剣姫の弟の二つ名は【リトル・アイズ】   作:ぶたやま

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よろしくお願いします。


第三十六話

 

「シロ……?」

 

 アミッドに鬼の形相で説教をされていたアイズが、突如何かに気がついた様に顔を上げた。つい数秒前までは、「コイツ本当に第一級冒険者なのか?」と首を傾げたくなるぐらいにビクついていたのが嘘の様に心ここに在らずといった様子だ。

 

「どうしましたか、アイズさん? 話はまだーーー」

 

 訝しんでアミッドが声をかけるものの、そもそも聞こえてすらいないか【剣姫】は窓の外を見つめ続けている。

 このような態度は本来、聖火の炎を烈火の如く燃え上がらせる薪にしかなり得ないのだが、金の少女が醸し出す雰囲気が余りにも異質すぎて、流石の聖女も怒りより戸惑いが勝ってしまった。

 その隙を突く形で、おもむろに【剣姫】が床を蹴る。

 

「なっ、アイズさん!?」

 

 個室から飛び出し、迷いなく廊下を駆けていく『第一級冒険者』の後ろ姿は、あっという間に視界から緊急離脱(フェイドアウト)した。

 余りにも突然すぎる逃走劇。アミッドはポカンと口を開けるばかりだったが、彼女は胸中の困惑など無理やり組み伏せる。

 聖女の明晰な頭脳は無意識下に於いても、あらゆる状況証拠から確度の高い推測を導き出した。

 故に、先行したアイズを追いかける。既にその姿は遥か彼方だが、自分(超怖いお医者さん)の不興を買ってまで彼女が向かう場所などあそこしか無いだろう。十中八九……否、十中十、マシロ・ヴァレンシュタインの病室で間違いない。

 

 説教のストレスに耐えかね最愛の存在に癒しを求めて遁走したのか、それとも単純にマシロ成分の貯蔵が尽きて身体が彼を求め動いたか。もしくは、何かしらの方法で弟の身に危険が迫っているのを察知したのか。

 

 どれも、彼女の弟への執着具合を考えれば有り得なくない話だ。

 が、直前の少女の反応を鑑みるに『身の危険を感じ取った説』が濃厚だろう。

 容体が急変したのか、それとも外部からの侵入者による襲撃か。それは不明だが、どちらにせよ緊迫した事態なのは確かだ。

 

 アミッドはLv.2の速力を遺憾なく発揮して病室を目指す。治療師(ヒーラー)……つまりは非戦闘員と言えども、上級冒険者は上級冒険者。風の様にという比喩表現がピッタリな凄まじい速度が出ているが、しかし当然の如く【剣姫】の背中は見えてこない。Lv.6である彼女の足と、彼への行路を辿っている事を考えれば、既に病室に到着している可能性の方が高いだろう。

 

 そして、今の所、Lv.2の聴力を持ってしても、マシロの病室の方向からはなんの物音も聞こなかった。仮に彼の病室に不審者が侵入し、あのブラコンと鉢合わせたとしたら、こんなに平穏穏やかである筈がない。

 

 ならば、身の危険説はアミッドの取り越し苦労で、ただ単に弟成分の切れた姉の暴走だったという可能性も僅かにだが見えてくーーー

 

 ガンッ!

 

 頭脳が明晰であるが故に、そんな都合の良い幻想を考慮し始めた瞬間、それを嘲笑うかの様に嫌な音を鼓膜が捉えた。硬い物で何かを殴りつけたかのような音に、アミッドはラストスパートをかける。残り数メートルを最高速で走り切った聖女は、扉の開いたままの病室に駆け込み、そして……。

 

 彼女の目に飛び込んできたのは、真っ赤な空間だった。

 床、壁、天井すべてが鉄臭い。清潔さの象徴である筈の純白が、夥しい赤に埋め尽くされている。

 

 とても患者が安らげる様相ではなくなった病室に、ポツンと佇む金色。【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインの右手には、ドス黒い赤がこびり付いた歪んだ椅子が持たれていた。

 

 そして、その奥には頭部から血を流した銀の少年が、ベッドにもたれ掛かる形で倒れておりーーー。

 

 アミッドは理解が追いつかなかった。否、理解を拒んでいたのかも知れない。とにかく、目の前の光景が現実とは思えなかったのだ。何せ、状況だけを見ればこの惨劇を引き起こしたのはーーーマシロ・ヴァレンシュタインを襲撃したのは、姉であるアイズ・ヴァレンシュタインという事になるのだから。

 

 有り得ない。

 

 それだけは無い。

 彼女の献身を間近で見て来たアミッドには、あれが演技とは到底思えなかった。瀕死の弟を背負って、泣きじゃくりながら治療院に飛び込んで来たアイズ。彼を助けてくれと必死に縋ってきたアイズ。どれだけ道筋を立てて手遅れだと説明しても、自分の血を与えようとしてまで彼を生かそうとしたアイズ。奇跡的に生還を果たした後も、必要最低限しか弟の側から離れようとしなかったアイズ。

 

 こういうものに優劣を付けるのもどうかと思うが、それでも断言できる。アイズ・ヴァレンシュタインがマシロへ抱く愛は、他のきょうだい間の中にあるそれよりも遥かに大きいだろう・と。

 

 そんな彼女が、マシロに危害を加えるなど……。

 等と思っていると、不意に鉄臭い椅子が床に落ちた。そして、ゆるりと金の少女の身体が傾いてーーー。

 

「アイズさんっ!」

 

 反射的に駆け寄り、受け止めた彼女の身体はズッシリと重い。完全に、意識を失った人間の重量だ。度を越した精神的ダメージを受け、脳が勝手に意識を手放したのだろう。生存本能が下した適切な判断だったとアミッドは思う。そうしていなければ今頃どうなっていたか……正直考えたくもない。

 

「………それで、貴女はここで何をしていたんですか?」

 

 友人の重みをその身に感じながら、聖女は押し殺した声を投げた。血塗られた部屋の隅っこ。震えながら座り込んでいる黒髪の後輩に。

 

「そ、その……マーく……マシロさんとお話してたら、【剣姫】さんが現れて……、急に、椅子でマシロさんを……」

 

 嘘だな。

 アミッドは彼女の虚偽を看破した。

 あのアイズがマシロを手に掛けるなど天地がひっくり返ってもあり得ない。何も知らない者がこの部屋の惨状を目の当たりにして今の証言を聞かされれば、10人が10人彼女の主張を信じるだろう。しかし、ヴァレンシュタイン姉弟の関係をよく知るアミッドには通用しない。

 

 彼女は嘘を付いた。

 それはつまり、この惨劇の責任をアイズ・ヴァレンシュタインになすり付けようとしているということ。ならば、彼女がマシロを襲った侵入者なのだろうか? 違う。もしそうなら、今彼女が下界で息をしている筈がない。瞬き一つする間に【剣姫】に屠り去られていた筈だ。

 そもそも、アイズが血まみれの椅子(凶器)を手にしていたのは紛れもない事実。マシロの頭を割ったのはアイズ。それは残念ながら動かない。

 

 なら、今回の件は事故でしかないだろう。

 アイズが故意にマシロを傷つけない以上、それしかない。

 つまり、アイズが『誰か』目掛けて硬い椅子を振りかぶり、それを止めようとマシロがその身体を割り込ませた。結果として、アイズがマシロを害する形になってしまったのだ。

 こんなもの、アイズからしたら不本意という他ない。

 

「アミッド!」

 

「なんだ、今の音は!」

 

「いったい何が……!?」

 

 冷静に、冷徹に分析をしていると、ここで大勢の同僚達が駆けつけた。そして、神々のいう所の『テレビのリプレイ』よろしく、アミッドがそうだったように、室内の凄惨に息を呑む。

 

「なんだよ……コレ?」

 

「【リトル・アイズ】が殺された……? 【剣姫】までやられたって言うのか……!?」

 

 彼ら彼女らの注目を引いたのは、勿論、頭部を破壊されたマシロと、アミッドの腕の中で眠るアイズだ。確かに状況だけ見れば、弟は成す術もなく殺害され、姉も敵に遅れをとり、意識を刈り取られてしまっている様に見えるだろう。

 聖女は、そんな団員達の認識違いを正しつつ即座に指示を飛ばした。

 

「アイズさんの心配はいりません。それよりもマシロさんです。頭部を激しく損傷している。一刻も早い治癒が必要です」

 

「お、おう!」

 

 幸いこの場に集まったのは【ファミリア】の中でも歴が長いベテランばかりだ。故にアミッドは敢えて、自分以外で最も腕の立つマルタを、マシロの治療要員から外す事にした。マルタがおらずとも、自分と他2人の力があれば十分だと判断したのだ。これは過信ではなく確信である。アミッドは既に、マシロの傷が不自然に修復され始めている事に気付いていた。何より、今回はあの忌々しい『治癒効果の阻害』がないのだ。ならば、如何なる傷も癒して見せよう。【戦場の聖女(デア・セイント)】の名に懸けて。

 

「マルタ。貴女は、彼女の手首(・・)を診てあげて下さい」

 

「彼女……? うわっ、ルビル!? いつからソコに!?」

 

 後輩治療師(ヒーラー)の存在に今更ながら気付いたマルタが、驚きの余り身をしならせた。まあ無理もないだろう。大抵の者はまず部屋の赤さと殆ど死体同然のマシロに目が行き、その次は気絶した第一級冒険者という絶望で脳がパンクする。部屋の隅で縮こまっている黒髪の少女まで意識が向かなくても仕方がない。

 

「あっ、だ、大丈夫ですっ! 私の事なんかより、マシロさんを……」

 

「駄目です。頼みましたよ、マルタ」

 

 後輩治療師(ヒーラー)ルビルの、遠慮に擬態した逃げを封殺し、最も信頼できる同業者に、彼女の治療(調査)を託す。

 優秀なマルタの事だ。多くを語らずとも、わざわざ強調した『彼女の手首』という単語から、治療の(てい)でしっかりと調べ上げてくれるだろう。

 そして自分も、今も頭から血を流す少年に向き直り、唄った。

 

 

 ◇

 

 

「僕達がマシロ襲撃の一報を受けたのは、それから直ぐの事だ。【ディアンケヒト】の眷属に通された部屋で、眠るアイズと治療中のマシロを見た時は腹わたが煮え繰り返る思いだったよ」

 

 フィンは『狂人』の首筋に槍を突きつけつつ、つい数時間前の心境を思い出していた。あのマグマのようなドロドロの怨嗟を、アミッド達【ディアンケヒト・ファミリア】の面々に見せないようにしつつ建設的な会話をするのは実に骨が折れた。

 

「マシロを治療しつつ、アミッドは細かに自身の考察話してくれたよ。おかげで、君が今夜ここに来る事を確信できた」

 

「今夜、僕がここに来る? おかしいなぁ。『アレ』の頭が割れた件については、私は何も関わっていないんですが……。そもそも【戦場の聖女(デア・セイント)】は、私の存在自体知らない筈ですし」

 

「確かに、アミッドからは君の話なんて一言も出なかったよ。彼女が教えてくれたのは、マシロが襲撃され、アイズが気を失った現場には、ルビルという【ディアンケヒト・ファミリア】の団員がいたという事だ」

 

「………それが、何で僕が来る事に繋がるの?」

 

 『狂人』の声色が僅かに低くなる。

 要領を得ない説明に対する苛立ちか、それとも……。

 フィンは彼の異常者をよく観察しながら話を続けた。

 

「アミッドが言うには、アイズは何の外傷もなく気を失ったそうだ。そして、その直前にはマシロの血がベッタリと付いた椅子を持っていた。この事から、アイズの気絶の原因は外部からの物理的な衝撃ではなく、マシロを傷つけてしまった精神的ショックによるものだと推測できる」

 

「そうかなぁ? お姉ちゃんが『アレ』の頭を割るのは可笑しな話じゃないけど、そのショックで気絶するなんて有り得なくないですか? だって、アイズさんにとって『アレ』はどうでも良い存在だよ??」

 

 『狂人』の口から飛び出した感想は、完全に彼の世界の中だけのロジックだった。リヴェリアの言っていた通り、面白いほどに話が噛み合わない。まともにコミュニケーションを取ろうとしたら、コチラの頭がおかしくなってしまうだろう。故に、フィンもキャッチボールを諦める。『狂人』の語りを無視し、己の見解を述べ続けた。

 

「ただ、アイズがマシロを傷つけるなんて考えられない。しかも、硬い椅子で殴りつけるなんて相当の殺意だ。あの子がマシロに殺意を抱くなんて、天地がひっくり返ってもないだろう」

 

「ええ? 平常運転だと思ーーー」

 

「なら、今回の件は事故でしかない。アイズが『誰か』に殺意を抱き、椅子を振り上げた。治療院には武器を持ち込めないからね。そして、それをマシロが止めようとして惨劇が引き起こされた」

 

「ちょっと待ってくださいよ? それと僕が来るって分かるのと何が関係あるのさ?」

 

 耐えかねたのか、『狂人』は再び同じ質問をしてくる。それに対し、フィンは自身のペースを崩さなかった。

 

「アイズが理由もなく治療師(ヒーラー)に手を上げる訳が無いだろう?」

 

「それはそうだね」

 

「なら考えられる事は一つだ。そのルビルという治療師(ヒーラー)がマシロに危害を加えようとしたんだろう。事実、マシロの手首に付いた手形と彼女の手、そして彼女の手首に付いたアイズの手形が一致したそうだ」

 

「だから?」

 

「……リヴェリアから聞いたよ。君は随分とマシロやアイズに詳しかったらしいね。まるで、昔からその目で見ていたみたいに」

 

「…………」

 

「僕は君の事を『最近現れた敵』ではなく『長い間姉弟を監視して、最近ようやく動き始めた敵』だと思っているよ。そして、こうも確信している。敵は『君』ではなく『君達』だ」

 

「ーーー!?」

 

「動揺が顔に出たね。当たりだったかな? とにかくマシロを忌み嫌い、アイズに執着する敵が複数人いる。そして残念ながら、その所在は掴めない。けどーーー」

 

 フィンの湖畔色の瞳が、月明かりの影響か一瞬真紅に染まって見えた。

 

治療師(ルビル)によるこのタイミングでのマシロの襲撃……これを『君達』と無関係と考える方が無茶だろう? 敵の所在が掴めない以上は、『【ディアンケヒト・ファミリア】内に一人居た』と考えるしかない」

 

 本来であればこれは荒唐無稽な推論だ。

 マシロやアイズの事を昔から監視している存在が居たとして、その所在は普通に考えれば【ロキ・ファミリア】内部か、その周辺だろう。幾ら敵が複数人いるとは言っても、際限なく無限に湧き出る訳ではない。人員は有限である筈で、姉弟とゆかりのある場所以外に配置する余裕は、普通に考えれば無い筈だ。

 

 しかし、実際問題、【ディアンケヒト】の治療院で関係者と思しき者が事件を起こしてしまっている。これはもう、相当の広範囲に敵の目があると考えて良いだろう。

 

「そして、これはもしかしたら棚ぼたなのかな? アイズという護衛も意図せず排除する事ができた。この千載一遇の状況で『敵』が動かない理由はないと思ってね。これが、君が来ると確信していた理由だよ」

 

 故に、フィンは待ったのだ。

 マシロへの脅威がまだ過ぎ去っていない事を看破して。

 そもそもこんな事件が起こらずとも、以前よりマシロを狙う輩の存在は確定的だったのだ。ダンジョンでマシロを襲った『誰か』の関連なのか、それともマシロを食おうとした『狂人』の差し金なのかは分からなかったが、どちらにせよ、【剣姫】という守り手が消え、標的本人も昏睡状態というこの好機を逃す手はないだろう。

 

 だから、待っていたのだ。

 月明かりが差す時間まで。マシロの病室に身を潜めながら。

 そして、思惑通り釣れた(・・・)

 のこのこ姿を表したのは予想通り『狂人』の方だ。

 そんなマヌケな道化の質問に粗方答え終えたという事で、今度はコチラから質問させてもらう。

 

「さあ、次は僕の知りたい事を教えてくれ。君の目的は、『マシロを喰う』で間違いないかい?」

 

「はい!」

 

「それは何故? マシロを喰うと、君に何か良い事でも起きるのかな?」

 

「はい! アイズさんと家族になれるんです!」

 

「それは妙だな。弟を食い殺した相手の求婚を、アイズが受け入れる訳がないだろう。勿論、僕らも認めない」

 

 寧ろ、そんな事をすれば完璧にアイズの復讐対象にカウントされ、永久に彼女と結ばれ可能性が潰えるだろう。そう遠回しに伝えたものの、『狂人』の世界の認識は『常人』の理解を超えていた。

 

「イヤだなぁ、フィン団長! 求婚だなんて気が早いですよ! でも、皆さんがお似合いだって思うなら私は吝かじゃありませんからね!」

 

「……では仮りの話をしよう。仮にマシロを喰ってもアイズと家族になれないとしたら、君はマシロから手を引いてくれるかい?」

 

「無意味な仮定はやめましょう、フィン団長。『アレ』を食べたら家族になれる。それは確定事項です」

 

「どうして?」

 

「兄さんが、そう言ってました」

 

「………」

 

 『兄さん』。

 その単語に、フィンは内心で注目した。

 リヴェリアの報告を聞く限り、この『狂人』は情緒が不安定でコロコロと口調、一人称が変わる。そして『アイズさん』『アイズちゃん』『アイズお姉ちゃん』等々、あれだけ執着しているアイズの呼び方さえに一貫性がない。そして、その兆候がより顕著に現れた時に発せられた言葉が『兄さん』だったと言う。これを偶然の一致片付ける方が無茶だろう。

 等と思っていると、『狂人』は都合良く語り始めた。

 

 

「僕には、とても優しい兄さんがいました」

 

 

 幼い頃から、兄さんは自分より僕のことを優先してくれました。

 

 風邪を引いた時も僕と遊んでくれたし、そのせいで僕に風邪が移った時は一生懸命看病してくれました。

 

 どんな大好物だって分けてくれたし、森で捕まえた兜虫も、僕がせがんだらくれました。

 

 

 兄さんはとっても易しい人(・・・・)でした。

 

 

 そんな兄さんが、ある時、すっごく綺麗な女の人を連れて来たんです。

 

 僕は最初、そのお姉さんを女神様と間違えてしまいました。

 

 だって、そのぐらい美しかったんです。

 

 風に靡く長い金髪からはキラキラとした粒子が流れている様に見えたし、長いまつ毛は神秘的な金眼をより輝かせていたした。白い肌にはシミ一つなくて、桜色の唇は常に穏やかに微笑んでいました。

 

 僕は言いました。

 

「神様を連れてどうしたの??」って。

 

 すると、女神様は、驚いた様に目を丸くした後教えてくれました。自分は神では無いと。

 

 そして、兄さんも口を開きます。

 どうやら、兄さんはこの可愛すぎる女性と結婚するみたいです。

 僕は、まさか自分がこんなに美人のお嫁さんを貰えるなんて思っていなかったから、年甲斐もなくはしゃいでしまいました。

 

 

 でも………兄さんは、僕にお嫁さんをくれなかったんです。

 

 

 酷いと思いませんか? 

 

 兄さんの物は僕の物なのに。

 なのに、なんで兄さんが独占するんですか? 

 ありえません。当然、僕は猛烈に抗議しました。

 けれど、結局、兄さんが頷く事はなくて……。

 

 1月後には2人は結婚し、更に1年後には第一子を授かりました。

 その赤ちゃんは義姉さんの生き写しの様な子で、成長するにつれて、どんどん彼女に似て行ったんです。

 

 僕は兄さんに頼みました。

 姉さんをくれないのならば、せめてこの子をくれ・と。

 

 でも、兄はそれすら拒んだんです。

 

 酷い……どうして僕のお願いを無視するんですか?? 

 僕は可愛い弟じゃないんですか?? 

 僕はただ、姉さん達と家族になりたいだけなのに……!!

 

 そんな素朴で細やかな願いさえ聞いてくれないケチな兄さんに、大人な僕はとっても妥協しました。

 

 本当は嫌だったけど、当時の僕はLv.4で、兄さんはLv.7……戦っても勝ち目が無いので仕方ありません。

 

 僕は、もう1人子供を産むようにお願いしたんです。アリア(義姉さん)アイズちゃん(お姉ちゃん)もくれないなら、せめて次の子供を頂戴って。

 

 どういう訳か、そのお願いすらも兄さんは最初拒みました。本当に訳が分からない。義姉さん(アリア)お姉ちゃん(アイズちゃん)を寄越せと言っているんじゃないんですよ、僕は?? 

 

 まだ生まれてもない、つまり情も何もない赤子を注文しているだけなのに……。

 

 でも、僕はどうしても諦められませんでした。だって、もう既に妥協に妥協を重ねているんですから、これ以上は下げられません。

 

 だから、ちょっとしつこいぐらい頼み込みました。兄さんも驚いた事でしょう。慎ましい僕が、実に2年間も同じお願いをし続けたのですから。

 

 そして、誠意が伝わって、兄さんは約束してくれました。

 ついに僕の発注が受理されたのです。

 そんな経緯があって、約1年後に産まれたのがーーー。

 

 

「マシロ……というわけか……」

 

 余りにも唐突に、それでいてサラリと語られた内容に、フィンは嫌悪感しか抱けなかった。ここまで他人の思考回路を悍ましいと思ったのは、暗黒期に幅を利かせていた『闇派閥』の構成員に対して以来かも知れない。

 

「というかそれ、君のお兄さん一言も言ってなくないかい? 『マシロを喰ったら家族なれる』なんて」

 

「ねぇ? 酷いですよね〜? なんで男なんか産んでんだよ、これじゃあ貰う意味ないじゃん……団長もそう思うよね?」

 

「ハハ、君、さては予め相手の返答を想定しておいて、その通りの言葉が返ってこなくても押し通すタイプだね?」

 

「じゃあもう食べちゃうしかないよね! 『姉さん達の血』が入ったガキを食べれば、実質僕も同じ血を持ってるって事だもんね!」

 

「まあ、それで都合良く血が混ざるならそうかも知れないけど」

 

 必要最低限の確認事項を終え、フィンは雑に話を打ち切った。

 リヴェリアからの報告を受け、フィンが真っ先に予測した『狂人』の目的は、『精霊の力を得ること』だ。マシロは、精霊の血を持つアイズの弟。つまり、彼にもアイズ同様に精霊の血が流れており、『エアリエル』という精霊由来の魔法を2人とも扱えるのが良い証拠である。

 そして、その力を求める事自体も、別段おかしな思考ではないだろう。

 まだ下界に神々が降臨する前の時代は、精霊から力を貰った人間が数多の奇跡を起こしていた。そう言った者達が、今日まで語り継がれている『英雄』という奴なのである。故に、その力に憧れる人間がいても不思議はない。

 

 問題は、そういう願望を持った人間が、その渇望と同折り合いを付けているかという点だ。

 現実的ではないとハナから諦めているのか、何かしらの方法を探求しているのか。そして、目星をつけた方法が現実的なのかを見極める目が有るのか、無いのか。

 

 残念ながらこの『狂人』は、後者の中の後者だった様だ。つまり、自身の間違った見解に盲信してしまえるタイプ。幾ら理路整然と『血肉を食らった所で、体内の血液が入れ替わる訳ではない』と伝えても無駄だろう。こういう手合いは聞きたい事しか聞き入れない。

 

 だが、そういう人物だと確信できただけでも値千金である。敵の情報など、どんなに些細なモノでも、あればある程良いのだから。

 

「ありがとう。君の言い分は分かったよ」

 

「本当ですか!? じゃあ、さっさと『ソレ』をちょうだぁぁああぃ!!?」

 

 バックリと大口を開けて、矢の様に『狂人』が跳んで来る。予備動作が全く無かったそれは、悠々とフィンの横を飛び越える。虚を突き、警戒心の強い小人族(パルゥム)さえ出し抜いた漆黒の弾道は、布団越しにマシロの上に乗り、「いっただっきまァァアあぁす!!」と涎を撒き散らした。

 そして、鋭い歯を布団越しに突き立てる。

 顎の筋肉のみでマシロの指を引きちぎる馬鹿げた咬合力。それを持ってすれば分厚い布団の盾などあって無いようなモノだろう。

 喰われる。

 マシロが、無意味に。

 愚かしい『狂人』のふざけた思い込みのせいで。

 

「ーーー」

 

 そして、がぶりと『狂人』が食いついた布団が、ジンワリとしかし確実に赤く染まり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーーなんじゃ? 刺さっとらんぞ、バカモンが」

 

 

 

「ーーー!?」

 

 

 驚愕と混乱。

 この時『狂人』を襲っていたのはそれだろう。

 布団の中から顔を出したのは、幼く脆い銀の少年ではなく、年輪を積み重ねた無骨で硬い規格外のドワーフ(ガレス・ランドロック)だった。マシロとは対極とも言える存在の出現。その圧倒的理不尽に、

 

「ふんッ!!」

 

「ぶべらぁァァーーー!!?」

 

 全ての歯をへし折られた『狂人』は、何の躊躇もなく殴り飛ばされる。歯のない顔面を陥没させながら床→左側面の壁→床と激突し沈黙した『狂人』は、比喩でもなんでもなく、既にその時点で詰んでいた。

 

 相手があのフィン・ディムナだから。

 ガレス・ランドロックに致命すぎるダメージを食らったから。

 

 ではない。

 それもあるが、それだけではない。ただ単純な少数精鋭、一騎当千の大戦力による理詰めだけでは『完璧な詰み』とは言い(がた)い。真の意味での『詰み』を語るのであれば、最低でもこういう状況(・・・・・・)を用意しなくてはーーー。

 

「あ、あぁああぁぁあ………!?」

 

『狂人』の顔が絶望に染まる。

 当然だ、同情しよう。【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナをしてこんな状況(・・・・・)には陥りたくもない。

 

『狂人』を取り巻いているのは、フィン、ガレス。そして、ラウルを始めとした数名の二軍メンバー。それに、新米から中堅までの下位団員。総勢10名の【ロキ・ファミリア】に囲まれていた。

 

「レフィーヤを筆頭に魔導士達も来たがっていたんだけどね。流石に、この狭い部屋で魔法を使わせるわけにもいかないから、遠慮して貰ったよ」

 

「ティオネやティオナも殺気だってあったんじゃがのう。ここにマシロがいない事をお主に看破された時の保険として、本拠(ホーム)に詰めてもらっとる。リヴェリアと一緒にのう」

 

「10人という数字を多いと見るか少ないと見るかは君次第だけど、僕としては、病室という限られた空間(スペース)の中で互いを邪魔せずに動ける最大人数だと思っているよ」

 

「………ッッ!?」

 

 『狂人』の顔が激しく歪む。それは決して、ガレスの剛腕により物理的に変形しているからだけではないだろう。散々好き勝手暗躍して来た男の、相応の末路だとも言える。

 

「動くな。皆、前進するッス」

 

 ラウルが『狂人』を牽制し、周囲の仲間たちに指示を飛ばす。フィン、ガレスを除いた8名の冒険者達による円形の包囲網。一斉に歩を進める事によって円は小さく、しかし強固になっていく。

 物理的に通り抜けられると隙間がなくなった所で、ラウルが更に前に出た。包囲網による間接的な拘束から、手足を縛る直接的な拘束に転じる為だ。【超凡夫(ハイ・ノービス)】がその役割を一任された。

 

 控えめに言って完璧な布陣だろう。

 第一級冒険者の奇襲で敵を弱らせ、多数の冒険者で包囲網を敷き、Lv.4の冒険者の手によって物理的に拘束を施す。その間全てフィン・ディムナが視ているのだ。

 逃げ場など何処にも無い。

 ここから逃れる事が出来たなら、それはもう奇跡である。

 

 

 

 

 

 奇跡は、起きた。

 

 

 

 「ッッ!! このぉぉおおぉおぉおおお!!?」

 

 

 腹に据えかねたという様子で、気焔の炎を吐きながら突撃して来たのは1人の少女。否、少女に見える程美しい顔をした少年だった。黒い髪を振り乱しながら、彼は目を血走らせて『狂人』に組み付く。

 

「「「!?」」」

 

 突然の乱心。

 作戦外の行動に、周りの冒険者達は騒然となる。

 それは『狂人』の眼前にいたラウルも例外ではない。

 

「な、何するッスか、ノース!? やめるッス!?」

 

「このッ! このォォオ! よくも、マシロをッ、殺す! 殺してやるッ!!」

 

 ラウルの静止を振り切り、黒い少年は一心不乱に『狂人』を殴る。Lv.3である彼の乱心を止めるには包囲網の陣形を崩す他無かった。ラウルを中心に取り押さえるものの、ノースの暴走は一向に収まらない。数でもレベルでも劣り、確実に振り払えない状況であるにも関わらず、無駄とわかっている筈なのに、彼は一切の力を緩めなかった。

 

「ちょっと待て! 奴がいないぞ、ラウル!?」

 

「なっ!?」

 

 その指摘に、ノースを抑え込むのに躍起になっていたラウルと他のメンバーが、自分達の失態に気がつく。クルスの言葉通り、その場から『狂人』の姿が無くなっていた。

 

「そんな……ど、どこから……」

 

「窓からだね」

 

「!」

 

 青い顔で辺りを見渡すラウルに、フィンが涼しい声で解を授ける。その言葉に通り、彼が指差す先には部屋の窓があり、破られる形でその役割を終えていた。

 フィンのお告げにより、奴の逃走経路は確かに分かった。しかし、だからこそ拭いされない疑問が湧き上がる。

 

「だ、団長……どうして行かせたんスか……?」

 

 窓の位置はベッド側。

 ラウル達はどちらかと言うと扉側に陣取っており『狂人』を追い詰めたのも扉側である。そして、ベッド側ではフィンとガレスが成り行きを見守っていた。万が一、ラウル等が奴を取り逃した時の為の保険として。

 

 手合いのLv.5がLv.6ふたりを突破出来る訳がない。

 つまり、彼らは敢えて、あの『狂人』の前に立ちはだからなかったという事だ。

 ラウルにはその理由が皆目検討も付かなかった。

 しかし、フィンはその疑問に対する解は与えず、そして団員達の失態を微塵も褒めず、寧ろ労いの言葉さえかけて撤収の指示を出した。

 

 その最中、小声でガレスが端的に尋ねる。

 

「………本当にコレで良かったのか?」

 

「ああ、全て想定通りさ。あの場面で、ラウルやクルス以外の『誰か』が乱心を起こす事も含めてね」

 

「フン……、そこまで読めているなら尚更ラウル達に伝えておけば良かっただろう。そうすれば、奴を捕らえられたかもしれん」

 

「それじゃあ、蜥蜴の尻尾切りさ。マシロを狙う敵の『元凶』が奴かどうかは、まだ確証が持てない」

 

「蜥蜴の尻尾切り、か。つまり、お主は奴にまだまだ味方がいると考えておるのじゃな?」

 

「間違いないだろうね。今晩見つけた『(ノース)』。そして、アミッドからの情報から推測するに『彼女(ルビル)』。既に2人も協力者と思われる者がいるんだ」

 

「まあ、この後に及んでその2人だけな訳もないか」

 

「ああ」

 

 勿論、ノースとルビル。この2名だけの可能性もあるにはあるだろう。しかし、『狂人』の持つ姉弟の知識量からして、その可能性は限りなく低いとフィンは判断していた。あれはもっと大勢の目を持って長い間の情報収集を行なっていなければ説明が付かない。

 それに、【ディアンケヒト】の治療院という本来であれば、姉弟の監視に適さない場所にも人員が配置されていたのだ。少人数で動いていたのなら、そんな場所で仲間を遊ばせておく余裕はないだろう。

 

 フィンは己の推測を語りながら、割れた窓から琥珀色の月を見上げた。白く照らされる湖畔の瞳を細め、【ファミリア】の長として、そして少年の父親代わりとしての決意を口にする。

 

「1人ずつ表舞台に引きづり出してやろうじゃないか。全ての手足を捥ぎ取り、丸裸にした後で、今度こそ本丸の首を獲るとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 暗い暗い意識の中で、幼い少女はホッと安堵の息を吐いた。スキルの影響か、それとも分け与えた『血』のせいかのか、少女には朧げながら『最愛』の状態が分かるのだ。

 愚かな金色(わたし)の手によって傷付いた『最愛』は、今この時を持ってして、完全に命の危機を脱した。少なくとも、あの頭の破損によって落命する心配はない。アミッドや他治療師(ヒーラー)達の献身、そして、少し前に『血』を与えていたおかげだ。よかった。ほんとうに、

 

「よかった……」

 

 ………………………………………。

 

 

「シロが生きてるっ、嬉しいっ!」

 

 

 ………………………………………………………………………。

 

 

 

「早くあの子に逢いたいな……。ねぇ、早く起きてよ、わたし(・・・)!」

 

 

………………………………………………………………………………………………………………………なに言ってるの? この恥知らず。

 

 

「え?」

 

 

 あの子を傷付けたのは、あなた(わたし)でしょう?

 

「そ、れは……」

 

 あなた(わたし)があの子の頭蓋を割った。だから、わたし達の『最愛』は、また死にかけた。精霊の血が覚醒してなかったら、あの場にアミッドがいなかったら、確実に死んでいた。

 

「や……め、て……」

 

 今回だけじゃない。あなた(わたし)は、もういっぱいあの子を傷つけてる。8才のあの子を、身勝手な理由で遠ざけて、無視して、あの子の心を引き裂いた。

 

 

「………!!」

 

 

 雪みたいに白くて、綿菓子みたいにふわふわだったあの子の魂が、黒くてトゲトゲになった。

 

 自分のことを『ぼく』って呼んでたのに、急に『俺』って言うようになった。

 

 言葉づかいが、ベートさん(おおかみ)みたいになった。

 

 リヴェリアにも、フィンにもガレスにもロキにも、誰にも甘えなくなった。

 

 

 自分は嫌われてるんだって、人から好かれなくて当然だって、価値のない人間なんだって、なんの抵抗もなく思い込むようになった。

 

 

 その結果が、ベル・クラネル(うさぎ)を助けた時のあれ(・・)でしょう?

 

 

「ぁ……あぁぁあ……ぁ………」

 

 あの子が【隷属演陣(スレイブ・アクト)】を使ったのはどうして?

 

 ボロボロになっても、猛牛(ミノタウロス)からベル・クラネル(うさぎ)を守ろうとしたのは何故?

 

 なんで、見捨てて逃げなかったと思う?

 

 なんで、12才の子供が、自分より他人を優先できたの?

 

 

 

 それはね、

 

 

 あなた(わたし)が何年も何年も何年も何年も、

 

 

 入念にすり込み続けたからだよ?

 

 

 

 

『君は誰からも愛されてないって。人から愛されない、ダメな人間なんだって』

 

 

 

「ーーーーーーッ!?」

 

 

 あなた(わたし)は本当の意味でなにがいけなかったのかを理解してるの?

 

「いーー」

 

 あの子があなた(わたし)の行動のなにに傷ついて、なにに悲しんでいたのか分かってる? 分かったつもりになってない? 表面的な理解に留まってはいない?

 

「いや……」

 

 仲直りできて、なあなあになってるって、分かってる?

 

 

「やめて……もう、聞きたくない……ッ!?」

 

 

 ………………。

 すぐ、そうやって泣くね。

 あの子は、最近まで泣くことさえできなかったのに。

 

 そうやって、痛いところから逃げて、背を向けて、泣いて、助けを待ってる。来るか分からない。いるかすらも分からない、『英雄』なんて幻想に縋ってる。

 

「だって……!」

  

  英雄なんていないよ。

 

「い、いるもん! きっとどこかに……!」

 

いない。

 

「わたしだけの英雄が……!?」

 

     いらない。

 

 

        必要すらない。

      

 

 

  だって、そいつ等はあの子のピンチに駆けつけもしなかった。

 

 

「………っ!?」

 

 あなた(わたし)に心が壊されそうになっていた期間(とき)も……、ダンジョンで傷ついて死にかけた瞬間(とき)も……ッ、今回だってーーーッッ!!

 

 

 

  だから、そんな奴等(英雄なんか)いらないよ。

 

 

  わたしには、あの子がいれば良い。それ以外いらない。

 

  もう、あなた(わたし)には任せられない。

 

 

「…………………え?」

 

 

 あの子の声も、笑顔も温もりも、思い出も、全部わたしが貰う。

 

「なにを……」

 

 あなた(わたし)があの子に関わっても、あの子は不幸にしかならない。だから、

 

 

 「やーー」

 

        全部、わたしのモノにする。

 

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえェぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえェぇぇええぇぇぇぇぇぇええッッッ!!?」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

         「………やめて?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   「なにを………?」

 

 

 

 

 

 

 

「わたし、なにをやめて欲しかったんだっけ?」

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、知ってる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       「『復讐姫(アヴェンジャー)』ーーー」

 

 

 

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