あの水平線の向こうへ   作:神崎 一

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最初のプロローグです

物語が始まる前の、雰囲気的なものをつかんでもらえたらなと思います

・2022/05/21:誤字修正


0章 プロローグ
プロローグ


-- 大本営特別通信 別紙号 --

 

 

表題:20xx/xx/xx 「艦娘」と「提督の力」について

 

 

この記事を読んでいる諸君らが見聞きしている通り、我々人類は突如として深海から現れた敵との争いが続いている。

 

 

 

「敵」に関する情報は未だ不明点が多く、解明が困難な状態が続いている。

深海から生まれた理由も、人類に敵対する理由も、全てが謎に包まれていると言っても過言ではないだろう。

 

つまり、未だ「敵」は正体不明という事だ。

我々は、この正体不明の敵を、未確認深海棲生命艦(みかくにんしんかいせいせいめいかん)(通称「深海棲艦(しんかいせいかん)」)と独自に呼称している。

 

以後、敵を深海棲艦(しんかいせいかん)と呼ばせて頂く。

 

 

 

深海棲艦の全貌は未だ不明な所が多いが、未知なる生命体と言っても過言では無いだろう。そんな相手ではあるが、一部判明している事もある。

 

対抗出来うる唯一の手段として、最も効果的と結論付けされている方法が発見された。

それは──妖精(フェアリー)──と呼ばれる存在が所持している、その膨大で強力なエネルギーを用いて、攻撃を行うというものだ。

 

実に抽象的な言い回しだが許してほしい。私にも詳しい事はわからないのだ。

 

 

 

通常の兵器では、深海棲艦に対して無力だ。

いや、正確には少々の打撃を与える事は可能だが、原因不明の何かしらの作用が働く為なのか、その威力が大幅に減少してしまう。

 

だが、妖精(フェアリー)が保有しているエネルギーを用いれば、深海棲艦に効果的な打撃を与える事が出来る。

妖精(フェアリー)と深海棲艦のエネルギーは、性質が極めて近いという調査結果が得られた事による、戦況を覆すほどの画期的な発見だった。

しかし、なぜ有効なのか?という疑問については、まだ原理等を含めて解明されていない。引き続き研究が必要だろう。

 

 

 

この妖精(フェアリー)という存在は、我々人類の目には見えず、声も聞こえず、触れる事も出来ないのだ。ごく一部の「認められた存在」を除いて。

残念ながら私は認められなかったようで、妖精(フェアリー)に対して見聞きする事は出来ない。

 

だからこの話については、最初は疑念しか持てなかった。それもそうだ、目に見えず聞こえないものが存在すると言われても、幻を見ているのでは?と普通は思ってしまうだろう。

しかし、情報が集まり証拠が固まりそれが事実とわかると、不思議とこの話を受け入れてしまうものだ。

 

妖精(フェアリー)という名称は、妖精等曰く種族の正式名称なのだそうだ。

また、全員が若く美しい小さな女性の姿をしているという。「認められた存在」だけが、妖精と話す事も触れる事も出来るという。羨ましい限りだ。そう思わんか?

 

 

なぜ、私がその話を知っているのかというと、彼女等からその存在を直接ヒアリングを行う事が出来たからだ。

 

彼女等というのは、艦船型擬人艦艇少女(かんせんがたぎじんかんていしょうじょ)[又は艦船型擬人生命艦艇(かんせんがたぎじんせいめいかんてい)](通称「艦娘(かんむす)」)と呼称している少女の姿をした兵器群の事だ。

ちなみに、妖精(フェアリー)のエネルギーは、艦娘にとって生命活動を維持する為に、必要不可欠な燃料なのだそうだ。人類で言う所の、点滴に近いものだと聞いている。

 

この艦娘という存在だが、可愛らしく美しい少女の姿をしており、一見すると無害のようにも見える。だが、その見た目に騙されてはいけない。

その可憐な姿から想像出来ないほど腕力を持ち、肌は鋼鉄のように硬く、装備している武器等は強力な殺傷能力を保持している。

 

驚くべき事に「彼の大戦」で沈んだ名のある艦船の現身なのだという。そして、人類と同じように思考し、己の意思を持って行動に移す事が出来るのだ。

 

 

 

この生きた兵器は、幸いな事に人類に対して協力的な姿勢を見せている。理由は幾つか存在するが、その最たるものが「提督」と呼ばれる存在だろう。

字こそ同一だが、我々が思い描いている提督とは異なる。

 

海軍艦隊の総司令官の呼称……これが我々の知っている提督の意味だが、艦娘にとっての「提督」は、それとは異なる存在だという。

私も艦娘に直接聞いたのだが、それは「家族」であり「父親」であり「思い人」であり、妖精(フェアリー)から「認められた存在」でなければならない。

 

そして、妖精(フェアリー)のエネルギーに触れる事が出来る特別な能力を持つ者でもある。

人類の中でも、艦娘に近しい存在と言えるだろう。艦娘から慕われるという事にも頷ける。

 

この「提督」が人類側の存在だからこそ、艦娘は我々に協力的であるのだ。

 

 

 

妖精のエネルギーに触れる事が出来る特別な能力を持つ者……先に伝えた通り、これが「認められた存在」である「提督」の資格を持つ者の条件なのだと認識している。

我々は、この能力を「UnLimited Fleet Fairy(通称「UFF」又は「提督の力」)」と呼称している。

 

艦娘が姿を現した当初は、「提督の力」を持つ者が誰なのか、誰も判別する事が出来なかった。

この能力については未知な点が多く、現在も優先順位が高い研究項目の一つに挙げられているが、能力の解析が進んだ事で「UFF判定装置」の開発に成功したのだ。

これにより「提督」の人材不足解消に繋がり、ここ数年で深海棲艦とも互角に渡り合う事が出来るよう、海軍の体制を整える事が出来るようになった。

 

 

諸君らには、この「提督の力」を体現し、我々人類を護る守護神となって頂きたい。

 

今後の活躍に期待する。

 

 

── 内閣副総理大臣/大本営軍令部総長  麻崎 次郎(JIRO ASAZAKI) ──

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