月の少年の儚世に咲く薔薇の名は   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
前回の続きになります。

それではどうぞ。


第1話 戸惑う子猫

後日。羽丘女子学園の廊下にて。

 

「えーと、この時間帯なら演劇部の部室に行けば瀬田先輩に会えるかな?」

 

昨日の演劇部の書類について薫を捜しに来たつぐみ。

 

「ああ、儚い……儚い……」

「あ、瀬田先輩だ! 瀬田せんぱーい!」

 

そして件の薫を見つけたつぐみは声をかける。

 

「儚い……はかな……おや、つぐみちゃんじゃないか。一体どうしたんだい? もしかして、私に会いに来てくれたのかな?」

「は、はい! そうなんです! あの、実は……」

「フフ……素直な子猫ちゃんだね。なんて愛らしいんだろう」

「こ、子猫ちゃん!? あの……演劇部の文化祭での公演について質問があるんですけど……」

 

急に薫に子猫ちゃんと言われ、驚いたつぐみだったが、用件である文化祭での公演について訊ねる。

 

「ああ、何だい? 何でも聞いてくれて構わないよ」

「昨日、演劇部から提出された申請書類を確認していたんですけど……ジュリエット役に千聖さんと物語進行役に悠里先輩の名前があったので、それが事実なのか伺いたくて……」

「ああ、本当のことさ。ジュリエット役は千聖で、物語進行役は悠里だ」

 

つぐみの質問に薫は本当だと答える。

 

「や、やっぱり本当なんだあ……! 校長先生の許可はもう取ってるんですか?」

「いいや、まだだよ」

 

校長の許可をまだ取ってないという薫の言葉に驚くつぐみ。文化祭までもう1ヶ月しかないというのに大丈夫なのかと薫に訊ねる。

 

「心配ないよ。シェイクスピアはこう言っている。『険しい丘に登るためには、最初にゆっくり歩くことが必要である』とね。つまり……そういうことさ」

「つ、つまり……? あわわ、どうしよう……! 私じゃ瀬田先輩とうまく会話できないよ~!」

「あれ? 羽沢さんじゃないですか~。薫さんと一体何を?」

 

薫と言葉のキャッチボールができないところで困っていたところに、薫と同じ2年の大和麻弥(やまとまや)が声をかけてきた。

 

「ああっ、麻弥先輩~! 助かった~……」

「どうしたんですか? 泣きそうな顔をしてますけど」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「なるほど~! 文化祭のお話でしたか!」

「はい。千聖さんと悠里先輩の名前があったので、本当なのか瀬田先輩に聞きに来たんですけど……」

 

瀬田先輩ワールドがすごくて……と言いにくそうに、麻弥に事情を話すつぐみ。

 

「フフ……また私は罪のない子猫を惑わせてしまったようだね。すまない、つぐみちゃん」

「あはは。薫さんは確かにおもしろい方ですからね。事情はジブンから説明しましょう」

 

麻弥がつぐみに経緯を話す。

なんでも今年は、演劇部創設10周年の記念すべき年なんだとか。

 

「そんなわけで、今年の公演はいつも以上に特別なものにしたいと思ってまして……それで客演でどなたか呼ぶのはどうかなと思ったんです! 新しい方が1人入るだけで、部員にとっても刺激になりますし」

「それで私が千聖はどうだろうと提案したんだ。我ながら完璧な提案だったと思うよ」

「そうなんですか……あ。じゃあ悠里先輩が物語進行役っていうのは?」

 

千聖が出演する経緯は納得したが、悠里の経緯が未だ分からないつぐみ。

 

「ただの記念公演じゃ印象や深みが足りないから、より演劇に興味をもってもらおうと思って、悠里はどうだろうと私が提案したんだ。悠里の朗読は引き寄せられるからね」

「ジブンも最初は驚いたんですが、演劇部の皆さんも悠里さんの事をご存知だったみたいなので」

 

それを聞いて、つぐみは悠里先輩って一体……と思う。謎が深まると表現すべきか。

 

「千聖と悠里は私の古くからの友人だからね。きっと、私達3人の芝居の相性は抜群だろう」

「客演で、千聖さんと悠里さんが来るとなれば、部員の士気も高まりますし、結果としてクオリティの高い舞台ができるんじゃないかなって思ったんです」

 

なので、今回のことは演劇部としての意向だとつぐみに伝える麻弥。

ちなみに薫の思いつきではないとも付け足す。

 

「そうだったんですね。ああでもっ、時間がないことには変わりありませんっ! 校長先生の許可も必要だし……」

 

当日の体育館の人員も増やさなければと焦るつぐみ。

 

「イレギュラーなことですし、事前に生徒会のみなさんに相談すればよかったですね……すみませんっ! できる限り、生徒会にはご迷惑をおかけしませんからっ」

「いえ! 記念の公演ですし、演劇部はいつも大人気ですから! サポートするのが生徒会の役目ですっ!」

「つぐみちゃん……君はなんて健気なんだ……っ! ああっ、儚い……っ!」

 

つぐみの言葉に感激し、儚いと言い始めた薫。

それを見ていたつぐみと麻弥は苦笑い……

 

「と、とにかく! このことは生徒会内で共有しておきます! お手伝いできることは何でもしますからねっ!」

「はい! ありがとうございますっ!」

 

麻弥がお礼を言うと、つぐみは早速このことを生徒会に話して来ますと言って、去って行った……

 

「羽沢さんて、薫さんが言うようにとっても頑張り屋で素敵な方ですよね~。ジブン達も頑張らなくては!」

「ああ、そうだね。子猫ちゃんを悲しませるようなことはしたくないからね。もう一度、千聖に電話をしてみよう」

「え? もしかして千聖さんからまだOK、もらえてないんですか?」

 

薫の発言に驚きの表情になる麻弥。

 

「ああ、そうなんだ。悠里にも千聖が来るとは言ってないんだ。私からのサプライズのつもりだ。まったく、千聖が頑固で困っているんだよ」

「だ、大丈夫すかね、これ……」

 

 

幸先が不安になる麻弥であった。まぁ……悠里もいるし、大丈夫だろう……多分。




読んでいただきありがとうございます。
次回も頑張りますので、よろしくお願いいたします。
本日はありがとうございました。
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