アタランテとヒッポメネスがスイーツ脳だったら 作:グラドラル
二人が抱き合ってからそれほど時間が過ぎたわけではない。それでも二人には長い間そうしていたようにも感じられた。
「アタランテ、そろそろ離れた方が……」
「何故だ、ヒッポメネス。何か不都合でもあるのか?」
「僕さっきだいぶ汗をかいてきたから……」
「私は別に気にならないがな」
だがあなたが気にするならと、アタランテは名残惜しくも離れていく。それでも抱き合うのをやめただけで、二人の距離は僅かしかない。
今私はこの人の腕に抱かれていたのか。そう思うと鼓動がちっとも収まらない。
それは彼の方も同じだった。
彼女をこの腕に抱いていたという事実に、ここまで心が揺れ動くとは。
しばらく見つめあう二人だが、アタランテは不意にあることを思いつく。
若干欲に塗れた考えだが、アタランテは躊躇しない。
「汗が気になるならいい場所があるぞ」
「いい場所?」
それを提案するアタランテの眼は、獲物を見つけた獣のようだった。
「水浴びに最適な場所がある。私が案内するから、そこで汗を流すといいだろう」
「ここだ。水に関してはあなたの方が詳しいだろうが、どうだろうか?」
「なかなかの場所だよ。僕の眼から見てもここはとてもいいと思う」
案内された場所には流れが緩やかな川があった。
透き通るほどに澄んだ水は、ヒッポメネスが関心出来る程の物だった。
水に関しては目利きが出来る彼の眼から見ても、見事な場所だった。
「それは良かった。ここはあなた以外には教えていない。気に入っている場所だから、あまり人を立ち入りさせたくなかったんだ。さあ、存分に使ってくれ」
「ありがとうアタランテ。ありがたく使わせてもらうよ」
そう言ってヒッポメネスは水場に近づく。
だがその歩みは途中で止まった。
「どうしたヒッポメネス。私はここで見ているから水浴びをすると良い」
アタランテがいつまでもこちらを見つめてくるからだ。
「あの、アタランテ……、そう見続けられると服が……」
「大丈夫だ何も心配はいらないここには私たちしかいないさあさあさあ」
「…………」
何故だろう。満面の笑みを浮かべるアタランテが少し怖い。
怖いが別に害意を感じるわけではない。若干身の危険を感じるが、意を決して服を脱いでいく。
流石に裸体になるわけにはいかないので、肌を見せているのは腰から上だけだ。
直接触れているものなら殆どの水を操れるヒッポメネスなら、身に着けている衣服を瞬時に乾かすことも出来る。アタランテの方を見ないようにして体を水につける。
改めてここの水質が自分に合うと体感する。己の起源たる海に比べれば劣るものの、体に神気が満ちる。ヒッポメネスの本領は海に近い場所ほど発揮できるのだ。
それをアタランテは恍惚とした表情で見ていた。
ヒッポメネスのそれは、アタランテにとってこれ以上ない程、理想的な物であった。
全体的に細身であるが、体つきは力強さを感じさせるものだった。
過剰な力より速さを優先させた体。戦士というよりむしろ獣の方が近いかもしれない。
それがアタランテにとって理想の物。それが水に濡れて神性を発揮する。
眼を逸らせない。息が荒くなる。口元から零れたのは、果たして汗だったのだろうか。
もう駄目だ我慢できない。アタランテは獣の様にヒッポメネスに飛び掛かっていった。
ヒッポメネスにとってそれは突然だった。
不意に気配を感じて振り向けば、アタランテが自分に手を伸ばしこちらへ飛んできた。
そのままの勢いで二人纏めて川に飲まれる。
水中でアタランテはヒッポメネスに口づける。
水に包まれて行うそれは、二人にとって初めてのもので、生涯忘れることのない出来事であった。
アタランテ「まだ結婚してないから自重した」
ギリシャだったらR指定になってたから自重してたね!