月の少年の儚世に咲く薔薇の名は   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回で最終回になります。

それではどうぞ。



第6話 『かおちゃん』と『ちーちゃん』

「千聖さん、悠里さん、薫さんも! 本当にお疲れ様でしたっ!」

「こちらこそ、お招きありがとうございました」

「僕の方こそ、他校……それ以前に男子なのに、お招きありがとうございました」

 

終演後、部員から労いの言葉をもらう3人。

 

「演劇部のみなさんはいますか?」

「校長先生っ!?」

 

意外な人物が来た事に驚く麻弥。

ちなみに悠里は事前に羽丘女子学園の校長と顔を合わせた事があるので、そこまで驚かない。

まぁ、強いて言うなら外見が若々しい……という点だろうか?

 

顔を合わせた事がない人物といえば、羽丘女子学園の理事長ぐらいだが。

 

「ああ、みなさんいますね。みなさん、今日の公演は本当に素晴らしいものでした。部員のみなさんの実力あってのものでしたね」

「ありがとうございます」

 

校長の言葉にお礼を言う薫。

 

「白鷺さん。お忙しい中、客演にお越しいただき、ありがとう。ぜひまた客演にお越し下さい」

「こちらこそ、ぜひお願いします。演劇部のみなさん、1ヶ月という短い間でしたが、ありがとうございました。私自身、この舞台を経て、また成長することができました。ぜひまた、みなさんとご一緒できればと思っています。本当に、ありがとうございました」

 

千聖に客演に来てくれた事のお礼を言うと、今度は悠里の方を向き……

 

「水無月君もありがとう。いつもとは違った公演を見た気分でした。もし良ければ、また客演にお越し下さい」

「こちらこそ、ありがとうございます。公演が盛り上がって良かったです。演劇部のみなさんもありがとうございました」

 

お礼を言う校長に対して、僕がやった事は演劇部のみなさんや薫ちゃん、千聖ちゃんに比べれば、微々たるものですからと悠里は言った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……それじゃあ、私はそろそろ失礼するわ。……薫」

「何だい?」

「どうして本番中、台本にないセリフをはさんだの?」

「おや? そんなことしたかい?」

 

千聖の質問にとぼける仕草をする薫。

それは正直、悠里も気になっていた……

 

「今更とぼけなくていいよ。『名前など無意味なもの。僕は僕。君は君だ』……なんてセリフ、完全に薫ちゃんのアドリブじゃん。ま、個人的に意味深だったからいいけど……」

「フフ……シェイクスピアはこう言っている。『物事に良いも悪いもない。考え方によって良くも悪くもなる』つまり……そういうことさ」

「……ま、『ロミオとジュリエット』ってそういう物語だし。千聖ちゃん、当人はこう言ってるけど?」

「それじゃあ、私の都合の良いように受け取らせてもらうわよ。……まったく、意味分かって言っているのかしら?」

「……分かってるんじゃない? 多分……」

 

3人がそんな会話をしていると……

 

「千聖さーん! 瀬田せんぱーい! 悠里せんぱーい!」

「つぐみちゃん! 見に来てくれていたの?」

「やっほ~。アタシと麻弥もいるよ~」

「はろろーん、リサちゃん」

「やっほ~。悠里お疲れ~」

 

つぐみ、悠里の幼馴染みの今井(いまい)リサ、麻弥がやって来た。

 

「お疲れ様です~! やっと裏の片付けが終わって……はあ……疲れたあ~」

「ふふ、お疲れ様」

「お疲れ様。言ってくれれば、裏の片付けも手伝ったのに……」

「いやいや!? そういう訳には……お気持ちだけで充分です」

 

悠里の言葉に麻弥が慌てながら答える。

 

「私、外でお客さんの整理をしてたんです! 本番は最後のちょこっとしか見られなかったんですけど……3人とも、すっごく素敵でしたっ!」

「うんうん、チョー良かったよ! アタシ、ちょっと感動してウルっときちゃったもん。あとさ、あのセリフ……えっと……」

 

あ。思い出したと言うリサ。

 

「そうそう! 『恋の翼があれば、こんな塀なんてことないさ』ってやつ! あれ、チョーカッコ良かったぁ~!!」

「お客さんの黄色い悲鳴が外まで聞こえてきましたよ!」

 

確かに黄色い悲鳴みたいなのは、悠里も聞こえた。

 

「悲劇の愛、かあ~……ラストは悲しいけど、2人が愛を貫いたっていうところは泣けるよねえ。素敵だな~」

「リサちゃんて、恋愛ストーリーが好きなのね?」

「えっ!? ま、まあ……ロマンチックだな~って思ったりして……あ、あはは~」

「リサちゃんはこういうの、昔から好きだもんね……」

 

悠里がそう付け足すと、リサは顔を赤くしながら『い、言わなくていいから……』と、肘で悠里を軽く小突いた。

 

「そういえば、開演前に並んでるお客さん、みんな千聖さんのお話をしてましたよっ! さすが千聖さんだな~って思いました。すごいなあ」

「嬉しいことだわ。私の存在に、期待してくれている人がいたなんて……いい意味で、その人達の期待を裏切れていると良いんだけど」

「もちろんですよっ! だって、千聖さんですから!」

「ありがとう、麻弥ちゃん」

 

千聖の言葉に麻弥がもちろんだと言う。

 

「なるほど、ね……フフ、そうか……」

「あ。薫ちゃん、もしかして分かった?」

「え? どうしたの?」

 

何かに納得する薫と悠里。それを見て、どうしたのと言うリサ。

 

「いや、千聖。君は変わったね」

「さあ、誰のせいかしら?」

「……♪」

「……ふふっ」

 

薫と千聖の会話を聞いて、笑う悠里と麻弥。

悠里に至っては、話の意味が解ってるのか、軽く頷きながら微笑んでいた。

 

「? 千聖さん、変わったんですか……? 私には、いつもの千聖さんに見えるけど……」

「ま、幼馴染みじゃないと気づけない事ってあるよね。アタシも心当たりあるなあ」

「確かに……私も、そうかもしれません!」

 

自分達もなんとなく心当たりがある気がするな……と思うリサとつぐみ。

 

「で? あの息ピッタリの熱演もやっぱり幼馴染みパワーなの?」

「ああ、そうさ。ね、千聖? 悠里?」

「ええ。でも、それだけじゃないわ。とある『魔法の言葉』のおかげで、私達はより良い演技ができるようになったの」

「『魔法の言葉』……ああ、あったね。今回はそれも大きいんじゃないかな?」

 

千聖が視線を合わせてきたので、彼女が何を言いたのか解った悠里は頷く。

そして2人は薫に向かって……

 

「「……ね、かおちゃん?」」

「……っ!!!」

 

声を揃えて言った。

 

「かお……」

「ちゃん……?」

 

リサとつぐみはこの反応。

 

「ふ、フフ……何だい、その『かおちゃん』というのは……」

「そうだねー……僕が知る限り、かおちゃんの本名は、瀬田薫ちゃんって女の子だね」

「っ!!!」

 

追い打ちをかける悠里。それを見て麻弥は、薫さん、顔真っ赤ですよ!と言う。

 

「えっ!? そ、そう……かな……あ、あはは……」

「え、何? もしかして薫って、『かおちゃん』って渾名なの? それってもしかして幼馴染み特有のその人しか呼ばない渾名ってやつ~!?!?」

「……っ!」

「なるほど~! うちのモカちゃんも、ひまりちゃんのことを『ひーちゃん』って呼ぶんです。それと一緒ですね!」

「もう、ずいぶん前の渾名だから……その……今呼ばれると、すごく……恥ずかしいんだよ……!」

 

リサとつぐみからも追い打ち。

薫からしてみれば、穴があったら入りたい心境である。

 

「いやあ……やっぱり千聖さん、恐るべしですね」

「けど、薫のおかげでいい演技ができたのは本当よ。ありがとう、かおちゃん」

「ううっ……も、もう許して……っ! 勘弁してよぉーっ!!」

 

これじゃ薫が少し可哀想だなあーと思った悠里は……

 

「まあまあ、ちーちゃん。そのくらいにしてあげなよ。かおちゃんが可哀想だって」

「……っ!!!」

 

薫をなでなでしながら、千聖に言った。

突然の昔の渾名で呼ばれた事に千聖の顔は真っ赤である。

 

「「ちー……」」

「ちゃん……?」

 

リサと麻弥、つぐみも先程の薫の渾名を聞いた時と同じ反応……以上だった。

 

「え、何? 千聖って、『ちーちゃん』って渾名なの?」

「……え、ええ。もぅ……なんで急にその名前で呼ぶのぉ……っ!? ゆーちゃんのバカ……!

「……その、元気だしなって。アタシ誰にも言わないからさ?(えっ!? 悠里って……『ゆーちゃん』って渾名なの!?)」

「……ありがとう、リサちゃん」

 

リサが千聖だけに聞こえるように、さっきの質問について訊ねる。

更に悠里の渾名が聞こえてしまい二重の意味で驚く。

 

「あうあう♪ ちーちゃん、かおちゃんのお陰で、僕にとっても良い思い出ができたのですよ♪」

「「ううっ……お願いだから、みんなの前で呼ぶの、勘弁してーっ!!」」

 

また同じ渾名で呼ばれ顔が真っ赤になる千聖と薫。

その時の悠里の表情は、どこぞのオヤシロ様の言い方をしながら、素の2人の反応を楽しむのであった……




最後まで読んでいただきありがとうございます。
ここまで出来たのも、読者の皆様のお陰です。
気が向いたら、また何か息抜きに書くかもしれません。

それではまたいつかどこかでお会いしましょう。
ありがとうございました。
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