只々、感謝です。
今回は織川少佐と伊8を救出した後の海底基地での話となります。
今回も話中に性的描写が含まれている部分があるので苦手な方はご注意下さい。
夜
旭日島 海底基地
「担架を早く! 急いで!!」
無事、海底基地へと帰還した智明達。智明の急かす声の下、妖精達は担架と入渠カプセルを載せた専用のトラックを走らせる。担架に姫乃、入渠カプセルに伊8を載せ、智明達はメディカルルームへ向かった。
「夕張ちゃん、準備は!?」
「不知火からちゃんと聞いているわ。早く此処に」
伊8が入ったカプセルを治癒装置に取り付けると、カプセル内の伊8にナノマシンが注入され、治療が開始された。
「後は暫く様子見ね」
「そっか…、こっちの娘は?」
「疲労とショックで気絶した様ね。海水も少し飲んでしまっていた様だけど、智が運んでいる最中に全部吐き出したっぽいから、安静にしておけばいずれ目覚めるわ」
「良かった……」
取り敢えず2人が無事である事が解かり、智明は全身の力が抜けてへたりこむ。
「ここは私が見ておくから、智達は休んでなさい」
「分かった。有難う、夕張ちゃん」
「留守番で特にする事が無かったし、当然よ」
助けた2人を夕張に任せ、智明と不知火はメディカルルームを後にした。
「宜しいのですか?」
「何がだい?」
移動中の廊下で、不知火は智明に尋ねてきた。
「気絶している方は提督です。目が覚めればこの基地や智明さんの存在を知られる事になりますよ?」
「……そうだね」
そう、智明は
これまで、人類勢力に見付からない様に小型レーダー潜水ブイを制圧海域の各所に設置し、深海棲艦に襲われている時も、智明だけが艦娘達は視認できない海中から助けた。もし、今は気絶している
「ボディチェックはしておきましたが特にビーコン等の発信機は持っていない様でした。不知火としては目覚めて姿を見られる前に独房へ監禁し、頃を見計らって眠らせた後、鎮守府近海に戻しておくべきと進言します」
「…そこまでするべきかい?」
「司令達の存在を知られない為にはするべきだと不知火は思います」
「うーん……安全を考えると御尤もな意見なんだけどな…」
不知火の意見は遣り過ぎだと思うが、それは智明と芳彦の事を想っての事。しかし、
「見張り有難うねウィザード」
「ソ~ソ♪」
隔離ドックには数人の妖精達とウィザードが据え置きのベンチに座ってプールの方を眺めており、その視線の先には専用のワイヤーで縛られた潜水艦カ級フラッグシップとヨ級エリートの姿があった。
「まさか後ろでウィザードが追っ手を捕えていたなんて、ね?」
「不知火も予想外です」
「カ…」
「……ヨ…ヨ」
姫乃達を連れて撤退している最中、ウィザードは姫乃と伊8をそれぞれ抱えている智明と不知火の後ろを守る様に追跡していた。その際、敵の潜水艦達が尚も追って来ていた為、ウィザードはグランパスと共に撃破。その際に虫の息で生き残っていたのが、この2体であった。ウィザードはこの2体を基地へ引っ張って来たのだった。
「智明さんが倒しておりませんが、仲間になるのですか?」
「ある事をすればね、僕も最近漸く気付いたんだけど…」
智明及び芳彦が持つ、深海棲艦を仲間にする能力。今迄智明達は、この能力は”智明か芳彦自身が瀕死にまで弱らせた個体しか仲間に出来ない効果”であると考えていた。
弱っている且つワイヤーで縛られている為に動けない潜水艦達に智明は近づき、2体の身体に手を振れた。
「これで良し、資材を持って来て!」
潜水艦達に触れた智明はワイヤーを外しながら妖精達に指示を出す。
「あの、これで良いのですか?」
「うん。僕達の能力は”瀕死状態まで弱った深海棲艦に触れる事でその身体に募る負の念を浄化する”力みたいなんだ」
「『負の念』ですか…?」
「そう。
「…確かに、人間や不知火達、艦娘を憎み殺す事しかしなかった深海棲艦達がブティク達の様になる…生まれ変わったと云うのは強ち間違いでは無いですね」
隔離ドックの壁の一部が開き、クレーンに吊るされたコンテナが運び込まれて来る。潜水艦達は自分を拘束する物が無いというのに傍に居る智明に対して何もしてこなかった。
「オーライ、オーライ…良し、止めて!」
智明の前に降ろされたコンテナを開き、智明は資材をカ級、ヨ級の2人に与える。傷付き、弱っていた2人は一心不乱に資材を頬張り、元気になる頃にはコンテナの中身は空っぽになっていた。
「カカ~カ♪」
「ヨ、ヨヨ~♪」
「こらこら、裸のままで抱きつかないでっ!」
元気になった2人は感謝の意を表したいのか智明に抱きついてくる。これを何とか引き剥がし、不知火に彼女達に服を着せる様、頼んだ。
「智、良いかしら?」
不知火が2人を連れて隔離ドックを出て行った後、入れ替わる形で夕張が入って来た。
「伊8の治療が終わったのかい?」
「その事で話があるの、メディカルルームに来て」
心なしか暗い感じの表情であった夕張に不安を覚えた智明は、急いで彼女の後ろを付いて行く。メディカルルームに入ると、ベッドの上に伊8が寝かされていた。
「夕張ちゃん、
「体に別条はないから宿舎の空き部屋に入れて寝かせているわ。それより、この娘よ」
「カプセルから出ているから治療が終わったんじゃないのかい?」
「…智、彼女は助からないわ」
「……どういう意味だい?」
夕張からの突然の宣告に、智明はその意味が解らなかった。
「言葉通りの意味よ。伊8は助からない、つまり死ぬわ」
「でも…息をしている。寝息を立てているんじゃないのかい?」
「今は辛うじて生きているけど、1時間も経たない内に事切れるわ」
「そんな……何故…?」
「
「深海棲艦からの攻撃…汚染か…」
深海棲艦は呪術的防御によって霊装化していない、あらゆる攻撃を無効化している。この呪術的防御は深海棲艦の身体の表面をスキンバリアの様に覆っているのだが、この力は攻撃にも転用されている。
深海棲艦との戦闘で
攻撃を喰らって汚染されても、ある程度は耐える(個体差はあるが)事が可能で、妖精達の力で魂の汚染を浄化する事は出来るが、汚染に対する耐久限界を超えて一定時間が経過すれば魂は汚染されつくし、消滅してしまうのだ。
「伊8の魂は完全に汚染され尽くしているわ。1時間って言ったけど、消滅も時間の問題よ」
「もう…死ぬのを見る事しか出来ないのかい?」
「身体事態は完全に治療されているわ。でも魂の浄化は間に合わなかった」
「船体修復部隊をあの時持っていれば、こんな事には…」
「それでも無理よ。智が駆けつけた時には既に沈んでいたのでしょう? 耐久限界を超えたらその瞬間に浄化しない限り助からない、智は悪く無いわ」
伊8を助ける事が出来ない事に顔を歪める智明達。
伊8の呼吸は徐々に弱くなっている。
頑張って助けたというのに、こんな事になるとは………
(何か、何か助ける方法は無いのか?)
命の火が消えゆく伊8を前に智明は懸命に考える。
(完全に汚染された魂を浄化する方法……浄化…浄化?)
”浄化”という単語に智明は先程いた隔離ドックでのやりとりを思い出した。
『うん。僕達の能力は”瀕死状態まで弱った深海棲艦に触れる事でその身体に募る負の念を浄化する”力みたいなんだ』
『『負の念』ですか…?』
『そう。
(もしかすると…もしかするかも……!?)
智明はふと、横になっている伊8に近づき、彼女の右手を握った。
「智、何を?」
「僕達は”瀕死状態まで弱った深海棲艦に触れる事でその身体に募る負の念を浄化する力”を持っている。上手くこの力が働けば魂の汚染も…!」
「浄化可能な時間はとっくに過ぎてるのよ!? ……いやでも…やってみる価値はあるわね!」
「頼む、返って来てくれ!!」
伊8の右手を両手で包み込み、智明はひたすら願い続けた。
1時間経過した頃、夕張が予想した伊8の余命時間が過ぎていたが、伊8の心音は停止せず、弱々しかった呼吸も徐々に戻り始めていた。
「…上手くいったのかな?」
「解からないけど、モニターを見る限りバイタルは正常に戻っているわ」
「助かったんだよね…?」
「魂の汚染を見る事が出来ないから解らないわ。でも、生きているって事は浄化が成功したと言って良いのじゃないかしら?」
「そっか……僕は…救えたんだね?」
ホッとしながら智明は伊8の手をそっと放した。手を放した後も、彼女は静かに寝息を立てていた。
「大したモノね、智の能力は。でもこれでますます人類側に私達の事を教える訳にはいかなくなったわ」
「確かにね…。如何したものかなぁ……? はぁ…」
智明や芳彦が触れる事によって、深海棲艦を仲間にする事が出来るどころか浄化不可能なレベルまで魂が汚染された艦娘を救う事が出来ると云う事実は練度を高めた艦娘を激戦で失いたくない提督達、人類にとっては喉から手が出る程欲しい力であろう。
益々、智明達が人類に捕まったら解剖コースまっしぐらな状況が確定した事実に智明は深い溜息を吐いた。
「取り敢えず、バイタルを見る限り
「そうだね」
「今後、どうしていくか考えないといけないわ。”私の部屋”で話し合いましょ?」
「? 分かった」
後を妖精達に任せ、智明と夕張はメディカルルームを後にした。
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夕張の部屋
智明達が利用している兵舎は長い間、芳彦達の隠れ基地に滞在していた為、ここずっと利用されていなかったが、留守番していた妖精達が定期的に掃除している御蔭で埃を被る事がなかった。
「入って」
「失礼するよ」
夕張に案内され、智明は彼女の部屋に入る。部屋を見回すと、そこまで女子っぽい感じの部屋で無いと思ってしまう。棚や机の上には技術書や『解析! 超兵器』といった装備開発に関係する書物や艤装のミニチュアが沢山並んでおり、床には艤装や武装のパーツも幾らか散乱していた。
「結構散らかっているね?」
「留守番している間は此処とガレージを往復して色々弄ってたからね」
部屋には机用の椅子が一つしか無く、夕張は智明にベッドに座る様に促した。
「助けた2人は無事助かった訳だけど、智は彼女達を今後どうするつもりの?」
「彼女達が目覚め次第、姿を見せずに助けた事を説明。その後、ボートに乗せて送るつもりだったよ」
「移動時間とか景色を見られたら此処の場所がバレるわよ?」
「そこは目隠し也をして確認出来ない様にして貰うつもりだったよ。僕とウィザードが護衛しながらボートを引っ張るつもりだったし」
「甘いわ。艤装や装備を預かっておくとしても、暴れられたりしたらどうするの?」
「う、そこまでは考えていなかったよ……」
「もう、智明は自分の立場をもう少し考えるべきだわ」
溜息を吐いた夕張は椅子から立ち上がり、智明の前に歩み寄る。
そして智明の両頬に手を触れた。
「相手は人間だけど、智明や私達の味方とは限らないのよ?」
「そうだね、僕も心配性の筈なのにまだ甘い………?」
夕張の意見に納得する智明だが、自身の両頬に手を当てている夕張の顔が近付いている事に気付く。
「あ、あの……夕張ちゃん…?」
「あんまり私を心配させないで?」
そのまま智明をベッドに押し倒した夕張は彼にマウントを取る形で四つん這いになり、再び顔を近づける。
「あれ、なんかデジャヴュが……」
「とも…ん、」
「むぅ!? …ん…ふぅ……」
夕張と智明の唇が重なり、互いの唇を動かして擦り付けながら小さくて、柔らかくて、優しい感触を楽しむ。
「……っはふっ、はっ、はぁ……は…」
「………もしかして、息をしていなかったの?」
「その……初めてだったから……、遣り方も知らないし…」
「夕張ちゃんからしてきたのに?」
1分程のキスの後、思い出したかの様に呼吸をする夕張に智明はクスリと笑う。
「なら如何したら良いの?」
「普通に鼻ですれば良いよ」
「は、鼻!? でも息が掛かるし……」
「ゆっくりすれば問題無いよ。それに、多少掛かっても気にしないしね」
「そう…かな……?」
「それより、この体勢は変えたいかな?」
「え…? とも!?」
夕張を抱きしめて、智明はベッドの上を横に転がる。上下逆転した事によって智明が夕張の上に位置取る形となり、智明はそのまま膝立ちで夕張に問い掛けた。
「でも良いの?」
「何が?」
「このまま夕張ちゃんとシても?」
「…私がシたいのは智だけよ?」
「……分かった。んっ」
「ちゅ、ちうっ……んん……」
再び唇を重ねる。さっきは互いの唇を擦り合わせるだけであったが、智明は自分の舌で夕張の唇を軽く舐めた。体をピクッと震わせ、夕張は智明を見詰めてきたが、唇を開き、智明の舌を招き入れる。
「ん……ふぁあ………んむ……」
「ちゅむ……あふ………うん……んっ、ふうっ」
互いの舌を絡ませながらその味を楽しむ2人。初めてであった千歳との体験が激しかった為に2回目ながらも慣れてしまっている智明に対し、初めての夕張は既にいっぱいいっぱいらしく、顔を放すとその顔は真っ赤になっていた。
「ふふっ、夕張ちゃん可愛い…」
「な、何よ…智だって一回しかまだシた事無い癖に……」
夕張は智明に抱き着いて身体を横に動かし、再び互いの位置を逆転させた。
「私だって、夜は…、また別の顔なんだから!」
そう言いながら自分のスカートを脱いでいく。緑色のスカートがパサリとベッドの上に落ち、夕張の下半身を包むのはパンツと黒タイツだけとなった。
「…………縞々パンツ…」
そんな夕張の姿を見た智明は思わずそんな言葉を零してしまう。黒タイツ越しから見える夕張のパンツは緑と白の横ストライプ、夕張のイメージカラーが緑である事から実に似合っている。
「可愛いね」
「ふぇっ!? い、いきなりそんな事言わないでよぉ!」
「でも夕張ちゃんに似合っているし、本当に可愛いよ?」
再び赤くなる夕張を褒めながら、智明は右手を丸見えになった夕張のお尻に伸ばしてそのお尻と太ももを撫でだした。
「ひぁん……」
いきなり撫でられた事で夕張は驚き、可愛らしく喘いでしまう。
「夕張ちゃん………」
「ぁ…、とも…あっ……駄目よ…ぁん……そんな触り方……んぅ、いやらし過ぎるよぉ……」
左手で夕張を強く抱き締めながら、智明は右手で夕張のお尻や太もも、果ては背中やおへそ周りまで擽る様に撫でていく。されるがままの夕張は抵抗こそしないが、智明の胸元に顔を埋め、可愛らしい喘ぎ声を上げながら時折ピクンと体を震わせる。
「夕張ちゃん……そろそろ良いかな?」
「うん……良いよ。シて、智……」
夕張の反応を見ている内に我慢出来なくなった智明は彼女に問い掛け、夕張も早く受け入れたいと頷く。夕張の身体を撫でていく内に触れた、彼女の大事な箇所はビショビショになっていた。
その夜、智明は夕張の部屋から出て来なかった。
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朝
海底基地 食堂
「お早うございます、智明さん、夕張」
「お早う、不知火ちゃん」
「…お早う…不知火……」
「智明さん、夕張はどうしたのですか?」
「え!? いや、知らないな。夜眠れなかったとかじゃないかな~?」
朝になり、食堂に集まる面々。不知火は共に来た智明と夕張に挨拶をするが、夕張の様子が何かおかしい。ピョコピョコと少し跳ねる様な歩き方をし、疲れた表情をしていた。しかし、”満たされた女の顔”をしていた。
「……………そうですか」
その場ではそれ以上の追及を不知火はする事無く、遅れてやって来たウィザードや潜水艦カ級、ヨ級の面々が集まったところで智明達は朝食を食べ始めた。
「伊8は助かったそうですね」
朝食のサンドイッチを摘みながら、不知火は智明に尋ねてくる。
「うん。僕の力が魂の汚染にも効果があった様でね、なんとか一命を取り留めてくれたよ」
「それは良かったです。司令官も同じ力を持っているなら、今後艦隊メンバーが致命的ダメージを受けた時でも、死亡率は大きく下がるでしょう。ただ、これでますます智明さんと司令官の存在や力を知られる訳にはいかなくなったのでは?」
「そうなんだよね………
「このまま薬などで眠らせ続けて、夜にでも鎮守府に返した方が無難かと不知火は考えます」
「それが1番だと思うけど、伊8はどうするの?」
「目覚める前に提督と同じ方法で」
「…惜しいわね、汚染による摩耗から生き延びた艦娘のデータが採れるチャンスなのに…」
「仕方ないでしょう。司令官達や基地の存在を知られるよりはマシです」
「返す時は僕とウィザードでやるよ。今夜にでもするかな? ………ありゃ、コーヒーが無くなった」
「私が淹れて来るわ」
「不知火も欲しいので付いて行きます」
夕張と不知火が席を立ち、コーヒーサーバーが置かれているコーナーへ向かう。カップにコーヒーを淹れ、席に戻ろうとした時に不知火が夕張の耳元で呟いた。
「昨夜は智明さんとお楽しみだった様で?」
「─────────ッ!?」
この呟きに夕張はコーヒーカップを手放してしまうが、床にぶつかる前に間一髪でキャッチ出来た。
「な、なななな、何で……!?」
「行動でバレバレです。不知火の体験談を聞いたのですから、後で貴女の体験もしっかり不知火に話してくださいね?」
口をパクパクさせる夕張を尻目に不知火は一足早く席に戻って行った。
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「夕張ちゃん、挙動不審になっているけどどうしたんだい?」
「な、何でも無いわ。本当よ?」
「そ、そう……(不知火ちゃんに昨夜の事がバレたか。まぁ、夕張ちゃんの様子を見れば一発だもんな…)」
朝食後、智明と夕張は伊8の様子を見るべくメディカルルームへと向かっていた。特に何も無く、メディカルルームに着いた智明達は扉を開いて中に入るのだが……
「嘘……伊8がいない!?」
「目が覚めて部屋から出て行ったのか?」
伊8を寝かせていたベッドはもぬけの殻になっており、伊8の姿は部屋のどこにも無かったのだ。
「一体、何処に………ん?」
妖精達を呼んで伊8を探して貰おうかと考えていた所に、ガレージ担当の妖精が智明達の前にやって来た。
「如何したんだい? ………………え!? 伊8がガレージで何かを造り始めた!?」
「しかも、”自分は伊8じゃない”と言っている!? どういう事なの?」
「取り敢えずガレージに行こう!」
妖精から伊8がガレージにいる事を伝えられた智明達はガレージへ向かう。
「しかし、自分が伊8じゃないってどういう事なんだ?」
「記憶を失っているのか……、もしかしたら憑代の記憶だけになっているとうのも考えられるけど……」
「でも憑代の記憶ってオリジナルしか持っていないんじゃ?」
「そうよ、あの伊8がオリジナルの可能性は低いから有り得ないわ」
伊8が言ったという言葉に首を傾げながら、智明達はガレージに辿り着く。中に入ると、伊8がパソコンの前で何かを入力し、ナニカを開発していた。
「何をしているの!?」
夕張の問い掛けに伊8はピタリと入力作業を止め、此方へ振り返った。そこで智明は彼女に対し違和感を覚える。
メディカルルームに運ばれた伊8は治療の為に艤装衣服を脱がして患者服を着せていた。今、目の前にいる伊8も患者服を着ているのだが、サイズがおかしいのだ。伊8は身長が154cm程度であり、患者服もそのサイズに合った物を着せていた。なのに、目の前にいる伊8が着ている患者服は袖から見えなかった筈の腕が見え、膝が隠れる程にあった下も縮んだのか艶かしい太ももが覗かせていた。
患者服が縮んだと言うより伊8の体が成長したと言って良いかもしれない。知的な少女といった雰囲気であった伊8は、今は知的ながらも見目麗しい成人女性の体つきになっていた。
そして何より伊8と違うのは、金髪だった髪が白く輝く星の様な美しい銀髪に変わっている事だった。
「………貴方が私の
「へ?」
突然、伊8と思われる女性から質問を投げ掛けられる。救出した際の現状から姫乃が彼女の提督であると思っていたが、先程の発言だとそれは違うと言う事になる。
「え〜と、君と一緒に助けた女の子は君の提督では無いと言う訳かな?」
「女の子? 悪いけど私は自分の提督をまだ見た事が無いのだけど…?」
「「え?」」
「それに、助けられたとはどういう事かしら? 私は此処で建造されたのでは?」
「「……………」」
どうも噛み合わない話に智明と夕張、伊8を見守っていた妖精達は首を傾げる。
「……色々と聞きたい事があるのだけど、取り敢えず尋ねるわ。貴女は伊8よね?」
夕張が伊8に尋ねるが、彼女は不思議そうに首を傾げるだけだった。
「先程もそこの装備妖精達にそう尋ねられたのだけど………、答えは
「!? 其じゃあ貴女は誰なの?」
自分は伊8では無いと答えた伊8の姿をした女性。
一瞬、智明達は構え様とするが、彼女は直ぐに答えを返した。
「私はドイツより派遣された超国家組織『青』所属、青の4号ことレクイエムよ。宜しく頼むわ」
「レクイエム……?」
「青の……4号だって!?」
「あら? よく見たら貴方、青の6号じゃない。艤装を着けていないし、私服姿だから気付かなかったわ」
そう言って、伊8に似た容姿をした女性、レクイエムは智明に不敵な笑みを浮かべるのであった。
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「つまり、どういう事ですか?」
「僕の浄化が影響したのか、伊8は伊8としての魂が記憶と共に消滅。代わりに青の4号ことレクイエムの魂が発現したみたい」
レクイエムを連れて再び食堂に集まった智明達。不知火に智明は事情を説明した。
「消滅より変質が合っていないかしら? 何も無いところから魂が現れる事は無いし」
「生まれ変わったと言う事ですか?」
「それで合っているわ」
「しかし、何故そんな姿に?」
「どう考えても僕の能力に依るものだろうね」
『青の4号 レクイエム』、
智明が与えられた竜王と同じく、『青の6号』に登場した潜水艦である。ドイツから超国家組織『青』に派遣された潜水艦であると書かれているが、他に描写が原作内に無く、詳しい情報は記されていない。
「智と同じ世界の潜水艦と言う訳ね?」
「そういう事になるね。しかし、生まれ変わるなんて……」
「ブティク達の様に転生したと見て良いのでしょうか?」
「ソソソ〜?」
「カ、カ?」
「ヨ〜ヨ?」
智明達が一斉にレクイエムを見る。因みにウィザードによって鹵獲出来た潜水艦達には名前が与えられ、カ級には『マラコット』、ヨ級には『ボルガ』と名付けられた。いづれもブティクやコーバック、ウィザードと同じく『青の6号』に登場した潜水艦の名前が由来だ。
「私に期待されても答え様が無いわ。私にあるのは青の4号としての記憶とこの世界の実状だけ。だから私がこの世界に存在しない艦であるのは解るけど、それ以外は解らないわ」
肩を竦めながら、レクイエムはそう答えた。
「でも、強いて言うなら。目覚める前に貴方に喚ばれた様な気がするわ」
そう言ってレクイエムは智明を見詰めた。
「う〜ん、魂が消えかけている艦娘に智が触れる事で、智の世界にある艦艇の魂と消えかけの魂が転生と云う形で変質したって事かしら?」
「喚ばれたと言うのが引っ掛かりますね」
「頭がこんがらがってきたよ……」
「私としてはこの世界の艦艇で無い以上、ドイツに帰っても居場所は無いから此処に置いて欲しいのだけど?」
「そういえば、智明達と似た存在になった訳よね、彼女…」
レクイエムの言葉で改めて彼女の境遇を理解する。彼女も智明と同じく近未来の潜水艦なのだ。人類勢力に渡れば男性である智明達程で無くとも、研究施設に連れていかれて実験体として調べられるだろう。
「彼女は鎮守府に返せないな……」
「それでは
「目覚める前に返すかどうかも決めないといけないわ。目覚めるのも時間の問題だろうし」
「う~ん……(折角助けた人類勢力の提督、今後の為にも友好的な繋がりを持ちたいが…)」
自分達や基地の存在を知って欲しく無い
「そうだ、レクイエムがいるなら何とかなるかも……」
ある名案が智明の頭に閃いた。
果たして智明の名案とは一体…………?
現状報告
・智明達が持つ能力が明らかになった!
・潜水艦カ級フラッグシップ『マラコット』を仲間にした!
・潜水艦ヨ級エリート『ボルガ』を仲間にした!
・智明と夕張の絆がより深いものになった!
・救出した伊8は潜水艦『レクイエム』に転生した!
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