嗚呼、「黄泉の艦隊」が往く   作:影鴉

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正直、微妙な回になってしまった気がします。


 心配

海底基地 ガレージ

 

 

 夕張と『ブラス』こと戦艦ル級を仲間に加えてから1週間が過ぎた。

 資材置き場の状況から2、3隻増えたところで問題無いと高を括っていたが、それは間違いであった……というのも戦艦であるブラスが加入したことによって資源、特に弾薬の消費量が増大の一途を辿っていたのだ。

 ならば”出撃を控えさせたらどうだ?”とも考えたが、戦艦である事からのコンテナボックスを3つ運べる馬力は魅力であった。よって深海棲艦狩りの際、ブラスには極力戦闘行為を控えて貰う事にした。それでもギリギリで黒字になる位の効果しかなかったが……

 最も、資材の消費増大の原因はル級だけで無く、開発したミサイル系統の武装も含まれている。強力なハイテク兵器である分、資材の消費コストも馬鹿にならないのだ。これに関しては新たに加わった夕張の提案で廉価版を開発し、其れを基本的に使用する事に決定した。性能や火力が落ちてしまうが、仕方無いだろう。

 

 

「ミサイル兵器に拘らなくても良いんじゃない?」

 

 

 そう智明に言うのは武装データを編集していた夕張だ。

 

 

「私達の武装にはせいぜい直進式のロケットランチャーぐらいしか無かったんだから」

「それはそうなんだけどね……」

 

 

 夕張の言う事は最もなのだが、慎重派の智明としては出し惜しみをした結果、しっぺ返しを喰らってしまう事をとても畏れていた。

 今やっている戦いはゲームでは無く、現実。何時、どの様なミスで自身が轟沈するか分かったものでは無いのだ。今こそ与えられた知識や自身の力である竜王の性能、武装でなんとかなってはいるが、今後の更なる強敵に相手にした時に、戦いを知らなかった自分が生き残れる保証は何一つ無いのだ。そして、これは戦い慣れている夕張や電達でも同じであり、彼女達が戦いで無事でいられる保証も無い。

 

 

「でも出し惜しみして誰かが傷ついてしまう位なら、今必死に資材を集めた方が良いよ」

「気を背負いすぎじゃない? 戦いはそんなに甘く無いんだよ?」

「だとしても、だよ……」

 

 

 現在の自分の戦い方が性能やハイテク兵器でのごり押しに近い事を智明は理解している。だがその御陰で敵の攻撃範囲外から攻撃でき、こちらが大きな被害を受ける事無く勝利しているのだ。智明は武装性能・火力の低下による生存率の低下を嫌った。例え其れが僅かな低下だとしても。

 

 

「甘えとか我が儘だとか言われても、大事な仲間達が傷つくのは嫌だよ」

 

 

 そう言って智明は席から立ち上がり、部屋を出た。

 

 

「……甘いね」

 

 

 ふぅと溜息をしながら夕張は呟いた。艦娘という存在に造り替えられ、深海棲艦と終わりの見えない戦いを続けており、自身がオリジナルから何代目の夕張なのか、もう分からない。そんあ彼女にとって智明の言葉は甘い以外に無かった。

 

 

「でも………、智明みたいな人が必要なんだよね」

 

 

 回転椅子をクルリと回し、ガレージ内にあるパソコンのデータを纏める作業に戻った。

 

 

「その想い、何時までも持ち続けていてね…」

 

 

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南西諸島防衛線

 

 

 新たな海域に進軍した智明達は順調に歩を進めていた。途中、鋼材やボーキサイトの採掘場や弾薬工場を発見できた為、資材置き場が潤う事に智明は喜んだ。

 

 

「さてと、準備は良いかい?」

「はいなのです!」

「ヨヨッヨ!」

「ル、ル!」

「リリ、リ!」

「ホホ!」

 

 

 現在、智明達は敵前衛艦隊がいる場所へ向かっている。グランパスやフリッパーでの偵察で前衛艦隊以降、空母艦が艦隊に含まれている事が分かったからだ。

 これまでは敵の航空攻撃を警戒し、偵察艦隊のみを狩っていたが、いっそ敵空母を鹵獲してこちらの航空戦力を充実させようという考えに至り、主力メンバーで現在進行中である。

 尚、夕張はヨハムと偵察艦隊から鹵獲して仲間にした駆逐艦や軽巡洋艦を引き連れて狩りと資材集めをしている。

 

 

「最初、僕とブティクが魚雷で奇襲を掛けるから電達は軽空母ヌ級だけは可能な限り沈めないように生き残りを掃討して欲しい。但し、危険だと思ったら構わずに沈めるんだ。良いね?」

 

 

 智明の言葉に皆が頷く。

 

 

「良し、行くよ!」

 

 

 智明とブティクが潜航を開始する。

 智明の艦隊にとって初となる空母との戦闘が始まった。

 

 

:::::

 

 

「お帰り、上手くいったのかしら?」

 

 

 先程撃破した偵察艦隊の残骸を集めていた夕張達の元に智明達が返って来た。引っ張っているコンテナボックスと一緒に軽空母ヌ級が混じっている。

 

 

「2隻いたからね、まぁ鹵獲出来て良かったよ」

「もう1隻はブラスさんが砲撃で撃沈させちゃったのです」

「ル~」

 

 

 ブラスが申し訳なさそうな声を出す。智明達の奇襲は成功し、駆逐艦ロ級2隻は轟沈。軽空母ヌ級2隻と重巡洋艦リ級は沈みこそしなかったものの、中破や大破状態で混乱しており、そこへ電達が殴り込んできたのだ。敵ヌ級は慌てて艦載機を飛ばすが、慌てた故、統制のなっていない敵飛行隊は電達のファランクスによって撃墜出来た。その後、ヴァーチの砲撃で敵リ級を撃破出来た迄は良かったのだが、ブラスの放った砲弾がヌ級1隻の船体中央を撃ち抜き、そのまま轟沈させてしまったのだ。

 

 

「まぁ、1隻鹵獲するのが目的だったから気にしてないけどね」

「ル? ル~♪」

 

 

 そう言って智明がブラスの頭を撫でると彼女は嬉しそうに声を出した。

 

 

「こっちも成果があったよ、ほら」

「こんにちは、白露型駆逐艦『夕立』よ。よろしくね!」

 

 

 夕張の傍から翠眼でプラチナロングの少女が現れる。

 

 

「丁度、夕立を連行している艦隊に出くわしたから助けちゃった」

「御陰で助かったっぽい。有難う♪」

「……夕張、彼女は深海棲艦を引き連れているのに対して何も言わなかったの?」

「捕まっていたから私が説明する迄攻撃出来なかったってのもあるけど、やっぱりヨハム達が夕立を捕らえていた艦隊を攻撃して沈めたのが大きかったみたい」

「成る程……」

「あと、その戦闘でヨハムが」

「!? やられたのかい?」

「違うよ、ほら…」

 

 

 夕立の視線の先には石になった様に動かなくなったヨハムの姿があった。

 

 

「ああ、進化の予兆か」

「進化?」

「夕立が知らないのは当然か、後で基地で説明するから。ところで、コンテナの中身はどうなっているかい?」

「私達は皆いっぱいになっているよ」

「そっか、こっちはまだ余裕があるからね、夕張は僕と代わって狩りを続けてくれるかな? 指揮は任せるよ」

「分かったわ、任せて」

「夕立はこのコンテナの牽引を御願いするよ」

「了解っぽい!」

 

 

 自分の艦隊の指揮を夕張に託し、智明は夕立と新入りである軽巡洋艦ヘ級『ビフト』、駆逐艦ロ級『ウィザード』、動かなくなったヨハムを連れて帰港した。

 

 

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海底基地 隔離ドック

 

 

「うわ~、秘密基地みたいで凄いっぽい!」

 

 

 智明達が帰還すると、夕立は目を輝かせていた。

 迷子にならない様に彼女を連れ、ヨハムと大破状態の軽空母ヌ級をプールに入れる。そしてコンテナの残骸を与えるとヨハムは進化し、元気になったヌ級は攻撃する事無く智明の元に近寄って来た。

 

 

「これから宜しく頼むよ、『ハク』」

「ヌ~ヌ♪」

「チチチ♪」

 

 

 仲間になった軽空母ヌ級に『ハク』と言う名前を与え、軽巡洋艦ヘ級だったヨハムは雷装巡洋艦チ級に進化した。外見はそう変わらず、ヘ級の外見をアップグレートした見た目であった。

 

 

「仲間になるなんて不思議っぽい」

「まぁね、僕も良く解ってないから尚更なんだけどね」

 

 

 夕立がハクの頭部を指でつつき、智明はヨハムを撫でていたが、ビフトとウィザードがやってきて4隻で遊びだしたので、智明は夕立を連れて隔離ドックを出た。

 夕立に施設内の案内を終える頃、夕張率いる資材収集艦隊が帰港してきた。ブティク達の修復分の残骸を分けてコンテナを資材精製機へ運び、本日の収支をチェックする。各自汗を流した後、皆で夕食を囲んだ。

 

その夜…

 

「智明さん」

「電ちゃんか…」

 

 

 智明の部屋に電が入って来た。その手にはマグカップが2つ握られている。

 

 

「お疲れ様なのです」

「有難う」

 

 

 マグカップの一つを渡され啜ると、カカオの香りとミルクの甘さが口に広がった。

 

 

「ココアか…」

「はい、食堂の妖精さんに頼んだら用意して貰ったのです」

「…美味しいよ」

 

 

 暫くココアの味を楽しみ、ふと、智明は電に問い掛けた。

 

 

「僕はどうしたら良いかな?」

「智明さん?」

「僕自身、戦う事なんて数ヶ月前は知らなかった。改造されて、艤装と、戦う知識を与えられて……与えられた艦の力と武装の御陰で生き残ってきた…」

「………」

「でも強力な武装を使い続けたら資源が枯渇してしまう。それじゃあ、生き残る事は出来ないのも解っている。でも、だから性能を落とした武装を使うようになって皆が危険に曝されるのは嫌なんだ…」

「……智明さんの気持ちは解るのです」

 

 

 智明の話を聞いた電は持っていたマグカップを机に置くと、智明に近寄り彼を抱きしめた。

 

 

「でも電達は強いのです、そう簡単には沈みません」

「電ちゃん…」

「電達を心配してくれるのはとても嬉しいのです。でも、電達をもっと信じて欲しいのです」

「信じる…?」

「武装が弱くなったくらいで電達は負けません。だから電達を信じて心配せずに戦って欲しいです」

「…それで、良いのかな?」

「それで良いのです」

 

 

 そう言って微笑む電、その姿に智明は胸に詰まっていたモノが軽くなった気がした。

 

 

「ルー、ルルー!!」

 

 

 廊下から大きな声が聞こえると、勢いよくドアが開かれブラスが入って来た。何か焦っている様に見える。

 

 

「ブラス?」

「どうしたのですか?」

「ル、ルルルー!!」

 

 

 どうやら匿って欲しい様だ。

 

 

「一体どうし……」

「見~付けた~♪」

「ル!? ルー!!」

 

 

 さながらホラー映画の様に扉がギギギと開き、夕張が笑みを浮べながら入って来た。

 ブラスは夕張の姿を見ると悲鳴を上げて智明の背中に隠れる。

 

 

「……夕張、一体何を…?」

「何って……実験?」

「実験? って……何の実験をする気だい?」

「う~ん、”高機動克つ隠密性を高めた新戦艦への改良実験”」

「………随分と具体的なのです…」

「…完成したら大分強い艦になると思うけど……出来るの?」

「色々試してみるつもりよ、さぁ! 行くわよ、ブラス!!」

「ルルッ!? ルルルルー!!」

 

 

 「そんな!? 嫌です!!」と叫んで抵抗するブラスであったが、戦艦相手に軽巡洋艦がどこからそんな力が出ているのか、夕張はグイグイと引っ張っていき部屋から出ていった。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

 暫くの間、智明の部屋に静寂が訪れた。

 

 

「ブラスさんは大丈夫でしょうか?」

「夕張ちゃんは限度を分かっている娘だよ………そう信じたいな…」

「……そうですね」

 

 

 共に溜息を吐き、電は机に置いたマグカップを取った。

 

 

「そろそろ電も部屋に戻るのです」

「分かった、このカップは自分で片付けるから。おやすみ」

「おやすみなさいです」

 

 

 電は部屋から出ていった。

 智明は残ったココアを飲み干すと、空になったカップを室内にある洗面台で洗い、席に戻った。

 

 

「空母以外の戦闘機対策を考えないとな……」

 

 

 その夜、ブラスの悲鳴が基地内に響き渡ったとかなんとか……




現状報告
・軽巡洋艦ヘ級『ビフト』を仲間にした!
・駆逐艦ロ級『ウィザード』を仲間にした!
・駆逐艦 白露型 4番艦『夕立』を仲間にした!
・ヨハムは雷装巡洋艦チ級に進化した!
・軽空母ヌ級『ハク』を仲間にした!
・ブラスはナニカサレタヨウダ……


戦艦ル級の名前を応募してくださった荒覇吐さん、有難う御座いました!!


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