そして今回智明が……
南西諸島海域 バシー島沖
カムラン半島を開放した智明達合同艦隊は、新たにバシー島沖への進む道が開かれ事によって、更なる進撃を開始した。
この海域はバシー島においてボーキサイトが大量に集積されており、更に他の小島にもバシー島が敵に制圧された時の保険として隠されているという。艦載機を製造するのにボーキサイトは必要不可欠であり、千歳の主力として水上ジェット機を持たせた智明や自身を含み空母が艦隊のメインである芳彦は是非とも確保しておきたいと考えていた。
「あれは……」
途中で遭遇した敵水雷戦隊を難無く壊滅させ、ボーキサイトを集積している小島や高速建造材といったアイテムを発見した智明率いる艦隊は見慣れぬ影を発見する。双眼望遠鏡による視認とグランパスを用いた偵察で調べると、球体に半裸の女性が拘束されている様な姿の艦4隻を、重巡洋艦リ級2隻が護衛していた。
「あれが貨物輸送艦ワ級か…」
与えられたデータによると、輸送艦ワ級は何処からともなく現れては、深海棲艦の艦隊や泊地に物資を輸送しており、強化される事によって攻撃貨物輸送艦へと至るらしい。
因みに、艦娘達がこれを撃沈し、撃破してもワ級が運ぶ物資を利用する事は無い。
何故かと言うと、ワ級が背後に背負う球体状のコンテナに入っている物資は、呪術的な瘴気で汚染されている為に、使用するどころか取り出す事事態が不可能だからだ。研究機関でこの瘴気を浄化する実験が行われているらしいが、未だ成功には至っていないらしい。
ならば智明達も利用できないのでは無いかと思えばそうで無い。智明や艦娘が利用出来なくても、仲間にしたブティク達、深海棲艦ならば使えるだろうし、鎮守府側で解っていない事も智明達の基地でなら解明できる可能性がある。そして何より、ワ級を仲間にして本人から浄化して貰える可能性もあるのだ。そして輸送している物資もそうであるが、智明達が未だ仲間にしていない貨物輸送艦を仲間に出来るのは何より美味しい。 智明は双眼望遠鏡を下げると艦隊メンバーに作戦を告げる。
「目標は敵運送船団。ターゲットは貨物輸送艦ワ級で、可能な限り撃沈させないで鹵獲したい。重巡洋艦リ級は速攻で無力化する、では出撃!」
智明の号令と共にワ級鹵獲作戦が開始された。
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南西諸島海域 カムラン半島隠れ基地
「唯今戻りました」
「おう、トモも帰って来たか」
合同艦隊の前線基地となった芳彦達の隠れ基地へ帰還した智明達を芳彦はビール缶片手に迎える。どうやら先に帰り着いて一杯やっていた様だ。
「そちらはどうでした?」
「敵の運送船団を見つけてな、蹴散らしてやった。それでな…」
「?」
「兎に角、ついてこいよ」
そう言って芳彦は背中を向けて歩き出す。
ニヤリと笑う芳彦に何か良い事があったのかと智明は首を傾げながら彼の後を追う。
着いた場所はドックであった。そしてそこには…
「レ、レレレ?」
「ソ〜ソ」
「カカ、カ」
「ワ〜」
「ヲッヲ」
貨物輸送艦ワ級が1人、ブァーチ達に囲まれていた。
「芳彦さん、鹵獲に成功したんですね?」
「ああ、それも輸送艦だぞ? ラッキーだろ?」
どうだ? と言わんばかりの表情をしている芳彦だが、智明は少し気まずそうに話を切り出す。
「喜んでいるところに悪いのですが…」
「ん? 何だ?」
「実は僕達も…」
「ともく〜ん、連れて来たわよ〜」
自分達もワ級を鹵獲したのだと言おうとしたところに作戦で同伴していた千歳が現れた。鹵獲したワ級、3隻を連れて……
「…………」
「僕達も運送船団に遭遇しまして…」
「わぁ〜、いっぱい来たっぽい!」
「ワ級4隻引き連れたリ級2隻の艦隊と遭遇したので…」
「4隻!?」
「お帰り智明。お、大量じゃない♪」
驚く芳彦を尻目に別動隊であった夕張達がドックにやって来る。
「ただいま皆。輸送艦を艦隊に加えれば、今後の資材や残骸集めも楽になるでしょうからワ級は可能な限り鹵獲していきましょう」
「…………」
「芳彦さん?」
「ぬが―――――――――――っ!!!」
「わっ!?」
「ワ?」
「な、何よ急に!?」
「どうしたんですか司令官さん!?」
芳彦が叫びだし、皆が驚きながら彼を見る。
「負けて堪るかよ! そっちが3隻なら今度の出撃で俺は4隻鹵獲してやる」
「何、対抗心燃やしているんですか……」
「トモ、どっちが多く鹵獲できるか勝負だ!」
「いや……、競い合う必要が無いんですが…」
「智明さん、司令官さんは勝負事が好きなので断るのは無理ですよ」
「え、何それは…」
羽黒の言葉に智明は呆れる。
「昨夜もよぉ、私と千歳の飲み比べでどっちが先に酔い潰れるか賭をしていたんだぜ?」
「うわぁ……」
「以外とダメ人間っぽい?」
その後、ワ級達を調査した結果、智明の予想は当たっていた。
ワ級は集めた資材を自身の専用コンテナに入れ、中で呪術的加工を施し、深海棲艦用の補給物資(見せて貰うと皆混ざり合ってコールタールの様な物体になっていた)に変換してコンテナ内で保存していたのだ。そして、戦闘で傷付いたり、進化する個体に対し、コンテナに繋いだパイプで対象へ補給を行っている事が分かった。
案の定、深海棲艦用の補給物資は智明や艦娘には利用出来なかったが、資材変換装置を使うと元の資材に戻り利用出来る様になった。
全くもって資材変換装置様々である。
また、ワ級達は呪術的加工をせずとも資材を専用コンテナに入れる事が可能であり、コンテナの積載量は今迄使ってきたコンテナボックスの約10倍もあったので、今後の資材・残骸回収の効率が高まると智明は喜んだ。
が、しかし…
後日、智明の艦隊と芳彦の艦隊とで、どちらが多く鹵獲出来るか競い会う『ワ級狩り』が始まった。しかし、乗り気で無い智明は兎も角、鬼気迫る勢いでワ級達に襲い掛かる芳彦に対し、敵艦隊も死ぬ気で応戦し始め、あろうことか追い詰められると自爆して果ててしまう様になってしまった。このせいでワ級含む深海棲艦の鹵獲が非常に困難になり、芳彦は智明や雷に説教を延々とされる事になるのだが、身から出た錆なので誰も同情しなかった。
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数日後、
南西諸島海域 バシー島沖
資源回収艦隊 壱
旗艦:雷
同伴:羽黒、隼鷹、??、ワ級2隻
「全く、司令官には困ったものだわ」
「あの勝負癖はなんとかならないでしょうか?」
「ワ〜?」
今日も敵艦隊の間引きを兼ねた資材回収を雷を旗艦とした艦隊が行っていた。
バシー島にて集積されているボーキサイトを同伴しているワ級2人の専用コンテナに積み込みながら雷がブツブツと愚痴を溢し、羽黒が困った表情をしながらも同意する。
その姿をワ級は不思議そうに眺めていた。
「桜も大変だったでしょ? ある程度弱らせないといけないとは言え、司令官に集中爆撃されたんだから」
「基地に連れて来られた時は只の残骸かと思いました」
「ワ、ワワッワ!!」
雷達の言葉に「もう死んだかと思いました!!」と言いたそうに、『桜』と呼ばれたワ級は大声を挙げる。
彼女は芳彦が競争を宣言した後日に鹵獲されたワ級であり、芳彦の爆撃機の集中攻撃によって息も絶え絶えの状態で鹵獲されたのだった。お蔭で艦載機にトラウマを持ってしまい、空飛ぶ物体を見ると怯えだす始末だ。
因みに智明と芳彦が鹵獲したワ級の数は現状で7隻で智明:芳彦=4:3で智明がリードしている。
「桜のコンテナはもういっぱいかしら?」
「ワ~」
「牡丹の方にもう少し入りそうですね」
「ワワ~♪」
羽黒が『牡丹』と呼んだ、もう一方のワ級のコンテナを見ながらそう言う。鹵獲したワ級達には皆、花の名前を与えた。ノーマルクラスでは戦う術を持っていないワ級がどの様にして強化されていくのかまだ分かっておらず、そもそも進化するのかも分からないのでこうなった。
「お~し、コンテナボックスの方も満杯になったぜぇ~?」
「ト、トトット」
妖精と共にコンテナボックスの方にボーキサイトを積み込んでいた隼鷹と軽巡洋艦ト級エリートが雷達に呼び掛ける。
このト級は先日の作戦の際に智明が鹵獲した個体であり、『ヴィル』と名付けられた。
「よ~しっ、積み込みも終わって任務完了。帰還するわよ!」
「はい、皆さん帰還しますよ~」
「お、漸く帰れるか。早く帰って一杯やりたいね~♪」
「トトト」
「ワワ」
「ワ~」
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資源回収艦隊 弐
旗艦:夕立
同伴:不知火、ウィザード、ヨハム、ビフト、ワ級
場所は変わって此方は夕立率いる別動隊。時々遭遇する敵艦隊やはぐれを被害無しで撃破し続けている夕立は嬉しそうに鼻唄を歌っていた。
「ふん、ふふ〜ん。ぽいぽぽい♪」
「ソソソ〜ソ〜♪」
「タタ〜♪」
「タ〜タタ〜♪」
「ワッワ〜♪」
夕立の鼻歌を真似てウィザード、ヨハム、ビフト、ワ級が歌う。因みに此方のワ級には『向日葵』と言う名前が付けられた。
「夕立、見晴らしが良い海上だとしても余り騒ぎ過ぎると遠くの敵を引き寄せる事になります」
「大丈夫、大丈夫。電探に反応が無ければ匂いもしないっぽい。万が一敵が現れたら蹴散らせば良いだけだもん」
「……その万が一で大群に囲まれたらどうするのですか…」
静かにするようにと注意したら、お気楽な返事をする夕立に不知火は額を押さえる。
「改二になったからと少し慢心していませんか?」
不知火の言葉通り、カムラン半島解放戦とその後行った数回の戦闘によって夕立は改二へと改造を完了していた。白いストレートであった髪は癖っ毛によって所々跳ねており、両方の側頭部には犬耳の様な癖っ毛が出来ていた。
また、ビフトも進化して戦艦タ級になっており、ヨハムと同じ姿になれた事を喜んでいた。
「ソ、ソソーソ!」
「なぁに? 新たな敵影を発見っぽい?」
「ソ!」
ウィザードが偵察に出していたフリッパーが敵艦隊を発見した様だ。すると夕立は表情を変え、不知火達に指示を出す。
「ウィザードは潜航して敵艦隊の真下で待機。海上がドンパチ賑やかになったら攻撃を開始して。残りは私と不知火が先行、向日葵を挟む形でヨハムとビフトが後を追う。オッケー?」
「ソソ!」
「油断はしないで?」
「タ!」
「ター!」
「ワ!」
「さぁ、素敵なパーティーを始めましょう♪」
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資源回収艦隊 参
旗艦:芳彦
同伴:龍驤、木曾、ブティク、??、ワ級
「あ〜、まだ足がガクガクしやがる」
「自業自得やろ、君が悪いんやで?」
足を揉みながら愚痴を零す芳彦に龍驤がジト目で答える。
「当然ノ結果デス。戦果ニ拘ッテ今後ノ計画ヲ狂ワセタノデスカラ、全ク…」
「うむ、ブティクの言う通りだ。今回の件は擁護出来ないな」
非難の目を向けるブティクと腕を組みながら頷く木曾。当然な結果ながらも居心地が悪い芳彦。
「はいはい、俺が悪うござんした」
「本当ニ反省シテイルノデスカ?」
「反省してくれへんと困るで?」
「よ、容赦無くね?」
「当然だろう?」
「オウフ…」
海上で器用にorzポーズをとる芳彦。そこへ同伴している駆逐艦二級エリートが不思議そうに寄って来る。
「ニー?」
「ワ?」
「おうおう、俺の味方はお前達だけだよ”あっきー”に”すみれっち”」
「ニ~♪」
「ワワ~♪」
そう言いながら芳彦はそれぞれあっきーこと『秋月』とすみれっちこと『菫』と呼んだ二級、ワ級を撫でる。この二級は芳彦が輸送船団を襲撃した際の生き残りを鹵獲した個体だ。一方のワ級は芳彦が初めて鹵獲した際のワ級である。
「おっと、新たな獲物が見付かったで?」
「お! 来たか!」
水を得た魚の様に芳彦は立ち上がる。
「りゅうりゅう、向きと距離は?」
「北北西の10km先や」
「おっしゃあ、行くぞぉ!!」
叫びながら芳彦は敵艦隊の方へ進んで行く。
「………汚名返上ノツモリデショウカ?」
「汚名挽回になりそうだな」
「全く、ウチ等がいないと何するか分からへんわ」
そんな姿を見ながらブティク、木曾、龍驤の3人は溜息を吐くのであった。
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資源回収部隊 肆
旗艦:智明
同伴:電、夕張、ハク、ワ級2隻
「はぁ…」
「智明さん、大丈夫ですか? 疲れているのなら無理をしない方が良いのです」
「大丈夫だよ、電ちゃん。疲れてはいないから」
溜め息を吐く智明に電が心配そうに声を掛けてくる。
「智明はワ級の鹵獲が上手くいかなくなった事に対して溜め息を吐いたんでしょ?」
「当たり。まさか自爆するなんて、しかも他の艦まで……」
「ヲヲ〜」
頭を抱える智明にハクが心配そうな声を上げる。
「大丈夫だよハク。」
「ワワ~」
「ワッワ!」
「君達も有難うね、山茶花に柊」
智明が鹵獲したワ級である『山茶花』と『柊』の2人も智明の傍に寄る。
「! ヲ、ヲヲ!」
突然、ハクが声を上げ出した。哨戒に飛ばしていた艦載機が敵影を見付けた様だ。
「新たな輸送船団かい?」
「ヲ!」
智明の問いにハクは頷く。
「ならそれを倒して今日は終わりですか?」
「そうね。柊のコンテナはもういっぱいだし、後1艦隊ぐらいで山茶花も満杯になるでしょ」
「よし。皆、無茶をしないでいくよ!」
「「了解!」」
「ヲ!」
「「ワ!」」
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資源回収艦隊 伍
旗艦:ブラス
同伴:千歳、コーバック、那珂、ヴァーチ、ワ級
「ヤレヤレ、コノ程度ナノ? 呆気無イワ」
遭遇した敵水雷戦隊を撃破し、ブラスはそう呟く。
「まぁ、今の私達の練度だったら当然の結果ね」
「歌って踊って海戦も出来る♪ 那珂ちゃん、さっすがだね〜♪」
「カカカッカ♪」
「レレ♪」
「ワ!」
強気なブラスの発言に千歳は同意し、那珂は可愛らしくポーズを決め、コーバック達もそれに続く。
「モット手応エノアル奴ハ居ナイノカシラ?」
「この海域にいる敵艦隊は水雷戦隊と輸送部隊、そしてここの全艦隊を指揮している通商破壊艦隊位だしね」
「データによるとエリートクラスの空母がいるらしいよ?」
「アラ? コッチニハ水上じぇっと機ヲ指揮スル千歳がイルノヨ? こーばっくモイルシ恐レルニ足リナイワ」
「う〜ん、確かに輸送艦の桔梗ちゃんはともかくこのメンバーなら那珂ちゃんも負ける気がしないかも?」
「ワ~」
『桔梗』と名付けられたワ級を撫でながら那珂はブラスの意見を肯定する。本来、武装を持たないノーマルクラスのワ級だが、智明は仲間になった彼女達に護身用の武装を与えられている。元々艦娘用の携帯重火器として作られていた、アサルトライフルの様な形状の『グレネード爆雷付13.5cm単装砲』やロケットランチャーをワ級に装備させている。
「そろそろ帰ろっか?」
「そうね、日も沈んで来たし……」
「! カカ、カ」
「あら? どうしたのコーバック?」
「こーばっくノふりっぱーガ敵艦隊ヲ見付ケタ様ネ」
哨戒から帰って来たコーバックのフリッパーが新たな敵艦隊を見付けたらしい。詳しく聞く内にブラス達の表情が険しくなった。
「通商破壊艦隊デスッテ!?」
「何故このエリアに? 情報ではまだ大分先で陣取っている筈なのに…」
「輸送船団を片っ端から狩っているからねー。痺れを切らしたのかも?」
「フフ、ナラ好都合ネ♪」
ブラスは不敵な笑みを浮かべる。
「潰すの?」
「ワザワザ来テクレルノナラ好都合ダワ」
「でも勝手に指揮艦隊をやっつけちゃって大丈夫かな?」
「カカ~?」
ブラスはやる気の様だが、他のメンバーはリーダーである智明や芳彦の許可無しでこの海域開放の為の壁である敵通商破壊艦隊と戦うべきか迷っている様だ。
「コノ海域ノ連中ハ自爆シテわ級集メニ適サナイデショ? サッサト次ノ海域ニ進メル様ニシタ方ガ智明モ喜ンデクレルワ」
「それは……」
「確かにプロデューサーさんも喜んでくれるかも?」
「デショ? ソレニ暗クナル今カラナラ私ノ光学迷彩ノ弱点デアル航跡モ見ツカラナイシネ」
今ここで指揮艦隊を撃破するメリットを皆に説明し、全員の同意を得たブラスは獰猛な笑みを敵通商破壊艦隊がいる方角へ向ける。
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夕方
南西諸島海域 カムラン半島隠れ基地
「只今、戻りました」
「ボーキサイトをいっぱい持って来たわよ♪」
隠れ基地に資源回収艦隊第壱部隊である雷達が返って来た。
「オ帰リナサイ皆」
「大事無かったかい?」
そんな雷達をブティクと智明、そして妖精達が迎える。
「問題無いぜ? それより喉が渇いたよ、ビール! ビール!」
「隼鷹さん、回収分の資材を帳簿に書き終えるまで駄目です!」
「ちぇ~」
我先にと基地内に入り込もうとする隼鷹を捕えた羽黒は、襟元を掴んで帳簿台へと引き摺って行く。そんな彼女達を智明は微笑ましく見ながら、外の景色へ視線を移したのであった。
「あら? 智明さんは戻られないのですか?」
隼鷹を雷に任せた羽黒が動かない智明に尋ねる。
「うん、ブラス達がまだ返って来ないんだ」
「私達が最後かと思っていたのですが…」
「何時もはもう皆帰っている時間帯なんだけどね…」
智明は不安そうに夜の海を眺めていた。
「何も無ければ良いのだけど……」
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夜
バシー島沖海域
敵通商破壊艦隊と激突したブラス達、資源回収 第伍艦隊は一方的な蹂躙劇を繰り広げていた。
「さぁ、私の海零を捉える事が出来るしら?」
千歳の水上ジェット機『海零』が空から、水上からマッハに近い速度で敵通商破壊艦隊に襲い掛かり、空から爆弾を、水上から魚雷を放ってくる海零に敵艦隊は翻弄されるばかりであった。辛うじてヲ級エリートが攻撃機を発艦させるが、海零とヴァーチが飛ばした艦載機が飛び立つ度に撃墜していく為、制空権を奪い返す事すら出来ないでいた。
空を飛び交う海零を撃ち落とすべく、駆逐艦ハ級が5inch連装砲の砲身を空へ向けるが、突如爆発して粉々になる。
突然ハ級が爆発した事に訳が解らない深海棲艦達だったが、信じられないモノを目にする。轟沈したハ級の近くに煙を上げる砲身が浮かんでいたのだ。その砲身は暫くして溶けるように消えた為、混乱に陥る。そんな中、今度は重巡洋艦リ級の胸元が爆発してバラバラになる。
「フフ、貴女達ノ恐怖ガ見エルワ」
ハ級とリ級を沈めた謎の存在の正体はブラスである。光学迷彩によって姿を隠し、弱点である隠す事が出来ない航跡も夜間である御蔭で視認し難くなっている。これによってブラスを見付ける事が不可能になっていた。
「注意スベキ相手ハ私ダケジャナイケドネ」
未だに混乱している敵艦隊だが、コーバックによる真下からの魚雷攻撃によって、空母ヲ級エリートが下半身を吹き飛ばされる。上半身だけになりながらも何が起きたのか分からず、呆けた顔をしているヲ級にブラスは止めを刺した。
ブラスとコーバックの奇襲で半壊状態に陥った敵艦隊だが、それを那珂とヴァーチが放っておく筈も無く、容赦無い攻撃を与えていく。
「お姉ちゃんみたいに夜戦は好きという訳じゃないけど、ナイトライブも頑張るよー♪」
「レレッレ!!」
那珂が零式ハープーンを、ヴァーチが16inch三連装砲を放ち、残りの空母ヲ級エリートと駆逐艦ハ級を沈める。最後の生き残りである軽巡洋艦ト級もコーバックが放った22inch魚雷後期型の直撃によって撃沈し、1時間も経たぬ間に敵通商破壊艦隊は全滅したのであった。
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南西諸島海域 カムラン半島隠れ基地
ブラス達、資源回収第伍艦隊が帰還したのは電達が帰港してから2時間後の事であった。心配しながら待っていた智明は安堵するが、彼女達の報告に驚愕する事になる。
まず、バシー島沖海域の艦隊達の指揮をしている通商破壊艦隊が彼女達の担当していたエリアに現れ、それを彼女達は被害無く撃破した事だ。
「そうですか、通商破壊艦隊が…」
「夜デアッタノモ味方シテ、アットイウ間ニ片付イタワ」
「奇襲だったのもあるけど、楽勝だったわ。勿論、とも君との約束通り、周囲はちゃんと警戒していたから大丈夫よ」
「那珂ちゃん達大活躍! ランクSの大勝利だったよ♪」
見たところ被害らしい被害も無く、傷も小破未満のモノで済んでいた。出撃前の約束通り、周囲の警戒も怠っていなかった様だ。
「何はともあれ、無事で良かった。それで、貴女が浜風ちゃんかな?」
「は、はい! 駆逐艦、浜風です。これより貴艦隊所属となりますので、宜しくお願いします」
ブラス達の後ろで基地を珍しそうに見回していた銀髪ショートヘアの少女が智明に敬礼する。
彼女はブラス達が敵通商破壊艦隊を撃破した際、捕えられていたところを救出した、駆逐艦陽炎型13番艦の『浜風』だ。彼女も救出当初の電達の様に、深海棲艦であるブラスやヴァーチ達に敵意を向けていたが、千歳と那珂の説明によって半信半疑ながらも納得して貰い、基地まで同行してくれたのだった。
「僕が彼女達のリーダーの1人、水野 智明です。まだ色々と信じられないと思うけど、宜しくね」
「いえ。彼女達と出会った時こそ信じられませんでしたが、此処に来て貴方とであったことで確信できました。これから宜しくお願いします、智明さん♪」
千歳達から聞いた話で、彼女達を指揮しているのが男性適合者であると言われていたので、それが本当なら完全に彼女達を信じようと考えていた。
「浜風ちゃんは皆に基地内の施設を説明して貰ってくれるかな? それじゃあ今日はご苦労様。皆、ゆっくり休んでね。」
妖精達に回収してきた資材や艤装を渡し、ブラス達は浜風を連れて基地内へ入って行く。その様子を見送った智明は安堵の溜め息を再び吐くのだった。
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隠れ基地 宿泊エリア
「ふぅ…」
芳彦に充てられた客室に戻った智明はベッドに腰掛け、深く息を吐く。敵通商破壊艦隊には万全の準備をした後に、全戦力を率いて挑むつもりであったが、ブラス達1艦隊で勝利し、解放に至った。これは智明達艦隊メンバーの練度の高さや強力な武装のお陰であり、この海域では十二分に通じる実力を持っている事が分かった。
「でも、敵の指揮担当艦隊が動いていたのは誤算だったな…」
智明は呟く。これ迄も各エリアに配置した艦隊を撃破し続けた結果、事態を重く見た指揮担当艦隊が他のエリアの艦隊を引き連れて警戒態勢を取っていた。今回こそ、指揮担当艦隊のみであったが、伏兵に他のエリアの艦隊が存在していたらどうなっていたか分からない。
「……いけないな、何時もの悪い癖が…」
自分が考えているのはあくまでもIFの世界だ。現にブラス達は大きな被害無しで勝利して無事帰って来たおり、彼女達は戦闘中でも敵援軍が接近していないか哨戒機を飛ばしおり警戒していた。もし、援軍が潜んでいたとしても即時発見し、ちゃんと撤退してくれただろう。
「次は東部オリョール海海域か、戦力が充実しているとはいえ、気は抜けないなぁ」
データベースによると、次の目的地である東部オリョール海は各エリアに配置される敵艦隊の数がカムラン半島やバシー島沖海域での1.5倍に増えている。つまり、これまでの様に時間を掛けた攻略をしていたら周辺の艦隊と連携を取り、集する事によって数で押される可能性があるのだ。
「この先も無事にいられる保証は無い。もっと…「と〜も君♪」…千歳ちゃん?」
不意に横から千歳に抱き締められる。
「何時の間に?」
「ノックしても出て来ないのだもの。入ったら何か神妙そうな顔をしてるし…」
「そっか、ご免ね?(気付かない程思考に溺れていたのか…)」
「また心配事?」
「うん、次の海域は艦隊の配置数が倍近くになるから、新しい戦略が必要になるなって…」
「むぅ、とも君の悪い癖がまた出ていない? よし君達も仲間になっているんだからもっと頼っても良いのよ?」
「どうも心配になってくると頭から離れ無くってさ、自分でも呆れているよ」
そう言って自虐的な笑みを浮かべる智明。そんな彼の姿を見た千歳は…
智明をベッドに押し倒した。
「千歳ちゃん…?」
「大丈夫だよ。私達は沈まないから…」
戸惑う智明の両頬に手を添え、千歳は自分の唇を彼の唇に重ねた。
僅か一瞬の行為であったが、千歳が顔を放すと智明の顔はトマトの様に真っ赤になっていた。
「ふふ、顔が真っ赤だよ?」
「なな、な、何をす…むぅ!?」
混乱する智明に構わず千歳は再びキスを落とした。今度は先程の様に唇同士を重ねるだけでなく、彼女の少しだけ開いた唇から出た舌が智明の唇をなぞる。これに驚いた智明が口を開いた瞬間に千歳は自分の舌を智明の口中へ入れ込む。
「んちゅっ……んふぅっ……ちと…ちぅ…」
「んっ…んぅ……」
そのまま智明の舌と優しく絡め合わせながら、千歳は彼の頭を抱き締める様に腕を回し体を密着させた。
この状態が2、3分程続き、漸く千歳は顔を離し、智明は大きく息を吸った。
「ぷぅあっ…ち、千歳ちゃん。幾らなんでもそんな…「私、言ったよね? とも君の事が好きだって」…でも…」
若干睨みつける様に見つめる千歳に智明は口籠る。
「とも君の辛い顔を見るのは嫌なの」
「それは…うむ…」
再び唇を重ねてきた千歳を智明は黙って受け入れる。是までも電や夕張に言われてきたが、智明は何かと自身の心の内に仕舞い込む癖がある。心配し続けた末に心が潰れてしまえば本末転倒だ。
「んぅっ……私達は強くなっているわ、それに仲間も増えている。余裕ぶるのは良くないけど、心配し過ぎるのも好くないわ」
「でも、怖いよ」
3度目のキスを終え、智明は心の内を明かす。
「どれだけ強くなっても、仲間が増えても、もしもを考えると怖くて堪らない。心配し過ぎなのは解ってるけど、君達を失うかもしれない恐怖がいつまでも付きまとうんだ…」
「とも君…」
表情が暗くなっていく智明を千歳は優しく抱き締めた。彼はついこの前迄、戦いを知らない存在であったと電達から聞いた。突然、死と隣り合わせな世界に立たされたなら、感じるストレスは相当なものであろう。
そして智明は何より優しい。そんな彼が仲間を失う事になれば……
千歳は智明に4度目となるキスを落とした。顔を放した彼女の表情が心無しか赤い。
「とも君、シよう?」
「……え?」
「一時のモノだろうけど、私がとも君の恐怖を忘れさせてあげるから…」
「……千歳ちゃん」
「とも君に勇気をあげる」
再び深いキスを智明に落とす。それは甘く優しい、愛溢れる慈しみのキス。
その日、千歳が彼女に充てられた部屋に戻る事は無かった。
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皆の活躍によって、僅か1週間足らずでバシー島沖海域を解放した智明達、水野・函南連合艦隊。この海域において7隻のワ級を仲間にする事に成功した事で資材回収の効率が大幅に上がり、新たな海域攻略に向けて準備を整えていく。
次の海域である東部オリョール海では何が待っているのか……
現状報告
・新たな武装を開発した!
・夕立・改は改造によって夕立・改二(Lv.55)になった!
・ビフトは進化して戦艦タ級になった!
・貨物輸送艦ワ級『桜』『桔梗』『向日葵』『菫』『山茶花』『柊』『牡丹』を仲間にした!
・軽巡洋艦ト級エリート『ヴィル』を仲間にした!
・駆逐艦二級エリート『秋月』を仲間にした!
・深海棲艦に関する新たな情報を得た!
・バシー島沖を開放した!
・駆逐艦『浜風』が仲間になった!
・智明と千歳の絆がより深いものになった!
智明の弾道が上がった!(笑)
正直言ってやり過ぎた…
感想コメント、意見・質問お待ちしております。