現状では自軍が強過ぎる……
バシー島沖海域にて7隻の貨物輸送艦ワ級を仲間にする事が出来た水野・函南艦隊。
智明達はワ級達各自に花が由来の名前を与えたが、この際にブラスが語った深海棲艦の進化の特徴を踏まえて、彼女達の性格から担当を分け、担当毎に季節の花名を選んで与えてみた。
まず至って普通に輸送任務をこなそうと考えている個体には通常輸送艦として、春と夏に咲く花の名前を与えた。
次に貨物輸送艦に進化しながらも好戦的な個体には特殊武装を持たせた揚陸艦として、秋の花の名前を与えた。
最後に仲間を思い遣り、輸送よりも補給によるサポートを重要視している個体にはサポートアイテムを持たせた工作船として、冬の花の名前を与えた。
この為、装備も種類別に異なる物を与えている。
まず全員共通の装備として、同伴している艦娘、深海棲艦問わず補給・修復が行える『簡易リペア装置』、護身用の武装であるアサルトライフル型(グレネード発射口付き)の『グレネード爆雷付13.5cm単装砲』と『ミサイルランチャーポッド』がある。
通常輸送艦である春・夏艦隊は今のところこれだけであるが、揚陸艦を担う事になる秋艦隊には哨戒兼攻撃用ヘリコプター『ウミガラス』と魚雷挺『ソードフィッシュ』を、工作船となる冬艦隊は専用コンテナ自体を改造して基地のメディカルルームの機能を再現した『高性能リペア装置』と『索敵妨害煙幕弾』をそれぞれに持たせた。
後にもう1隻を仲間にし、彼女達の活躍によってバシー島沖からこれまでに攻略した海域での資源回収の効率は大幅に上がり、遂には貯蓄量が資材保管庫いっぱいにするに至ったのだった(この出来事は、何時も資材が火の車であった智明にとって涙が出る程の事であった)。
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夜
南西諸島カムラン半島隠れ基地 コミュニティホール
「よう、全員揃ってんな?」
「遅刻している娘はいないね?」
コミュニティホールに集まったメンバー達を前に芳彦と智明はメンバー全員が揃っているか確認をする。
「今日から始まる東部オリョール海攻略だけど、今回から作戦が変わる」
智明達の表情に皆が顔を引き締める。
「これから先の海域は展開している敵艦隊の数も増えていく。従って今迄の様に艦隊を分散させて時間を掛けながら攻略していくのは敵艦隊を集結させる恐れがあり、とても危険だ」
「よって、これより先の海域は先に海域の指揮を執るボス艦隊を先に撃破する電撃戦を行います」
芳彦が手を挙げると、ホールに備え付けられているモニターに海図が表示される。
「今映っている海図は攻略先の東部オリョール海だ。海図上に示されているポイントは過去行われた攻略作戦時に確認された敵艦隊の配置エリアとなっている。後、各敵艦隊の編成はこの通りだ」
「僕達はこの情報を元に、東部オリョール海制圧を指揮しているボス艦隊へ最短距離で進撃します」
智明の言葉の後、モニターの海図にボス艦隊がいるエリアまで伸びる矢印が表示された。
「連中には支援艦隊を呼ばせる暇も無く一気に撃破する。勿論、進路上に配置されている敵艦隊は撃破しなければならない。休み無しの連戦は必至だ」
「途中で戦闘が発生する以上、異変を察知した他エリアの艦隊が来る可能性も考えられます。よって僕達は従来の1艦隊6隻編成で無く、ワ級以外の24隻編成の大艦隊で進撃します」
別のモニターに艦隊の陣形が表示される。
まず智明、ブティク、コーバック、ウィザードの潜水艦4隻が陣形の一番外側の前後左右に配置され、海中からの先制雷撃を出来る様にする。
次に駆逐艦である電、夕立、雷、不知火、秋風、浜風が六角の陣形で、駆逐艦の内、前衛となる電と夕立を挟む様に軽巡洋艦の夕張、木曾、那珂が、秋風と浜風が挟む様にヴィルを配置する。
駆逐艦、軽巡洋艦達が囲む様に重巡洋艦の羽黒を先頭に戦艦であるヴァーチ、ヨハム、ビフト、ブラスで五角形を組み、更にその中央を千歳を中心にして芳彦、龍驤、隼鷹、ハク達空母が菱形の陣形を組んでいた。
「この編成を大袈裟過ぎると誰もが思っているだろう。しかし、これはこの先の海域攻略を考えての事だ」
「この先? どういう事や?」
芳彦の言葉に龍驤や一部の艦娘が首を傾げる。
「南西諸島海域解放の為にはこの東部オリョール海とあと一つ海域を攻略しなければならない。その海域の名前は…」
「沖ノ島海域」
沖ノ島海域は日本軍にとって『魔の2-4』と呼ばれる程、大変厄介な海域として扱われている。これまで多くの提督達が苦戦してきており、制圧と撤退を何度も繰り返している。その理由として、幾つものエリアに配置されているエリートクラスを含む敵艦隊に、中々目的地へ進めない難しい航路、何よりこの海域から現れるフラッグシップ、エリートクラスだけで編成された艦隊の存在だ。
しかし、智明達の艦隊であればメンバーの練度は高く、羅針盤妖精に頼らずとも目的のエリアへ進む事が出来る。後は敵艦隊が集結する前にボス艦隊を撃破するスピードが課題となる。今回のボス艦隊攻略に大勢で出撃するのはその予行練習を含めてであった。
「ま、今回は陣形の練習を兼ねた高速攻略だ。練度の高い俺達でこの規模の艦隊による出撃だから楽勝だな」
「この攻略で大人数での連携を覚えてくれれば良いからね」
「作戦は明日早朝に開始される。作戦に参加するメンバーは鋭気を養っておくように」
「輸送艦の皆は留守番を頼むよ?」
「では解散!」
話が終わり、皆は明日に備え準備に掛かり出した。
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夜
智明は1人、基地の発着場に出て空を眺めていた。空には満天の星が輝いていた。
「と〜も君♪」
自分を呼ぶ声の方を向くと千歳が立っていた。
「千歳ちゃん?」
「1人で星空を見上げてどうしたの?」
「いえ、いよいよ明日になったなと思って…」
そう言って再び星を見る智明。千歳もそれに習って彼の隣に立って夜空を見上げる。
「何事も無く、作戦が成功すれば良いのだけど…」
「もう、とも君ったら…」
若干、不安そうな智明に、千歳は彼の前に立つと頬に手を添える。
「とも君の不安を消せたと思っていたのに、元に戻ってる」
「心配性なのはそう簡単には消えないよ。でも…」
智明も千歳の頬に手を添えて、微笑みながら答える。
「あの時、確かに千歳ちゃんから勇気を貰えたよ」
「本当?」
「嘘吐いてどうするのさ?」
あの夜、不安に埋もれそうになっていた智明を千歳は優しく包み込んでくれた。彼女の愛に智明も感謝の気持ちと共に愛を返す。互いに初めての行為であったが、身体も心も重ね合う事で智明の不安は薄れていったのであった。
改めて体験を思い返した智明はその顔を真っ赤にする。
「ふふっ、とも君顔が真っ赤よ?」
「改めて思い返しちゃって……、やっぱり恥ずかしいな…」
「とも君、いっぱいいっぱいだったものね?」
そう言って、クスリと笑う千歳。智明は顔を赤らめたまま恥ずかしそうにする。
「明日の準備があるから僕はもう戻るよ。千歳ちゃんは?」
「そうね、私はもう少し星空を見ているわ」
「分かった。それじゃあ、また明日」
「とも君」
基地内へ向かおうとした智明に千歳が近寄り、頬にキスをした後何か耳打ちする。すると智明は顔を更に真っ赤にさせて走り去って行った。
「大好きよ、とも君♪」
智明が基地の扉をくぐり、姿が見えなくなるまで彼の背中を見ていた千歳はそう呟いた。
「千歳さん…」
ふと自分の名前を呼ぶ声が聞こえる。しかし、その声は体が底冷えしそうな位にとても冷たかった。
(まさかな〜)
声が聞こえた方へ向くと、そこには電とブティク、ブラスが光の無い目で千歳を見詰めながら立っていた。
「ちょっとお話があるのです…」
千歳はその時思った。「あ、自分解体されそう」と……
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西南諸島海域 東部オリョール海
かくして、東部オリョール海攻略作戦は始まった。
中央に配置された空母達から哨戒機が発艦し、360°全ての方位を隙間無く偵察しながら艦隊は進んで行く。時折、はぐれ艦が発見されるが、先行している智明、ブティク、コーバック、ウィザードの潜水艦が発見次第、グランパス、フリッパーと共に即座に魚雷攻撃を行って沈めているので特に問題は無かった。
基地内にあったデータからボス艦隊までの直線ルートには敵巡洋艦隊がいるだけとあった為、一気に進撃する。
「敵巡洋艦隊確認だ!!」
芳彦が飛ばした
「編成は重巡洋艦リ級エリートとノーマル、軽巡洋艦ト級、ヘ級、駆逐艦ハ級2隻。陣形は複縦!」
「僕とグランパスで先制雷撃を行います。混乱した所を前衛の駆逐、軽巡洋艦がミサイル攻撃で仕留める様に」
「「「了解(なのです)!!」」」
「航空支援はどうする?」
「ミサイル攻撃後、生き残りがいたらお願いします」
「了解だ、
「では攻撃開始します。潜航開始」
智明は潜航を始め、海中を深く潜っていく。自身のセンサー類に敵艦の姿が表示され、照準をロックする。
「1〜6番、撃ぇ!!」
智明の艤装から6本の追尾魚雷が放たれる。それぞれロックされた敵艦に向けて進んで行き、着雷する。
「着雷確認、外れ無し」
魚雷発射後に発進したグランパス4隻が、航行不能に陥った敵艦隊に追撃する。爆発と共に水柱が何本も立ち上がり、敵巡洋艦隊は撃破されていく。
【重巡洋艦リ級エリートが生き残りました、止めをお願いします!】
「了解だ、
芳彦の艤装である巨大なクロスボウから雷撃機である
浮上した智明の頭上を
【雷撃成功。敵艦隊全滅】
「よっしゃ! 幸先良いぜ♪」
【周辺に増援の姿は無し、引き続き哨戒機を飛ばしてください】
味方艦に被害無く敵巡洋艦隊を壊滅させ、凄まじい進撃速度で進んだ水野・函南連合艦隊はこれ以上、敵艦隊に出会う事無く、当初の予定通りに東部オリョール海での指揮を行っているボス艦隊主力打撃群と激突した。
【敵主力打撃群確認、雷撃を開始する】
「了解、敵さんもこちらに気付いた様だ。だが敵に増援は無し、数で勝っている俺達の有利だ。一気に潰すぞ!!」
敵艦隊の編成は空母ヲ級エリートとノーマル、戦艦ル級、重巡洋艦リ級2隻、駆逐艦ニ級。哨戒機をこちらと同じく飛ばしていたヲ級エリートはもう1隻のヲ級と共に艦載機を発艦しだして、迎える準備を取り始めていた。
「
「さぁ、お仕事や。頼むで
「派手にいっくぜー!
芳彦、龍驤、隼鷹の3人から艦載機が発艦していく。芳彦が飛ばしている
敵艦隊へ向かう艦載機に対し、ヲ級エリート達も迎え撃つべく艦載機を此方に飛ばしてくる。対戦闘機用
慌てたヲ級が新たな艦載機を飛ばそうとするが…
「もう、遅い」
海中、しかも真下から忍び寄っていた智明とグランパスの魚雷攻撃を真面に受け、大打撃を受けてしまう。駆逐艦ニ級が大破、他の艦も中破以上の被害を受ける。
そこへ追撃とばかりに
「やっぱ、こんなもんか」
「智明さんが真下から魚雷を撃ち込んでいるのです。戦艦でも持たないのですよ」
「真下カラノ雷撃ニ航空機デノ爆撃ト雷撃……生キ残ルノハ不可能ダワ」
「此方は24隻いるのに対して向うは途中で戦った艦隊がいたとはいえ、12隻。分かりきった結果ね」
ボス艦隊の惨状に芳彦、電、ブラス、夕張がコメントする。
「この調子なら沖ノ島海域も大丈夫ですよね?」
活躍する事無く、只傍観するだけとなっているメンバーの中、羽黒が尋ねてくる。
「どうやろな、沖ノ島海域での敵艦隊の配置数は倍近い上にデータを見る限り、直線ルート上に2艦隊配置されとるさかい。連戦は必至やで?」
「ふっ、どれだけ来ようが倒すまでだ」
「強気ね、木曾は。でも司令官も私達も強くなれたから、私もそんなに気にしていないわ」
「改二の改造まであと少しだし、那珂ちゃん達なら楽勝だね♪」
沖ノ島攻略で起きるであろう戦闘を龍驤は予想するが、それに対し木曾や雷、那珂は強気だ。そこへ哨戒機を飛ばしていた隼鷹から報告が入る。
「提督~、3時方向より此方に向かって来る敵影有だぜ~?」
「やれやれ、増援無しで終わると思ってたんだがな。それで、編成は?」
「ワ級がいるから強襲揚陸艦隊だな。空母ヲ級に戦艦ル級、軽空母ヌ級2隻にワ級2隻の編成だぜ?」
「そっちも航空機メインか。”ちとりん”と”ハっちゃん”、頼めるか?」
「…任せといて」
「ヲ!」
「きそちんにいかずっちん、あっきー、コーちゃんとヴァーちんは2人の護衛を頼む」
「「了解!」」
「ニー!」
「カッカ!」
「レ!」
芳彦の指示に、向かって来る敵強襲揚陸艦隊の方へ進路を変更する千歳達。
「何かちとりんの様子が変じゃなかったか?」
「何がだい?」
「何つーかさ、やつれているというか、元気が無いと言うのか……。何か知らないか”いなずっちん”?」
「知らないのです」
出撃する時から千歳の様子がおかしかったので芳彦は電に尋ねるが、電は淡々とした様子で答えた。
「え……、いなずっちんも知らないのか?」
「知らないのです」
芳彦の方を向く事無く、電はただ答える。
「提督、聞かん方が良いんちゃう?」
「そうだな……(マジで如何したのコレ…)」
「っち、ボス艦隊のくせに簡単に沈みやがったのです。これでは憂さ晴らしが出来ないのです」
「!?」
恐ろしい言葉が聞こえた様な気がしたが芳彦達は聞かなかった事にした。
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ボス艦隊の壊滅まで後、僅かとなる中、増援として向かって来ていた敵強襲揚陸艦隊と千歳達別働隊が激突した。
「さぁ、海零の力を思い知りなさい!」
マッハに近い速度で千歳の海零が海を駆ける。搭載していた魚雷を放つと同時に飛び立ち、飛んで来る敵艦載機の迎撃を始めた。
「ヲヲッヲ!」
「ハープーン発射ぁー!」
「この程度で沈むのか? 弱すぎる!!」
「ニー!」
千歳の海零が敵艦載機を追い回している間に、ハクの雷撃機、爆撃機が海零の雷撃によって陣形を乱された敵艦隊に襲い掛かり、水柱が昇り波に煽られる敵艦へ雷、木曾、秋月が零式ハープーンを叩き込む。
「カッカ!」
ハープーンが飛んで来ない後方から補給で援護しようとするワ級をコーバックが雷撃で沈めていく。
「レッレレ!」
ヴァーチがハープーンを免れていたル級と艦砲射撃での撃ち合いを行うが、ヴァーチの16inch三連装砲と12.5inch連装副砲の斉射にル級は押し負け、吹き飛ばされる。
千歳達の活躍で、ボス艦隊が全滅して僅か数分程度で、援護に来た敵強襲揚陸艦隊は壊滅する事になった。
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「報告。11時の方向、20キロ先で交戦中の艦隊有りや」
ボス艦隊を壊滅させ、基地へ帰還する中、龍驤が飛ばしていた
「戦闘を行っている艦隊の編成は?」
「敵は雷装巡洋艦チ級エリートを旗艦とした巡洋艦隊、それに軽空母と駆逐艦2隻のはぐれが混じっとるな。それに天龍型軽巡洋艦2隻と睦月型駆逐艦4隻が輸送船団を護る様に戦っとるから、どうやら輸送船の護衛中だったようや」
「状況はどうですか?」
「う〜ん、軽巡の方は余裕そうなんやけど駆逐艦の面々に疲労が見えるわ」
「どうしたものか……」
芳彦は頭を掻きながら呟く。助けてやりたいところだが、此方は男性適合者に深海棲艦がいる艦隊。このまま行けば人類に自分達の存在を知られて即実験コースだろう。
「僕が行きます」
「トモ?」
「ずっと海中に居れば見られる事も無いでしょう」
「だがよぉ、何て説明するんだ?」
「機密任務を遂行中に見掛けたと言っておきますよ」
そう言って智明は海深くへ潜航を開始した。
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雷装巡洋艦チ級エリートを旗艦とする敵巡洋艦隊の襲撃を受けた艦娘達は、旗艦である軽巡洋艦天龍型1番艦 天龍(改)が果敢に砲撃を放ち、懸命に護衛対象である物資を満載した貨物船を守っていた。
「ああ、くそ! これ以上やらせるかよ!!」
天龍が20.3cm(2号)連装砲を放ち、貨物船に砲身を向けていた軽巡洋艦ホ級の船体に風穴を空けた。体内にある弾薬に引火したのか、ホ級は派手に爆発し、海の底へと沈んでゆく。
天龍の攻撃に続いて、彼女に率いられた天龍の妹艦である軽巡洋艦天龍型2番艦 龍田(改)と駆逐艦睦月型5番艦 皐月(改)、7番艦 文月(改)、8番艦 長月(改)、9番艦 菊月(改)も主砲による弾幕を張って輸送艦へ近づけさせない様にした。
一方でチ級率いる敵巡洋艦隊も見つけた獲物を逃して堪るかと21inch魚雷後期型で輸送船を狙いながら加わって来たはぐれのヌ級に艦爆を指示していた。
「天龍ちゃん」
「どうした龍田?」
砲撃を続けながら龍田が姉艦である天龍に近づき声を掛ける。同じ天龍型の姉妹艦である2人は姉艦の天龍が活発そうであるのに対し、妹艦の龍田は物静かな見た目であった。
「この状況は拙いと思うわ」
「むぅ……」
龍田の言葉に天龍は顔を顰める。
「私達はともかく、あの娘達は練度も遠征任務の経験も足りない。敵艦隊とも戦闘を何度か行っている以上、集中力が持たないわ」
「だからってここで撤退なんて出来るかよ。俺と龍田で斬り込めばこんな奴等…」
「万が一が考えられるでしょう? 最近、はぐれで無い艦隊規模の増援が多く確認されている。そんなのが来たらひと溜まりもないわ」
天龍の言葉に龍田は意見する。
「むぅ、龍田の言う通りだけどよ…。提督に頼まれた大事な護衛任務だってのに…」
「しょうがないわ。任務は大事だけど、貨物船のクルー達の命はもっと大事よ?」
龍田に諭され、天龍は撤退に取り掛かるべく指示をしようと口を開いたが…
「天龍さん、6時方向より新たな敵影! はぐれ1隻だけど戦艦ル級エリートだよ!!」
爆弾を投下しようとする敵爆撃機を12cm単装砲で撃ち落としながら、文月が慌てた様子で天龍に呼び掛けた。
「戦艦でしかもエリートクラスだと!? こんな時に…」
「天龍ちゃん!」
「畜生……全艦、撤退する。弾幕を張りながら貨物船を守れ!」
「て、天龍さん!」
「今度は何だ!?」
「あ、あれは何だい?」
長月が指差した先には白煙を残しながら此方に向かって来る物体が…
「何だ……アレ?」
「さぁ…」
ピンチな状況ながら呆けた声を出す天龍と龍田をよそに、飛んで来る物体はヌ級に直撃し木端微塵にした。
「え……?」
「何だと!?」
バラバラになって沈んでいくヌ級。それに続いて駆逐艦イ級、ロ級達も爆炎を上げて轟沈していく。
「な、何が起きているんだい!?」
「ボクに聞かれてもそんなの分からないよ!」
「何なのさ……一体…?」
混乱する文月が皐月に尋ねるが彼女が分かる訳も無く。菊月も唖然とした様子で沈みゆく深海棲艦を眺めていた。
【そこの艦娘達、全員無事か?】
状況が理解出来ない天龍達に突如秘匿回線が繋がる。男性の声だが、自分達の提督の声で無く、鎮守府にいる知り合いの男性の声でも無い。
「!? だ、誰だ?」
【悪いが此方の正体を教える事は出来ない。だが、少なくとも味方だ】
「な、何だよそれ」
【敵は此方に任せて、お前達は貨物船を守っていろ】
「お、おい!?」
通信が切れた途端、軽巡洋艦ト級が爆散する。チ級エリートは天龍達への攻撃を止め、海中から攻撃してくる謎の存在に警戒するが、途端に水柱が高く昇りホ級が粉微塵になった。
「どうなってんだよ…?」
「雷撃1発で仕留めるなんて…」
海中に向かってチ級が21inch魚雷後期型を放つが見えていない相手に当たる筈も無く、逆に雷撃によって撃沈した。
「あっという間に終わっちゃった……」
「…夢でも見てるのかな?」
「でも戦艦が残ってるよ?」
【心配するな】
驚きの表情で沈んでいく敵巡洋艦隊を見ている皐月達に再び秘匿回線が繋がる。如何云う意味か解らないでいた彼女達であったが、突如海面から何かが飛び出した。
「わ!? 何?」
「み、ミサイル?」
海中から飛び出した物体は白煙を後に引きながらル級エリートの元へ飛んでいく。突然飛来してくるミサイルにル級は対応出来ずにそのまま被弾。大爆破と共に海の藻屑となった。
【敵影消滅確認。此方は機密任務を遂行中に、君達を見付けた次第だ。機密保持の為、今回の件は提督にも内密に願う】
「あ、おい、待てよ!」
天龍の呼び声も空しく、秘匿回線はこれ以上繋がる事は無かった。
(やれやれ。言葉遣いも変えてみたけど、慣れない事はするモノじゃ無いね)
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カムラン半島沖 隠れ基地近海
留守番を言い渡されたワ級達がいる隠れ基地近海でも問題が発生していた。
「ワワー!」
「ワ、ワワ?」
「ワッワ」
与えられた装備を使いこなす為に、桜達は海上に浮かぶ的に向けて砲撃を行い、誰が一番上手いかを競っていた。
「ワ、ワ!」
「ワワ〜?」
そんな中、新たに仲間になり、秋の花である『鬼灯』の名前を与えられたワ級が、練習で飛ばしていたウミガラスが何かを発見した事を皆に伝える。
「ワ、ワワ?」
「ワワワ、ワ!」
ウミガラスによると、智明、芳彦の仲間では無い艦娘が艦隊を組んで此方に向かっているとの事。それを聞いたワ級達はザワザワと騒ぎ出した。
「ワ、ワワ、ワ!」
ワ級達の中でリーダー格となっている桜が「急いで基地に戻るよ」と皆に指示をする。
しかし、
「ワワ!」
向日葵が空を指差し、「何かが飛んで来た!」と報告する。皆が空を見上げると偵察機らしき飛行機がワ級達のいる場所へ飛んで来るところであった。
「ワワー!」
「!? ワワ、ワ!」
山茶花が撃ち落とそうとグレネード爆雷付13.5cm単装砲を偵察機に向けるが、牡丹が慌てるそれを止めた。
智明から知らない艦娘には極力、見付からない様にし、戦闘は避ける様にと指示されている。もし、偵察機を撃墜でもしたら敵対行動と見なされ戦闘は不可避であろう。
しかし、ワ級達の居場所を知られた以上、基地に逃げたら人間達に基地の所在を知られる上、後日攻めいられでもしたら智明達も捕まってしまう。艦娘達に知られない様に基地に逃げなければならない訳だが…
「ワ、ワワ、ワ!」
「ワ!? ワ、ワワ?」
「ワー、ワ」
桜が決意した様子でワ級達に指示を出す。
桜は向かって来る艦隊を相手に撤退戦を行う事を決意。もしもの時にと渡された特殊武装に切り替え、艦娘達との戦闘は極力避けながら基地とは異なる方向へ誘導し、追跡を振り切る作戦を皆に伝えた。
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重巡洋艦高雄型2番艦 愛宕(改)を旗艦とし、軽空母飛鷹型1番艦 飛鷹(改)、軽巡洋艦川内型1番艦 川内(改二)と2番艦 神通(改二)、駆逐艦暁型1番艦 暁(改)と2番艦 響(改)で編成された艦隊は、”とある任務”の元、バシー島沖海域に向かう途中であった。
「あら〜?」
「どうしたの、愛宕お姉さん?」
帰艦して来た偵察機『零式水上偵察機』に搭乗していた装備妖精から話を聞いていた愛宕に暁が尋ねる。
「貨物輸送艦ワ級を見付けたわ、でもおかしい」
「? 何がおかしいの?」
「今、私達がいるカムラン半島海域にはワ級はいない筈なの。それに護衛艦無しでワ級だけでいるなんて…」
「この先のバシー島沖海域にはいるじゃない。どっかの艦隊が護衛艦を沈めて命辛々この海域に逃げて来たんじゃない?」
愛宕の疑問に川内が答えるが、愛宕は首を横に振って否定する。
「1、2隻ならそれも考えられるわ。でも見付けたワ級の数は8隻、護衛艦も無しにそれだけ群がっているなんて異常だわ」
「8隻ものワ級…」
「ならどうする? 私達の任務はバシー島沖海域の敵艦隊の調査でしょ?」
「そうね~」
飛鷹に言われて愛宕は如何したものか頭を捻る。
愛宕達に言い渡された任務は”バシー島沖海域における残存敵勢力の数”を調べる事だった。
対深海棲艦における人類勢力の要である鎮守府では艦娘を指揮する提督達に日々、『デイリークエスト』と云う名の任務が与えられる。これは提督と云う存在が誰にでもなれる役職で無く、海軍や戦いの未経験者が時に提督にならなければならない為に行われる様になった任務だ。
提督も艦娘と同じ様に適性があり、適性が高い者程艦娘達と心が通じあい、その性能を引き上げていく。幸か不幸か提督は性別で差は無く、老若男女の適合者が日々、人類の勝利の為に鍛練を続けている。
そんな提督達が行うデイリークエストに”貨物輸送艦ワ級を撃破する”任務があるのだが、最近、この任務を達成する事が難しくなっていた。
ワ級が出現するのは南西諸島海域におけるバシー島沖からなのだが、このところ、ワ級含む深海棲艦の姿がパッたりと見掛けなくなったのだ。それにより、提督達は任務達成の為に更に先の東部オリョールまで進路を向けなければならなくなった訳だが、エリートクラスが本格的に現れ出す海域に予想以上の被害を受けた艦隊も少なく無い。
尚、深海棲艦の姿を見掛けなくなった海域はバシー島沖だけで無く、提督達が勤めている鎮守府近海からカムラン半島までに及んでいた。深海棲艦達がいなくなった事に喜ぶ声も多いが、近い内に大反攻作戦でも仕掛けて来るのではないか? と不安の声も上がっている為、優勢任務として”深海棲艦が消えた海域を調査する”指令が提督達に下ったのだった。
「ワ級達がいる場所へ向かうわよ。深海棲艦が消えた理由が解るかも知れないわ」
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隠れ基地に無事、帰還した水野・函南連合艦隊。
基地には元気な姿のワ級達が待っていたが、彼女達から驚愕の話を聞く事になり、この事が今後彼等の運命を大きく変える事になる。
現状報告
・海底基地とカムラン半島隠れ基地の資材庫がいっぱいになった!
・新たな武装を開発した!
・貨物輸送艦ワ級『鬼灯』を仲間にした!
・役割別貨物輸送艦隊『春夏秋冬艦隊』を編成した!
・東部オリョール海を開放した!
・???を救出して仲間にした!
・人類勢力に接触した!
再び活動報告にて次回登場する艦娘についてのアンケートを設けました。
是非とも回答御願い致します。
感想コメント、意見・質問お待ちしております。