嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

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仕事で東京に行ってきました。
新宿のホテルを拠点に2日間あちこち回りましたが、街の構造が複雑怪奇過ぎて何度も迷う始末………

今回は各陣営の動きとなります。


 驚愕

海底基地 ガレージ

 

 

「そろそろ良いかな?」

「ぐすっ……、ひぐっ…、はい。済びまぜん……」

 

 

 レクイエムに抱き着き、わんわんと泣いていた姫乃は顔を涙(+鼻水)でぐしょぐしょに濡らしながらも智明へ返事をした。

 

 

「この通り彼女が元、伊8なんだけど。姫乃ちゃんは彼女を如何したい?」

「レクイエム…れーちゃんが良いのなら一緒に呉鎮守府へ帰りたいです」

「れ、れーちゃん……」

 

 

 早速、愛称を付けた姫乃にレクイエムは引き攣った表情になる。

 

 

「そう言うと思ったよ。でも、現状だと彼女を連れて帰るのは危険だ」

「え!? 何故ですか!?」

 

 

 智明の言葉に姫乃は驚愕した表情で尋ねる。

 

 

「姫乃ちゃんはレクイエムと言う名前の潜水艦を聞いた事があるかい?」

「え、えぇと……日本国内の艦娘の名前もまだ全部覚えていないから、海外の艦艇はちょっと……」

「…………取り敢えず、食堂に行こうか?」

 

 

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海底基地 食堂

 

 

 テーブルには人数分の飲み物が並び、智明、夕張、不知火、レクイエム、姫乃の5人が座っていた。

 

 

「まず知って貰いたいのは、レクイエムは実在の艦艇では無い事なんだ」

「実在の艦艇じゃない?」

 

 

 智樹の言葉に姫乃は首を傾げる。

 

 

「艦娘召喚の条件は知っているね?」

「はい。艦娘は第2次世界大戦迄に登場した実在の艦艇のみが召喚されると聞いています」

「そう。ペーパープランだけや架空艦、第2次大戦以降の艦艇は絶対に艦娘にとして召喚出来ない。その筈だった…」

「その筈って………それじゃあれーちゃんは!?」

「姫乃ちゃんが思っている通りだよ」

 

 

 ハッとした顔になる姫乃に智明は頷く。

 

 

「レクイエムは実在した艦艇じゃ無い。更に言えば彼女は未来の艦艇だ」

「ど、如何言う事ですか!? それじゃあ条件に合わないじゃないですか!!」

「そう、彼女は条件から外れた艦娘だ。そんな彼女を鎮守府に連れて帰ったらどうなると思う?」

「初の条件から外れた艦艇として調べられる……?」

「最悪のケースだと解剖されて隅々まで調べられる」

「そんな……!?」

「人類は第1、2次海洋大戦で敗北している。勝つ為には形振り構わないと考えている派閥もいる筈だ」

 

 

 姫乃はショックを受けながらも、一進一退が続く深海棲艦との戦いに終着を着ける為に公表できない様な作戦や実験を行った事が有ると言う事を噂ながらも聞いていた。

 

 

「それは…、噂だけのモノじゃ無いんですか?」

「残念ながらね。そもそも彼女はペーパープランにあった艦艇では無く、架空艦だ。連れて帰ったら研究施設で艦艇のスペックなんかを隅々まで調べられるよ」

「それじゃあ、れーちゃんは此処に置いて帰った方が良いですね……」

 

 

 姫乃が悲しそうな表情になるが、智明は優しい表情で姫乃にこう言った。

 

 

「大丈夫だよ。調べられるのは相手のデータを知らないからする訳でしょ?」

「? どういう事ですか?」

「レクイエムのデータを前もって持って行けば精密検査をされる心配は無いって事さ」

「!? じゃあれーちゃんを「但し!」…!?」

「データを渡しても自分達で調べようとする派閥はきっと現れる。だから…」

 

 

 智明は真剣な表情で姫乃に願い出る。

 

 

「姫乃ちゃんには日本国海軍とのパイプ役になって貰いたい」

 

 

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蒼真達がブラス達と交戦した後日

 

トラック泊地 鍛錬場

 

 

「ふっ! はぁっ!!」

 

 

 武道場で蒼真は1人、鍛錬に励んでいた。

 前回の出撃でブラス達と交戦し、相手に手加減をされたばかりか自身が捕まった上で結局、見逃されたと言う事実は彼の胸に重くのし掛かっていた。

 相手に手加減された事が屈辱的で無かったと言えば嘘になる。しかし、それよりも劣勢に焦った自分が相手に1人で斬り掛かった事で捕まり、艦娘達を危険に晒してしまった事に情けなさを感じていた。

 

 

(あいつらを置いて、先には死なないと大口叩いてあの様だ…)

 

 

 模造刀を振り続けていた手を止め、大きく溜め息を吐く。あの時は何の理由かは知らないが、まるで敵対したく無いかの様に自分達に威嚇程度の攻撃しかせず、ひたすら防御に徹していた。それが自分を誘き出す為の作戦とは気付く事無く、まんまと引っ掛かったのだ。

 戦うつもりが無いと言っていたあの連中だったからこそ、何も無く撤退が出来たが、もし、あの時に交戦していたのが普通の深海棲艦だったらどうなっていただろうか………

 

 

「!? うぐぅっ!!」

 

 

 ガランッと大きな音を立てながら蒼真が持っていた模造刀が床に落ち、彼は自身の体を抱き締めながら震え出す。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

 脂汗が流れ出し、視界がぼやける。

 蒼真の脳内には第2次海洋大戦での深海棲艦の大反攻がフラッシュバックしていた。

 

 

(嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダ………!!)

 

 

 砲弾を雨霰と降注がせながら遂に人類が勝利すると浮き足立っていた人類軍へと襲い掛かる深海棲艦達。

 

 多くの者はその降注ぐ砲弾に撃ち抜かれて身体が真っ二つになって絶命した。

 

 ある者は群がる敵駆逐艦に身体を食い散らかされて死んだ。

 

 またある者は鬼の艤装である巨大な腕で捕まえられ、粘土細工の様に身体の部位をバラバラに引き千切られて死んだ。

 

 戦う術も無く、虫の息である者にさえ容赦無く、砲撃や雷撃を仕掛けてバラバラの肉片へと変えていった。

 

 この惨状を生み出した深海棲艦に、蒼真は無力感や怒り以前に恐怖がその身体を包んでいた。

 そして、この犠牲になった仲間達の姿が自身が率いる艦娘達に代わっていく。

 

 

「あ………あぁぁぁあああああああ!!?」

 

 

 一瞬の想像が蒼真の見たくない光景を脳内に映し出され、蒼真は蹲って頭を抱えた。

 

 

「嫌だ、死ぬな……、俺を置いて逝かないでくれ……頼む……」

 

 

 普段の近寄りがたい雰囲気は消え、暗闇を恐れる童の様に蒼真は体を震わせる。

 

 

「大丈夫?」

「……!?」

 

 

 ふと声を掛けられた蒼真は漸く我に返る。顔を上げると足柄が心配そうな表情で見詰めていた。

 

 

「…あ……足柄か…?」

「如何したの提督!? 顔色が悪いわ?」

「心配ない、少し疲れただけだ…」

「嘘! 疲れてあんな風に悲鳴は上げないわ!」

 

 

 心配かけない様に嘘を吐くが、先程の様子では騙せない様で足柄は否定する。

 

 

「一体、如何したの? あの任務が終わってから様子がおかしいわ?」

「……足柄には関係な「関係あるわ!!」……」

「提督の指揮下に入った時から私達は貴方と共にいるわ!」

 

 

 声を荒げる足柄に蒼真は少し驚く。彼女の顔を見ると目尻から涙が零れていた。

 

 

「貴方は1人じゃない。私達がいるのよ…?」

「……………ふぅ。済まんな、足柄」

「謝る位なら悩みを話して?」

「そうだな……」

 

 

 蒼真は模造刀を木刀などが置かれている場所へ直すと、床に腰かけてポツリポツリと語り出した。

 前回の調査任務でレ級達と戦った事で嘗て仲間が殺された記憶が蘇った事。

 仲間が殺される瞬間がフラッシュバックして時折、頭から離れなくなる事。

 殺される仲間達が足柄達、艦娘に置き換わってしまう事。

 

 

「情けない話だ。過去の記憶をまだ起きていない今に置き換えて恐れているのだから…」

 

 

 そう自嘲する蒼真に対し足柄は彼に近寄ると、その身体を抱きしめた。

 

 

「足柄?」

「大丈夫よ、私達はそう簡単に沈まないわ」

 

 

 そう言って足柄は上目使いで微笑む。

 そんな彼女に蒼真は目を見開くが、表情を戻して蒼真自身も微笑んだ。

 

 

「………そうだな、お前達がそう簡単に沈む訳が無いか」

「だから脅えないで。何時も私達が居るから……」

 

 

 抱き締められていた足柄から離れた蒼真は、彼女の頬を優しく撫でた。

 

 

「済まんな足柄、お前のお陰で救われた」

「そんな……、貴方の艦娘なんだから当然よ?」

「そうか…。ところで、この後時間はあるか?」

「え? 大丈夫だけど……?」

 

 

 感謝の言葉を述べた後の問いに答えながらも、どういう意味なのか首を傾げる足柄。

 

 

「酒に付き合ってくれないか? 今夜は飲みたい気分だ」

「え!? 私で良いの!?」

「? 何か不都合があったか?」

「へ? い、いや、無いわ。全く無い。喜んで付き合うわ!」

「そ、そうか……」

 

 

 急に喰い付いて来た足柄に少々引き気味になりながらも蒼真は彼女と共に鍛錬場を後にした。

 

 

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横須賀鎮守府 重成の執務室

 

 

 日本国海軍の総本部である横須賀鎮守府。其処で元帥に次ぐ実権を持つ、神宮寺 重成大将の執務室に3人の人影が向かい合っていた。1人はこの執務室の主である重成、そして彼と向かい合うのは大阪警備府所属の葛城 蓮少将と呉鎮守府所属の十 蒼介大佐の2人だ。

 3人は執務室中央にある応接用のソファーに座っている。そこへ、執務室のドアが開いて1人の女性がティーセットを片手に入って来る。

 

 

「失礼しマース。お茶をお持ちしマシタ」

 

 

 若干の片言で戦艦金剛型1番艦 金剛(改二)が慣れた手付きで重成達の紅茶を用意していく。

 

 

「有難う、金剛。帰って来て早々に用意させて済まないね?」

「No Problem、提督達の大事な話し合いには口を潤す飲み物が必要デース。また何かあったら呼んで下サーイ♪」

 

 

 重成の労いの言葉に笑顔で返事する金剛は彼にウィンクすれと、そのまま退室して行った。

 

 

「さて、では新しい情報を聞かせて貰えますか?」

「了解や。先ずはこの報告書を読んで欲しいのやけど…」

 

 

 蓮は重成に数枚の書類を渡す。

 

 

「パラオ泊地から調査に出撃した辰巳はんが目撃した内容や」

「葛葉大佐ですか……」

 

 

 重成は書類に目を通し、とある項目で目を細めた。

 

 

「艦娘と友好的に接し、霊装化したミサイル兵器を使ってくる新種の鬼ですか…」

「せや。対空ミサイルで追尾機能付き、12cm30連装噴進砲みたいな真っ直ぐ飛ぶだけのロケット弾とはちゃうで?」

「この潜対艦ミサイルを使用した男性と言うのは?」

「蒼介はんの艦隊が遭遇したそうや」

「それは本当ですか?」

 

 

 重成の視線が蒼介に移り、蒼介は答える。

 

 

「3日前の輸送艦護衛任務の際に天龍達が遭遇した。但し、通信だけの会話で声の主は海中にいた為に姿は確認出来て無い」

「ふむ……、蓮はこの声の主と鬼に繋がりがあると考えている訳ですね?」

「同じカムラン半島海域での出来事やさかい。関係無いと言う方がおかしい。ついでにいえば、新種のワ級とも繋がっとると思っとる」

「蓮の予想が合っているかは兎も角、御堂大佐が交戦したステルス艦やレ級の存在と中々に厄介な情報ですねこれは……」

 

 

 重成は眉をしかめながら顎に手を当てる。蓮達から知らされた情報はどれも前代未聞のモノばかりだ。何にせよ、カムラン半島海域周辺に人類勢力や深海棲艦に属さない第3勢力が存在している事は確実だ。

 

 

「蓮、貴方はこの状況でどう動くつもりですか?」

「……ウチは何とかして、この勢力と連絡を取りたいと思っとる」

「トラック泊地の御堂大佐が交戦を行っている以上、既に敵視している可能性がありますよ?」

「それは無いやろ。扶桑を仲間にしており、行方不明扱いの千歳や羽黒を知っている連中や。艦娘達がウチ等に敵対するとは考えられへん」

「蒼介はどう考えていますか?」

「敵対しているなら天龍達を助ける真似はしない筈……、そう考えている」

「解かりました。…………うぅむ…」

 

 

 再び考え込む重成。

 自分達、日本国海軍にとって一番有利な展開は第3勢力と友好関係を結び、世界で未だ実現できていない霊装化した近代兵器の製造技術を取得させて貰う事だ。蓮の予想が正しいのなら男性適合者のデータや深海棲艦を仲間にする技術も手に入り、これは対深海棲艦への圧倒的なアドバンテージになる。更に、これら技術の取得に成功すれば、政治的意味でも世界で有利に立てる。

 

 

(まずは相手がどれ程のモノなのかを確かめる必要がある……)

 

 

 重成は金剛が用意した紅茶で口を潤し、蓮に問い掛けた。

 

 

「使者を送るとして、誰を送るつもりですか?」

「蒼介はんの双龍艦隊を送ろうと考えとる。ウチの艦隊はワ級達と交戦したさかい、避けられると思う。双龍艦隊なら声の主とも繋がりがあるし、問題無い思うで?」

「ふむ……事情故に他の提督達に簡単には頼めませんしね………。分かりました、蒼介に任せます。トラック泊地とパラオ泊地の提督達には私から話を付けておきます。今後の戦況に係わる重要な事項です、頼みましたよ?」

「了解」

 

 

 重成の真剣な表情に、蒼介は敬礼して応えた。

 

 

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横須賀鎮守府 食堂

 

 

 鎮守府の中でも横須賀鎮守府は最も規模が大きい。そんな横須賀鎮守府の食堂も500人以上が収まる程に大きい。休日になると一般の者がこの食堂限定の料理を食べに訪れたりするのだが、今は平日の昼過ぎ。昼食を食べに来る職員のピークも過ぎ、仕事で昼時に来れなかった者がポツリポツリといる位である。

 そんな席が程よく空いている食堂に大阪警備府から来た葛城艦隊の高雄達と呉鎮守府から来た双龍艦隊の天龍達が蓮達が戻って来るのを今か今かと待っていた。

 

 

「提督はまだかなぁ……」

「天龍ちゃん、提督は重要な話し合いに来たのよ? 直ぐには終わらないわ」

 

 

 蒼介から渡されたお小遣いで横須賀鎮守府名物『軍艦パフェ』を突っつきながらボヤく天龍を龍田がたしなめる。因みに駆逐艦の皐月達は夢中でパフェをパクついている。

 

 

「でもよぉ龍田、食堂で時間を潰すだけなのも暇だぜ?」

「提督が言うには今後の作戦に大きく影響する内容らしいから、そう簡単には終わらないと思いますよ?」

 

 

 龍田にブー垂れる天龍に高雄が声を掛ける。彼女はケーキと紅茶を頼んでおり、優雅に紅茶を啜っていた。

 

 

「今後の作戦に影響って……、高雄さんは知っているんですか?」

「残念だけど知らないわ」

「私達が知るにはまだ早いらしいのよ〜?」

 

 

 高雄に続いて愛宕が答えてる。彼女は天龍達と同じくパフェを食べている。

 

 

「でも内容は大体想像できるわ」

「! 本当かよ、愛宕さん!?」

 

 

 人差し指を口元に当て、考える仕草を取る愛宕に天龍は席から立ち上がって尋ねる。

 

 

「カムラン半島海域て遭遇した新種のワ級が関係しているのは明らかね」

「新種のワ級って、スタン効果の兵器を使って逃げた奴等か? そこまで神宮寺大将と話し合う程、問題になるか?」

「あら、殺傷能力が無い武装だからって馬鹿には出来ないわよ天龍ちゃん? 相手を無傷で捕らえる事が出来るのだもの」

「龍田の言う通りね。相手にとっては今後、私達艦娘を簡単に生け捕り出来る様になった訳」

「な、何だよそれ……」

「あくまでも予想だけど、提督達は敵が取る戦略が変化する事を危惧しているのかもしれないわ。あ、でもこれは予想だから本気にしちゃ駄目よ? 提督達は私達を不安にさせない様にまだ教えていないのだから…」

 

 

 何時も通りのほんわかした雰囲気で注意する愛宕だが、天龍の表情は晴れない。

 

 

「予想って言ってもよぉ……」

「HEY、皆さん。御機嫌如何デース?」

 

 

 そんな彼女達のところへ金剛が現れる。

 

 

「金剛さん…」

「提督達の Meeting はまだ掛かると思いマース。ところで天龍、浮かない顔をしていますが何か Worry デース?」

「へ!? いや……その……」

「私で良ければ話してくだサーイ」

「………」

 

 

 天龍は高雄達と話した先程の不安を話した。

 

 

「成程ネー。未知の Enemy の存在を恐れている訳ですカ?」

「まぁ、そうです…」

「確かに今まで人間や私達艦娘を見付け次第、襲い掛かっていた深海棲艦が非殺傷兵器で攻撃をするのは怪しいデース。But、心配する必要は無いと思いマース」

 

 

 不安気な天龍に金剛は笑顔で答える。

 

 

「提督達はちゃんとその事もちゃんと考えていマース。葛城提督も十提督も貴女達を Danger な目に遭わせる筈が無いデース。勿論、私の神宮寺提督もネー♪」

 

 

 そう言って金剛は自身の薬指に着けられた指輪をウットリと見詰めた。

 天龍達は金剛が着けている指輪を見て目を丸くする。

 

 

「こ、金剛さん!? それって!!?」

「YES! 遂に提督とケッコンしましター♪ お陰で私の Heart は、毎日 Burning Love デース♪」

 

 

 金剛は自身の体を抱き締めながらクネクネと身を捩る。

 彼女が言ったケッコンとは提督と艦娘の間で行われる儀式で一般的に『ケッコンカッコカリ』と呼ばれている。限界練度に達した艦娘のみが行う事が可能な儀式であり、これによって練度や才能の限界突破、消費する燃料や弾薬の減少といった恩恵がもたらされる。儀式の内容が艦娘に特別な霊装を施した指輪を与え、儀式書類に提督及び艦娘の名前を書くといったモノなのだが、見た目が結婚で行われる行程と酷似しているので仮の結婚と言う意味で『ケッコンカッコカリ(結婚(仮))』と呼ばれる様になった。

 

 

「提督とケッコンした私には分かりマース。きっと大丈夫デース」

「………そう自信満々に言われてもなぁ…「羨ましいわぁ、提督とケッコンだなんて……」…って、龍田はそっちかよ!?」

 

 

 自分の不安を解消するには足りない理論に呆れる天龍(Lv.94)だが、金剛(Lv.120)の指輪を羨ましそうに見詰めながらそう呟く龍田(Lv.93)にツッコミを入れる。

 

 

「私も提督とケッコンしたいわ〜。ねぇ、姉さん?」

「え!? そ、そうね…(提督は私と愛宕のどっちとケッコンするつもりなのかしら?)」

 

 

 愛宕(Lv.99)も龍田と同じく金剛のケッコンを羨ましがり、高雄(Lv.99)も内心で気になりだす。

 

 

「提督とケッコンしたら、もっと夜戦に出してくれるかしら?」

「それって……何時もと変わらないわ、川内姉さん…」

「ケッコンしても結局夜戦なのね…」

 

 

 川内(Lv.91)の期待に対し、神通(Lv.88)と飛鷹(Lv.89)が呆れる。

 

 

「私もレディとして提督とケッコンしたいわ」

「でも、ケッコンするには練度が足りない…」

「提督にお願いしたらボクもケッコン出来るかな~?」

「毎日秘書艦に成れるのかな?」

「どうだろうか? だが、ケッコンは良いな」

「ケッコンする為にもっと練度を上げなくては……!」

 

 

 パフェに舌鼓を打っていた駆逐艦達(暁:Lv.71、響:Lv.69、皐月:Lv.54、文月:Lv.53、長月:Lv.52、菊月:Lv.52)もケッコンの話題には憧れるらしく、和気藹々と語り合い出すのだった。

 

 

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カムラン半島 隠れ基地

 

 

「艦隊と交戦した結果、互いに被害は殆ど無し、相手の提督を抑えて無事に撤退させた、と……」

「物分カリノ良イ提督デ良カッタワ」

「リベンジに大艦隊率いて来ない事を祈るしか無ぇな、こりゃ」

「デモ、此方ノ実力ハ充分ニ理解シタ筈デス。敵対侵攻ノ可能性ハ低イト思イマスヨ?」

「コーバックさんの言う通りなのです。そこまで攻勢の心配は無いと思うのです」

「ソレニ…、レーダー発信器ガアリマス。相手ノ位置ガ分カレバ避ケル事モ可能デス…」

「それもそうだな。目下の問題は………」

 

 

 ブラス達の意見に納得した芳彦は後頭部を掻きながら言葉を一旦止め、ブラスの横にいる女性達を眺める。

 

 

「春夏秋冬艦隊によっていっぱいになった資材置き場がほぼ空になった事だよな……」

 

 

 芳彦はふぅ、と溜め息を吐く。

 彼の言葉通り、隠れ基地の資材置き場にはいっぱいだった筈の資材が殆ど姿を消していた。何故かというと……

 

 

「コレニツイテハ仕方無イトシカ言エナイワ」

 

 

 潜水艦カ級フラッグシップから高機動潜水艦鬼に進化したコーバックが肩を竦める。

 

 

「ココハ戦力強化ト言ウ事デ勘弁シテ欲シイワネ」

 

 

 戦艦タ級フラッグシップから原子力戦艦鬼・烈に進化したヨハムが苦笑しながら答える。

 

 

「アァ…、姉様ト同ジ姿ニ進化出来ナカッタノハ残念デスガ、姉様ト一緒ニイルダケデ幸セデス…」

 

 

 戦艦タ級フラッグシップから原子力戦艦鬼に進化したビフトはヨハムをウットリとした表情で見詰めながら、彼女の側で関係無い事を言っている。

 

 

「……御免ナサイ…」

 

 

 空母ヲ級改フラッグシップから氷山空母鬼に進化したハクは素直に謝る。

 

 

 そう、鴉艦隊と交戦した日にこの4人が鬼へと進化したしたのだ。結果、資材の殆どが彼女達の胃袋に消える事となったのだった。

 

 

「いや、な? ”ヨハりん”の言う通り、戦力が強化されたから文句は無いけどよ、いっぱいだった資材置き場がああも空に近い状態になると衝撃が大きいと言うか、何と言うか……」

「司令官、ウジウジしていても仕方無いわ」

「資材はまた集めれば良いですし、頑張りましょう?」

 

 

 芳彦は雷と羽黒に慰められる。

 

 

「でも近い内に行う沖ノ島海域攻略はどうする? 此処をベースにしている以上、資材が無いとどうしようも無いぞ?」

「とも君に頼んで海底基地から資材を運んで貰ったら良いんじゃない?」

 

 

 人類勢力と接触してしまった芳彦達は、早い内に沖ノ島海域の攻略を終わらせるべきだと考えていた。大艦隊での攻略はバシー島沖海域で問題無く機能出来た為に、鈍らない内に攻略を済ませたいと言う考えだ。

 

 

「成る程な、そうすりゃ良いか」

 

 

 千歳の案を採用する事にした芳彦は、智明に連絡すべく携帯端末を取り出して連絡する。

 

 

「もしもーし、トモか? 俺だけど、資材を此方に運びたいから明日辺りに桜達とそっちに行きたいんだが……ああ。”コーちん”達が進化してよ、此方の資材置き場がほぼ空になった。え?” コーちん”、”ヨハりん”、”ビフっち”、”ハクのん”の4人だ。驚いたろう? 何だって? トモの方でも驚く事がある? そっちに居るのって”ウィザりん”だけだろ? 進化したんだったら此方の方が…………は?」

 

 

 長々と智明と会話していた芳彦だったが、智明からの報告に一瞬固まる。

 

 

「一寸待て、もう一度言ってくれないか? …………はぁぁあああ───!?」

 

 

 突如として響き渡る芳彦の驚愕の声に周りにいた者はビクッと体を震わせた。

 

 

「司令官さん、どうしたんですか!?」

「何事っぽい!?」

「マサカ、智明ニ何カ!?」

 

 

 周りの者が心配そうに尋ねてくる中、未だに驚愕の表情である芳彦が口を開いた。

 

 

「トモが鎮守府の提督を保護したらしい………」

《えぇぇぇえええええ─────────!!?》

 

 

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呉鎮守府 桟橋

 

 

「それでは頼んだぞ、お前達」

「えぇ、任せて提督」

 

 

 桟橋には蒼介と天龍達、双龍艦隊の面々が揃っていた。

 蒼介の言葉に笑顔で答えるのは龍田。一方、姉艦である天龍は納得いかない顔をしていた。

 

 

「なぁ提督、本当に大丈夫なのかよ?」

「何がだ?」

「俺達は深海棲艦と戦っているんだぜ? つまり敵だ。なのに友好関係を結ぶ為の使者として行けなんて…」

「天龍、この任務は俺達の今後が左右される重要なモノになると考えている。お前達はその一端を担って貰いたい」

 

 

 蒼介が天龍達に下した任務とは、重成の指令の下、カムラン半島海域に潜む第3勢力と協力関係を結ぶ為に彼等の元に天龍達を使者として送り込むモノだった。

 

 

「でもよ…うぉ!?」

「任せてよ、提督!」

「大事な任務なんでしょ?」

「ボク達がしっかり成功させてみせるよ!」

「天龍が失敗しない様に見ておくね」

「そうか、期待しているぞ」

 

 

 渋る天龍を押し退けて皐月達が蒼介に駆け寄って来る。蒼介は皐月達を優しく撫でながら微笑んだ。

 

 

「お、お前ら……」

「あらあら、皆遣る気満々ね。後は天龍ちゃんだけよ?」

「うぐぐ……」

 

 

 1人決めかねている天龍に蒼介は近寄る。

 

 

「天龍、俺を信じてくれないか?」

「………ああもう! これじゃあ、俺だけ悪者みたいじゃねぇか! 提督を信じ無い訳無ぇだろ! 絶対に成功させて帰って来るから首を洗って待ってろ!」

「天龍ちゃんったら…(使った言葉の意味が違う気もするけど黙っておきましょ)」

「あぁ、期待して待ってるぞ。だが、決して無理はするな。重要な任務だがお前達が一番大事だからな」

「わ、分かってるよ…」

 

 

 蒼介は天龍の頭も撫で、彼女は照れ臭そうに顔を赤らめる。そのまま彼女達は桟橋から海上へと降りて出撃の準備を始めた。

 そんな彼女達の様子を蒼介は暫く眺めていたが、天龍の傍に寄ると腰を屈めて……

 

 

「天龍…」

「何だ……むぅ!?」

「あらぁ♪」

 

 

 天龍の唇と自身の唇を重ねてキスをした。

 

 

「ちゃんと帰って来いよ?」

「───!?」

「提督、天龍ちゃんだけなんてズルいわ。私も〜、ん♪」

 

 

 蒼介からのキスに顔を真っ赤にしてテンパる天龍を放っておき、龍田も彼とキスをする。

 

 

「む?」

「うふふ、提督とキスしちゃった♪」

「あー! 天龍に龍田ズルい!!」

「あたしもキスする!!」

「長月も!!」

「提督、この菊月にもキスを……」

 

 

 龍田が蒼介にキスしたのを皮切りに皐月達もキスをせがみだし、グダグダになりながらも天龍達は南西諸島海域のカムラン半島に向けて出撃したのだった。

 

 

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旭日島海底基地 海上港

 

 

「智明さん、智明さんの仲間ってどんな人なんですか?」

 

 

 島型が指輪型である旭日島中央部に設置されている港にて、姫乃は智明に尋ねる。

 前日、姫乃は智明からこの基地について説明を受けた。

 

智明曰く、

 この基地は人類勢力に知られて無く、深海棲艦との戦いを有利にする為に様々な研究を行っているのだと。

 艦娘や妖精達のサポートもあり、ミサイル兵器の霊装化といった戦力強化の為の成果が実ってきた事から人類勢力と接触を図りたいと考えていたところ、姫乃を救出したらしい。

 

 姫乃自身、ミサイル兵器といった近代兵器を霊装化する事は未だに不可能であると分かっていたし、これによって鎮守府の艦娘達を更に強化する事が可能になると考えていた。

 

 

(日本国にこの技術が広まれば、艦娘の数が少ない私の艦隊でも安全に戦う事が出来る様になる!)

 

 

 現在、南西諸島海域にて開発した兵器の試運用を行っている艦隊が、この旭日島海底基地へ向かっているらしい。という事で姫乃はどんな艦娘が来るのかと楽しみにしていた。

 

 

「まぁ、見て貰った方が良いからね。来てからのお楽しみだね」

「そんなに凄いんですか?」

「凄いと言うか、常識を覆す的な?」

(一体、どんな艦娘が来るの!?)

 

 

 智明の言葉に期待が膨らむ姫乃。レクイエムの様な架空艦が来るのかと予想していると、智明が声を掛けてきた。

 

 

「来たよ、姫乃ちゃん!」

 

 

 そう言った智明に従って海を眺めるが、人影一つ見当たらない。それに気付いた智明は苦笑うしながら姫乃に双眼鏡を渡した。

 

 

「ごめん、ごめん。姫乃ちゃんが視認出来る距離じゃまだ無かったよ」

(智明さんって視力が凄いんだ……)

 

 

 男性適合者として改造され、身体能力が大幅に上げられた智明は、提督とはいえ姫乃が普通の人間である事を失念していた。

 そんな智明が男性適合者である事をまだ知らされていない姫乃は、双眼鏡越しに海を眺める。智明の言葉通り、水平線上を進んで来る影が複数見える。

 

 

「あ! 見えました。影が複数見えます!」

 

 

 姫乃が眺めている内に人影がその姿を明らかにしていく。先頭を進んでいるのは雷と電、そして2人の間を進むは駆逐艦ニ級エリート……

 

 

「と、智明さん!! し、深海棲艦が先頭を進んでいるんですけど!?」

「大丈夫だよ。この後、もっと驚くだろうし」

「だ、大丈夫って、そんな訳が……あぁ!?」

 

 

 驚愕しながら姫乃が見たのは夕立、浜風、木曾といった艦娘達の後に続くのは軽巡洋艦ト級フラッグシップに戦艦レ級フラッグシップ、そして、データで見た事の無い鬼達だった。

 潜水艦ヨ級の艤装を肥大化させて巨腕が生えた様なモノに乗っている装甲潜水艦鬼 ブティク。

 

 ヒトガタを背中から包む様に巨大な艤装が取り付けられている高機動潜水艦鬼 コーバック。

 

 初めて見る鬼の潜水艦に目を丸くする姫乃だったが、まだ終わりでは無かった。

 

更に続くは鬼や姫特有の大口を模した艤装の腹部位が蒼白く輝かせながら、それを横に従えた2人の原子力戦艦鬼・烈 ヨハムと原子力戦艦鬼 ビフト。

 

本来、漆黒の船体である艤装が水晶の様に美しく透き通っており、その上に白いドレスを纏い、艤装と同じく水晶の様な冠を被ったヒトガタが乗っている氷山空母鬼 ハク。

 以上の見た事の無い鬼達に加え、貨物輸送艦ワ級達が艦娘達を襲う事無く、共に此方へ向かっていた。

 もはや深海棲艦への恐怖以前に未知の鬼や艦娘達と一緒に行動している姿への驚愕で口をぽかーんと開けて呆けてしまっていた姫乃を置いて、向かって来ていた艦娘、深海棲艦の混合艦隊は港へと辿り着いた。

 

 

「智明さん、お待たせしましたのです」

「お帰り、電ちゃん」

 

 

 電が智明に駆け寄り、頭を撫でられて心地好さそうに微笑む。

 

 

「でもビックリしたのです。提督を救出して基地に連れ帰るなんて…」

「隠れ基地で皆がビックリパーティーだったっぽい」

「ありゃ、そんなに騒がせてしまったかい?」

「とも君は何か考えがあって私達と合わせるんでしょ?」

「うん。芳彦さんと通信機越しで決めたんだけど、彼も驚いていたからなぁ」

「当たり前だろ。連中に見付からない様、レーダーやら仕掛けていたんだからよ?」

 

 

 そう言いながら芳彦が彼女達の間から現れる。

 

 

「で? そこで石みたいに動かない娘が助けた提督か?」

「はい。余程衝撃的だったんですね……」

 

 

 周りでブティク達が頬を突っついたり、髪の毛を弄っているが、姫乃は未だに固まったままであった。




現状報告
・ヨハムは進化して原子力戦艦鬼・烈になった!
・コーバックは進化して高機動潜水艦鬼になった!
・ビフトは進化して原子力戦艦鬼になった!
・ハクは進化して氷山空母鬼になった!
・水野・函南連合艦隊が姫乃と邂逅した!


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