海底基地 食堂
「プロペラが後ろに付いた飛行機が飛んでいた?」
「見た事が無い飛行機だったから良く覚えているっぽい」
智明が出撃艦隊に復帰し、解放された南西諸島海域へ何度か出撃する中、別働隊の夕立がそんな報告をしてきた。旗艦をヴァーチにした、夕立、コーバック、ウィザード、ビフト、ハクで編成した艦隊が未確認の飛行物体を目撃したと言う。
「ヲヲッヲ」
ハクが飛行機を撮影されている写真を智明に手渡す。
因みにこの写真はハクが撮影したモノである。最近彼女は写真を趣味にしており、出撃中の合間に景色をよく撮影していた。
「確かに、見た事の無い形だ。しかし、こんな形状で飛べるんだなぁ」
「艦載機のデータには其れらしいモノは無いわ」
「新しく開発された試験機でしょうか?」
「ううむ…現状では何とも言えないなぁ。ところで、この飛行機に夕立達は見られたの?」
「分からないけど、私達が見えたから向こうも多分見てる筈っぽい?」
「そっか…」
智明は頭を抱える。データには無いが明らかに人類側で造られた飛行機だ。1機のみで飛んでいる事から偵察か新たに開発し、試験飛行している機体であろう。それだけなら問題無いのだが……
「ヴァーチ達を見られたのがなぁ…」
ヴァーチ達深海棲艦組を目撃されたのは問題であった。同行していた夕立は捕虜として見られるだろうが、この海域で見ない編成艦隊である為に異常事態であると思われるだろう。
そうなると此の事を調べる為に艦隊が差し向けられるだろう、そしてそのまま智明の存在を知られてしまう可能性がある。
それは拙い。未知の存在となる自分を手に入れるべく、更に艦隊がやって来る事になるだろう。そして、そのまま捕まったら即解剖コースへまっしぐらだろう。かと言って抵抗して敵対したら本末転倒である。
智明は溜息がてらポツリと愚痴る。
「余り関係を持ちたくは無いなぁ」
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同時刻
南西諸島カムラン半島隠れ基地 食堂
「戦艦級の艦隊を目撃しただと?」
「せやねん、此処のエリアじゃいる筈の無い編成の艦隊やった」
智明艦隊の夕立が芳彦艦隊の艦載機を目撃したように、芳彦の元にも智明艦隊の目撃情報が龍驤から報告されていた。
「編成は?」
「それがな……」
そこで龍驤が口籠り、その様子に芳彦が首を傾げる。
「何か問題があるのか?」
「編成がヤバ過ぎやねん、旗艦と思うのが戦艦タ級フラッグシップ」
「ぶぅっ!?」
南西諸島海域では有り得ない戦艦の名前が出て芳彦は吹き出してしまう。しかもよりにもよって強化体であるフラッグシップである。
「ほ、他は…?」
「潜水艦カ級フラッグシップに空母ヲ級エリート、重雷装巡洋艦チ級フラッグシップ、軽巡洋艦ホ級フラッグシップ、そして夕立や」
「最後の夕立は捕虜として…、5隻編成だとしてもおかしいだろ。強過ぎだっつーの」
「見間違いでは無いのですか?」
艦隊の編成に芳彦は驚愕を通り越して呆れており、共に聞いていた不知火は事実なのか確認する。
「間違い無いで、皆が赤やら黄色のオーラを撒き散らしとったさかい」
「もう一度言うが強過ぎだろ? 殺しに掛かっているとしかコメント出来無ぇぞ?」
「まともにぶつかれば無事では済みませんね…」
芳彦の言葉に龍驤と同行していた木曾、雷、那珂はうんうんと頷く。芳彦の艦隊に戦艦クラスが居ない現状、フラッグシップとの艦砲射撃での殴り合いへ移行したならその被害は測り得ない。しかも潜水艦から魚雷攻撃までされたら全滅必至である。
「どうしましょう、司令官さん?」
「…今後の出撃には俺か龍驤を必ず同伴し哨戒機を必ず飛ばす。怪しい艦隊を発見次第、即座に撤退する。様子見は無しだ」
「ううむ、悔しいが現状では仕方ないか」
芳彦の案に木曾は悔しい顔をする。
「暫くの間、出撃は7隻全員で行くことにする。もし遭遇したら全力で撤退だ、いいな?」
「「「「「「了解(や)!!」」」」」」
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数日後
南西諸島カムラン半島
「このエリアの連中は粗方殲滅出来た様ね」
「うむ、これぐらいなら問題無いな」
「この調子なら敵主力艦隊も楽に倒せそうだけどねー」
芳彦艦隊の雷達は道中で発見した敵前衛部隊を被害無く壊滅させた。
「敵の主力には戦艦1隻と空母が2隻がいるんだ、龍驤が新しい艦載機の操作に慣れる迄は攻めるつもりは無いし、何より例の艦隊の正体が掴めない事には迂闊には動けんよ」
「暫くは例の艦隊の調査と資材集めになるでしょうか?」
「悔しいが俺達はもっと力をつけ………、!?」
「プロデューサーさん、どうしたの?」
会話の途中で急に黙り込んだ芳彦に那珂が怪訝な顔をする。彼の顔が次第に苦々しそうになっていく事に、何か悪い事が起きるのであろう事が分かった。
「何でこのエリアに!? 暴れすぎたと言う事か?」
「何や、どうしたん?」
「…戦艦ル級、空母ヲ級2隻、重巡リ級、駆逐ハ級2隻の主力艦隊が接近中だ」
「何だと!?」
「そんな…、何故?」
無線による偵察機の目撃した情報を聞いた艦娘達は驚愕の表情になる。
「これより全速力で基地へ撤退する……くそっ、偵察機がバレた」
「如何するの司令官?」
「偵察機を囮にして撤退するのも一つの戦法ですが…」
不知火の意見に芳彦は歯噛みする。敵艦隊を発見した偵察機は彼の自動操縦で無く、装備妖精が搭乗して操作していた。
仲間である妖精を見殺しにするなど彼に出来る筈も無く……
「…これはピンチだが敵主力艦隊を壊滅させてこの海域を開放できるチャンスでもある」
「司令官さん?」
己の頬を叩き、真剣な表情にすると芳彦は皆に号令を掛ける。
「陣形はT字陣、横に雷、木曾、羽黒、那珂、不知火。羽黒の位置から垂直に俺、龍驤とする」
「プロデューサーさん、それは…」
「敵は複縦陣でこっちに真っ直ぐ突っ込んで来るから此処で迎え撃つ。まず俺と龍驤で削れるだけ削る、そして射程距離に入ったらお前達、有りっ丈の砲弾と魚雷をぶち込んでやれ。龍驤は周囲の警戒を怠るな、例の奴らが何時現れるか判ったもんじゃない、速攻で終わらせるぞ!!」
芳彦の言葉に一瞬静寂が訪れるが…
「任せて司令官。行っきますよー!」
雷が元気よく返事する。
「上等だ、お前に最高の勝利を与えてやる」
木曾が不敵な笑みを浮かべる。
「司令官さん達の背中は私が守ります!」
普段弱気な表情を消して羽黒が決意する。
「那珂ちゃん達ピンチ、一番の見せ場です!」
那珂が明るく応える。
「水雷戦準備、期待に応えてみせます。」
慌てる事無く、不知火が冷静に答える。
「ウチに任せとき、艦載機のみんなぁー、お仕事お仕事ー!」
龍驤が自身気に艦載機を展開していく。
「よっしゃあ、久々の全力戦闘だ。一気にいくぞぉ!!」
芳彦と龍驤の艤装から艦載機が次々と飛び立ち、敵へ向かっていく。
水平線に現れた敵艦隊からも艦載機が飛び立っており、艦載機同士のドックファイトを皮切りに戦いは始まった。
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「リ、リリ!」
「あれは…」
カムラン半島へ進撃していた電達は敵護衛空母群を壊滅させていた。これまでの調査の結果、鋼材集積所を発見しておりそこへ向かおうとしていた所にヴァーチが何かを発見し電に声を掛けた。
視界の向こうには深海棲艦と艦娘達との激しい艦隊戦が行われていた。水柱が何本も立ち、戦闘機や爆撃機、攻撃機が何機も飛び交っているが、艦娘達は深海棲艦達に囲まれており不利な状況に陥っている。良く見ると艦娘達は未確認の空母を含め7隻であるのに対し、深海棲艦達は10隻という2艦隊規模であった。特に深海棲艦側は空母が軽空母含め5隻存在しており、大量の攻撃機を飛ばして激しい爆撃を艦娘達に行っていた。艦娘側の空母も攻撃機で抵抗をしているが数と全方向からの攻撃に終始押されっぱなしの様であった。
「はわわ、大変なのです!!」
その内、空母の対空射撃を掻い潜った爆撃機の攻撃を受けて空母が爆発した。慌てて他の艦娘が援護しようとするが重巡洋艦リ級2隻と駆逐艦ハ級2隻、大量の攻撃機の執拗な攻撃に動けない。そして崩れ落ちが空母に止めを刺すべく軽空母ヌ級が新たな艦載機を展開しだしていた。
「襲われている艦隊を助けるのです!!」
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「くそっ、これ以上やらせるかよぉ!!」
搭載武装の8連装短距離対空噴進弾発射機から対空ミサイルを発射しながら芳彦が叫ぶ。発射された対空ミサイルはロケット弾を龍驤へ打ち込もうとしていた敵艦載機を木端微塵にする。
「まさか敵護衛空母群まで進軍していたなんて……畜生っ、俺達を本気で潰すつもりか!!」
敵主力艦隊との戦いは序盤こそ有利に進んでいた。芳彦と龍驤の艦載機の爆撃と雷撃によって敵駆逐艦を2隻共撃沈、他艦も中破まで被害を与え、空母ヲ級1隻は艦載機を発艦出来なくさせた。
このまま勝てると思った矢先、龍驤が悲痛な声を上げたのだ。
「アカン!? 4時の方向に新たな敵艦見ゆ! 軽空母ヌ級3、重巡洋艦リ級1、駆逐艦ハ級2や!」
「嘘…だろ……?」
龍驤の言葉に顔を青ざめながら言われた方角を向くと、報告通りの敵艦隊が此方に向かって来ており、主力艦隊を援護すべく艦載機を発艦させていた。
「りゅうりゅうっ、残っている艦載機を全て飛ばせ!! 戦艦と空母が生き残っているのに軽空母3隻とか確実にやられる!!」
「了解や! 幾らなんでもこの状況ヤバ過ぎやで!?」
「なかっちとぬいぬいは2時方向へ展開しろ! 新手が来る」
「うっそ!? 那珂ちゃん達、本当のピンチ!??」
「了解しました」
那珂と不知火は向かって来る護衛空母群に砲口を向け、迎え撃つ。3隻のヌ級から発艦した艦載機の群れが襲い掛かろうとするが芳彦と龍驤の艦載機が那珂達を護る。
戦場は乱戦といかないまでも、深海棲艦達に包囲されつつあった。
重巡リ級こそ武装を破壊して無力化出来たが、戦艦タ級がしぶとく生き残っており、生き残っている16inch連装砲で執拗に砲撃を仕掛けていた。
「お願い、当たって!!」
「くぅっ、嘗めるなぁ!!」
「絶対に負けるものですか!!」
主力艦隊を全滅させるべく羽黒、木曾、雷の3人が砲撃を繰り返す。砲撃の直撃こそ無いが爆撃と相まって衣服はボロボロになっていた。
「リリィ!!」
「え…、きゃあ!?」
武装を全て破壊されていた重巡洋艦リ級が突如、突っ込んできて羽黒に殴り掛かってきた。もう攻撃出来ないであろうと警戒を薄めていたのが仇となってしまった。
「羽黒!?」
「な、直接殴り掛かって来ただと!?」
木曾がリ級を沈めるべく14cm単装砲を向けるが羽黒に組み付いており照準が合わせられないでいた。おまけに…
「木曾、危ない!!」
「うおっ!? 新手の魚雷か?」
護衛空母群の駆逐艦ハ級が放ってきた魚雷が木曾に直撃しそうなところで間一髪、雷が爆雷で相殺する。しかし至近距離での爆発に木曾は体制を崩してしまいそこへリ級の8inch三連装砲が火を噴いた。
「ぐぅっ!?」
「木曾!?」
放たれた砲弾の1発が直撃し、木曾は大破に近いダメージを受けてしまう。しかし、痛みを堪えながら14cm単装砲で反撃して8inch三連装砲を破壊した。
「しっかりして!」
雷が木曾に肩を貸しながら魚雷でリ級を追撃する。しかし今度はハ級が5inch連装砲で攻撃してきた。
「ああもう! しつこいわねっ、不知火達は何しているのよ?」
雷が応戦しながら愚痴を零すが、那珂と不知火はヌ級からの攻撃機によって釘付けにされて援護が出来ない状況になっていた。そこへもう1隻のハ級が攻撃を加え、少なくない被害を受けていた。
「きゃあ!? 顔は止めて!!」
「くぅっ、好い加減墜ちなさい!!」
そんな彼女達を援護する為に艦載機を飛ばす明彦達であったが、敵攻撃機が見逃してくれる筈も無く、妨害によって援護出来ずにいた。
「墜ちろぉ!!」
武装を総動員し、攻撃を続ける。しかし20ミリ多銃身回転式機銃(CIWS)の弾幕を掻い潜った爆撃機のロケット弾が襲い掛かった。
「があぁっ!?」
「「「司令官(さん)!!?」」」
腹部に直撃したロケット弾が爆発し、装甲衣服がはじけ飛び、腰周りに装着している20ミリ多銃身回転式機銃が破壊された。
「ごほっ……、痛いなやっぱ…」
「ちょっ…、血ぃ吐いとるやん!?」
生まれて初めての痛みに、芳彦は抉られた脇腹を抑え蹲る。自衛隊員であった頃は実戦等経験せず、溺死以外に大きな事故に遭った事も無かった。
装甲には自信があったが、ロケット弾を一点集中で叩き込まれた脇腹は装甲衣服が破られ、肉まで抉られてしまい血がドクドクと溢れていた。
慌てて龍驤が駆け寄るが彼女も爆撃機の攻撃によって装甲衣服が所々破けていた。
「どうしたん?」
「…嘘だろ、選りに選ってこんな時に」
「ホンマにどうしたん……まさか?」
「戦艦タ級にル級、重巡洋艦リ級、空母ヲ級の4隻、どれもエリート以上…終わった」
「そ、そんな…」
絶望的になった現状に芳彦の顔が青ざめる。以前見た艦隊では無いが、砲撃戦になったら確実に全滅する編成だ。
敵勢力
主力艦隊残り
戦艦タ級:中破
空母ヲ級2隻:小破、中破
重巡洋艦リ級:大破
護衛空母群
軽空母ヌ級3隻:いづれも小破以下
重巡洋艦リ級:中破
駆逐艦ハ級2隻:小破、大破
接近中の艦隊
戦艦タ級エリート
戦艦ル級フラッグシップ
重巡洋艦リ級フラッグシップ
空母ヲ級エリート
「……りゅうりゅう、お前達だけでも撤退をしろ。このままじゃ嬲り殺しだ…」
「そうもいかんようやで」
「何…?」
険しい表情の龍驤の視線の先にはヌ級3隻が艦載機を大量に発艦させている姿があった。艦載している全てを発艦させたのだろう。今はヌ級の周りにホバリングして待機しているが、命令すれば何時でも襲い掛かれるだろう。どうやら芳彦達を逃がすつもりは無いらしい。
「くそ…、完全に俺の判断ミスだ。欲張らずに撤退していればこんな事には…」
「キミのせいや無いよ。こんな状況になるなんて誰も予想出来るかいな」
此方に向かって来る艦隊から何かが飛んで来る。何かは解らないがこれまでと思った芳彦は諦めの感情に陥り崩れ落ちそうになる。
瞬間、飛んでくる物体は軽空母ヌ級の上空に展開していた艦載機群に向けて突っ込んで行き、閃光と共に大爆発を起こした。閃光が止むと、飛んでいた敵艦載機は粉微塵となり、全て海面へ墜ちて行った。更に砲弾が戦艦タ級に直撃して爆散する。残った部位が下半身だけというスプラッタな光景を見せながら、タ級は海中に沈んで行った。
「な、何が?」
突然の出来事に状況を理解出来ない芳彦達。
「皆、この人たちを護るのです!!」
「駆逐艦夕立、出撃よ!」
ヴァーチ達の後ろにいた電と夕立が速度を上げながら芳彦たちの元へ駆け、武装のファランクスで弾幕を張って敵艦載機を片っ端から撃ち落とす。
「リリ!!」
羽黒に取り付いているリ級をヴァーチが蹴り上げ、止めとばかりに8inch三連装砲を撃ち込んで粉砕する。
「タタターッ!!」
「ルルー!!」
ヨハムとブラスの16inch連装砲及び3連装砲が火を噴き、混乱していたヌ級3隻を瞬く間に轟沈させる。
「ヲッヲ!」
ハクの艦載機が電達が撃ち漏らした敵艦載機を仕留めつつ、ヲ級へ爆撃を加える。
「艦娘と深海棲艦が共闘している…?」
「ど、どうなってんのや?」
有り得ない光景に芳彦は唖然とするしかなかった。他の艦娘達も理解できない光景に呆然としている。羽黒など取っ組み合っていたリ級を間近で爆散されたのに動けずにいた。
「これで終わりなのです!!」
電が放った零式ハープーンが残っていたハ級を撃破し、戦闘は終了した。
かくして、芳彦艦隊は窮地を脱したのだった。
:::::
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ…」
電に尋ねられ芳彦は答えたが芳彦の艦隊は酷い状況だった。甲板が無事で艦載機が発艦出来るが芳彦含む雷と那珂、不知火、龍驤が中破で木曾が大破。唯一無事なのはリ級と取っ組み合いになっており、敵から攻撃されなかった羽黒で小破程度で済んでいた。
しかし、2艦隊に包囲され誰も轟沈しなかったのは奇跡と言えるだろう。エリート以上の深海棲艦が近くにいるというのに何もされない今の状況に戸惑いながらも芳彦は皆が無事である事に安堵していた。
「取り敢えず、これを使ってくださいなのです」
電から何か箱の様なモノを受け取ると、箱から野球ボールを2回りほど大きくしたような球体が箱から浮かびだし、芳彦達に纏わり付いた。
「な、何だこりゃ?」
「慌てなくても良いのです。これは皆さんを修理してくれるのです」
戸惑う芳彦達を尻目に、球体からアームの様なモノが伸びてダメージ部位を修理しだした。良く見ると球体の中に装備妖精が乗っており、レバーを動かしてアームを操作していた。
「応急修理要員……なのか?」
「これは改良型だよ」
「電達は『船体修復部隊』と呼んでいるのです」
船体修復部隊は艤装や装甲衣服の修理は元より、傷の手当や消毒、痛み止めや増血剤の注入から抉られた芳彦の腹部の縫合まで行い、修理が終わる頃には傷も綺麗に消えていた。
「でも驚いたのです。貴方も男なのですね?」
「智明以外に初めて見たっぽい!」
「智明?」
「電達のリーダーなのです」
「貴方と同じ男だよ」
「俺以外にもいたのか……」
電達の言葉に芳彦は驚く。そこへ…
「ヲヲ~」
「ひゃあ!? そ、そんなに撫でないでください!!」
「タ、タタタ?」
「ル~」
「ふぇあ~、ふぁおをふぃふぁらないぶぇ~(嫌ぁ~、顔を引っ張らないで~)」
「こら! お前達止めないか!!」
ハクが羽黒の髪の毛を弄り、ヨハムとブラスが那珂の頬っぺたを其々引っ張っている。木曾が止めさせようとするが止められないでいた。
「ところで…、こいつらは何なんだ?」
「この娘達は電の仲間なのです」
「な……!?」
「ちょ、ちょっとどういう事なの?」
暁型3番艦、つまり電の姉艦である雷が詰め寄って来る。自分がいる艦隊の所属では無いとはいえ、妹艦である電が深海棲艦達と行動を共にしているのは心配な様だ。
「お姉ちゃん、心配無いのです」
「そうっぽい、皆良い人だよ?」
電は芳彦達に事情を説明した。
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「と言う事なのです」
「深海棲艦を仲間に…」
「有り得ません…」
「でも事実なのです」
深海棲艦を仲間にする智明の能力に芳彦達は戸惑いを隠せない様だ。
「それじゃあこの前りゅうりゅうが見つけた艦隊も…」
「私がいた艦隊っぽい?」
「はい、同じ艦隊なのです」
「フラッグシップとか強過ぎやろ、おたくの艦隊……」
龍驤が驚き半分の呆れ顔になる。
「芳彦さん達はこの後どうするのですか?」
「船体が修復されたとは言っても、弾薬も尽きて俺とりゅうりゅうの艦載機が殆ど無くなってしまったからな。基地へ帰るさ」
「分かったのです。敵の襲撃が考えられますから基地まで送っていきましょうか?」
「ああ、頼む」
「それじゃあ皆さん、芳彦さん達を………ヴァーチさん?」
電達の艦隊の中でヴァーチだけが戦闘終了後、黙りこくっていた。
「ヴァーチさん、アレが来たのですね? 芳彦さん、基地へ戻る前に深海棲艦達の残骸を貰っても宜しいですか?」
「え? あ、ああ。助けて貰った身なんだ構わないが…?」
「有難うなのです」
感謝の言葉を言い、電達はヴァーチに集めた敵深海棲艦の残骸を与え始めた。唯、無心に残骸を食べ続けヴァーチの姿を芳彦達は黙って見ていた。電達が持って来ていたコンテナに入れられていた残骸まで平らげたヴァーチは満足したような表情で口を拭った。
その時、ヴァーチに変化が現れる。
ゴキリゴキリという音と共に体格が変わっていく。芳彦達は更なる異様な光景に空いた口が塞がらない様だ。
数分でヴァーチの進化は完了した。
「レ」
重巡洋艦リ級であった時より身長が低くなり、黒いビキニだけであった格好に同じ黒色のパーカーと白黒ストライプのマフラーが加わる。黒かった髪の毛は白くなり、若干の癖っ毛が出来ていた。しかし何より大きく変化していたのは……
「……尻尾か?」
「尻尾っぽい」
「尻尾なのです」
「レ♪」
腰あたりから艦首を模した尻尾が伸びていた。
「戦艦レ級か、データで知ってはいたがこのエリアには場違い過ぎだな」
「お姉ちゃんにちょっと似ているのです」
「…確かに」
「そっくりさんっぽい?」
「ちょっと! 私はこんなに禍々しく無いわ!!」
ヴァーチが戦艦レ級に進化した事により一悶着起きたが、その後無事に芳彦達は基地へと戻れたのだった。
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南西諸島カムラン半島隠れ基地
「それでは電達は帰るのです」
「ああ、護衛有難うな」
「また会いましょうっぽい!」
「レレレ~♪」
「タタ~」
「ル、ル」
「ヲ!」
芳彦達の護衛を終えた電達は燃料の補給をして貰い、帰路に付く事となった。今回、電達のリーダーである智明がいなかったので、後日智明を交えた対談をする事を約束した。
去って行く電達を見送りながら雷が呟く。
「強かったわね」
「そうだな」
「戦艦でエリート以上というのもありますが、圧倒的でした」
「でも良い人達でした」
「深海棲艦も笑えるのね、那珂ちゃん意外だった」
「私達も負けていられないな」
「せや、これから頑張ろうな?」
艦娘達の言葉を聞きながら、芳彦もポツリと呟くのだった。
「俺達も強くならなきゃな」
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海底基地
「唯今戻ったのです」
「御帰り、電ちゃん。そっちはどうだった?」
「はい、その事で報告があるのです」
「分かった、それ「レレー♪」うわぁっぷ!?」
電の報告を聞こうとしたところでヴァーチが智明に飛び付いてきた。
「この娘は…ヴァーチかい!?」
「レ!」
「はい、ヴァーチさんが進化しました。その御蔭で…」
「回収した残骸とかは全てヴァーチのお腹の中と?」
「はいなのです」
「そっちもか……」
「? と言うと智明さんの方でもですか?」
「まぁ、見て貰った方が早いな」
そう言って近くにいた妖精にブティクを呼んできてと頼む智明。成程、ブティクも進化したのだと納得すると同時に潜水艦が何に進化したのかという疑問が浮かび上がる電達。
数分後、表れたブティクの姿は……
「オ帰リナサイ、ミンナ」
「ぶ、ブティクさんですか?」
まず目を引いたのはその巨体。潜水艦ヨ級の時、ブティクが装着していた艤装部位を更に禍々しくして巨大化した様な外見で両脇に巨大な腕が生えている。そして、その怪物の大口の中にブティクがちょこんと座っていた。
ブティクの人型自身も、流れる様な黒髪長髪だったのが白髪になっており、それをうなじあたりで纏めている。艤装部位に入って衣服を着ていなかったのも、競泳水着と思われるモノを着ていた。
「見た事無い姿なのです。もしかして新種なのですか?」
「うん、僕も驚いたよ」
「”装甲潜水艦鬼”デス。デモ今迄通リぶてぃくト呼ンデ下サイネ?」
新種艦、装甲潜水艦鬼に進化したブティクはそう言って微笑んだ。
現状報告
・函南艦隊を救出した!
・函南艦隊と友好関係を築いた!
・ヴァーチは進化して戦艦レ級になった!
・ブティクは進化して装甲潜水艦鬼になった!
ユニットデータ
艦名:
艦種:ヒテン級 反応動力推進航空母艦 1番艦
原作:レッドサン・ブラッククロス
適合者:
ステータス
レベル:30
耐久 :80
火力 :20
装甲 :40
雷装 :0
回避 :45
対空 :70
搭載 :120
対潜 :0
索敵 :85
運 :48
速力 :高速
射程 :短
装備(5スロット)
散香(対空・艦爆仕様)
・30機搭載
清影(雷撃仕様)
・30機搭載
消宮(偵察・対空仕様)
・30機搭載
8連装短距離対空噴進弾発射機(シースパロー)
20ミリ多銃身回転式機銃(CIWS)
武装
散香(対空・艦爆仕様)
種類:艦上爆撃機
強化:爆装+10、対空+15、対潜+5、索敵+2、命中+1
清影(雷撃仕様)
種類:艦上攻撃機
強化:雷装+15、対空+5、対潜+10
消宮(偵察・対空仕様)
種類:艦上戦闘機
強化:対空+10、索敵+10、命中+4
8連装短距離対空噴進弾発射機(シースパロー)
種類:ミサイル
強化:対空+15、命中+2
射程:短
20ミリ多銃身回転式機銃(CIWS)
種類:対空機銃
強化:火力+3、対空+15、命中+5
射程:短
原作設定
日本国海軍が建造した応動力推進航空母艦で1952年当時、噂以外のものではないとされていた。全長等の細かい設定は不明。
やっちまいました、オリジナル深海棲艦出しちゃいました。
だって潜水艦の進化形態が未だに出ないんだもん(言い訳)
ついでに誰か装甲潜水艦鬼描いてくれないかなぁ……(オイ)
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