Rance ー未来をもとめてー   作:火影みみみ

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ダイジェスト気味の二話、読み飛ばしてもらっても問題ないかもしれません。
後書きにさらにダイジェストを載せておくので読むのが面倒な方はそちらでも


襲撃

「五城の家が襲撃された? 真か?」

 

「はい、屋敷は全焼、臨時頭首の五城弾も全身に火傷を負い意識不明、家臣や配下にも死者や行方不明者が多数出ている模様です」

 

「ふむ……それで、かの家に秘蔵されていたはずの《風魔忍術秘伝の書》はどうなった?」

 

「おそらく、他の貴重な書物と共に灰燼へ帰したと思われます」

 

「……先代当主が、いやせめてあの兄妹が生きてさえいればこんなことにはならなかったのだろうな、類稀な実力を誇った先代、優秀な長男、そして次期風魔小太郎と目されていた長女、この3人さえいれば風魔の未来は安泰だったろうに、本当に惜しいことだ」

 

「はい、先代は病に倒れ、長男長女は謀殺され、残った次男すらもあの様子ではもはや断絶以外に道はありますまい」

 

「本当に惜しいことだ、あの子ならば安心して息子たちの護衛を任せられたものを、下らない争いで命を落とすとは」

 

「至極その通りでございます、それにつきましては、こちらがあの次男坊に共謀し、彼女らを死にいたらしめた陰陽師の名簿にございます」

 

「流石は当代の風魔小太郎、仕事が早いな……やはり少なからず選民思想が絡んでいると見える」

 

「はい、あの娘、北見にはどうやら陰陽師としての才があったようだとの報告を受けております、それが一部の陰陽師たちには許せなかったのでしょう」

 

「汚らわしい忍者風情が陰陽術を汚すな、か……全くもってくだらない、術は術だ、道具と同じように誰が使おうが同じなんだよ」

 

「今代北条早雲だからこそ言える言葉なのでしょうな、他の者が言えば袋叩きに会うことでしょう」

 

「まあ後数年もすれば引退する身ではあるがな、近いうちにこの者らも極刑にーー」

 

「早雲様一大事です! 城のいたる所から火の手が!」

 

「何!? 被害の程はどうなっておる!?」

 

「幸いそれほど大事には至っておりませぬが、一つ消すと別の箇所でまた火の手が上がり、一進一退の状況が続いております」

 

「何処ぞの手の者による妨害工作か、九尾が討たれたとは言えやはり帝なき国では…………小太郎、お主も協力して鎮火にあたれ、他の忍びや陰陽師も総動員して下手人の確保と消化に尽力せよ!!」

 

「「御意!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………。

 ………………。

 ……………………。

 

「えっと、《ハニーでもわかる陰陽術》は違う、《歴代北条早雲の観察日記》もいらない……」

 

 そんな会話が繰り広げられていた頃、この騒ぎを起こした下手人、北見こと五条はるかは城内のとある一室へ忍び込んでいた。

 

「《討伐妖怪一覧》も違う、《帝についての研究書類》も今はいらない」

 

 北条家はJAPANを代表する陰陽師のメッカである。

 偉大な功績を残した初代北条早雲が治めていた地であり、陰陽師を志す者は皆この地にある学問所へ足を運ぶという。

 

「《妖怪セキメイとは》、《北条家の成り立ち》、《凶星九尾について》どれもいらない」

 

 無論、彼が遺したものは後世に生きる者たちにとって大きな助けとなっているのだが、光ある所に影もまたあるように、全てが輝かしいものというわけではない。

 

「あ、あったあった《陰陽術の禁術書》と《初代北条早雲の秘術一覧》、後は……この《高位陰陽術》もやっぱ必要よね」

 

 これらの物は本来北条系の中でも限られた人間でしか閲覧することはできない禁書である。

 なぜ彼女がこれらの書物を手に取っているか、そのそも彼女がどうしてこの場所にいるか、それを理解するには彼女が実家に復讐を果たした直後まで遡ることとなる。

 

 

 

 

「うん、まあこんなもんだよね」

 

 何処かの木の枝に腰掛け、燃える実家を遠目で観察しながら彼女は呟く。

 

「一応あの時いた奴らは全員始末したし、貰う物も貰ったし、逃がす人は逃してあいつにも生き地獄を合わせたから後はもうどうでもいいか」

 

 彼女が片手で弄んでいるのは《風魔秘伝の書》と書かれた古い巻物である。

 また彼女が背負っている風呂敷の中にはいくつもそれと似たような巻物が押し込められており、彼女が火をつける前に盗み出したのは明らかだった。

 

「後は陰陽師たちへの報復なんだよね、顔は覚えてるけどこちらと違ってあまり派手に動くと早雲とか小太郎とかが出張ってくるかもしれないのがなぁ……」

 

 どうしたものか、と彼女は足をぶらつかせて考える。

 

「となるとあちらへのちょっかいは程々にしなきゃいけないよね、そして時間をかけすぎてもダメだから一度で済ませる必要もある……」

 

 そう言って彼女が懐から取り出したのは難しい文字が細々と綴られた長方形の紙。

 彼女がそれに魔力を込めるとたちまち紙に変化が起こり、次の瞬間にはカラスのような式神へと姿を変える。

 

「独学でできるのはとりあえずこれくらいかなぁ……、こんなことならあの時断らずに蘭ちゃんに教えて貰えばよかった」

 

 はるかの幼なじみである蘭ちゃん、本名南条蘭は南条家に生まれた長女のことである。

 戦国ランスに登場した際には南条家の当主として登場し、彼女専用のルートすら用意されていたという優遇っぷりである。

 しかしそれに反して彼女が生き残る道は少なく、逆に言えばおまけ要素と彼女のルート以外では必ず死亡するという悲運な運命の下に生まれてしまった哀れな娘でもある。

 彼女とはるかは初めて顔合わせをした時から友達となり、よく実家を抜け出しては彼女の元へと足を運んだものである。

 その時のお遊びの一環で、彼女の式神を見せてもらうという話になった。

 当時は幼く、今も幼いが、拙いながらもちゃんとした式神を発動させるところを見てはるかも真似をしたくなったのだ。

 それでできるはずがないと思いながらも南条蘭ははるかに陰陽術の基礎を教えてみたところ……なんと初めてにも関わらず彼女よりも上手に式神を作り上げてしまったのだ。

 呆気にとられた両者だったが、ハッと我に帰った蘭は彼女に強く陰陽師になることを勧めたが、はるかはそれを断った。

 この時の彼女は兄や父の為に立派な忍びになることを第一としていた為、脇道に逸れることを嫌がったからだ。

 だが、こと此処に至ってそんなことは言ってられない。

 使える物は全て使い、全力を尽くしてもなおあっさり死にかねないのがここルドラサウム大陸である。個人の好き嫌いで選り好みしている場合ではないのだ。

 彼女の場合忍者としても天才的だったが陰陽師としても才能があるのなら使わない手はない。

 陰陽師は大陸で言うところの魔法使いにあたり、彼らと違い直接魔法を使用することはできないが、代わりに式神と呼ばれる使い魔のような物を使役し、間接的に魔法を行使する。

 その能力の一つに防御式神というものがある。

 今世の彼女も何度もその目で見てきたが、端的に表すならこれを使うものが味方にいればとても心強く、敵に回れば厄介極まりない技というある。

 その性能は《一度だけ攻撃ダメージを無効化する》と言うものであり、ゲームでは魔人の攻撃すらも弾き、今世の彼女も何度も暗殺を防がれたことがある程度には苦汁をなめさせられている。

 この先自身を超える、いや人類を超える強敵が現れることが確定しているこの世界、手数は多いに越したことがない……のだが一つだけ問題があった。

 この世界が元はゲームとは言っても今ここにいる彼女にとっては現実となんら変わりがない。

 つまりゲームのように成長すれば勝手に使えるようになるといことはなく、式神防御を使うためにはまず誰かに教えてもらう必要がるといことになる。

 そこが先の彼女の発言と繋がってくるというわけだ。

 

「……うん、ここはやっぱり一度やっておくべきかな、一部以外それほど恨みはないし、後で返せば問題ないよね」

 

 そうして、彼女の蛮行は始まった。

 北条家の居城の下調べを済ませていた彼女は真昼間からそこへ忍びこむと自身が使役できる限界数まで式神を召喚した。

 それは小さな式神でとてもじゃないが戦闘に役に立つとは思えない代物であったが、彼女からしてみれば戦闘能力など必要がなかった。

 彼女はそれらの口に密かに手に入れていたぷちハニーを咥えさせる。

 ぷちハニーという危険物を咥えたそれらは物陰や人では到底通れそうにない隙間などを通り目的の場所へとたどり着くと、咥えていたプチハニー放し、勢いよくそれを足元へ叩きつけた。

 ぷちハニーはハニーという魔物の一種であり、衝撃を加えると爆発するという性質を持つ。

 式神の攻撃で起爆したそれは木造建築というJAPAN独特の建築様式と合わさることによって小規模ながらも火災を引き起こした。

 当然、城に勤める人間たちも必死に消火活動をし、なんとかこれを消し止めるが、今度は二箇所で爆発と火災が発生する。

 ここに来てようやく彼らはこれがどこか別勢力からの攻撃だと理解した。

 消火活動と並行し、怪しい人物の検挙、次の放火の防止、警備の厳重化などを並行して行うが、それができたのは一部の猛者たちだけであり、大多数の下っ端たちは訳もわからない混乱状態にあった。

 結果、それが指揮系統に多大な影響を及ぼし、目の前の消火活動で手一杯の状態まで陥るのにそう時間はかからなかった。

 そうしてできた警備の隙が彼女の狙いだった。

 普段なら厳重な警備が敷かれていて入ることの出来ない宝物庫だったが、火災への対処へ人員を割かれることによって必要最低限の人数まで警備人数を落とすことになってしまった。

 彼女は素早く彼らを気絶させ、ふんじばって宝物庫の中に転がしておくと、目的の場所へと歩みを進める。

 それは宝物庫の中でも特に重要な物、陰陽師に関する文献が納められている書架であった。

 そう、彼女の目的はこれらの書物である。

 本来北条氏の誰かに弟子入りして術を学ぶのが手堅い方法ではある。しかし、彼女はその北条氏の一派に殺されかけたので彼らを信じるわけにはいかない。

 だが、彼ら以外に陰陽術に詳しい人間がいないのも事実。ならば彼らの隠している書物を一時的に頂戴し、写本した後に返してしまおうと考えたのだ。

 無論、いくら天才忍者と言ってもそんなことがそう易々とできるわけがない。だからできるように状況を整え……、いや乱した。

 見つかる確率が少ない小型の式神による時間差テロ、それに加えつい数日前に妖怪大戦争が終結したことによる気の緩みが混乱を加速させ、結果彼女の思惑通りに警備は手薄となり、彼女の侵入を許すハメになった。

 それが今現在彼女が行っている窃盗行為、文字通り火事場泥棒につながったと言うわけだ。

 

「さて、そろそろ脱出しないとまずいかな?」

 

 残りの式神も心許なくなってきており、そろそろ城の人たちも対処に慣れてくる頃だと考えた彼女は最後の最後ということで残りの式神を護身用を残して全て召喚する。

 

「行け」

 

 彼女が命令すると、それらは一斉にバラバラの方向へぷちハニーを咥えて走り出す。ただし、今度は屋根の上や通路の真ん中を駆け抜けるようにだが。

 最後に放った式神は言わば囮である。

 犯人探しに躍起になっている今、目の前を走るあれらを無視できるはずがない。

 そうしてできた隙をついて彼女は無事に脱出し、騒ぎが治った後の調査にて禁書などが盗まれていることがようやくわかったという。

 

「次はどこへ行こうかな? 武田はむさ苦しそうだし、やっぱり上杉? しばらくはお金稼がないと行けないし、あそこなら女武将でも雇ってくれそうだよね」

 

 この後、彼女は数年間上杉家に仕えることになる。

 その影響が今後どう響いてくるかは、また別の話。

 

 

 




今回の北見の行動
1、実家を襲撃して書物を奪ったよ
2、ランスワールドなのでもっと力をつけないとまずいよね
3、なので陰陽師の修行がしたいので北条家から盗んできたよ
4、次は上杉家に行こうかな、路銀を稼がないといけないし

なお、次回はランス03からになる模様
1と2は不参加です

2月7日 更新予定

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