前に書いた4話分までストーリー的には同じ流れな感じですが、全部消して表現する方法・文を変えてみています。
前より読みやすくなっていれば良いと思ってくれると嬉しいです。
主人公の少年の、簡単な生い立ちみたいなのを書いています。
一応、キャラはぶっ飛んだ設定をしていますので、その辺りも少しだけ書いています。
主人公お約束の追放物です。
・2022/05/21:三点リーダー表示修正
・2022/06/05:誤字脱字修正
・2022/06/11:誤字脱字修正、表現に違和感があった個所を修正
001話 序章[少年編]
彼の父親から、荒げた声を通じて声をかけられる。
「おい、おまえ!」
お世辞にも、仲睦まじい家族水入らずとは言えない、嫌悪感を隠さない態度で接しているかのようだ。いや、これは疑問にもならない、まさに嫌悪感を隠さない態度で接していた。
そんな声に苛立ちながらも諦めたような態度で、彼は声の主に返事をする。
「……なんだよ親父」
お互いに警戒するような態度が続き、親子の会話とは思えない緊張感が空気中に満たされる。
暫く沈黙は続いたが、続きを口にしたのは父親の方だ。一方的で乱暴な会話が続いていく。
「お前に話がある、すぐにリビングに来い。」
「……」
「おい!返事はないのか!」
「……わかった」
「お前という奴は、本当にふざけたヤツだな。だからお前というヤツは──ブツブツ」
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これが、彼のいつもの日常。
世間一般の日常とは違っているかもしれないが、紛れもなく彼のいつもの日常、いつもの牢獄。
優秀な家族に囲まれながら、妄想の中でしか生きられないと揶揄される、彼を認めず否定する牢獄。
それが彼の日常、彼の鎖が無い牢獄だ。
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彼とは
父親は政治家、母親は有名ピアニスト、弟は地元トップクラスの高校に通学中という上流家庭である。彼の両親と双子の弟にとっては、裕福で何も問題ない幸せな家庭なのだろう。
ただ一つ、彼が存在するという不幸を除けば。
彼が鎖が無い牢獄に閉じ込められたのは、幼い時に
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幼い時というのは、自由に想像し創造する事が許されていた時代だ。空想科学や未知なる生物に、思いを寄せる事が出来る柔軟な思考が持てた頃だろう。
例えば、構えられない程の大きさを誇る大砲を、その手に掲げて大火力を得て敵を粉砕する。
例えば、手のひらに乗りそうなくらいの空飛ぶ
言い始めるときりがないが、自由に想像し創造するとは、そう言うものだ。
彼もそんな少年時代送っていた……はずだった。
家の近くにある公園に一人で遊びに出かけたある日の事、彼は見た事も無い不思議な小さな生き物を、魅了されるくらいの存在をその瞳に捕らえたのだ。
これが彼の生き方を左右するほどの、運命的な出会いだとも知らずに。
「ん?なんだこの小さいヤツは。」
不思議な生き物に近づく彼、そしてその姿に驚く小さな生き物が居た。
「え?君はあたいが見えるのかい!?」
この驚きを隠せない小さな生き物こそ、後の相方と言える存在になる
普通の人には見えない為、
そんな
「それで、ちっちゃいおまえは誰だ?」
「むー!ちっちゃいって言うな!あたいは
「へー、君は
「そうだぞー!すごいんだぞー!」
「俺の名前は
「うん!がれいか!わかったぞ!」
「それで、お前は何て言う名前なんだ?」
「だから妖精って言ってるだろー!」
「妖精っていうのは名前じゃないだろ。」
「だから、あたいは妖精だぞー?」
「話が通じないなぁ……うーん……」
それもそのはず、
困った彼だが、一行に名前を教えてくれない
「名無し……、ななし……、ナナシ……、ナナ……?」
「ん?どうしたの?」
「よし!お前の名前を決めたぞ!これからは君の事を『ナナ』って呼ぶぞ、いいよな?」
「ふーん、それあたいの事?まーいっか!そう呼んでもいいよ!」
普段呼ばれる事の無い名前を貰って、まんざらでも無さそうな
「名前を貰ったお礼に、がれいに
そう言って
そして彼は
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彼は諦めずにその見えない妖精が存在する事を訴え続けた。中学・高校と成長しても、その姿勢を変える事は無かった。なぜなら、彼にとって妖精は本当に存在する小さなパートナーであり、かけがえのない存在なのだから。
しかし、周りの人からすると目に見えない何かを指さす彼の姿は、幻覚と話をする妄想に取りつかれた変人にしか見えなかった。それもそうだろう、見えず話せない存在を、どうやって信じろと言うのだろうか。
そうやって彼の周りから人は去っていく。友達も。そして家族も。
幼い頃の物思いにふけっていると、ハッとしながら現実で目を覚す。そうだ、リビングに向かうように父親から言われたな、と。
呼ばれた彼は、家族が揃っているリビングに向かうと、そこには呼んだ父親とそして睨みつける母親と弟が待ち構えていた。彼を威嚇するように……いや、文字通り威嚇をしている。
父親の名は
妄言を繰り返す彼の事は、政治家としての経歴に傷を付けるものであるが、実の息子という縛りがありその対応に頭を悩ませてきた。
母親の名は
幻覚を見続ける彼の事は、自分の地位を脅かす邪魔者以外の何物でもない為、心底嫌っていて恥ずかしい存在だと思っている。
弟の名は
出来損ないの彼の事は、双子の兄弟という事が恥ずかしい事であり、その汚点はとても耐えられるものでは無かった。
3人が彼に視線を向ける。その目線は、それぞれが抱える敵意や悪意、そして軽蔑が明らかに含まれていて、お世辞にも和やかな雰囲気では無いようだ。
開口一番に、父親が3人を代表してその意思を口にし、その異様な雰囲気の正体を明らかにする。
「お前は、私たちに隠れて国立大学を受験したらしいな?」
「あぁ、それがどうした。」
「国立大学に通う資格があると思うのか?」
「……?どういうことだ?」
彼は今の生活から逃れる為、高校卒業と同時に家を出て一人で暮らす事を決めていた。その事実を隠すように家族には隠れて受験を受けていたのだ。
だが、そんな些細な願いすら、家族は踏みにじろうとしていた。
「受験の結果が不合格になるように、私が丁重に手配しておいた。嬉しいだろう?お前は無駄な勉強をする必要が無くなったんだ。」
「なっ!?」
「その代わりに、北海道の
「一体なんだっていうんだ!どういう事なんだ!?」
国立大学の試験を妨害したのは、父親の権力を使っての嫌がらせというのは簡単に想像出来る。しかし「働いて金を稼げ」では無く「別の学校に行け」と父親は言う。このような家庭の縺れたトラブルの場合、「1円でも稼いで春日家に貢げ」のように圧力を掛けてくるのが一般的だが、今回は違うようだ。彼が混乱するのも無理は無い。
だが、父親が口にしたその理由は、そんな生易しいものでは無く、想像を遥かに超える残酷なものだった。
「お前が通っている高校で、身体検査が行われただろう?」
「あぁ、この前検査したが一体何だっていうんだ?」
「その時に、お前の体から「提督の力」の反応が出たと連絡が入ったそうだ。」
全国の高校で義務化されている身体検査がある。それは「UFF判定装置」を使って、「提督の力」を持つ者を政府が把握する趣旨のものだ。素質のある者をスカウトし、提督として英才教育を受けさせる事で、この国に貢献してもらうのだ。
ただ、この父親は「提督の力」を信じていなかった。これは表向きの話で、本当は国の盾として生贄を選別しているまやかしの話であると、父親はそのように結論付けている。それを裏付けるように、提督として育った者の死亡率は、ここ近年急増しているのだ。
国の盾として働かされる生贄は、社会に不適合な者が選ばれているのだろう、例えば──妖精が見え話せるという精神異常者──とかなら、人の盾として最適だろうと。
「提督養成学校の職員が、ぜひお前に入学して欲しいと言ってきてな。手を焼いていた精神異常者を引き取ってくれるのだ、喜んで承諾させてもらったぞ。」
「なんでそんな勝手な事を……!」
「提督の力」が見出された者に対しては、提督養成学校への進学の権利が与えられる。それは、本人の意思に委ねられるものなのだ。本来は志願制であり、決して強制されるものではない。だが、表立って政府側の方から声を掛けられたこの状況を、春日家の世間体を保つ為に有効活用しないわけが無かった。父親は、彼を家から追い出す為の、まさしく大義名分を得たのだ。
そして彼の父親は、これ見よがしと人の盾になれと言ったのだ。お前にそれ以外に生きる価値は無い、と。
「これは決定事項だ。お前に拒否権は無い。」
「俺は何も聞いてないぞ!」
「あぁ、何も言っていないからな。それに、特別に試験は免除してくれるそうだぞ?もう受け入れ準備は進めてもらっている。勉強せずに試験をせずに入学だ、どうだ嬉しいだろう?」
「何が『嬉しいだろう?』だ!何を考えてるんだ親父!」
まるで、人権など無いかのごとく扱う家族に、彼は苛立ちを隠せない。しかし、そこに追い打ちをかけるように、父親から決別の宣告を受ける事になる。
「お前に父親だと言われる謂れは無い!今日でお前を勘当する。お前はもう我が春日家の人間ではない」
「なっ!?」
「お前の失態で、我が家の名誉が傷つけられても困るしな。」
「……」
「せめてお国の為に、優秀な人材の盾になって殉職してくれればそれでいい。それなら頭の悪いお前でも出来るだろう?」
「それが親の言う事かよ!」
「幻覚を見るような精神疾患を持った息子なぞ、我が家の恥だ!お前は、我が春日家の恥部だ!!その存在自体が不要なんだ!わからないのか!」
「……っ!」
彼の中で絶句する驚きの感情と共に、やはりと諦めていた感情が混ざり合う。ひどい扱いは受けていたものの、家族は家族なのだ。細くとも繋がりは残っていると思っていた。たった今、その希望が断たれたのだ。
母親と弟から、さらなる追い打ちをかけるように敵意をもって口を開く。
「てめぇの妄想には、もう付き合ってられねぇんだよ、この精神異常者が!」
「あなたを生んだ事を、これほど後悔した事は無いの。目の前から消えてちょうだい!」
そして、父親の最後の一言。
「せめてもの慈悲として、仕度をする時間だけは与えてやる。今日中に出ていけ!!」
彼は不要だと言われた。家族から不要な存在だからと、その居場所から追い出されたのだ。それでも、せめて最後は名前で呼んでほしかった……と。何時からだろうか、家族が彼の名前を口にしなくなったのは…