸にぽすんと飛び込んできた。
「めぐ、みん…!」
「あんな衣装じゃなくて、カズマにはありのままの私を見て欲しいです」
俺の胸の中のめぐみんはそんないじらしいことを言う。
そして、それだけ言うとサッと俺から離れた。
昼間、恋人同士だった時とは比べるべくもない短い抱擁。
もっと長くしたいなら、関係を変えてから、ということなのだろう。
突然の出来事の連続に俺は呆けたようにその場に立ち尽くす。
そんな俺の様子など気にもしないで、めぐみんはバルコニーに背を向ける。
「明日もバイトの日々ですよ。頑張ってくださいね」
振り返りながら「おやすみなさい」と弾んだ声色だけ残して、めぐみんは自室に続く廊下の方へと消えて行った。
「…………」
一人残されたバルコニーには夜のひんやりとした空気が漂っている。
僅かな時間で俺のアンニュイな気分を一新させるとは、愛と希望の魔法は本当にすごい効き目だと実感する。
「はぁ、頑張るとするか!」
いつの日か、ずっとめぐみんを抱きしめられるようになろう、と。
俺は俺達を見守ってくれていた月に向かって、誓ったのだった。
読了感が損なわれるので長いあとがきはピクシブの方にあります。