嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

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三箇日迄に投稿できなかった……ちくせう…

今回は南西諸島海域開放後の双龍艦隊の動きがメインとなります。


同盟結成ス
 接触


南西諸島海域 沖ノ島海域

 

 

 沖ノ島海域を支配していたボス艦隊を見事撃破した智明と芳彦率いる水野・函南連合艦隊。彼等は作戦を終了し、ベースであるカムラン半島の隠れ基地へと進路を向けていた。

 

 

「何はともあれ、大きな被害無く勝利出来たな」

「編成強化に増援と敵も大分でしたけどね」

「だがそれは俺達はそれだけ強化された敵でも対抗できるって訳だ」

 

 

 今回、智明達が戦った深海棲艦達は増援も含め、殆どが最上位に強化された個体ばかりであった。つまりはそれだけ深海棲艦達は快進撃を続ける水野・函南艦隊を危険視しており、確実に沈めるべく編成を強化させていたのであろう。

 

 

「資材も敵の増援の御蔭でコンテナいっぱいだ」

 

 

 そう言って芳彦は牽引しているコンテナボックスの一つをポンポンと叩く。ボス艦隊へ向かう道中での戦闘及びボス艦隊と増援の残骸が持ち込んできたコンテナいっぱいに詰め込まれている。本音を言えば春夏秋冬艦隊も同行させて周辺海域の敵艦隊を殲滅しながらの資材集めも行いたかったが、今回はボス艦隊の速攻撃破が目的だったのでそこは仕方ないだろう。

 

 

「早く帰還しないとね、遂に秋月が予兆を見せている訳だし♪」

 

 

 帰港後が楽しみだと言わんばかりに夕張が牽引している秋月を見やる。

 今回の戦いの経験によってウィザードと秋月に進化の予兆が来たのだ。

 

 

「秋月は長い間駆逐艦のままだったからね~、ヴァーチみたいに強力な艦へ進化するっぽい?」

「兎に角、基地でのお披露目が楽しみだわ♪」

「秋月の進化も気になるが、ブティクがその場で進化したのは驚いたな」

「せやな。でも姫に進化する際は資材がいらんと判ったのは有難いで?」

「ソウデスネ。姫種ハ鬼デアッタ時ノ艤装ヲこんぱくとニスルノデ、ソノ際ノ余分ナ艤装ヲ必要ナ消費資材トシテ使イマスカラ、ソノ場デ進化ガ済ミマス」

 

 

 ブティクも装甲潜水艦鬼から装甲潜水艦姫へと進化を遂げていた。

 鬼種と姫種は類似個体がおり、違いは鬼種が装備している艤装が姫種だと縮小化している事だ。見た目なら進化した筈の姫種の方が弱いと思われがちだが、その能力は鬼種を更に超えるモノとなっている。

 ブティクの場合も鬼種で特徴的な巨大な腕が無くなり、全身を覆う形状だった艤装もパワードスーツの様な艤装へと変化している。

 

 

「ブティクさん達の進化もそうですが、空母棲鬼を鹵獲出来たのは大きいのです」

「捕まっていた艦娘を助けれた事もね♪」

 

 

 電と那珂の言葉に全員が頷く。

 今回撃破したボス艦隊の旗艦を務めていた空母棲鬼は辛うじて生きていたので浄化し、持ち込んでいたリペアキットで応急処置を施して連れ帰る事にしたのだ。気を失ったままの空母棲鬼は牽引されているコンテナ群の更に後ろに鎖で雁字搦めにされている。

 また、近海を調べたら艦隊メンバー以外の艦娘の反応があったので向かってみると、岩礁にの上に造られた牢獄に捕らわれている艦娘を発見した。現在は気絶しているのでヨハムが艤装の巨腕で抱えて運んでいる。

 

 

 こうして帰還中の水野・函南連合艦隊に春夏秋冬艦隊から緊急の連絡が入るのはそれから十数分後の事であった。

 

 

::::::::

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::

 

 

カムラン半島沖 隠れ基地近海

 

 

「ワワ、ワ」

「ワワ~」

《ワワ!》

 

 

 智明達が隠れ基地へ向かっている中、桜率いる春夏秋冬艦隊は周辺海域で資源集めを行っていた。時折、侵入してきたはぐれの深海棲艦がレーダーに探知されたが、強化改造や演習によってエリート以上、成長が早い者は改フラッグシップへと強化された彼女達にとって敵では無く、輸送艦のみの艦隊でありながら敵艦隊を難無く撃破していた。

 

 

「ワ、ワワワ!」

「ワワ?」

 

 

 本日3度目となる資材集めにて各自のコンテナが後1回の戦闘で得る残骸でいっぱいになるであろうと云う状況で、レーダーが仲間で無い艦隊が侵入した事を警告する。

 レーダ-の反応は2種類。一つは敵である深海棲艦の反応であり、もう一つは仲間として登録されていない艦娘の反応だ。反応を見る限り、深海棲艦達が艦娘達を包囲しており、戦闘を行っていると考えられる。

 

 

「ワ~ワワ?」

「ワ……」

 

 

 「如何しようか?」と鬼灯が問い掛け、桜は悩む。強力な武装を装備し、エリート以上の強化体となっている春夏秋冬艦隊ではあるが、自分達は元はと云えば輸送艦。レーダーからの艦種反応を見る限り、敵となる深海棲艦の編成は戦艦や正規空母を含む強力な艦隊であると窺える。これまで撃破してきたのは軽巡洋艦や軽空母が旗艦である艦隊であった為、その様な相手に輸送艦隊のみで遣り合えるかと問われれば否と答えるだろう。

 しかし、敵艦隊の数に対して艦娘達の人数は半分以下な為に、このまま放っておけば数の暴力を前に全滅するのは必至。智明達は人類側と繋がりを持ちたい考えている為、ここで艦娘達を援護すれば何かの助けになるだろう。

 

 

「ワ~……ワ!!」

 

 

 1、2分程悩んだ後、深海棲艦に襲われている艦娘達を救う事を決めた桜は戦闘が行われているエリアへ出撃する様、出撃の号令を艦隊メンバーに掛けた。

 

 

:::::

 

 

 呉鎮守府の提督である蒼介配下の双龍艦隊、天龍、龍田、皐月、文月、長月、菊月の6名は彼の命の下、智明達に親書を届けるべく南西諸島海域のカムラン半島近海へ赴いていた。そんな中、深海棲艦との数度の接触と回避を経て、再び深海棲艦との戦闘に突入していたのだった。

 

 

「畜生! こんなセオリー無視の艦隊がいるなんて聞いて無ぇぞ!!?」

 

 

 深海棲艦側は戦艦ル級改フラッグシップ、、空母ヲ級改フラッグシップを擁し、重巡洋艦リ級改フラッグシップ、軽巡洋艦ヘ級フラッグシップがそれぞれ2隻、そして10隻以上もの駆逐艦からなると云う、この海域ではクラス・編成共に存在し得ない大規模艦隊だった。

 双龍艦隊の旗艦である天龍が有り得ない編成且つ、20隻相当と云う異常な数で行動する敵艦隊から距離を取り、離脱すべく遭遇当初から周囲の状況を見回しながら敵艦隊包囲網に穴を穿つべく砲雷撃戦を行っていた。

 しかし、敵駆逐艦達は天龍達への攻撃に殆ど加わらずに幾重と周囲を囲いこみ、あくまでこちらを逃がさない鋼鉄の檻に徹しており、戦艦タ級改フラッグシップからの砲撃や空母ヲ級改フラッグシップの航空戦力による空爆が徐々に天龍達の艤装をダメージを与え、動きを鈍らせている。

 ヲ級の艦攻と艦爆による魚雷や爆弾の雨を天龍、龍田は艤装に装備した15.5cm三連装副砲で、皐月達は対空機銃 3.7cm FlaK M4で何とか凌いだが、その後に続くのはル級の16inch三連装砲やリ級の8inch三連装砲だった。被弾すれば一撃でこちらを大破にまで追い込む戦艦の砲弾が撃ち上げる水柱の森を、双龍艦隊の艦娘達は素晴らしい回避運動を行っている為、至近弾に留めて直撃を貰う事は今のところ無い。

 しかし、実戦経験が天龍と龍田の2人に比べて圧倒的に足りない皐月、文月、長月、菊月の駆逐艦4人は集中力が徐々に落ちつつあり、被弾するのも時間の問題だった。

 

 

「…っくぅ! しつこいなぁ!」

「これでもくらえ~!」

 

 

 愚痴を零す皐月に、背中あわせになって61cm五連装(酸素)魚雷で雷撃を行っていた文月が頷く。

 互いに大きなダメージは無いものの、艤装衣服であるブラウスの所々が破けたり焦げが出来ていた。

 

 

「くっそぉ…好い加減に沈め!」

「いけっ!」

 

 

 長月や菊月が敵艦へ高射装置付き10cm高角砲による砲撃を行い駆逐艦イ級をハチの巣にして沈めるが、ル級やリ級に対してはその強固な装甲に対し命中しても碌なダメージを与えられないでいた。

 

 

「厄介ねぇ、これも例の艦隊の影響なのかしら~?」

 

 

 薙刀の一閃で飛び掛かって来たロ級を真っ二つにし、背中のSKC34 20.3cm連装砲で6inch連装速射砲を皐月達へ向けていたヘ級を的確に撃ち抜いた龍田が顔を顰めて呟く。

 今回の任務で出撃した双龍艦隊は、軽巡洋艦と駆逐艦と云う足の速い高速艦で編成されており、戦艦や正規空母と言った高い打撃力と耐久性を併せ持った艦との交戦は論外で、遭遇したら即座に撤退し雲隠れする様にと決めている。勿論、彼女達の提督である蒼介と共に強敵と戦ってきた天龍と龍田ならこの海域に出没するレベルの敵艦隊ならそう簡単に負ける気は無いと思っているが、今回の場合、「ひとえに艦隊編成は最大6隻」という艦娘・深海棲艦共通の鉄則を無視した大規模艦隊と遭遇した事が問題だった。

 戦艦や空母の数は1隻しかおらず、重巡や軽巡も2隻ずつだが、どれもこの海域では有り得ない最上位クラスであり、更に足の速さでこちらに勝るとも劣らない駆逐艦の数が多い為に、この海域からの離脱もままならない状況であったのだ。

 

 

「天龍ちゃん、分かっているでしょうけどこのままじゃ全滅よぉ? 提督にこの異常だけでも伝えないと駄目だわ!」

「分かってるって! くそぅ、敵艦隊が存在しなくなったんじゃなかったのかよ!!?」

 

 

 低空爆撃が失敗して離脱しようと近くを飛んでいた敵艦載機を斬り捨て、天龍が怒りの声を上げる。日本国周辺海域から今天龍達がいる南西諸島海域の半分以上は、智明達の資材集めで敵艦隊を完全に全滅させた為に本来ならはぐれで紛れ込んで来る以外に存在している筈が無かった。

 しかし、今回は蒼介が出撃させたタイミングが悪かった。

 智明達が沖ノ島海域のボス艦隊を撃破し、南西諸島海域を完全制圧する事を危惧した深海棲艦達は南西諸島海域最後のエリアである沖ノ島海域の配属艦隊を強化し、南方・西方海域から増援を呼んだのだ。これによって沖ノ島海域のボス含む艦隊とは上位クラスへ強化され、増援も上位クラスに近い強力な艦隊となっていた。

 西方海域からの増援艦隊はタウイタウイ、ブルネイ、リンガ泊地滞在の提督・艦娘達によって殆どを抑えられ、更にパラオ泊地の提督・艦娘達によって壊滅した。

 南方海域からの増援艦隊は南方海域奪還・防衛に勤めているブイン、ラバウル基地、ショートランド泊地の提督・艦娘達が迎撃を行い、今も激しい戦いを続けている。日本海軍の防衛網を突破出来た南方海域からの増援艦隊も殆どが智明達、水野・函南連合艦隊の実力に全滅したが、一部の艦隊が残存しており双龍艦隊を発見、包囲したのだ。

 

 

「提督がいればこんな奴等狙撃で全滅だろうに…」

「無い者強請りしてもしょうがないわぁ、天龍ちゃん。今はどうにか包囲網を突破して提督の所に帰らないと」

 

 

 敵戦艦の砲撃や艦爆・雷撃によって陣形は既に乱れきっている。蒼介の厳しい演習が功を奏し、皐月達駆逐艦も現状大きなダメージは無いが、敵の包囲網も徐々に狭まってきており被弾も時間の問題だった。

 そこへ文月から大声で報告が入る。

 

 

「天龍さん、11時の方向に新たな艦影~!!」

「何だと!? 艦種と数は?」

 

 

 敵艦ならば全滅もあり得る報告に天龍達は緊張した面持ちで文月に問い掛ける。しかし、彼女は首を横に振った。

 

 

「数は20隻相当だけど、艦種は解からないよ~。余りに小さすぎるんだ!」

「小さすぎる?」

「影姿は艦娘じゃないけど、深海棲艦だとしても駆逐艦と比べて1隻の大きさが小さいんだ~!」

 

 

 天龍達も文月が指した方向を確認する。小さい艦影達は散開しながら尚も接近しており、更にその後方から艦影が此方に向かっていた。

 

 

「まだ増えるのか!?」

「如何する、天龍さん?」

「くそっ、俺と龍田が殿を務めるから包囲網を突破する…「待って、天龍ちゃん!」何だよ龍田!?」

 

 

 尚も増える未確認の艦隊に対し、深海棲艦達がセオリーを無視した編成でいた事から敵である場合に全滅必至だと考えた天龍は強行突破を指示しようとする。しかし、龍田の言葉に遮られ、彼女へ顔を向けた。

 

 

「後方の艦影を良く見て!」

「良く見てって……あれは…!?」

 

 

 龍田に言われるがまま、天龍は新たに見えた艦影を良く見ると、下半身が球体状の物体に拘束された様な姿の深海棲艦達がアサルトライフルの様な武装を構え、此方に向かって来ていた。

 

 

「あれって、例の輸送艦のみの艦隊か!?」

「護衛艦もいないし武装も報告の通り、間違いないわ~」

 

 

 接近中の艦隊が親書を渡す為の勢力である事を確認する天龍達。散開していたのは魚雷艇ソードフィッシュであり、天龍達を囲んでいた敵駆逐艦達に雷撃を開始し始めた。天龍達、双龍艦隊を包囲する事に集中していた敵艦隊は突然の雷撃に対応出来ず、襲い来る魚雷は全て被弾。駆逐艦は轟沈し、強固なル級改フラッグシップ、リ級改フラッグシップにも小破に近いダメージを受けた。

 次々と駆逐艦が沈められる中、ヲ級改フラッグシップがソードフィッシュや向かって来る春夏秋冬艦隊に気付き、彼女達こそが優先的に沈めるべき存在だと天龍達から視線を外して春夏秋冬艦隊が向かって来る方向へと視線を転じ、艦載機を発艦させた。

 しかし、同時に飛来して爆発した物体から拡散する白い煙の様なモノが艦載機を包み込むと、艦載機は黒い煙を上げながら墜落していった。白い煙はヲ級改フラッグシップの周囲や天龍達に艦爆・雷撃を行う為に発艦していた艦載機達の周りにも発生し、次々と敵艦載機を墜としていく。

 

 

「龍田さん、コレって…」

「報告書にあった対空煙幕ね~」

「深海棲艦達を攻撃しているって事は仲間って事で良いんだよね?」

 

 

 ワ級こと桜達がソードフィッシュに追い付き、砲撃戦を開始する。ル級改フラグシップやリ級改フラッグシップの砲撃を回避しながら、爆雷投射機付属13.5cm単装砲から砲弾、ミサイルランチャーポッドからミサイルを次々と放って総攻撃を加える。更に鬼灯と桔梗が発艦させたウミガラスが敵艦の周囲をちょこまかと飛び回り、艤装に向けて的確にロケット砲を撃ち込んで武装を破壊していった。

 攻撃手段を碌に持たない筈の輸送艦達にダメージを与えられた事に激昂するル級達だったが、そんな隙をソードフィッシュ達は見逃さずに魚雷を叩き込んでいく。4発もの雷撃をまともに受けたヲ級改フラグシップは航行不能に陥り、海面に膝を付いてしまった。

 

 

「うおぉぉぉおおお!!」

 

 

 これを撃破のチャンスと見た天龍は若干呆けていた自身の頬を叩いて闘気を高め、手持ちの刀でヲ級改フラッグシップの首を跳ねた。首を落とされたヲ級は重油の様な血を空高く吹き上げながら、海中へと沈んでいく。

 

 

「皆、これはチャンスよ。天龍ちゃんに続きなさい!!」

 

 

 同じく呆けていた龍田は皐月達に活を入れると、自身も薙刀を構えてリ級改フラッグシップへ斬り掛かって行く。彼女の言葉に皐月達も雷撃を行って天龍達が攻撃されない様に援護を始めた。

 この乱戦の状況で最も活躍しているのは鬼灯と桔梗から発艦された魚雷艇ことソードフィッシュだろう。駆逐艦を超える機動性で敵艦達の間を掻い潜っては雷撃を命中させ、航行能力を奪っていく。敵駆逐艦達はソードフィッシュを沈めようと躍起になって砲撃を行おうとするが、意識を向けた瞬間に桜達の砲撃が襲い掛かり沈められていった。

 天龍達を囲んでいた敵駆逐艦は全滅し、残りは旗艦となるル級改フラッグシップとリ級改フラッグシップ2隻、そして軽巡洋艦ヘ級フラッグシップ1隻となった。

 形勢は逆転したが、相手は艦種最上位の改フラッグシップ。耐久性がべらぼうに高くなっている為に中々沈める事が出来ないでおり、また戦い慣れているのかウミガラスによる武装への爆撃も上手く回避されていた。

 

 

「はぁっ!!」

「リ、リリ!!」

 

 

 龍田が薙刀を縦横無尽に振るい、その斬撃をリ級改フラッグシップは篭手状になっている艤装で受け止めて逆に殴り掛かる。何合も打ち合うが龍田が下から斬り掛かる様に見せかけて石突でリ級の首を打ち貫いた。

 

 

「リ、リィ…」

「終わりよぉ♪」

 

 

 フェイントからの石突きによって首の骨を砕かれたリ級はよろめき、大きな隙を作った事が決定打となった。龍田は薙刀を斜めに振り下ろしてリ級を真っ二つにし、止めとばかりにSKC34 20.3cm連装砲で吹き飛ばした。

 

 

「酸素魚雷の力、思い知れ!」

「運が悪かったな……!」

 

 

 長月と菊月がヘ級フラッグシップへ挟み撃ちで雷撃を行い木端微塵にする。

 

 

「沈んじゃえ!」

「リリ…リ!?」

 

 

 ウミガラスの艦爆によって艤装の殆どを破壊されていた残りのリ級はソードフィッシュと皐月の魚雷の集中雷撃で轟沈した。これで残りル級1隻となったが、後が無いと悟ったのか、砲撃の雨を掻い潜って一番近くにいた文月へと駆けて行くと艤装である両腕に装備した砲口を向けた。

 

 

「………へ?」

「しまった!?」

「文月ぃ!!?」

 

 

 ル級が放った砲弾が文月を肉片へと変える様子を幻視する天龍達。

 両腕を前にし、目を閉じる文月。そんな彼女へ一つの影が飛び掛かる。

 

 

「ワァ!!!」

「きゃあ!?」

 

 

 春夏秋冬艦隊で仲間想いの柊が文月を突き飛ばし、直撃を防いだ御蔭で文月は転んだもののダメージは無かった。

 しかし…

 

 

「な、何で…?」

「ワ、ワ……」

 

 

 ル級の16inch三連装砲から放たれた砲弾が柊に被弾し、コンテナ部分が木端微塵になり左足も抉り取られてしまった。航行不能になった柊は力無く倒れ込み、文月は慌てて支える。

 

 

「ワッ!? ワワワァ!!!」

「畜生っ!! 撃て撃て、撃ちまくれぇ!!!」

 

 

 桜と天龍の号令に皆が手持ちの武装で集中砲火を開始する。主砲の砲弾やミサイル、魚雷がル級改フラグシップへ叩き込まれ、ソードフィッシュやウミガラスもそれに続く。艤装が木端微塵に破壊され、その身体を穴だらけにされたル級は漸く力尽きた。

 

 

「か、勝ったのか?」

「へへ、手こずらせやがって…」

「皆、油断は駄目よぉ。まだ周囲にいるのかもしれないのだから…」

「天龍さん、龍田さん。それより……」

 

 

 敵艦隊が全滅して安堵する天龍達だったが、菊月が援護に来てくれた春夏秋冬艦隊を指差す。

 ル級の砲撃によって身体の半分近くを破壊された柊を牡丹が抱えており、山茶花が艤装からアームらしきモノを伸ばし、修理を行っていた。

 

 

「ワ……」

「ワ、ワワワ」

「その……助けてくれて有難う…」

「ワ~、ワ」

 

 

 申し訳なさそうに柊へ感謝する文月を向日葵が「気にしないで」と手を振る。

 

 

「文月を庇ってくれたワ級は大丈夫みたいだね?」

「取り敢えず私達の目的は達成したのかしら~?」

「でも話は通じるのかい?」

「文月の感謝に応えていたから問題無いだろう…多分」

 

 

 天龍達の任務は新種の鬼を含む深海棲艦を仲間にし、霊装化したミサイル兵器を用いる男性がいる艦隊に親書を渡す事である。しかし、鬼や天龍が秘匿通信にて会話した男性ならコミュニケーションが成り立つだろうが、今いる相手は言葉を話す事が出来ないワ級である為に如何したものか悩んでいた。

 取り敢えず話し掛けてみようと天龍が、ワ級達に指示をしていたリーダー艦()に近付くが何か様子がおかしい。桜は身体が石に為ったかのようにピクリとも動かなくなっていた。そんな桜の姿を訝しむ天龍だったが、ワ級達を見てみると他にも桔梗や鬼灯が動かなくなっていた。そんな桜達の元へ菫が近付き、各自のコンテナからホースを取り出すとそれぞれに接続して補給を開始した。柊の修理を終えた山茶花も自身のコンテナから伸ばしたホースを彼女自身に接続して補給をし始める。手の空いた牡丹と向日葵は周りを散策しており、海面に浮いている深海棲艦の残骸をコンテナに収納していた。

 天龍達はワ級が行う補給はダメージを負った艦を回復させるために行う行為だと認識している。なのに、そこまで被弾せずにダメージを受けてい無い筈の桜達に補給を続けているのは何故なのか解からなかった。理由不明の補給を見守る事数分、補給を終えたのか菫と山茶花はホースを引き抜いてコンテナに収納し終えると。桜、桔梗、鬼灯、柊の4名に変化が起きた。

 桜達の艤装部分が肥大化した後、まるで蛹から羽化する蝶の様に外面がパラパラと崩れていき、新たな姿を現したのだ。

 

 

「な、何だよ…これ?」

「お、鬼に進化したって言うの…?」

 

 

 驚愕する天龍達を前に、新たな姿となった桜はニコリと微笑んだ。

 

 

「初メマシテ、皆サン。私ハ春夏秋冬艦隊ノりーだー、輸送艦鬼ノ桜デス」

「しゃ、喋った!?」

「鬼ナンダカラ喋ルノハ当然ヨネ、鬼灯?」

「ソウヨネ、桔梗」

「彼女達ハ進化スル事ヲ知ラナイ筈デスヨ、2人共?」

 

 

 微笑みながら天龍達に挨拶する桜に文月が驚き、そんな彼女に鬼灯と桔梗は首を傾げる。

 

 

「えぇと、貴方が言った通り、ワ級から鬼へ進化したって事で合っているのね~?」

「ハイ、艦種ハ異ナリマスガソレデ正シイデス。因ミニ私ハ病院船鬼ノ柊ト申シマス」

 

 

 龍田の問いに答えたのは病院船鬼となった柊。

 裸体に一枚の黒布を纏っただけだった姿から一転し、黒色のミニスカナース服を着ている。頭部を隠していた上顎の様な部位は消えて白のショートカットで優しげな表情の頭部が見えており、頭には黒地に赤十字がポイントされたナースキャップを被っている。

 拘束具の様だったコンテナ部位の艤装は巨大な手術台へと変貌しており、ベッド部位の下にはアームやら機銃らしいギミックが搭載されている。因みに、柊はそのベッド部分に座っており、ミニスカから伸びる白い脚が艶めかしい。

 

 

「アタイハ揚陸艇鬼ノ桔梗ヨ。宜シクゥ」

「同ジク揚陸艇鬼ノ鬼灯ヨ」

 

 

 柊に続いて自己紹介したのは揚陸艇鬼へ進化した桔梗と鬼灯。

 こちらは海上自衛隊で支給される艦艇戦闘服装の様な衣装を着ており、深海棲艦の上顎を模したヘルメットから白いストレートロングの髪が潮風に吹かれて靡いている。

 艤装の方は鬼や姫特有の大口を模した姿となっているが、既存の艤装と比べて平べったく揚陸艇を模した外見となっている。桔梗と鬼灯の2人はその上に座っており、機関砲を担いでいる。

 

 尚、桜の姿は黒を基調とした、下はホットパンツのレンジャー服で頭には八角帽を被り、踵部位にスクリューが取り付けられたブーツを履いている。

 鬼にしては珍しく大口を模した艤装は無く、艦娘の様に腰回りに機銃の艤装が取り付けられており、アサルトライフルを模した主砲を肩に下げている。しかし、何より目に付くのは彼女が背負っている強大なバックパックだろう。ワ級時のコンテナが球体であったのに対し、バックパックを模したコンテナは背負うのに適した形状になっているのだが、何よりデカい。まるで数日間、登山旅行に行く時に使う様な大きさで、さらにそのコンテナ周囲に機銃といった武装が取り付けられていた。

 

 

「何ハトモアレ、海デ立ッタママナノハイケマセンね。移動シマショウ」

「移動って、何処へだよ?」

「近クノ無人島ニ仮拠点ヲ設置シテイマス。貴女達ノ修理モ必要デスカラ話ハ其処デシマショウ?」

「あ、ああ…」

 

 

 桜に促されるまま、天龍達は近くの仮拠点へ移動する事となった。

 

 

:::::

 

 

 智明達はこれまで制圧してきた日本国近海~南西諸島海域のエリアにおいて、もしもの時に備えて資材や保存食等を隠した仮拠点を彼方此方の無人島に建設している。それら仮拠点は基本的には資材集めにおいて、休憩がてらに利用している。

 位置的にはバシー島沖エリアに近い無人島に設けた仮拠点に案内された天龍、龍田、皐月、文月、長月、菊月達双龍艦隊は、深海棲艦達の侵攻時に破壊されて廃墟となった灯台の中へと招かれた。

 廃墟となっていた灯台であったが、上部のみが砲撃によって破壊されただけだった為に比較的広い1階部分は健在で、其処を改装して利用している。只、窓ガラスは割れて風雨に晒され荒れ放題だった為に1階部分は綺麗に掃除され、新しい窓ガラスに取り換えられている。新たに発電機を持ち込み天井には照明が設置されており、廃材等を加工したテーブルや椅子が配置されていた。

 

 

「取リ敢エズ、オ茶ヲドウゾ」

「御口ニ合ウト宜シイノデスガ」

「オ菓子モアルカラ食ベナヨ」

 

 

 廃材で出来た椅子に腰掛けた天龍達は、艤装を外した桜達が用意したお茶とお茶菓子のもてなしを受けた。尚、仮拠点に着いた際に柊と山茶花が高性能リペア装置によって修理された為に天龍達の艤装衣服は綺麗に戻っている。

 本来、敵である筈の深海棲艦。その中で強敵とされている鬼で、況してや今迄認知して無い新種の鬼からホカホカと湯気を立てる緑茶と饅頭といったお茶菓子を前に出されるという事態に、旗艦天龍含む双龍艦隊メンバーは未だに現状を信じられないでいた。

 因みに部屋には双龍艦隊と桜、桔梗、柊の9人しか居ない。他の春夏秋冬艦隊メンバーは外で待機し、天龍達を救出した事を智明達に報告すべく、無線で連絡を行っているところだ。

 

 

「オ食ベニナラナイノデスカ?」

「モシカシテ毒ガ入ッテルトデモ思ッテルノ? 失礼ダナァ」

「チョット桔梗、止メナサイ!」

 

 

 桔梗の言葉を桜が咎めるが、彼女は言葉を続ける。

 

 

「沈メルナリ捕エルナリスルナラ、アノ時ニアタイ達ガ助ケル訳無イジャン? ソモソモオ菓子ニ毒ヲ仕込ムナンテ勿体無イシ」

 

 

 そう言って桔梗はテーブルに出された饅頭を一つ摘まんで口に放り込んだ。

 

 

「ムグムグ……ウン、美味シイ」

 

 

 饅頭を美味しそうに頬張る桔梗。

 結局、空気に耐えられなくなったのか、命を救ってくれた恩人達に対して失礼だと感じたのか、遂に文月がお茶菓子が盛られた皿に手を伸ばして桔梗が食べた饅頭を手に取った。

 

 

「い、戴きます!!」

「文月!?」

「ちょ、待てって!?」

 

 

 文月の取った行動に皐月は驚き、天龍は止めようとするが、手に取った饅頭は既に文月の口の中。長月や菊月がハラハラした面持ちで彼女を見守る中、文月の口と頬が何度か動き、程無くごくんと細い咽喉が動いて饅頭を食べ終えた。

 

 

「うん、普通に美味しい~」

「普通に美味しいって……何だよ…」

 

 

 あっさりと食べた饅頭の感想を述べる文月に、心配して見守っていた天龍と駆逐艦達は拍子抜けとばかりに軽く扱けてしまう。そんな天龍を見て龍田はクスリと笑い、自身も皿に盛られた最中を手に取る。

 

 

「戴きましょう、天龍ちゃん」

「龍田?」

「そこの桔梗さんが言った通り、私達に敵対しているなら助ける必要が無いわ~。これ以上の警戒は信用を損なう事になるし」

 

 

 そう言って最中に齧り付く龍田。

 

 

「う~ん、美味しい♪」

「……あ~もうっ!! お前等食べるぞ!」

「天龍さん!?」

 

 

 最中に舌鼓を打つ龍田に天龍は頭をガシガシ掻きながら観念したように、皿の花林糖を数本掴みとると口に放り込んでバリバリと食べだした。

 文月、龍田に続き、天龍がお茶菓子を食べても変化が無く、天龍から促されたので皐月達もお茶菓子に手を伸ばしていく。

 その後、智明達が到着するまでの間、桜達と他愛ない会話をするのだった。




現像報告
・ブティクは進化して装甲潜水艦姫になった!
・ウィザードは進化して??になった!
・秋月は進化して??になった!
・??を救出して仲間にした!
・桜は進化して輸送艦鬼になった!
・桔梗は進化して揚陸艇鬼になった!
・鬼灯は進化して揚陸艇鬼になった!
・柊は進化して病院船鬼になった!
・双龍艦隊を救出した!


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