前に書いた4話分までストーリー的には同じ流れな感じですが、全部消して表現する方法・文を変えてみています。
前より読みやすくなっていれば良いと思ってくれると嬉しいです。
古い1話を今回2つに分けてみました。
追放シーン後半から、今作のヒロイン的役割の艦娘登場までのお話です。
・2022/06/05:誤字修正
・2022/06/11:誤字脱字修正、表現に違和感があった個所を修正
「せめてもの慈悲として、仕度をする時間だけは与えてやる。今日中に出ていけ!!」
恐らく家族として、そして父親としての最後の一言だったのだろう。3人ともに彼の視界から消えようと、そそくさとリビングを後にする。その姿は、まるで目障りの存在が無くなって嬉しそうに、ようやく家族団らんで過ごせると楽しそうに、本当に喜んでいるようだった。
家族の姿は、もう2度と目にする事は無いのかもしれない。彼はそう覚悟した後、誰とも会わずに一人で部屋に足を運んだ。いや、一人と妖精と言えば良いだろうか。
部屋に戻った彼は、急ぎ支度に取り掛かる為に大きなカバンを取り出そうと部屋を見渡す。すると、いくつかの書類が散乱しているのが目に入った。クリアファイルにまとめられたであろうものが、乱暴に置かれていた為なのだと見て取れる。
そして彼は書類を拾い上げると、それらの内容が目に入り驚きを露にする。
「これは……!?」
自分が知らない間に、本当に事が進んでいるのだったと、改めて思い知らされる。
そこにあった書類は……「国立大学試験不合格通知書」「国立高校早期卒業証書」。
大学試験不合格通知は、おそらく彼の父親が手回しをして正式に不合格を伝えたものだろう。早期卒業証書は、本来就職先の都合等で早期に学校を卒業させる為の特別制度だが、父親が一刻も早く提督養成学校に向かわせたい為に得たものだろう。
次に提督養成学校に関するものが三枚と交通チケットが数枚、「
試験合格通知書だが、彼は試験など受けていない。試験免除と言っていたが、おそらく父親が裏で手を回していたのは確実。政府公認の入学証書がある為、拒否すれば政府の意向に反する事になる。ご丁寧に学寮の手続きも、本人の同意無しで全て終えていた。室蘭行きの切符もある。おそらくこれで学寮に行けと言っているのだろう。
そして最後の一枚「戸籍謄本」。
彼の
これもまた、彼の父親が手回しをしたもの。彼はこんな手続きは行っていないし、する気も無かったわけだが。
父親は政治家の権力を存分に発揮させ、春日家の世間体を保った策略であるのは明白。
春日家から伝えられる美しき家族愛のストーリー──提督の力を持つ事がわかり、提督養成学校に進む事を決めた春日家の長男。その道に進むために戸籍を外すという、苦渋の決断をした立派な息子。そして、それを見守る家族達──という、春日家が傷を負わすに彼を追放させる構図がそこにあった。
単に父親が感情的に追い出せば、その理由をマスコミの追及が春日家に襲い掛かる。だが、これほど都合が良い大義名分であれば、誰も春日家に攻め入る事は無い。
「親父は、本気で追い出したかったんだな……」
これは世間体と言う味方を付けた、まさしく追放劇そのもの。確実にこの家から追い出してやると、その現実からはもう逃げられないぞと、これらの書類はソレを言外に伝える為に置かれたものだ。
そう落ち込む彼だが、状況は一刻を争うほどに、感傷に浸っている時間も与えてはくれない。予約された交通チケットの時間が迫っていたのだ。今この場で交通手段を失えば、雨風を凌ぐ宿に向かう事すら叶わなくなる。
衣類などの最低限必要なものを、素早く準備していく。最低限と言っても、元々弟に贔屓してきた家族なのだ。彼に買い与えられた洋服もそれほど多いわけでは無く、整理する量はこの衣類も含めてそれほど多くは無い。
無言で仕度を整えていると、いつの間にかナナを含めた妖精
「がれいごめんね……あたいのせいで……」
「……ナナのせいじゃないさ」
確かに彼が妖精と出会う事が無かったら、家族からこのような仕打ちを受ける事も、住処から追放される未来は無かっただろう。だが、たらればを語っても意味は無い。
「あたいは、がれいの事大好きだよ。絶対離れないからね!」
「ありがとうナナ」
彼が妖精
そして、
そして、彼は住み慣れたとは言えない、苦い思い出が詰まっている、住処と呼ばれた鎖が無い牢獄だった場所から立ち去る時がきた。
「最後の見送りも無しか……じゃあな、もう二度と戻って来ねぇよ。」
勘当され牢獄を追い出された彼は、
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時はしばらく進み、
「やっとここまで来たか……、
彼が
「がれい!あたいは大丈夫だよ!」
この元気いっぱい!がトレードマークのような
彼とナナとは強い絆で結ばれていて、お互いに友達以上の感情があるのを認めている間柄でもある。後ろに続く
「がれいちゃ~ん、わたくしも大丈夫よぉ?」
このおっとりした話し方の
リペアは、ナナの部下的という位置付けの存在で、修理女神という存在だけあって治療が得意なのだそうだ。
「殿下、私も問題ありません!」
もう一人しっかり者な雰囲気の
フィックスも、ナナの部下的という位置付けの存在というのもリペアと同じなのだが、
・
・
・
先ほど
なぜこのような場所に来ているのか?その答えは、自分の部屋に投げ捨てられるように置いてあった「
遠目に見える大きな施設、むつ市での彼らの目的地である「
「さぁーて、これからどうするかだけど……あまり時間が無いから、先に湾に向かって宿の手配をしてもらおう。楽しみだったと思うけど、今回は観光は後回しかな。次にチャンスがあったら、皆で遊びに行こうな。」
楽しみは後にしようと、申し訳なさそうに
「がれいに付いていく以外に、何もする事ないよ?」
「そうですわぁ、がれいちゃんは、わたくし達を置いていかないわよね?」
「私には、殿下をお守りするという使命がありますので!」
──それに対して、大丈夫だと笑顔で彼に答える。何があっても彼に付いていくのだという、
彼らは
「なぁ、ナナどうしたか?そわそわしてるみたいだけど、何かあったのか?」
「うーんとね、この辺って妖精の気配を感じるんだよね。ほら、がれいの家の近くって、妖精の気配感じなかったからねー」
彼らが今居る辺りは、
「妖精の気配はあるんだけどぉ、がれいちゃんが居るから緊張して隠れてるんじゃなぁい?」
「殿下は大変魅力的ですからな、他の妖精達も緊張してしまうのでしょう」
そう、強力な提督の力を宿した提督候補生に、女神クラスの妖精が3人揃っているのだ。並の妖精なら、萎縮もしてしまう事だろう。
特に彼は自覚が無い。それもそうだ、比較対象が居なかったのだ。自分以外に"妖精を見て話せる"者と……いや、"妖精を理解出来ている"者と、顔を合わせた事すら無いのだから。
「ねーがれいあっち見てよ、なんか公園があるよ?」
「ここは『水源池公園』だな、むつ市の観光は出来なかったけど、公園に寄って休憩するか?」
「嬉しいね!行こうよ!妖精の気配があるから、誰か居るかもしれないよ?」
そんな彼も、
「よし、その妖精に会いに行こうか」
・
・
・
── 水源池公園 ──
ここは重力アーチ式
また、この公園には「
「へー、人が少なくて静かなんだな」
「そうだねー。こっちの方があたいは好きだなー」
「ナナに出会ったのも、たしか公園だったよな」
「うん!こういう自然は大事だからねー。力がみなぎってくるよ!」
小さいながらも、緑に囲まれた公園なのだ。堰堤から聞こえてくる水の音も、より自然を感じさせるアクセントになっている。
「それは良かった。じゃあ、もう少し公園を回ってみようか」
「うん!」
そのまま公園の中央に向かって歩いていると、小さな池が見えてきた。その池は四角い形のものが2つあり、それらの池を繋ぐように細い水路のようなもので繋がっている。細い水路の上には、数歩で渡れる程度の小さな橋が架かっていて、池に囲まれた島を渡れるようだ。
「がれいちゃん、妖精が居たわよ~」
「殿下、妖精だけじゃなく人も居られますな」
「ん?妖精だけじゃなくて……人も?」
その小さな橋の上に、一人少女が佇んでいた。赤い着物を着ており、着物と同様に紅く煌めいた長い髪が、その少女をより引き立たせているようでもある。小説で描かれるファンタジー世界で美しい種族が居るという話が良くあるが、まさしくソレが目の前に舞い降りたような印象を受ける程の美少女。
赤い着物の少女があまりに凛として美しく、彼も驚きを隠せない。
「……」
「こらっ!がれい!何見惚れてるのよー!あたいというものがありながら!」
「……っ!ごめんごめん」
一人自然を堪能していたようだが、こちらの慌ただしい様子を感じ取ったのか、赤い着物の少女がこちらに気付いた。さすがに女神クラス3人を連れている人物となると、どのような人間かは限られてくるだろう。それを察したのか、少女の方から声を掛けてきたのである。
「こんにちは。あら、そちらは司令官……にしては若いわね。もしかして候補生の人?」
「なっ!?」
少女の声を聞いた彼は、見惚れていた自分に鞭を打ち、警戒心を表に出す。いきなり政府ご用達の内容である"司令官"や"候補生"などの専門言葉が、少女の口から出てきたのだ。一体何処の誰で何者なのだ?と怪しむのも無理は無いだろう。
「もしそうだとしたら、あなたは関係者か何かなのでしょうか?」
「あぁ、ごめんなさい!探るとかそういうのじゃないから!妖精を連れてたから、提督候補生の人かなと思ったの。大丈夫よ、私も妖精が見えるから安心して」
「え?妖精が見えるんですか!?」
「えぇ、ちなみに妖精と話も出来るわよ。ほらご挨拶をしてみて」
だが、その警戒心も取り越し苦労で済む事となったが、彼は彼で驚きを隠せずにいた。それもそうだ、今まで全身全霊で主張してきた事を、今までその全てを否定された事を、偶然出会ったばかりの少女が全力で肯定したのだ。それも別の妖精を連れ添って、だ。
「うぅ……こんにちは……」
「あー!やっぱり妖精が居たんだ!こんにちは!」
着物の少女の肩に、妖精が座っていて姿を見せていた。その妖精は"装備妖精"と呼ばれており、多くの種別がある平均的な力を持つ妖精だ。ポニーテールがアクセントとなっている、かわいらしい姿をしている。その様子から、どうやら恥ずかしがりやの妖精のようだ。
交流を深める為、ナナ達に腕を引かれて連れて行かれてしまったようだ。同じ妖精同士だ、話も弾んでいるのだろう。
そして妖精の次は自分が交流を持つ番だと、彼も少女に話しかける事にした。提督候補生という用語を知っている人物だ、明日以降も関係施設等で見かけたりする可能性もある。ここで人間関係を広げておくのは、今後の候補生生活において、良い方向に進む切っ掛けになるかもしれない。
「俺は
「私は候補生じゃないわよ。私はね……」
少女は勘違いを正す為、自分の身だしなみを整えなおして、そして彼に向って伝える。
「私は『
そう、少女は艦娘であり、おそらくは彼の護衛役になるであろう事を。