嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

32 / 38
アニメ版「艦これ」第4話を視た感想は…
第3話があんな展開だったのにギャグをブチ込むか!?
そして最後数分にあった展開で如月轟沈を綺麗に片づけたつもりなのか?
後、アニメ提督への鬱憤の矛先にされかねない長門が不憫や…


碌に書けていませんが、日本国海軍との交渉回となります。


 交渉

日本国 横須賀鎮守府 湾口施設

 

 

 日本国防衛の最高司令所となっている横須賀鎮守府。その湾口施設にて6名の艦娘が艤装を装備した状態で待機し、これより行われる出撃についての会話をしていた。

 

 

「金剛お姉様、今回の交渉は成功するのでしょうか?」

「Uhm…、判からないネー。でも心配する必要は無いデース! 提督が信用出来る相手だと判断したから決めた事デース、私達は交渉が成功する様に祈りながら護衛任務を熟せば良いネー」

 

 

 戦艦 金剛型3番艦 榛名(改二)が姉艦である金剛に交渉が成功するかどうかを尋ね、金剛は笑顔で大丈夫だと答える。

 彼女達には前日の内に作戦の内容は伝えられてはいるが、相手の詳しい情報については聞かされていない。しかし、ある人物が横須賀に来た事から、その人物から話を聞く事が出来ていた。

 

 

「でも、新生海人の方々と仲良く出来るでしょうか? 榛名は不安です」

「榛名、レクイエムが新生海人の方々はとても良い人ばかりだと言ってたじゃないデスカ。No Problem デース」

「それに向こうには、艦娘もいるのよ? 怖がっていては相手を不愉快にさせるだけ」

 

 

 不安気な表情を浮かべる榛名に対し、金剛は明るい返事を、正規空母 加賀型1番艦 加賀(改)は注意を呼びかける。

 金剛の話に出ていたが、姫乃の艦娘であるレクイエムは、とある事情で横須賀鎮守府に預けられている。この為、横須賀鎮守府の艦娘や一部の職員達は彼女から男性適合者である智明と芳彦やブティク達、新生海人について色々と話を聞いていた。

 

 

「でも、レクイエムさんの話を聞いてもまだ信じられないな。深海棲艦が人や艦娘と仲良くしているなんて」

「ちょっと怖い…です」

 

 

 榛名と同じく不安気な声を上げるのは軽巡洋艦 阿賀野型2番艦 能代(改)と駆逐艦 白露型5番艦 春雨(改)。負の感情に支配され殺意を剥き出しにして人間や艦娘を殺しに掛かる姿しか見た事が無い彼女達にとっては仕方が無い事だろう。

 そんな彼女達、重成率いる『御劔艦隊』メンバーにレクイエムは肩を竦める。

 

 

「”Was die Augen sehen, glaubt das Herz(目の見たものは心が信じる)”。日本語では『百聞は一見に如かず』、だったかしら? 実際に会った方が良いわ」

「YES! 『作文は一軒に敷かない』。同じ戦艦として、ステルス戦艦や原子力戦艦と云う未知の戦艦に会うのが楽しみデース♪」

「お姉様、間違ってます…」

「海外艦であるレクイエムの方がちゃんと言えてどうするの…?」

 

 

 金剛の間違った諺に榛名と加賀は呆れ顔。

 そんな会話をしていたレクイエムと御劔艦隊のメンバーの元へ重成の声が聞こえ、彼と源重郎、そして彼等の秘書艦である漣と大和の姿が現れる。

 

 

「皆、集まっているね?」

 

 

 金剛達は直ぐさま会話を止めて整列し、重成達へ敬礼する。

 

 

「これより我々、御劔艦隊は例の艦隊との交渉を行う為に行境元帥と共に南西諸島海域へ赴きます。出撃は呉、佐世保鎮守府及び大阪警備府から出向する織川少佐、銀条中佐、葛城少将達が到着次第となります。各提督達は既に移動しており、間もなく到着するでしょう」

 

~♪【天の川艦隊、銀牙艦隊、葛城艦隊が来港しました】

 

「話をすれば、ですね」

 

 

 湾口に3隻の武装ボートとそれを護る艦娘達が入港し、接岸したボートから姫乃、ユーリ、蓮の3人が秘書艦を連れて降りて来る。

 

 

「待っていましたよ、3人共。ところで、織川少佐は何故2人も連れて?」

「あはは、散々心配掛けちゃったんで…」

 

 

 姫乃が連れているのは秘書艦である大淀と何故か彼女の腰にしがみ付いている雪風。姫乃が帰って来て以降、雪風は彼女の行く先何処でも付いて来るようになった。大淀や磯風から止める様に言われているが、すると姫乃が居なくなるのが嫌だと泣き出すので姫乃は傍に居る事を許していた。

 

 

「成程。まぁ、交渉時は共に艦外で待機なので問題無いですね」

「れーちゃ…レクイエムは元気ですか?」

「大丈夫ですよ、此方に」

Admiral(提督)

「れーちゃん!!」

 

 

 笑顔を浮かべながら姫乃はレクイエムへ抱き着く。

 

 

「境元帥、神宮寺大将。レクイエムを護って頂き、有難う御座います」

「本当なら提督であるお前ぇの下にいるのが一番なんだがな。強硬派が何処にいるかが分からん以上、少佐の身分で呉鎮守府に置いていたらどんな圧力が来て引き離されるか解からん」

 

 

 源重郎が言った通り、レクイエムは本来なら建造出来ない強力な艦娘だ。姫乃の下にいては何時、強硬派と繋がっている上層部からの圧力で引き離されかねなかったので、横須賀鎮守府にて保護される形となっていた。

 

 

「これより我々は南西諸島海域へ赴き、例の艦隊との交渉を行う。姫乃は俺達と共に『いずも』に乗り、他はいずもの護衛だ……とはいっても連中とは長い付き合っていく筈だ。任務内容を忘れては困るが、向うの艦隊メンバーとは交流して仲良くなっておけ」

「って事は協定を結ぶ事は決定してる訳?」

「今回の交渉は彼等の立ち位置を如何するかを決める為の話し合いと言っても良いです。深海棲艦との戦いに勝利する為には協力は必須、しかし彼等艦隊メンバーにいる新生海人は元深海棲艦。元々相容れない筈の敵を仲間としている彼等の立ち位置次第では国民が、そして強硬派が騒ぎかねません」

「連中の希望を汲んではやりたいが、国を守る俺達にとって国内に騒動の火種を産み出させる訳にはいかん」

「っちゅう事は、会合の時にゆうてた様に監視付きでぇ妥協して貰う様に頼む訳やな?」

 

 

 日本国海軍が戦闘を行っている海域は広い。未だ、召喚できていない艦の御霊があるので、艦娘が今後増える可能性は有るが、現状約150名の艦娘で海域の奪還・守備をしなければならないのだ。艦娘が配備された以降も深海棲艦の大反攻が1度起こり、その時も嘗ての海洋大戦時と同じく、日本国周辺海域まで押し込まれたのだ。今後も大反攻は起こり得るだろうし、その時に更に強力な深海棲艦が現れる可能性も否めない。その様な状況で深海棲艦の復活を抑え、日本国海域周辺から南西諸島海域を完全開放した水野・函南連合艦隊とは確実に協力関係を結ばなければならない。政治的、世論的なイザコザは嫌でも起こるだろうが…

 

 

「そう言う事だ。それでは出撃!!」

《了解!!》

 

 

 日本国海軍交渉団は目的の海域へと出撃するのだった。

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

源重郎達本土組が出撃するのと同時刻

 

グアム島近海

 

 

 波が無い静かな海を1隻のホバークラフトが進む。鴉が飛び立つ姿を白丸の中に描いた黒い艦隊旗を翻している事から、トラック泊地に勤めている御堂 蒼真大佐率いる鴉艦隊が搭乗している船であると分かる。

 ホバークラフト船内の搭乗室において蒼真と艦娘達は今回の出撃の件について話していた。

 

 

「しかし、何故急に我々も交渉団の護衛として出撃する事になったのだ?」

「本土には緒方少将や十大佐といった実力者達がおりますのに…」

 

 

 今回の任務に就いて那智と妙高が疑問の声を上げる。

 源重郎と重成が智明達と交渉を行う事になる日の2日前に蒼真達、鴉艦隊に交渉の際に護衛をする様任務が下された。突然の指令であったが、元帥である源重郎直々の指令であった為にそのまま任務へと赴いているのだった。

 

 

「多分、お前達が理由だろう」

「私達?」

 

 

 そんな彼女達へ蒼真が声を掛ける。

 

 

「俺達がカムラン半島海域でレ級や見えない鬼と戦闘を行った時を覚えているな?」

「覚えているわ」

「提督を人質にされたのだもの、忘れないよ」

 

 

 相手に手加減された上に提督である蒼真を人質に取られ、結果撤退した屈辱的な戦い。

 だが相手はそれだけの実力が有り、本気で殺しに来ていれば全滅していたであろう出来事。

 

 

「その時、ステルス艦の鬼がこう言った。『私達も千歳や羽黒、夕立の姉妹を攻撃シしたくないから』、と」

「!? 提督、それって!!」

 

 

 千歳と羽黒、夕立と云う言葉に艦娘達が驚愕の声を上げる。羽黒は妙高、那智、足柄の妹艦であり、千歳は千代田の姉艦、夕立は白露、時雨の妹艦である為、鴉艦隊のメンバーの姉妹艦がいる事になるからだ。

 

 

「俺は会合の際に渡された資料で知っていたが、お前達が想像している通り、例の艦隊は千歳、羽黒、夕立を連れている」

「つまり、お姉達を助けろって事ですか!?」

「千代田さん、そんな事したら交渉が決裂すると思うんだけど?」

 

 

 千代田の発言に時雨がツッコミを入れる。

 

 

「今回、俺達が出撃したのは姉妹艦が無事な姿を見せてお前達を安心させるのが理由だろう。後は連中との交流といった所か…」

「羽黒達の安否確認は解かりますが、あの艦隊と交流ですか…」

 

 

 妙高達の顔が少しばかり歪む。

 

 

「そんな顔をするな。連中が敵ではないと誰も知らなかったとはいえ、あの時に敵意を持って攻撃を仕掛けたのは俺達だ。それに情報を見る限り羽黒、千歳は新生海人とも仲が良い。嫌悪感を持っていては姉妹とも相容れんぞ?」

「千歳お姉と、相容れない!? そ、それは嫌です!!」

「…元深海棲艦だとはいえ、自身の感情を先にするのはいかんな。反省しなくては…」

「夕立が仲良くしてるんだから、大丈夫でしょー?」

 

 

 蒼真の言葉に千代田は姉との仲が悪くなる想像をして顔を青ざめ、那智は感情を抑える様に自身を戒め、一方の白露は前向きに考える。

 

 

「御堂大佐、間もなく本土艦隊との合流海域に到着します」

「分かった」

 

 

 見張りの兵士から連絡を受けた蒼真は甲板に出て進路先を眺める。視線の先には源重郎達、日本本土から出撃した艦隊の艦影がポツリポツリと見え出していた。

 

 この後、鴉艦隊は無事に本土組と合流し、交渉場所へと向かうのだった。

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

南西諸島海域 交渉の場に指定した無人島

 

 

「さて、指定した時間まで後30分を切った訳だけど…」

「指定しているこの島へ接近中の艦隊は既に確認出来てるからね。別働隊は無し、規模を見る限り敵対しても私達で対応できる数ね」

「戦闘の心配は無いだろうが、大事なのは交渉が成功するかどうかだな」

 

 

 智明達が親書で交渉を行う場所として指定した無人島にて、智明達は日本国海軍の艦隊が来るのを待っていた。夕張が打ち上げたスター・オービットのシステムは良好に作動しており、日本本土から出向した艦隊を既に確認している。

 

 

「しかし、殆どの艦隊が日本本土から来てるのに、1艦隊だけトラック泊地から来てるのが気になるわ」

「南西諸島海域にいる艦隊が赴くなら兎も角、怪しいわね…」

 

 

 夕張と千歳が心配しているのは、南方海域と中部海域の間にあるトラック泊地から1隻の軍事ホバークラフトが日本国から出向した艦隊と落ち合う様に航行している事だった。

 

 

「モシカシタラ…」

「ブラス?」

 

 

 そこへ声を上げたのはブラスだった。

 

 

「私達ガかむらん半島海域デ提督含ム艦隊ト戦ッタノハ覚エテルワヨネ?」

「覚えているが、その時の艦隊であると?」

「アノ時、艦隊ガ侵入・撤退シタ際ニれーだーガ反応シタ方角的ニモ私ハソウ思ウノダケド」

「ブラス達と戦闘した経験者として加えるつもりかな?」

 

 

 どういった経緯で呼び寄せたのかは解らないが、トラック泊地から出撃した艦隊は日本本土から出撃した艦隊と合流し、そのまま此方へ向かっている。

 程無くして、日本国海軍の艦隊の姿が徐々に見え始めだした。

 

 

「さぁて。トモ、ゆうばりん、ぬいぬい行くぞ。他メンバーは話が終わるまでここで待機。無いだろうが、向こうから仕掛けてこない限りは、決して手を出すな」

《了解!!》

 

 

::::::::

:::::

::

 

 

 親書に記されていた指定時間まで10分前、早めに指定海域に到着した日本国艦隊。指定された場所には無人島があり、近くに複数の艦影が見えた。

 

 

「見えてきましたね…」

 

 

 重成が双眼鏡で視認した艦隊の陣容は…

 

 

潜水艦『竜王』の男性適合者、水野 智明

反応動力推進航空母艦『飛天』の男性適合者、函南 芳彦

航空戦艦、扶桑

軽空母、龍驤

軽空母、隼鷹

双胴水上機母艦、千歳

重雷装巡洋艦、木曾

重巡洋艦、羽黒

特殊兵装軽巡洋艦、夕張

軽巡洋艦、那珂

イージス駆逐艦、電

イージス駆逐艦、雷

イージス駆逐艦、浜風

対潜駆逐艦、不知火

高速機動駆逐艦、夕立

潜水母艦、大鯨

装甲潜水艦姫、ブティク

駆逐棲姫、秋月

高機動潜水艦鬼、コーバック

高機動潜水艦鬼、ウィザード

原子力戦艦鬼・烈、ヨハム

原子力戦艦鬼、ビフト

ステルス戦艦鬼、ブラス

氷山空母鬼、ハク

空母棲鬼、天鳳

輸送艦鬼、桜

輸送艦鬼、牡丹

潜水輸送艦鬼、向日葵

潜水輸送艦鬼、菫

揚陸艇鬼、桔梗

揚陸艇鬼、鬼灯

病院船鬼、柊

工作船鬼、山茶花

戦艦レ級改フラッグシップ、ヴァーチ

軽空母ヌ級フラッグシップ、翠鶴

重巡洋艦リ級フラッグシップ、シグ

軽巡洋艦ヘ級エリート、シュトゥル

軽巡洋艦ト級改フラッグシップ、ヴィル

駆逐艦イ級エリート、ノール

駆逐艦ハ級フラッグシップ、チェス

潜水艦カ級フラッグシップ、マラコット

潜水艦ヨ級フラッグシップ、ボルガ

輸送艦ワ級フラッグシップ、桃

輸送艦ワ級フラッグシップ、朝顔

輸送艦ワ級フラッグシップ、秋桜

輸送艦ワ級フラッグシップ、水仙

 

 以上、合計46隻。

 

 

「これは…凄い…」

 

 

 男性適合者という架空艦2隻に加えて新種の深海棲艦を含んで姫級が2隻、鬼級が15隻も顔を並べている大艦隊に歴戦の勇士である重成も驚愕の声を上げた。

 

 

「おうおう、奴さん気合入っているじゃねぇか」

「実際に見ると、此方の総力を結集しても勝てるか分かりませんね…」

「船外じゃ大和達も驚愕の声を上げてるだろうよ」

「あれ~? 見掛けない顔がある、私達が帰った間に進化したのかな?」

 

 

 源重郎と重成が艦隊の姿に圧倒される中、既に見慣れている姫乃は呑気なコメントをする。

 

 

「あの島は無人島だった筈ですが…、港を態々築造した様ですね。双龍艦隊の話では無人島や放棄された製油所等を中継の休憩場所として改装してるそうですが?」

「有りがてぇじゃねぇか。接岸準備!!」

 

 

 源重郎の命令の元、いずもを智明達が立っている岸壁へと接岸させる。

 岸壁へタラップを下ろし、姫乃を智明達を迎えに行かせる。姫乃が戻って来ると、後から智明と芳彦、そして夕張と不知火が付いて来た。

 

 

 こうして、日本国海軍と、水野・函南連合艦隊は対面した。

 

 

「初めまして。僕は水野・函南連合艦隊の『青の艦隊』リーダー、水野 智明です」

「同じく水野・函南連合艦隊所属にして『青天艦隊』リーダー、函南 芳彦だ」

「青の艦隊メンバー、夕張よ」

「青天艦隊メンバー、不知火です」

「横須賀鎮守府所属、日本国海軍総司令の境 源重郎だ」

「同じく横須賀鎮守府所属、御剣艦隊提督の神宮寺 重成です。初めまして」

「え、ええと。呉鎮守府所属、天の川艦隊提督の織川 姫乃です!!」

 

 

 智明と芳彦が挨拶をすると、源重郎と重成も挨拶を返し、姫乃も慌てる後に続く。

 互いに挨拶を交わし終えると、智明達は握手の手を差し出す。

 

 

「今回は僕達との交渉に応じて下さって有り難う御座います」

「いえ。我々日本国海軍にとっても、貴殿方と協力関係を結ぶ事は膠着状態となっている現状を打破する希望になると考えています」

「あれだけの情報を晒してくれたんだ。応じ無ぇのは人間じゃ無ぇ」

 

 

 智明の感謝の言葉に重成が笑顔で答え、源重郎は深く頷いた。

 

 

「親書と一緒に送った武装は役に立ったか?」

「はい。ファランクスと特殊弾頭、そして艦載機 散香、何れも素晴らしい性能でした」

「私達が製作した渾身の武装だからね、既存の兵装に負ける筈が無いわ」

 

 

 重成が提供された装備を褒め、夕張が胸を張って自慢する。智明達は親書やデータと一緒に姫乃に一部の武装を日本海軍に提供していた。提供した武装はファランクスと気化爆薬や羽衣弾といった特殊弾頭、そして艦載機の散香。提供後は横須賀鎮守府にて試験運用され、何れも強力な兵装であると確認された。

 その後、いずも船内の会議室へ智明達を案内し、各自が席へと着席する。

 

 

「それでは交渉を始めましょうか?」

 

 

:::::

 

 

源重郎達と智明達が交渉中

 

 

「ねぇ、提督」

「何だ?」

「敵対したら勝てると思う?」

「百っパー無理だな」

「だよね~」

 

 

 停泊中の武装ボートデッキにて鈴谷が待機中のブティク達を眺めながらユーリに尋ねる。

 エプロンには水野・函南連合艦隊の艦娘や新生海人達が並べられたテーブルに料理やら飲み物やらを置いて何か準備していた。因みに木製の小屋の上には『歓迎、日本国海軍一行様』と横断幕が張られていた。

 

 

「相手が敵対するつもりが無いし、俺達もする気が無いからんな事考えたって不毛だっての。っつうか、向うは歓迎パーティする気満々だし…」

「ケーキ持ってはしゃいでるレ級なんて初めて見たし」

「安心しろ、俺もだ。それより蓮さん達はもう出てるな、俺達も行くぞ」

「ほいほ~い♪」

 

 

 ユーリは鈴谷を連れ、ボートから降りてブティク達が居るエプロンへ向かった。

 

 

「雷、電!!」

「暁お姉…響お姉ちゃんまで!?」

「はわわっ!!」

 

「な、那珂!?」

「那珂ちゃん!?」

「あ、お姉ちゃんだ!」

 

 

 桟橋に立った葛城艦隊、その中で暁と響、川内と神通は雷と電、那珂の姿を見るなり3人の元へ駆けて行く。中でも暁は雷と電に飛び付いて抱き締めた。

 

 

「2人共無事なのね? 何とも無い?」

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん落ち着いて…」

「苦しいのです…」

「姉さん、落ち着いて」

 

 

 心配そうな表情で妹艦の2人を気遣う暁だが、首を抱き締められている雷と電は苦しそうで響がそれを宥める。

 

 

「ヤッホー♪ お姉ちゃん達元気~?」

「まさかこんな所に居たなんて…」

「元気だけど…那珂ちゃんこそ如何なの?」

「元気だよ! プロデューサーさんと毎日楽しくやってるもん♪」

 

 

 一方の川内型軽巡洋艦組は心配そうな姉艦に対して那珂が元気良く答えるので安堵している。

 

 

「お~、姉妹との感動の再開ってヤツかい? 良いねぇ~」

「ちょっと、隼鷹!?」

「お、飛鷹も居たのかい? こりゃ祝い酒飲まないとね♪」

 

 

 そんな様子を眺めていた隼鷹の元にも飛鷹が駆け付ける。

 

 

「おやおや、うちん艦隊の妹艦がぎょうさん揃うておるなぁ」

「行方不明だった艦娘は此方の艦隊で保護されていたんですね…」

「皆、元気そうね」

 

 

 そんな暁達の様子を眺めながら、葛城艦隊提督の蓮と彼の秘書艦である高雄、そして妹艦の愛宕がボートから降りて来る。

 そんな妹艦の再開は葛城艦隊メンバーだけでは無かった。

 

 

「「「羽黒!!」」」

「お姉ちゃん!?」

 

「千歳お姉!!」

「千代田!?」

 

「「夕立」」

「ぽいっ!? お姉ちゃん!!」

 

 

 鴉艦隊の妙高と那智、足柄の重巡洋艦妙高型姉妹と千代田、白露と時雨の駆逐艦白露型姉妹も羽黒と千歳、夕立の元へ駆け寄る。

 

 

「元気そうね、無事で良かった…」

「行方不明だったから心配だったんだぞ?」

「無事なら連絡しなさい……って、無理か」

「心配掛けて御免なさい、でも元気でやってるわ」

 

「お姉、会いたかった!! …って、何その艤装!?」

「ちょっと、苦しいわ」

 

「無事で安心したよー♪」

「元気してた?」

「うんっ! ともさんや皆の御蔭で元気っぽい」

 

 

 妙高型姉妹や白露型姉妹は羽黒、夕立の無事を喜び、千代田は暁と同じく千歳に飛び付くが、見慣れぬ艤装に驚いている。

 

 

「そっちは皆かいな、蒼真はん?」

「ふむ、羽黒、千歳、夕立と俺の所の艦娘全員の姉妹艦が居る訳だからな」

「資料の通り、1名以外揃っとるな」

「利根が居ればバッチ揃ってたんだけどな」

 

 

 自分の艦隊メンバーの姉妹艦が多く居る事を蓮と蒼真が話している所にユーリが自分の艦隊メンバーを連れて現れる。彼の後ろには秘書艦である鈴谷と彼女の妹艦である航空巡洋艦 最上型4番艦 熊野(改)、駆逐艦 睦月型3番艦 弥生(改)と4番艦 卯月(改)、そして陽炎型10番艦 時津風(改)と云う銀牙艦隊メンバーの姿が有った。

 水野・函南連合艦隊のメンバー内に、行方不明扱いだった艦娘が揃っている事を提督達は知っていたが、同じく行方不明扱いとなっている重巡洋艦 利根型1番艦 利根だけ入っていなかった。

 

 

「さて、自己紹介といこか? ウチは大阪警備府所属の葛城 蓮や。宜しゅう」

「トラック泊地所属、御堂 蒼真だ。そっちのレ級とは1度戦ったな」

「佐世保鎮守府所属、銀条 ユーリっス。しくよろ」

 

 

 再開の語らい合いを終えた艦隊メンバーを戻し、全員で整列させると蓮達提督がブティク達へと挨拶する。

 

 

「初メマシテ、日本国海軍ノ皆サン。私ハ水野・函南連合艦隊の『青の艦隊』メンバー、装甲潜水艦姫ノぶてぃくト申シマス」

 

 

 ブティクが笑顔を浮かべながら挨拶してくる姿に、提督含め艦娘達は理解していても面食らってしまう。人語を話せる姫級だとしても、これまで死ぬか生きるかの殺し合いをしてきた相手である訳だから無理も無いだろう。

 そんな彼等にブティクは苦笑しながら言葉を続ける。

 

 

「私達ハ姿コソ深海棲艦デスガ、りーだーデアル智明ト芳彦ニヨッテ自我ニ目覚メ、現在ハ新生海人ト名乗ッテマス。マダ慣レナイトハ思イマスガ、仲良クシテクダサイネ?」

「そうだったな。新たな存在である新生海人、これから宜しく頼む」

「美人さんにそう言われちゃ、しゃあ無いわな?」

「ところでさ、深海棲艦とはどう見分け付けんの?」

「ソレニツイテハ私達ノ首元ヲ見テチョウダイ」

 

 

 ユーリからの質問にヨハムが自身の首元を指し示す。ブティク達の首にはドックタグが掛けられており、所属艦隊と各自の名前が書かれている。因みに駆逐艦であるノール達は冠の様なタグを付けている。

 

 

「成程ね、ドックタグで判別可能か」

「一緒ニ戦ウ時ニハ敵ト間違エナイデネ?」

「サァ、立チ話ハ是位ニシテ日本国海軍ノ皆サンヲ持成シマショウ!!」

《ようこそ!!》

 

 

 ユーリが納得した後、ブティクの音頭と共に歓迎会が始められた。

 

 

:::::

 

 

「という訳で、このシステムを用いれば深海棲艦の動きが正確に解かる上に砲撃や雷撃の照準調整にも利用出来るの」

「霊装化、そして深海棲艦の呪術的技術を併用した人工衛星によるモニタリングシステム……ここまで出来るのですか…」

「照準調整に利用する際の誤差はどうなる?」

「遮蔽物越しで視認出来ない時は最大5cm程度の誤差があるけど、視認出来れば精度は100%よ」

「通常の砲撃戦なら必中になるか…」

「但し、衛星とのリンクする為の装置を装備する必要があるけどね」

 

 

 場所は戻って、いづもの会議室。

 智明達は親書を送った後に、進化した新生海人メンバーのスペックの紹介や親書と共に送ったデータの詳しい情報を説明し終えていた。

 現在は夕張が新たに開発した兵装等のプレゼンテーションを行い、源重郎達は感嘆の声を上げていた。

 

 

「超大型爆撃機である富士や填鷲があれば本土や各基地、泊地から出撃しての攻撃も可能となりますね」

「弾道ミサイルもそうだろうに。戦局が大きく有利になる」

「艦載機に関しては癖が有る機体もあるから空母達に完熟して貰わないといけないわ」

「ミサイル兵装に関しても専用の改造が必要です。整備妖精達にも指導しないといけません」

「指導する為の整備妖精に関しては既に準備は出来てます」

「………ふぅ」

 

 

 源重郎は掛けていた老眼鏡を外して瞼を揉みながら一息吐く。既に情報は与えられていたが、詳しく聞く事で新ためて智明達が強力無比な存在である事を実感した。資材や安全さえ確保出来れば彼等だけで強力な軍事組織を立ち上げる事が出来るだろう。

 

 

「是だけのモノを見せたんだ。お前ぇ等の求める条件を言ってみろ」

「僕達の側の提案は至って簡潔です。此方の戦力や技術を提供する代わりに、僕達艦隊全員の安全を保障し、必要な資源を対価として支払って貰いたい。突き詰めればたったこれだけです」

「春夏秋冬艦隊が強化された現状なら、国間での輸送任務も可能だから輸送任務も熟せるぜ?」

「……今直ぐ喜んで許可したい。だがな…」

「僕達が余りに強過ぎる。ですか?」

「解かっているか」

 

 

 源重郎の表情から簡単に協定を結べない理由を当てた智明。自分が逆の立場なら相手に悪意が無いとしても即決出来ないであろう。

 

 

「…ではどういった条件なら認められますか?」

「お前ぇ達艦隊に監視役を付ける。だがそこまで身構える必要は無い、お前ぇ等に敵意なんて無いのは解かっている。あくまでも民衆に納得して貰う為に付けるだけで行動に制限を付けるつもりは全く無い」

「成程、新生海人に為っても見た目は深海棲艦と変わりません、そんな相手を突然味方だと言っても信じられませんね。それでは、監視が付くという条件で宜しいですか?」

「ああ。後は国会の連中と打ち合わせる」

 

 

 源重郎の言った条件に納得した智明達。

 ひとまず水野・函南連合艦隊と日本海軍の初会談はこれにて締めとなった。

 外ではブティクや電達が歓迎パーティを開いているから会場へ向かおうとした所、重成から声を掛けられた。

 

 

「君達に言っておくことが有ります」

「「何でしょう(だ)?」」

「日本国、他の国にもいますが強硬派の存在には注意してください」

「呼び名的に、短期決戦を望んでいる派閥か?」

「はい、艦娘を強行進撃させて轟沈覚悟で海域奪還を勧める派閥です。現在は我々が抑えていますが、政界や財界にはその派閥が多い上に、海軍職員や提督にも甘い汁を約束されて加わっている者がいます。貴方達を利用した工作を行う可能性も否めませんので、艦隊メンバーには喚起していてください」

「解かりました」

「やっぱ、国レベルになると一枚岩じゃ済まねぇな…」

「強硬派との繋がりが有る提督は解かっているんだが、以降の繋がりが中々掴めていなくてな。尻尾を掴むまで提督の方も首には出来ん。連中も狡猾だ、気ぃ付けろ」

 

 

 源重郎の忠告を聞きながら、智明達は岸壁へと向かった。




現状報告
・日本国海軍との交渉が成功した!


艦隊メンバー達の交流は次回に持越しになります。

感想コメント、意見・質問お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。