剣姫の弟の二つ名は【リトル・アイズ】   作:ぶたやま

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よろしくお願いします。

また、治療院の勤務体制とか諸々僕の書きやすいように捏造しているのでご容赦下さい。


第二十八話

 

 午前8時00分。

 それは【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院が、入院患者に朝食を提供すると定めている時刻だった。各個室に各患者に合わせた食事が運び込まれ、必要に応じて看護師(ナース)が食事介助を行う場合もある。

 

 こういった対応をされるという事は即ち、自力摂取ができないほど衰弱しているか、何らかの理由で利き手が使えなくなっているという事なので、本来決して喜ぶべき状態ではないのだが、【ディアンケヒト・ファミリア】の女性眷属は何故か誰も彼も超絶美人。絶世の美少女達に合法的に食べさせて貰えるとあって、介助決定を喜ぶ者が大半だった。

 

 そして、他の冒険者達からは、僅かな羨望とえげつない嫉妬心を向けられる事になる。人手の問題でアミッドが担当した際などは、その患者が退院後同業者にリンチにされてしまった程だ。まあ、調子に乗ったその冒険者が、誰彼構わず自慢しまくった自業自得でもあるのだが……。

 

 こういう前例がある以上、『彼』も似たような運命を辿ってしまう可能性は否定できない。何故なら彼の食事介助を行っているのは、あの【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタイン。この迷宮都市に於いて、聖女(アミッド)と同等かそれ以上に男性人気の高い有名人だからだ。

 

「はい、シロ。あーん」

 

 一時期は、その無表情さを『人形姫』と揶揄されていた彼女が、砂糖何杯入ってんだと言うぐらいに甘ったるい声を添えて、スプーンに掬ったお粥を差し出す。しっかりと、自身の息を吹きかけ適温にしてから・というオマケつきでだ。ロキやレフィーヤ含め、大半の冒険者達が鼻血を噴射して地面に後頭部を打ち付けるシチュエーションだろう。とんだ恵まれ野郎が居たものだが、ではソイツはいったい誰なのか。

 

「ん……」

 

 パクリと、小振りな口でお粥にパクついたのは、銀髪銀目の小柄な少年だった。マシロ・ヴァレンシュタイン。アイズ・ヴァレンシュタインの弟にして、唯一の肉親。ダンジョンで瀕死の重傷を負い、【剣姫】直々に治療院に運び込まれた彼は、1週間の昏睡期間を経て2日前に目を覚ました。アミッドによる懸命な治療のお陰か、アイズの血液を浴びた際に起こった肉体回復の度合いが想像以上に大きかったのか、既に容態は少量なら食事を摂れる程度まで改善している。

 

 但し、それは『両手以外』の話だった。槍で貫かれ、人差し指と中指を丸々失った右手と、粉砕骨折している左手首。流石にこれらは一朝一夕で治るものではなく、当然何か物を持てる状態でもない。だから、こうして誰かに食べさせて貰う必要があり、その役目に姉が名乗りを挙げたという訳だ。

 

 無論、最初こそ『治療院の人間が行うから』と渋られたが、結果的にその役割を、面会時間を無視した24時間の看護権と共にもぎ取る事に成功している。

 

「おいしい?」

 

「あ、ああ……」

 

 弟の顔を覗き込む姉は、嘘だろと思うぐらいの笑顔を輝かせていた。まるで、日の光を存分に浴びた満開の花々の様だ。加えて、全身からハートマークが噴出している様にも見える。ノリノリだ。いっそ、怖いぐらいに。対してマシロの方は、アイズの余りにも過保護過ぎる対応に困惑を隠せない様だった。加えて、何か言いたげに顔を曇らせている。

 

「……? どうかした?」

 

「その……もっと事務的というか、普通に食わせて欲しいんだが……」

 

 その要望に、【剣姫】はキョトンと頭を傾げた。

 

「普通にしてるよ?」

 

「嘘つけ、普段そんな馬鹿みたいにニヤケてねぇだろ。あと、フィンに発情するティオネみたいな声もやめろ」

 

「えっと、ティオネみたいな声はよく分からないけど……。顔はごめん、無理……かな」

 

「なんで?」

 

 マシロの問いに、アイズはスプーンをお盆に置いて、自らの両手で頬を挟んだ。そして、一瞬無表情を作ったかと思うと、即座に口角がゆるゆるになる。

 

「ニヤケてるつもりはないんだよ? でも、ダメなの。どうしても頬が緩んじゃって」

 

「…………」

 

「シロはイヤ? 子供扱いって思う?」

 

「それは………」

 

 答えは、なかなかマシロの口から発せられなかった。

 どう答えるべきなのか。否、どう感じているのかをどう表現したら良いか分からない。彼の表情からは、そんな心境が読み取れる。仮にマシロの気持ちを代弁するなら、『子供扱いは嫌だが、嫌悪感は思ったほどではない』と、言った所だろう。

 つまりそれは、アイズに構われているこの状況を、幼児の様に接せられる以上に喜んでしまっている事を意味していて。

 

「嫌じゃない……。嫌じゃない……けど、その…………くて」

 

「ん?」

 

 思い切り言い淀んだその回答を、アイズは聞き逃してしまった。ズイッと、元から近かった顔を更に接近させる。パーソナルスペースなんて概念、在った物じゃない。対してマシロは、プイッとそっぽを向きながら更に小声で呟いた。

 

 

「………………………は、恥ずかしくて」

 

 

「恥ず、かしい…………?」

 

 パチクリと、金の瞳が瞬きする。その返答は、アイズにとって完全に想定外だった様だ。呆然と復唱したかと思うと、今度こそ椅子から立ち上がる。何をするつもりなのかは、今の彼女の表情からは読み取れない。だが、無理にでも考察して身構えておくべきだったと、マシロは3秒後に後悔する事になる。ヌルッと、なんの前触れもなく、病室と廊下を繋ぐ出入り口に向かってアイズは叫んだ。

 

 

 

「アミッドいる!? シロが……シロがとっても可愛いの!!!」

 

 

 

 とても華奢な少女の腹から発せられたとは思えない超特大声量の惚気が、治療院の1階フロアに木霊する。唐突且つ意味不明……それでいて妖精の唄をも想起させる美しい歓声は、廊下を歩いていた職員や患者のみならず、別の病室や診察室にいた者達の注目さえも容易に奪った。ガチャガチャと扉が開き、何事かと幾人もの従業員が廊下に顔を覗かせる。

 

 ひとつ上の階にいた【戦場の聖女(デア・セイント)】も例外ではない。純粋なヒューマンである彼女の聴力は平凡の一言だが、それでも作業中の彼女の耳に届いてしまった。やがて、小柄な人間の足音が廊下を駆ける。凄まじい速度でこの病室に迫って来るかと思うと、あっという間にアミッドが姿を現した。正直、声の大きさはともかくとして、何故あの発言内容でそんなに血相を変えられるのか分からなかったが……。

 

「ど、どうしました!? 途轍もない大声が聞こえてきましたが、まさかマシロさんの容態が―――」

 

 どうやら、他の階にいたが故に、アイズの叫び声は断片的にしか聞き取れていなかったらしい。それならば、世にも珍しい【剣姫】の大声に、そんな勘違いをしてしまうのも無理はない。

 

 けれど実際、マシロはピンピンしている。上体を起こし、気まずそうに顔を歪める姿を目の当たりにし、聖女はこれでもかと困惑を滲ませた。アイズに視線で説明を求めるも、彼女に混乱をもたらした張本人は、見せつけるかの様にマシロ()を抱きしめ始める始末で……。

 

「あ、あの……、これはいったい……?」

 

「………なんでもない。大声出して悪かった」

 

「は、はあ………」

 

 謝罪するマシロから追及されたくない空気を感じ取り、アミッドもそれ以上は踏み込めなくなる。同時に、これまで見た事もない【剣姫】の姿に絶句した。ファミリアぐるみでの付き合いのある彼女は、アイズが世間で思われているほど怜悧な人物でない事は知っている。想定以上の天然ぶりに肩透かしを喰らった経験だって何度かあるが。

 

 流石にコレ(・・)には実感が湧かなかった。夢でも見ているのかと思う。こんな……特定の誰かに仮借ない『愛情』をぶつける姿など、【剣姫】というより、フィン・ディムナに対するティオネ・ヒリュテのイメージに近い。しかも、肉親である分、此方の方が遠慮がないと来ている。

 

 ここで、蕩けた顔で弟に頬擦りを繰り出していたアイズが、ガバッと聖女へと向き直った。

 

「あのね、アミッド」

 

「は、はい!」

 

 アミッドは現実に引き戻される。

 アイズの口調に特別重苦しさがあった訳ではない。ただ、普段通りに戻っただけだ。いつも見ている人形のような表情。それが、先程迄の面持ちとのギャップを産み、シリアスな空気を創り出している。【戦場の聖女(デア・セイント)】は、【剣姫】としての彼女の言葉を待つ。

 が、残念ながら真面目な空気は、長く続かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「シロがね、私の『あーん』に照れちゃって」

 

 

 

 

 

 

 

「…………………………はい?」

 

 

「もう、本っっっっっっっっっ当に可愛くて!」

 

 

「…………………………………………」

 

 

 唖然と困惑が入り混じった聖女の瞳がマシロを射抜く。彼は、盛大に冷や汗を流しながら目を逸らした。頭から湯気を噴出し、全身をトマトの様に真っ赤にして。

 

 ここで、アミッドはようやく理解した。この騒動は緊急事態でもなんでもなく、『弟狂い(アイズ)』による只の傍迷惑な暴走でしかないのだと。凄まじい徒労感と脱力感が彼女を襲う。そんな心情も知らずに、アイズは更なる燃料を投下した。

 

「なんで実のお姉ちゃんに照れちゃうのかなぁ? この子は、もうもう♪」

 

「もう出禁になれよ、お前………」

 

 

 その後、【剣姫】が聖女からありがたいご教授……もとい、長時間の説教を頂戴したのは言うまでもない。ついでに、また今回みたいな騒動を起こした場合、即出禁にすると言い渡され、この世の終わりみたいな表情を浮かべていた。

 

 

  : :

 

 

 時を2日ほど巻き戻す。

 マシロ・ヴァレンシュタインが一命を取り留めてから7日目のこと。【ロキ・ファミリア】の本拠(ホーム)、『黄昏の舘』にて、首脳陣が話し合いの場を設けていた。議題は、『マシロを襲撃し、瀕死にまで追いやった犯人』についてである。

 

 マシロがパーティーを組んでいたという新米の冒険者の少年とサポーターの少女、そして実際に治療に当たったアミッドへの聞き込みも既に終わらせている。現状、最も疑わしい冒険者と会敵したリヴェリア(副団長)の意見も統合した上で、フィン・ディムナは自らの見解を口にした。

 

「恐らく、リヴェリアが接触した『異形の冒険者』は、今回の件に関わっていない。マシロを襲撃した主犯は他にいる」

 

 場に動揺は広がらない。

 件の『異形の冒険者』にマシロの指が食い千切られているのは事実だというのに、この場にいる全員が目の前の男の推測に水を差す事を良しとしなかった。リヴェリアでさえ、自身の所感よりも【勇者】の推測の方が信用できると静観を決め込んでいる。

 

「リヴェリアと、リリルカ・アーデという少女が聞いた限りでは、奴の目的はあくまでも『マシロを食べる』ことらしい。間違っても『喰い殺す』ことが目的ではない」

 

「『喰らう事を殺しの手段としている』訳ではなく、『喰らう事そのものが目的』……か。恐らく、マシロを喰うことに何かしらの『益』があるんじゃろうが、確かにそれなら瀕死になるまで攻撃を加える必要はないな」

 

 フィンの主張に、ガレスが納得した様子で頷く。

 冗談抜きに、【リトル・アイズ】は死ぬ寸前だった。アイズの血が起こした奇跡がなければ、そのまま天界に還っていただろう。感覚的な話にはなるが、こういう『誰かを喰って、その誰かが持っていた特別な力を奪い取る』という話に於いて、『殺してから喰う』は通用しない気がする。死んだ肉体にまで、特別が宿っているとは思えない。仮に関係なかったとしても、わざわざリスクを取る必要はない。『異形の冒険者』は推定Lv.5以上。Lv.3程度、生け捕るのは容易だろう。

 

「じゃが、マシロは【隷属演陣(スレイブ・アクト)】を使ったのだろう? 奴にその気が無くとも、意図せず殺しかけてしまったという線はないのか? 実際、マシロの肉体に、致命傷になるような傷は無かったという話じゃが……」

 

 同調すると同時に、ガレスは不可解な点もぶつけて来る。そして、それは確かに有り得なくもない観点だった。マシロが生死の境を彷徨ったのは、あくまでも回復不能のデメリットを抱えるスキルを使ったが故の事故。意図せず出血死させかけてしまったと、そう考える事も出来る。

 その指摘に対し、フィンは聞き取りを行った少女の証言を思い起こした。

 

「リリルカ・アーデという少女から聞いた話では、『異形の冒険者』はマシロに並々ならぬ憎悪を抱いていたらしい。故に、その可能性も大いにあるだろう」

 

 そして、ガレスの主張の妥当さを肯定した上で、ハッキリと反対意見を口にする。

 

「でも、もしそうなったなら、その場で喰い殺せば良かっただけの話さ。わざわざ一度見逃し、ベル・クラネルの救出に向かさせる必要はない」

 

「!」

 

「道中でマシロが死んでしまう可能性もあったんだ。奴からすれば、どうしたって『その場で喰う』が最適解だよ」

 

「成程な……」

 

 ここで、ようやくリヴェリアが口を開いた。唯一『異形の冒険者』と相対した彼女は、他2名より奴が犯人に違いないという認識が強い。だから、自分の中で白か黒かの決着が着くまで己の意見はノイズにしかならぬと発言を控えていたのだが……。

 

「フィン、お前の考えは分かった。私もその意見に賛同しよう」

 

 そこまで言って、リヴェリアは翡翠の瞳に鋭く細める。

 

「但し、奴は本物の『狂人』だ。直接会っていないお前達は、まだ真の意味で理解できていないだろうが、我々の理論理屈が通用しない可能性もあり得る」

 

「あまり、常識的な考え方に囚われるべきではない……そういう事かい?」

 

「ああ。だが、こう忠告しておけば、お前なら足元を掬われる事もないだろう」

 

「期待に沿えるように頑張るよ」

 

 フィンがおどけて見せた所で、空気を締めるようにガレスが本題を口にする。

 

「では、フィン。お主は、真の襲撃者の正体をいったい誰だと思っておる?」

 

「…………見当も付かない」

 

「「おい」」

 

 あまりにも神妙な顔で言い切る団長に、エルフとドワーフは口を揃えてつっこんだ。

 

「というより、候補が絞り込めない。マシロのやられ振りから見るに、相手の力量はあの子を遥か超越している。それこそ、風を纏った彼の長所(スピード)さえ赤子扱いできるぐらいの実力差だ」

 

「確かに、『エアリエル』を扱えるマシロがLv.4程度に殺されかけるとは考えづらいな。勝つのは無理でも、逃げるぐらいは出来たはずだ。仮に戦っても、あれほど一方的な蹂躙にはなるまい」

 

 マシロが発現させているのは、【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインと同一の魔法だ。攻撃性能防御性能共に尋常ではない。ステイタスそのものは、同レベル帯(Lv.3)に中でも中間層だが、魔法さえ使ってしまえばトップ層に躍り出る。

 

「ああ。そうなると、マシロを襲ったのは必然的にLv.5以上。幾らオラリオが広いと言っても、『第一級冒険者』の数はそう多くない」

 

 フィンの発言に、ガレスとリヴェリアは脳内にで、都市内の主だった『第一級冒険者』の顔を思い起こした。

 

「【ロキ・ファミリア(我々)】は除くとして、【へファイストス・ファミリア】の椿も排除してよかろう。派閥ぐるみで懇意にしているというのを取っ払っても、あの鍛冶師がマシロを殺そうとするなど考えられん」

 

「【ガネーシャ・ファミリア】のシャクティ・ヴァルマも同様だな。都市の憲兵……その長が、我々に牙を剥く理由がない」

 

 そして、大半の者達が即座に半人候補から消えてゆく。しかし、とあるファミリアの幹部たちが浮かんだ瞬間、その作業はピタリとストップした。頭痛をこさえたような表情で、老兵が唸る。

 

「【フレイヤ・ファミリア】の連中は……正直人格的にも派閥の関係的にも白とは言い切れんのう」

 

「ああ。だが、流石に事が事だ。我らと全面戦争になる事は容易に想像できただろう。幾ら彼らでも、そこまで不用意なことはしないと思うが……」

 

「彼らは気まぐれな所があるからね。今の所、『未確認の第一級冒険者相当の力を持った敵』と同じぐらい【フレイヤ・ファミリア】も容疑者の一角だ」

 

 

「……もし、マシロを襲ったのが本当に【フレイヤ・ファミリア】だった場合は」

 

「決まっとるやろ!」

 

 バンと、注目を集める様に、団長室の扉が開け放たれた。ドカドカ大股で入室してくるのは、朱い髪が目を引く麗人……。否、人ではなく、『神』だ。唐突に現れた主神(ロキ)に首脳陣は目を丸くする。

 そんな反応もお構いなしと言わんばかりに、ロキは躊躇いなく言い切った。

 

 

「戦争や。『二大派閥』だとか、『パワーバランス』だとか、そんな大人の事情関係あらへん。ウチの子らに手え出したらどうなるか、あの色ボケ女神に存分に思い知らせたる」

 

 平時では考えられないドスの利いた声は、【ロキ・ファミリア】の『第一級冒険者』をして肝を冷やす程だった。実力では負けようがない。しかし、計略で首を落とされる事が容易に分かる。

 

 けれど、主神はそんな雰囲気を、次の一瞬で一辺させた。

 

「と、まあ、物騒な話は一旦お終いや。ビッグニュース持って来たで!」

 

「ビッグニュース?」

 

 リヴェリアが聞き返した所で、開け放たれた扉から忙しない足音が聞こえて来た。程なくし、ラウルとアナキティが大慌てで入室し、挨拶もなく報告する。

 

「だ、団長……!」

 

「マシロが……、マシロが目を覚ましたそうです!」

 

「「「!」」」

 

 

 

 

 

 その一報は、瞬く間に『黄昏の舘』全体に広がった。

 そして、大いに沸き立つ。

 

 彼と仲の良かった者、それ程でもない者関係なく、ファミリア最年少(弱冠12歳)の少年が死にかけたと言う事実に少なからず動揺し、衝撃(ショック)を受けていたからだ。

 

 無論、自らの意思で冒険者となった以上、全ての傷は自己責任。子供だからと言って、問答無用で庇護対象にして貰えるというのは、単なる甘えである。実際、Lv.3のマシロは【ロキ・ファミリア】内でも、どちらかと言えば『庇護する側』だった。

 

 が、そんな厳しい意見を持つ現実主義者(リアリスト)達も、の実際ベッドに寝かされたマシロの姿を見た瞬間、心を折られる。実年齢より遥かに小柄なマシロは、意識が無い状態では本当に脆い子供にしか見えなかったのだ。

 

 どうして自分達は、この子が襲われている時、その場にいてやれなかった。どうして、別の場所でのうのうと攻略していた。若しくは、何故ダンジョンにすら籠っていなかった。そんな、無茶すぎる後悔が心を覆う。若い構成員などは、レフィーヤやエルフィ等を筆頭に泣きじゃくった。

 

 故に、既に21時を回っていたにも関わらず、【ロキ・ファミリア】の眷属達は治療院へと殺到した。無論、本拠(ホーム)に居た者達のみの強行にはなるが、それでもかなりの人数で押し掛けた事に変わりはない。治療院内の従業員は既に当直担当者や常駐医以外は帰宅しており、大人数への対応は熾烈を極めた。

 

 

 後日、【ディアンケヒト・ファミリア】から【ロキ・ファミリア】へ、直々に苦情の連絡を入れられたのは言うまでもない。

 





お読み頂きありがとうございました!

次はベル君出します。多分。

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