嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

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大変長らく御待たせ致しました。
若年性の痛風とか有り得無ぇし……

今回は南西諸島海域の開放戦となります。


 対鬼

南西諸島海域 沖ノ島海域

 

 

 沖ノ島海域を20隻相当の艦隊が進む。立ち塞がる深海棲艦達を艦娘、新生海人達が次々と撃破し、進撃を続けるは智明、芳彦率いる水野・函南艦隊。沖ノ島海域に陣取るボス艦隊、敵侵攻中核艦隊を撃破して南西諸島海域を完全開放すべく、海底基地より出撃した。

 艦載機やミサイル、砲弾が飛び交い、爆音が響き渡る。

 

 

「す、凄い……」

 

 

 艦隊が組んでいる陣形の中心部という、最も安全な位置で戦いの様子を観ている姫乃は感嘆に近い言葉を零した。智明達の攻撃が深海棲艦達を1隻、1隻確実に沈めていくのに対し、深海棲艦達の攻撃は全くと言って良い程に届いて来ず、智明達は無傷で済んでいるのだ。

 当然といえば当然である。本作戦に備えて、東部オリョール海攻略時に組んだ陣形によって、録な反撃を許さぬ攻撃を仕掛ける事を可能にしているのだから。

 智明、ブティク、コーバック、ウィザード、新たに加わったマラコット(フラッグシップ)とボルガ(エリート)、そしてレクイエムの潜水艦7隻が陣形の一番外側の前後左右に配置され、海中からの先制雷撃を出来る様にしており、その内側を駆逐艦である電、夕立、雷、不知火、秋月、浜風が六角形の陣形で、駆逐艦の内、前衛となる電と夕立を挟む様に軽巡洋艦の夕張、木曾(改二)、那珂(改二)が、秋月(後期型)と浜風が挟む様にヴィルを配置している。その駆逐艦、軽巡洋艦達が囲む様に重巡洋艦の羽黒を先頭に戦艦であるヴァーチ(フラッグシップ)、ヨハム、ビフト、ブラス、新たに加わった扶桑(改)で六角形を組み、更にその中央を芳彦、龍驤、隼鷹、千歳、ハク達空母が五角形の陣形を組み、その中央部に姫乃が乗った武装ボートが配置されていた。

 先頭を切る智明達、潜水艦部隊が潜水艇と共に行う雷撃やミサイルによって敵艦隊は壊滅状態となり、これによって混乱している所へ芳彦達の艦載機が爆撃や雷撃で止めを刺していた。仮に生き残れたとしても、攻撃射程外から更なるミサイルやヨハム達の容赦ない砲撃が襲い掛かるので一溜りも無かった。

 

 

【おかしい……】

 

 

 艦隊の戦闘を進んでいる智明の呟きが無線越しに聞こえる。

 

 

「やっぱ、トモもそう思うか?」

「え? 何か変なんですか?」

 

 

 智明の言葉に芳彦は同意しているが、姫乃は如何言う事なのか解からない様だ。

 

 

「姫っちは気が付かないか?」

「気が付かない? 何か変なんですか?」

【敵の編成がこの海域では強過ぎるんだ】

 

 

 未だ気付かない姫乃に無線から智明が答えを伝える。

 

 

【この海域における敵の編成は知っているかい? そうだね……敵巡洋艦隊の編成は?】

「ええと…、パターンが複数あった筈だけど、重巡洋艦リ級、雷巡洋艦チ級2隻、軽巡洋艦ト級、駆逐艦ハ級2隻だった様な…?」

「かねがね合ってるぜ? リ級やチ級がエリートクラスだったりト級の代わりにリ級かチ級が入っていたりするがな」

【今撃破した敵艦隊の編成は重巡洋艦リ級改フラッグシップ1隻に通常のフラッグシップ2隻、雷巡洋艦チ級フラグシップ2隻、駆逐艦ハ級後期型2隻だ】

「そ、そんな!? この海域じゃ有り得ない編成じゃないですか!!?」

 

 

 いずれの艦も最高クラスである事に驚愕する姫乃。リ級改フラッグシップやハ級後期型は激戦海域である南方海域や重要警戒海域である中部海域に出没するレベルの艦である。相対してしまえば姫乃の率いる艦娘達では手も足も出ないであろう。

 

 

「思った以上に俺達を警戒し出している様だな?」

【そうですね。色々と立て込んでいたとはいえ、もっと早く攻略していれば良かった…】

「ど、如何言う事ですか?」

「言葉の通りさ。俺達の海域解放が早い事に対して、本腰を入れて来た訳だ。それ以外の理由もあるだろうけどな」

 

 

 智明達の海域解放のスピードが早い事を警戒したのもあるだろうが、一番は制圧した海域から深海棲艦が産まれなくなった事であろうと考えていた。

 深海棲艦は沈めてしまえばそれで終わりという訳では無い。人類が深海棲艦に苦戦している理由として、深海棲艦は撃沈しても復活すると厄介な特徴を持っている。明確な理由は明らかになっていないが、撃沈されても残って海底に沈んだ残骸を憑代に、負の念を再び集結させて新たな肉体を生成しているのではないかと考えられている。

 この事が原因で第2次海洋大戦において制圧した海域に残っていた深海棲艦の残骸が大反攻時に尽く復活、不意打ち及び挟撃によって人類軍の戦線が崩壊する事となった。

 

 それでは何故、智明達が制圧した海域では深海棲艦が復活しなくなったのか?

それは智明達が鹵獲した深海棲艦を新生海人として生まれ変わらせた事も一因ではあるが、最もな理由として、施設にある資材精製装置によって深海棲艦の残骸を資材に変えられ、海底に憑代が無くなった為である。負の念があっても憑代が無くては深海棲艦は生まれる事が出来ない。資材確保の為に撃破された深海棲艦の残骸は智明達に全て回収された事によって、彼等が制圧した海域では新たに船が沈まない限り深海棲艦が生まれる事が不可能になったのだ。そして現状では船が沈む様な事態は決して無い。つまり、これまで減少する事の無かった深海棲艦の戦力が遂に減少する事態となったのだ。

 

 

「提督、新たな敵影を確認。編成は重巡洋艦リ級改フラッグシップと通常のフラッグシップが1隻ずつ、雷巡洋艦チ級フラグシップ2隻、駆逐艦ニ級後期型2隻や!」

「クラスは違えど、進路配置的に敵精鋭水雷戦隊か。ぶっちゃけ負ける気はしないんだけどな」

 

 

 龍驤が飛ばした哨戒機が進路先に新たな敵影を確認した事から芳彦に報告し、彼は海図を眺めて予想される敵艦隊を予測する。

 

 

【先制雷撃を開始します】

「頼むぜ。よっしゃ、艦載機発艦準備。敵空母は無いから爆撃機及び艦攻撃機メインでいくぞ!」

 

 

 智明の雷撃が成功したらしく、視線の先で水柱と爆炎が何本も上がる。そこへ芳彦達が飛ばした艦載機が攻撃を始める。沈んでいない敵精鋭水雷戦隊が慌てて対空砲火を始めるが、智明達の雷撃は容赦無く続いており、落とす間もなく沈んでいった。

 

 

:::::

 

 

【このまま進めば、ボス艦隊が配置されているエリアに到着するね】

「哨戒機発艦。編成を確認後、一気に叩くか?」

【敵の規模によりますね。増援も考えられますから前戦力の投入は危険です】

「敵戦力のランクが高くなっている以上、何が待っているか分から無ぇのが問題か…」

「提督ぅー、哨戒機を飛ばすぜ~?」

 

 

 隼鷹が先に待ち構える敵艦隊を確認する為に偵察機を発艦させていく。

 

 

「でも敵が強くなってるって言ってる割には芳彦さん達、楽に勝ってますよね?」

 

 

 飛んで行く泉流と消宮を見送りながら、姫乃が芳彦達に尋ねる。

 現状、深海棲艦達がこの海域では決して有り得ない最高ランクの艦であるのに対し、智明達は苦戦する様子無く撃破している。これも今まで戦ってきた事による練度や強化改造、高性能の兵器を開発して装備した御蔭である訳だが。

 

 

「まぁな、今のところはデータ通りの敵艦の最上位ランクアップ版しか出ていないから問題無い訳なんだが…」

【何時、予想外の敵が現れるか分からない。鬼以上の存在が現れてもおかしくない】

「鬼以上……ですか?」

 

 

 姫乃は怪訝な表情になる。

 

 

「既出の鬼や姫ならまだデータがあるから良い。一番怖いのはブティク達みたいな新種が現れる事だ」

【データが無い以上、どんな攻撃を仕掛けてくるか解からないからね】

「既出の存在でも装備が違ったり戦略を取りだしたら堪ったもんじゃないけどな」

「成程…」

「提督ぅ……、ヤバいぜコレ…」

「? どうした隼鷹?」

 

 

 この先の敵艦隊で予想されるケースを姫乃に説明していると、偵察機を飛ばしていた隼鷹が拙そうな表情で芳彦に声を掛ける。

 

 

「ボス艦隊と思われる敵艦隊を発見したよ。規模は15隻、多いねこりゃ」

「15隻か…。こっちが艦隊数の上限セオリーを無視しているのを知っているからか、確実に潰したいからか…」

 

 

 艦娘達が艦隊を組む際に6隻が上限となっているのには理由がある。編成数が7隻以上の艦隊を組むと深海棲艦に探知されて、待ち伏せを受ける危険性が倍増する危険性がある為だ。

 この問題に対して智明達は探知妨害の機能を艤装及び衣服に持たせ、更に特殊レーダーによる広範囲索敵によって敵からの探知や待ち伏せを不可能にさせていた。

 

 

「編成は?」

「聞いて驚かないでくれよ? 戦艦ル級改フラッグシップと戦艦タ級フラッグシップそれぞれ2隻に軽巡洋艦ヘ級フラッグシップ2隻、雷装巡洋艦チ級フラッグシップ2隻、駆逐ハ級後期型4隻、そして装甲空母鬼2隻に空母棲鬼1隻だ」

「……遂に鬼に御対面か」

【姫や新種じゃないだけマシですけどね】

 

 

 然程も驚いた様子も無く、芳彦は納得する。無線から聞こえる智明の声も焦っている様子は無かった。

 

 

「あの……空母棲鬼って中部海域に出現する鬼じゃ?」

 

 

 姫乃の言葉通り、空母棲鬼は中部海域及び北太平洋海域、MI諸島近海を指揮するボス艦隊の旗艦として存在している。少将クラスが率いる艦娘の練度で漸く渡り合える戦場に出現する空母棲鬼に姫乃は戦々恐々とした様子であったが、芳彦は何ともない様子。

 

 

「まぁ、そうだな」

「そうだなって…、大丈夫なんですか!?」

「侮っている訳では無いが、負ける気がしないな」

 

 

 そう言って笑みを浮かべる芳彦。

 

 

【全艦に通達】

 

 

 艦隊メンバー全員に芳彦が無線で呼び掛ける。

 

 

【敵戦力は空母棲鬼を旗艦とし、装甲空母鬼2隻が加わった15隻編成の大艦隊。戦闘中に増援の危険性もある。周囲の警戒を怠らずない様、これからが本番だ】

《了解!!》

「提督、偵察機が気付かれた。大量の敵機が発艦し出したぜ!」

「よっしゃ、全員作戦開始だ!」

《了解!!!》

 

 

 芳彦の号令の元、メンバーが準備を開始する。

 

 

泉流(センリュウ)鈴城(スズシロ)散香(サンカ)マーク2発艦!! 増援が来ない内に一気に叩くぞ!」

散香(サンカ)マーク2、清影(セイエイ)発艦や!! 負けたらあかんで!」

逸波(イツハ)清影(セイエイ)発艦! 今回も勝つぜぇ~?」

 

 

 この作戦の為に新たに開発した対艦ミサイル搭載の4発エンジン爆撃機『鈴城(スズシロ)』に散香(サンカ)の改良機『散香(サンカ)マーク2』、散香(サンカ)以上の機動性を持つが挙動が不安定な為にパイロットを選ぶプッシャタイプの戦闘機『逸波(イツハ)』が飛び立って行く。

 

 

「対艦ミサイル発射なのです!!」

「ぽいぽいミサ~イル!!」

「今回も勝つわ!!」

 

 

 艦載機が飛び立つと同時に艦隊の先頭に立つ電達ミサイル艦が対艦ミサイルを発射する。

 沖ノ島海域解放の戦いの火蓋は切って落とされた。

 

 

:::::

 

 

「キタノネ……」

 

 

 自身と装甲空母鬼が発艦させた艦載機が芳彦達の艦載機と激突したのを確認した空母棲鬼は、冷たい笑みを浮かべながら自身が率いる艦隊の進撃の指示を下す。

 

 

「ナンドデモ…ナンドデモ……シズンデイケ……!」

 

 

 ハ級を先頭に進みだすボス艦隊。そんな中、ハ級1隻が爆炎に包まれて爆散する。

 

 

「ナニ!?」

 

 

 続いてチ級も爆散して沈む。

 タ級、ル級、装甲空母鬼も1隻ずつ被雷、タ級、ル級は半分近い艤装が破壊され、装甲空母鬼も片腕を吹き飛ばされた。

 

 

「ライゲキデスッテ!?」

「ヘ、へへ!!」

「テキハスデニチカクニヒソンデイルトイウノ? バクライヲバラマキナサイ!!」

「「へへ!」」

「「「ハ!」」」

「テンカイシナサイ! マトマッテイタラカッコウノマトヨ!!」

 

 

 空母棲鬼の指示の元、深海棲艦達は広く展開し、ハ級、ヘ級達は爆雷を周囲にばら撒き出す。

 空では互いの艦載機が激しいドッグファイトを繰り広げていた。

 

 

:::::

 

 

「爆雷がきたか…」

 

 

 海中に爆雷が沈んで来たので智明は旋回し、安全域へ避難する。同時発信していったグランパスは爆雷を避けながら爆雷をばら撒いているハ級とヘ級に攻撃を続けている。

 

 

【智明、戦闘に参加するわよ?】

【ソソ!】

 

 

 無線越しにレクイエムとウィザードから連絡が入る。智明を先頭にし、次に陣の前方に配置されていた潜水艦はレクイエムとウィザードであり、連絡直後に雷撃を開始する。

 それと同時に電達、ミサイル駆逐艦が放った対艦ミサイルがボス艦隊へ襲い掛かる。対空射撃でミサイルを撃ち落とす様、慌てて指示する空母棲鬼であったが、海中への攻撃に専念していたハ級とヘ級は間に合わずに被弾。後期型やフラッグシップとはいえ、駆逐艦や軽巡洋艦がハープーンに耐えられる筈も無く、着弾後の爆発と共に船体を真っ二つにして尽く沈んでいった。

 

 

「オ、オノレ…」

「タ、タタ!!」

「クッ、テキカンサイキガヌケテキタカ!」

 

 

 空母棲鬼達が飛ばした艦載機を潜り抜け、大型機の泉流(センリュウ)鈴城(スズシロ)が魚雷及び対艦ミサイルで攻撃を開始する。対空射撃を始め、残っている艦載機も発艦させるが、共に抜けて来た散香(サンカ)マーク2や逸波(イツハ)清影(セイエイ)が先に攻撃を開始し、対空撃兵装及び艦載機の殆どを撃破されまともに攻撃を受ける事になる。

 攻撃範囲外からの雷撃及びミサイル攻撃に対し、深海棲艦の対応手段は爆雷や対空射撃での破壊しかない。しかし、ほぼ真下から撃ち込まれて来る魚雷は破壊、回避出来る筈も無く被弾し、これによる混乱状態では真っ直ぐ飛んで来るとはいえ高速で飛んで来るミサイルを全員が撃墜するのは不可能であった。

 ハ級とヘ級は全滅。チ級、タ級、ル級も対応が遅れた個体は中破以上のダメージを受け、装甲空母鬼も1人艤装の甲板の半分近くを破壊されてしまった。

 

 

「クゥ……、オチロォ!!」

 

 

 容赦ない爆撃と雷撃に刻々とダメージを受けていく空母棲鬼達。艦載機を駆る装備妖精達は芳彦の指導とこれまでの戦いによってエースオブエースと呼ばれるまでの技量を得ており、艦載機の性能を極限まで引き出している。敵艦載機の何倍も大きい大型機である泉流(センリュウ)鈴城(スズシロ)ですら撃墜しようと後ろを追って来る敵艦載機をアクロバット飛行によって逆に後ろを奪って撃墜していた。

 

 

「オオガタキガセントウキノハイゴヲトルデスッテ!?」

「函南艦隊の空母飛行隊の技量は皆がトップガンクラスだ。負ける訳が無いよ」

「!? グゥア!!」

 

 

 突如聞こえた男性の声に驚愕し、声の方を向くと艤装を付けた男性が横を通り過ぎ、すれ違いざまに66cm近接水中ミサイルを叩き込まれた。

 艤装の腕を盾にした為に本体であるヒトガタは無事であったが、腕は粉々に吹き飛び、搭載していた艦載機含む武装も殆どが破壊されてしまった。

 

 

「クウゥ…オ、オノレ…、シズメナサイ! シズメテシマエ!!」

 

 

 大破近いダメージを受けてしまった空母棲鬼が喚き立てる様に智明を沈めろと周りに命じ、タ級達が砲身を向けるが、既に智明は海中下。そんな状況下でも芳彦達の艦載機やレクイエム、グランパスによる攻撃は容赦無く続いておりチ級2隻、タ級1隻が轟沈してしまう。

 負の感情にのみ支配されている深海棲艦に、細かい作戦の指示は出来ない。しかも負の感情を優先としている為に挑発に乗り易いのだ。

 

 

「コノママデハゼンメツシテシマウ。マダ……マダコナイノ?」

 

 

 主力艦がまだ生き残っているとはいえ、次々と仲間が沈められていく状況に後が無いと悟った空母棲鬼は焦りながら周囲を見回していた。

 

 

:::::

 

 

「……来タワ」

 

 

 智明や前線メンバーがボス艦隊相手に有利に戦いを進めている所、周辺海域に哨戒機を飛ばしていたハクが敵増援を発見した。

 南方から2艦隊が此方へ向かって来ている。データで見る限り、敵精鋭水雷戦隊と空母機動部隊であろう。但し、編成艦のクラスは最上位であるが…

 敵増援艦隊は合流し、尚も接近中。編成は空母ヲ級改二フラッグシップ3隻、 戦艦ル級改フラッグシップ1隻、重巡洋艦リ級改二フラッグシップ2隻、雷装巡洋艦チ級2隻、駆逐艦ニ級後期型4隻の計12隻。航空・砲撃・雷撃戦力共にバランスが取れている。

 

 

「…鬼デ無イニシロ、改二フラッグシップの空母3隻ハ厄介。芳彦、空母ハ私ダケデ良イトシテ他数隻連レテ行キタイノダケド…?」

「分かった。後、ヴァーちんにふっしー、はまっちとあっきー、きそちん、ヴィっちーとマーりん、ボルっちを連れて行け」

「分カッタワ…行クワヨ皆」

 

 

 ハクの言葉に浜風、秋月が先頭に木曾、ヴィル、マラコット、ボルガがハク、ヴァーチ、扶桑を囲んで迫り来る敵増援艦隊に向けて出撃した。

 

 

:::::

 

 

【芳彦、新タナ敵影ヲれーだーガ確認シタワ】

 

 

 ハク達が本陣から出撃して数分後、艦隊右舷に待機しているコーバックから無線通信が入る。

 

 

「!? 何処からだ?」

【貴方カラ見テ5時ノ方角ネ。数ガ多イヨ】

「何隻だ?」

【れーだー反応カラ15隻相当ネ】

「多いな……まぁ、俺達を潰したいならこれくらいするか…」

【如何スル?】

「っち……」

 

 

 芳彦は歯噛みする。ボス艦隊の殆どを沈めたとはいえ、敵艦数は30隻相当が未だ残っており位置的に3方向から囲まれる形となってしまっている。空母ヲ級改二フラッグシップ3隻が率いる12隻規模の増援艦隊に9隻回した現状で残りは18隻。新たな増援艦隊に半分以上の艦を差し向ける事になるであろう。

 芳彦は新たに接近している敵艦隊の編成を確認する為、すぐさま偵察機である消宮(ショウグウ)を飛ばす。

 マルチタスクによる遠隔操作で飛んでいる消宮(ショウグウ)は敵艦隊を発見。編成は空母ヲ級改フラッグシップ1隻を中心に、戦艦タ級フラッグシップ1隻、ル級フラッグシップ2隻、重巡洋艦リ級フラッグシップ2隻、軽巡洋艦ヘ・ト級フラッグシップ各2隻、駆逐艦ニ級フラッグシップ5隻の15隻だ。こちらの敵艦隊もまた空母が1隻だけとはいえバランスが取れている。

 芳彦は残っているメンバーに新たな敵艦隊の編成を連絡し、向かわせる編成を考える。

 

 

「ちとりん、頼めるか?」

「任せて! ヲ級1隻なら改フラッグシップだとしても私の海零なら負けないわ」

「コーちんが既に攻撃を始めているらしい。ブっちー、じゅんじゅんにヨハりんとビフっち、なかっちとぬいぬいにぽいぽいを連れて行け」

「私が行くのかい? 構わないけどさ」

「プロデューサーさん、それだとここの防衛が薄くならない?」

「ウィざりんを警戒に当たらせる。それにこっちにはビフっちが既に敵陣に入り込んでいる、決着は近い」

 

 

 芳彦の予想通り、ボス艦隊の生き残りは鬼のみとなっており全滅も近かった。その様子を確認いた出撃メンバーは残る仲間達を信じ、敵艦隊へ向けて出撃していった。

 

 

:::::

 

 

「サァ、始メマショウ……」

 

 

 空母ヲ級改フラッグシップ3隻が率いる増援艦隊が視認出来る距離になり、ハクは小さく呟く。

 氷で創られた様な艤装に座り、ハクは右手の杖を振り翳す。すると艤装から小さな玉が浮かび上がり、空気中の水分が玉の周りに集まって凍り出す。数秒足らずで小さな玉は氷で出来た艦載機へと変わった。

 

 その数200機相当

 

 これが氷山空母鬼であるハクの能力。呪力が伴った氷を機体に使う事で従来の空母程、鋼材やボーキサイトといった資材を消費する事無く、大量且つ、高速の発艦を可能とする。氷で出来たハクの艦載機はその機体を輝かせながら飛び立って行く。

 

 

「ハープーン発射!」

「ニー!!」

 

 

 浜風と秋月がハープーンを発射し、白煙の筋が敵艦隊へと延びていく。向かって来るハープーンに駆逐艦ニ級達は迎撃しようと砲身を向けるが、そんな事許す筈も無く…

 

 

「カカカー!!」

「ヨッヨ!!」

 

 

 マラコットとボルガによる魚雷攻撃が襲い掛かり、ハープーンに気を取られていたニ級達は対応が遅れ命中。中破以上のダメージを受け、酷い艦は船体が真っ二つになって沈んでいく。迎撃出来なかったハープーンは間を抜けてターゲットであるヲ級やタ級達に向かって行く。

 ハープーンはヲ級達へと襲い掛かるが、慌てながらもヲ級が発艦させていた艦載機を特攻させ撃ち落とす。更に敵に潜水艦がいる事を理解したチ級が海中へ向けて雷撃を開始する。

 

 

「アラ……中々ニヤルワネ、デモ……是カラガ本番ヨ?」

 

 

 ハクが杖を敵艦隊の方角へ向けると100機以上の艦載機は飛んで行く。氷で出来ているからと言ってその性能は全く変わらない。そして芳彦達によって操縦技術を上がった事によって、エースクラスの技量を持つ艦載機として敵艦隊へ襲い掛かっていく。

 

 

「…敵ノ艦載機ハ私ニ任セテ。往キナサイ」

「その言葉を待っていた!!」

「トトー!!」

「相手にとって、不足なしです!」

「ニニ!!」

 

 

 ハクの言葉を聞いた木曾とヴィル、浜風と秋月が敵艦隊へと駆けて行く。

 

 

「レレーレ!!」

「戦艦扶桑、出撃いたします!!」

 

 

 更にヴァーチと扶桑も自身の艦載機を発艦させながら後に続く。

 

 

「はぁあ!!」

 

 

 マントを翻しながら木曾はマラコット達潜水艦を沈めようと躍起になっているチ級へモーターブレードで切り掛かる。斬り掛かる木曾にチ級は腕の砲身で防御するが、高速で回転するモーターブレードの刃はその動きを止める事無く、砲身毎腕を斬り裂いて肩から胸部を斜め真っ二つにする。重油の様な血飛沫を上げながらチ級は海中へと

崩れ墜ちる。

 

 

「チチチー…チ!?」

「ヨッヨッヨ」

 

 

 もう一隻のチ級が木曾へ砲身を向けるが、真下を取ったボルガが魚雷を叩き込み爆散する。

 

 

「トトトー!!」

「リリ! リ!?」

「ニー!!」

「沈みなさい!」

 

 

 ヴィルが持前の高機動で1隻のリ級を翻弄させ、そこへ秋月と浜風が囲む様に60口径5inch連装両用砲と157mm単装砲で攻撃を加えていく。攻撃対象を迷うリ級へすかさずヴィルが6inch連装速射砲を叩き込み、ハチの巣となったリ級は力尽きた。

 

 

「リ、リリ!」

「タタァ!」

「レレレーレ!!」

「新たな力を手に入れた私の力…見せてあげる!!」

 

 

 ヲ級3隻を守ろうと残りのリ級とタ級に対し、ヴァーチと扶桑が砲撃戦を始める。新たな武装であるヴァーチの20inch三連装砲と扶桑の45cm三連装砲が火を噴き、互いの周囲に水柱が何本も上がる。

 

 

「カッカカ!」

 

 

 其処へマラコットがフリッパーと共に援護雷撃を行い、リ級とタ級の足を吹き飛ばして動きを止める。すかさずヴァーチと扶桑は砲撃を放ち、リ級、タ級は撃破された。

 

 

「ヲヲヲー!!」

「ヲヲ!」

「ヲーヲ……ヲ!?」

 

 

 木曾やヴァーチ達が攻め立てていく中、ヲ級達は彼女達を攻撃すべく必死に艦載機に爆撃を指示する。

 しかし、

 

 

「…皆ニハ触レサセナイ」

 

 

 ハクの艦載機が爆撃機を攻撃し、破壊する。氷山空母鬼へと進化したハクはヲ級3隻の積載量を超える数の艦載機を所有している。その艦載機の操縦技量の高さに加え、敵艦載機1機につき複数で攻撃している為に木曾達には傷一つ与えられないでいた。

 業を煮やしたヲ級達は攻撃対象をハクに変え、攻撃を集中させる。魚雷やロケット弾がハクへと被弾し、結晶の様な艤装が砕けていく。しかし、ハクは何事も無いかの様に涼しい顔を浮かべる。

 

 

「…アラ、小魚デモ突イテイルノカシラ?」

 

 

 魚雷などによって削れた部位は忽ちの内に元に戻って行く。

 これぞ氷山空母のもう1つの能力である。氷山空母の船体の殆どは氷で出来ており、船体の外部は全てが氷である。この為、攻撃によって船体が削られたとしても空気中の水分や海水を凍らせる事で即座に船体を再生させる事が可能なのだ。この圧倒的なダメージコントロールは戦艦の砲撃に対しても有効であり、正に不沈艦と呼ばれるに相応しい能力を有しているのだ。

 

 

「…ソンナニ私ダケニ気ヲ取ラレテ良イノ?」

 

 

 前線で戦う木曾達に集っていた敵艦載機を全滅させたハクの艦載機達が残りの敵艦載機を殲滅すべくハクの元へ戻って来て攻撃を開始する。最早制空権は完全にハクのモノとなり、航空戦力を失ったヲ級達に為す術は無かった。

 

 

:::::

 

 

「遅イ、遅イ! 当テル気アルノ!?」

 

 

 新たな敵艦隊を迎え撃つべく千歳達が向かう中、先行していたコーバックはその潜水艦らしかぬ機動性で敵艦隊を翻弄させながら着実にダメージを与えていた。

 

 

「ヲ! ヲヲヲ!!」

 

 

 敵増援艦隊の旗艦であるヲ級が反撃する様に指示を回すが、高速で海中を泳ぎ回るコーバックに魚雷や爆雷が当たる訳も無く、逆に接近されてはすれ違いざまに66cm近接水中ミサイルを叩き込まれてダメージを受ける始末で、既にニ級2隻、ト級1隻が沈みル級1隻が中破に陥っていた。

 

 

「ホラ、モウ一発!!」

「タ? ダァッ!?」

 

 

 真下からタ級に向けて22inch魚雷後期型を放って吹き飛ばす。

 そんな混乱状態の敵艦隊の元へ千歳達が駆け付け、千歳の海零(カイレイ)と隼鷹の逸波(イツハ)が雷撃を開始する。

 

 

「おまたせコーバック」

「さぁ、いくぜぇ!?」

 

 

 艦載機に続いて夕立と不知火が魚雷と砲弾を敵に放ち、那珂が2人のサポートを行う。

 

 

「ソロモンの悪夢、見せてあげる!」

「この不知火、容赦はしません!!」

「仲間のサポートも大事なお仕事! 那珂ちゃん頑張りますっ!!」

 

 

 高速駆逐艦となった夕立は敵艦の砲撃を次々と避けてみせ、逆に航行先へ61cm魚雷を放ち確実にダメージを与える。不知火も夕立程の速度では無いものの、駆逐艦の高機動性を活かして雷撃と砲撃を併用して的確に攻撃を与え続け、那珂は大多数である現状況で敵の状況を冷静に判断し、自身の海零(カイレイ)と15.5cm三連装副砲を併用して攻撃を行おうとする敵艦を妨害する。

 

 

「こーばっくダケニ活躍ノ場ヲ与エナイワヨ?」

 

 

 フリッパーを引き連れたブティクが真下から雷撃を行い、敵の移動能力を封じる。

 

 

「サァテ。私達、原子力戦艦鬼ノオ披露目トナル訳ダケド、用意ハ良イカシラびふと?」

「ハイ! オ姉様!!」

「用意ハ出来タワ、敵カラ離レナサイ!!」

 

 

 ヨハムとビフトが配置に付き、ヨハムが夕立達に呼び掛ける。

 これからヨハムが行おうとしている事を事前に聞いていた彼女達は弾幕を張りながら戦線を離脱する。その様子に敵艦隊は追撃を行おうとするが既に遅かった。

 

 

「フフ、『グングニール』ヲ喰ライナサイ!!」

 

 

 深海棲艦の鬼や姫特有の大口を模した艤装を勿論持つヨハム。原子力機関が搭載されている腹部位の輝きが徐々に強くなり、艤装の大口が大きく開かれる。その喉奥が帯電して輝き出したかと思うと一筋の閃光を放った。

 閃光は横に薙ぎられ、敵艦隊を閃光が切り裂いていく。この一閃にタ級とル級、リ級にト級、ニ級2隻が轟沈、ニ級に至っては光線の熱量で消し飛んでしまっていた。

 

 

「6隻纏メテ沈メタワネ。中々ノ破壊力ダワ」

「流石デス、オ姉様!!」

 

 

 ヨハムが放った閃光は動力機関である原子力を転用したレーザー砲『グングニール』。第2次大戦時どころか現代でも未だ実用化に至っていない光学兵器の力に、深海棲艦達の装甲は瞬く間に焼切られるか蒸発してしまった。

 

 

「残リヲ殲滅スルワヨ、よはむ!」

「ハイ! オ姉様!!」

 

 

 圧倒的な攻撃に怯んだ敵艦隊にヨハムの46cm連装砲とビフトの40cm3連装砲が火を噴く。とっさの反応が出来なかったヲ級とル級が砲撃の餌食となり、海の藻屑と化した。それに続いて夕立達も攻撃を再開し、増援艦隊は壊滅する事となった。

 

 

:::::

 

 

「ルッ!? ルゥ……」

「クゥウ、オノレ…」

 

 

 容赦ない爆撃と雷撃に鬼以外で唯一生き残っていたル級が遂に力尽きて沈んでいく。ボス艦隊の護衛艦と艦載機は全滅し、対空装備も破壊され空母棲鬼達の上空を護る術はもはや無い状態であった。装甲や耐久力が高くなっている事から鬼のみが辛うじて生き残っているが壊滅も時間の問題であった。

 

 

「オノレオノレオノレェェェェ!! オチロ…!」

 

 

 怨嗟の声を空母棲鬼は上げながら、辛うじて生き残っている対空砲で芳彦の泉流(センリュウ)達を攻撃し続けている。しかし当たる事無く弾丸のみが無駄に消費されていく。

 

 

「グガァ!?」

「!?」

 

 

 突如、装甲空母鬼の一体が爆散した。

 胸元から艤装が大きく抉られた姿で装甲空母鬼は海中へ沈んでいく。

 

 

「ナ、ナニガ…?」

 

 

 爆撃は受けていない、敵から砲撃も来ていなく、原因不明の爆発に空母棲鬼達は戸惑う。

 その時、近くの海面がバシャン! という何かが飛び込む様な音と共に飛沫を上げた。謎の現象が起きた場所を見ると、そこだけ微妙に景色がぼやけている。もしやと思い、装甲空母鬼に指示して16inch連装砲で砲撃を行わせると、ぼやけは航跡を残しながら砲撃を回避する。

 

 

「テキカンガ…、スガタヲカクシテイルノカ…?」

 

 

 装甲空母鬼の砲撃を避けながら、ぼやけはこちらへ火を噴く。それが砲撃である事に気付いた頃には装甲空母鬼の艤装を砲弾が貫いて爆発。よろけた所に命中した海中からの魚雷によってもう1体の装甲空母鬼も沈黙した。

 最後の1隻となった空母棲鬼。そこへ止めとばかりに空からは艦載機による爆撃と雷撃、海中からは潜水艦達による魚雷が、海上では戦艦達による砲撃が襲い掛かる。薄れゆく意識の中で海面から艤装を付けた青年が立っていた。

 

 

「僕達の勝ちだ」

「カッタト……オモッテイルノカ? カワイイナア…」

 

 

 かくして沖ノ島海域のボス艦隊を撃破し、智明達は南西諸島海域を解放したのだった。




現状報告
・南西諸島海域を開放した!


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