嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

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独自設定大爆発な回


 鹵獲

 この世界で目覚めてから1週間が過ぎた。

 智明は基地内の資材を確保する為に資材集めと深海棲艦狩りを繰り返す日々を続けた。コンテナボックスを2つ引っ張っていき、時に不意打ち、周囲の海域を見回して他の深海棲艦の艦影が無い事を確認できた時には正面から深海棲艦と戦いその残骸を集めた。時には深海棲艦を見つけられず、資材採取のみに終わる日もあったが、それはそれと割り切った。

 

 

「ただいま」

 

 

 海底基地のドックに戻ってきた智明は待っていた妖精達に挨拶する。妖精達はクレーンやアームを動かして彼の艤装を外したり、タオルを持ってきて労を労ってくれた。

 引っ張ってきた2つのコンテナもクレーンで引き上げられた後、妖精用の運搬トラックで資源精製装置へ運ばれていった。

 

 

「今日は被弾せずに済んだよ」

 

 

 ドッグ内にあるシャワールームで海水を流し、私服に着替えた智明は整備主任である妖精に報告する。それに笑顔で答えた妖精は整備室へ運ばれる艤装の後を追っていった。

 

 

「さてと……」

 

 

 智明は夕食を摂るべく食堂へ向かいながら現状況を確認する。

 現在、資材置き場には少しずつながらも資材が貯まってきている。燃料は油田が施設内にあるので順調に貯蓄されている。他の資材も天然資源の採掘場や深海棲艦から燃料よりは少ないながらも同様に増えていた。

 現段階なら駆逐艦クラスの船を2隻加えても賄っていけるだろう。

 

 

「でもな…」

 

 

 問題はどうやって艦を増やすかである。

 この基地の施設は一般の鎮守府の施設よりも設備が整っているが艦娘建造だけは出来なかった。従って外部から艦娘を連れてくるしか方法が無い。となると外部施設で建造するか深海棲艦が捕らえている者を救出するかの2つだ。

 

 

「何処かの鎮守府で建造させて貰うなんて出来る筈が無いし…、後は深海棲艦が制圧している海域を解放するぐらいしか無いけど僕だけで解放なんて夢のまた夢……」

 

 

 味方艦を増やすのは当分先であると結論すると、食堂に着いた。中からはカレーの良い香りが漂っていた。

 

 

「ま、今は資材集めと僕の実力向上に専念して余裕が出来たら改めて考えるか…」

 

 

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精油所地帯沿岸

 

 

「…あれは?」

 

 

 今日も深海棲艦狩りに出撃した智明は順調に駆逐艦を狩り続けていた。

 2つのコンテナボックスも後4、5隻程撃破すれば満杯になるであろうという状況で新たな獲物がいないか探すと、何時もと見慣れない艦影を確認し、持ってきた望遠鏡で視認する。

 駆逐艦を2隻引き連れている其れは人間の下顎の様な形をしていた。船体の左右と上部に砲塔を不規則に搭載しており、下顎の中から人間の女性の身体がおおよそ乳房のすぐ下から上まで生えている様に存在していた。頭部は下顎に比べて小さな上顎が仮面のように被せられていて、顔立ちを伺う事は出来ず、漆黒の長い髪は濡れているのか青白い体に流れるように垂れ下がっていた。

 

 

「軽巡洋艦ホ級か…」

 

 

 軽巡洋艦ホ級は駆逐艦ロ級とハ級を引き連れて周囲を警戒するように智明の視界を真横に進んでいた。

 

 

「確かフラッグシップにならない限りホ級の武装は5inch単装高射砲か偵察機だけだったよな、なら警戒するのはハ級だけか……ん、偵察機?」

 

 

 智明が軽巡洋艦ホ級の武装を再び脳内で確認した時、頭上を黒い物体が通り過ぎていった。其の物体は真っ直ぐホ級へ向かっていく。紛れもなくホ級の偵察機だ。

 

 

「うげ……」

 

 

 ホ級の元に偵察機は戻って行き、ホ級艦隊はこちらへ進路を変えた。

 

 

「ああ、もうっ! 全速潜行!!」

 

 

 敵の砲撃範囲に入る前に智明は海中深く潜行する。相手の武装に爆雷が無い以上、敵の真下周囲は智明だけのキルゾーンになっている。ハ級の魚雷にのみ注意しつつ、ソナーで相手の位置を捕捉して53cm魚雷を射出口に装填する。狙うは船体の中心、海中深くに姿を消した為、攻撃できないホ級艦隊は警戒しながらも智明の頭上を彷徨いていた。

 

 

「発射ぁ!!」

 

 

 3発の53cm魚雷が敵艦隊を沈めるべく突き進んでいく。真下からの攻撃に対応出来ないホ級艦隊全艦に魚雷は全弾直撃、派手に爆炎を上げながらバラバラになった。

 

 

「よしっ、敵艦全滅……いや…」

 

 

 軽巡洋艦ホ級と駆逐艦ロ級の残骸が沈んでいく中、ハ級だけが武装や航行能力を失い、今にも沈みそうな状態ながらも海面に浮かんでいた。

 

 

「運が良いのか悪いのか……」

「………ハ……」

「………」

 

 

 風前の灯火であるハ級は弱々しく声を出す。

 このまま止めを刺そうかと思ったが、大破状態のハ級に魚雷を使うのは勿体ないと智明は思った。なら素手で解体しようかと思い付くが、ふと、ある考えが浮かび上がる。

 

 

「…生きている状態で何かに使えるかな?」

 

 

 智明に与えられた知識の中に深海棲艦についての詳しい情報は入っていなかった。人類が詳しい研究を行えていないからなのかもしれないが、このハ級を基地へ連れて帰り、施設の設備で調べれば何か新しい情報が手に入るかもしれない。

 そう思い至った智明はワイヤーでハ級を固定し、基地へと帰還した。

 

 

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 基地へ帰還した智明であったが、そこで一騒ぎ起きた。

 何せ敵である深海棲艦を生きたまま連れて帰ってきたのだ。ドッグの水面から浮かび上がってきた智明の元に集まってきた妖精達は続いて現れたハ級の姿を見るや一目散に逃げ出した。

 

 

「ああ、大丈夫だよ。武装は破壊しているし、虫の息だから…」

 

 

 智明は慌てて妖精達を落ち着かせ、事の次第を説明する。施設には隔離用のドッグがあったので、そこでハ級を武装まで回復しない程度に修復させて色々と調べる事にしたのだと。

 ハ級の姿に怯えながらも妖精達は納得し、ワイヤーで固定されているハ級をクレーンで持ち上げ隔離ドッグへ運んでいった。

 智明は運ばれていくハ級の姿を見送った後、シャワールームへ向かって行った。

 

 

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3日後

 

海底基地 隔離ドッグ

 

 

「来たよ」

「ハッ! ハッ!」

 

 

 シャッターが開き、入ってきた智明が声を掛けると、プールの縁にいた駆逐艦ハ級は嬉しそうな声を上げて近寄ってきた。魚雷によって破壊されていた船体は綺麗に修復されており、武装も元通りになっていた。

 何故、武装まで修復されているか?

 なんとこのハ級、自身を大破まで追い込んだ智明に懐いてしまったのだ。正確には服従・屈服したと言った方が良いのかもしれないが……

 

 ハ級を連れてきたその日、夕食や精製した資材量の確認を済ませた智明は船体のみを修復させたハ級の様子を確認する為、隔離ドッグにやって来た。

 この隔離ドッグは周囲を分厚い鋼鉄の壁が覆っており、智明のUSMでも簡単には破れない程頑丈な造りとなっている。万が一暴れても逃げられる事は無く、智明も襲ってきた時の為に艤装を装備している。

 ハ級はドッグプールの中央にプカプカと浮いていた。智明は予め魚雷を装填してプールの縁に近付く、彼に気付いたハ級はゆっくりと彼の元に進んできた。何時飛び掛かられても大丈夫なように構える智明であったが、プールの縁にまで来たハ級は何もする事無く、その一つ目? でじっと彼を見つめていた。

 何もしない事に面食らった智明であったが、プール沿いに歩くと彼の後をハ級も追い、軽く走るとハ級も彼と同じ速度で着いて来た。

 相手は着いてくるだけで何もしてこないので噛まれること覚悟で、智明はハ級の船体に触れてみた。鉄板の様に冷たいながらも弾性がある船体を指で突ついたり、撫でてみたりするが反応は無い。

 

 

「ハ~」

 

 

 それどころか心地良さそうな鳴き声を上げる始末であった。

 その日はそれだけにし、翌日からハ級について施設の設備を使い徹底的に調査を始めた。

 

 結果、深海棲艦(駆逐艦ハ級)は…

 

・知能は犬並だが言葉を理解しており、教育すれば言われた通りの行動をする。

・体から特殊な電磁波を放出しており、これが従来の無線やレーダーに影響を及ぼして使えなくしている。

・鋼材や燃料を食料としており、摂取することで船体の修復や弾薬の補充をしている。

 

 以上の3つが明らかになった。

 

 修復後、与えた鋼材等によって砲塔と魚雷発射口が元に戻っていたので警戒していたが、こちらを攻撃すること無く近寄って来たので現状況では問題無いと判断した。因みに的を設けて攻撃するように指示するとちゃんと攻撃してくれた。

 

 

(まるでモンスターテイマーが主人公のRPGみたいだな……)

「ハ?」

 

 

 そんな事を考えているとハ級は不思議そうな声を掛けてきた。

 

 

「ああ、何でもないよ」

 

 

 智明はそう言いながらハ級を撫でると、ハ級は心地良さそうに鳴いた。他の駆逐艦と違い一つ目? である為禍々しく、外見と行動にギャップが生じ、彼は苦笑した。

 

 

(与えられた情報では深海棲艦は人類や艦娘を異常なまでに敵視している筈、だから僕に懐くなんて有り得ない……。それとも男である事が原因なのかな? ま、本当に懐いたのかは実際に外へ連れて行かないと解らないな……)

 

 

 現状況ではハ級が1隻だけしかおらず、勝てないから従順なフリをしている可能性がある。また、ハ級より強い存在が智明だけしかこの場所におらず、上位の深海棲艦がいたら其方に従う可能性もあるのだ。この可能性を打ち消すには駆逐艦以上の深海棲艦との戦いに連れて行かなければならない。

 

 

(僕としてはこのまま仲間であって欲しいのだけど……)

 

 

 基地の施設には武装開発や船体改造の設備もある。ハ級を調べた後に試しに深海棲艦も改造等が可能であるか調べてみたら、なんと新たな改造リストとしてハ級の欄が設けられていたのであった。条件としては改造対象にある程度の戦闘経験を持たせないといけないらしいが、条件を満たして必要な資材を与えれば、智明の武装であるUSMすらも装備させる事が可能であるのだ。今後、ハ級が仲間になった事が完全に判明し、他の深海棲艦も仲間として増やしていければ強力なミサイル艦隊を編成することが出来るだろう。

 

 

「何はともあれ、明日連れて行くしか無いな…」

「ハ~♪」

 

 

 ハ級を撫でながら智明は『明日、本当に仲間であることが確定しますように』と祈った。

 

 

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翌日

 

南西諸島沖

 

 

「準備はいいかい?」

「ハッ!」

 

 

 智明の問いに駆逐艦ハ級は元気良く答える。

 ハ級が本当に智明に従っているのか確認する為に彼はハ級を引き連れ敵艦隊を捜索していた。途中で天然資源を回収しつつ探すこと2時間、軽巡洋艦ヘ級と駆逐艦ロ級2隻の艦隊を発見した。巨大な口の上に体が生えた様な姿の軽巡洋艦ヘ級は、同じ軽巡洋艦であるホ級より能力が高く、武装も6inch連装速射砲と偵察機である。しかし、智明もこの3日間で軽巡洋艦との戦闘は繰り返しており、ハ級が不意打ちな形で裏切らない限り問題無いと考えていた。

 現在、岩礁の影に隠れており偵察機にも見付かっていないので不意打ちが可能だが、今回はハ級が裏切らないか真意を確認する為の戦闘である為、海中からの襲撃は出来ず、このまま突撃する事になる。

 

 

「よし、出撃!」

「ハ~!」

 

 

 智明はハ級を引き連れ、へ級艦隊へ進撃する。敢えて先行し、背中をハ級に見せている訳だが、ハ級は攻撃する事無く、彼に従順に付き従っている。

 

 

(今の所は問題無しか……、保険は掛けているけどそのままでいて欲しいな)

 

 

 智明が掛けた保険とは何か?

 現在、ハ級の背後には百科事典程の大きさの潜航艇が着いてきていた。

 

 

小型潜航艇『グランパス』、

 潜水艦『竜王』である智明の武装の一つで、水中戦闘モードへの変形機能を有する2人乗りの小型潜航艇である。30cm魚雷、短射程水中ロケット弾、中射程水中ミサイル、ニードルガンと豊富な武装が搭載されており、その高い機動で単機でも潜水艦と渡り合える。

 

 

 ハ級が裏切った際に何時でも攻撃できる様に、予めクルーの妖精に頼んで配置させていたのだ。グランパスはハ級に気付かれる事無く、ハ級の後ろに着いて来る。

 智明達に気付いたへ級艦隊は単縦陣形を広げ、砲撃を開始した。

 

 

「左手のロ級とへ級は僕が殺る。ハ級は右手のロ級を相手して!」

「ハッ!!」

 

 

 智明の指示に従い、ハ級は同族であるロ級へ5inch連装砲を容赦無く放ちながら攻め込んで行き、グランパスも後を着いて行く。

 ハ級の様子に智明は早計かもしれないとネガティブな思考をしながらも、現状況では信用に足りると判断してヘ級達へ攻撃を開始した。ヘ級とロ級の砲撃を回避しながら智明はヘ級達へ直進し、牽制に魚雷を1発ずつ放った。

 向かって来る魚雷を回避するべく、旋回するヘ級達。その横を通り過ぎる智明は潜行しながら体を斜めに傾けてへ級とすれ違う形にし、66cm近接水中ミサイルを叩き込む。

 何時ぞやのイ級の様にミサイルの直撃を受けたヘ級は、船体から装甲をバラバラに飛び散らせながら爆炎に飲まれて轟沈し、旗艦を失ったロ級達も智明とハ級の魚雷攻撃に沈んだ。

 

 

「良し、僕達の勝利だな」

「ハッハー!!」

 

 

 ハ級が嬉しそうに智明の元に近寄って来る。誉めてくれと言わんばかりに擦り寄ってくるハ級は行動こそ可愛らしいが、やはり外見とのギャップに智明は苦笑しながら撫でるのであった。

 

 

(現状況では問題無しか……、しかし…艦娘より先に敵艦が仲間になるとはね…)

 

 

 海中でグランパスを収容し、今後、強力な敵艦に遭遇した時にも大丈夫であろうかと一抹の不安を抱きながら、智明はハ級を連れて基地へ帰還した。




現状報告
・駆逐艦ハ級が仲間になりました!
・深海棲艦に関する新たな情報を得た!


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