俺が転生特典で望んだものはカレイドステッキ 作:白黒パーカー
1話:入試試験『I'm a 魔法少女!』
Q.男は魔法少女になれますか?
「なぁ、ルビー。本当に変身するのか?」
『なに今さら怖気付いちゃってるんですか。変身しないと戦えないですよ』
雄英高校C試験会場で俺は羽のついたステッキと会話をする。
別に緊張してるわけでも1人でおもちゃと会話をするほど頭が飛んでるわけでもない。
ただ今日は雄英高校ヒーロー科の実技試験があるから、ゲスな相棒と本当の本当に最後の確認をしているわけだ。
「いや、別に怖がってるわけじゃないけど」
『それじゃあお腹でも壊したんですか?朝からあんな東京タワーみたいに盛った朝ご飯を食べるから……』
「いや、それも違うから!むしろ普段よりも食べる量が少ないくらいだから!」
『あれだけ食べて足りないとか、腹ぺこ魔法少女ですか?ただでさえ属性過多なのに追加とは。いまのままじゃ満足できないんですか?』
「うるさい、欲求不満でもないし属性過多とか言うなし」
受験生がいてどこかピリピリした中でも俺と羽のついたステッキ——ルビーとの会話は止まらなかった。
『もう、じゃあ結局なんなんですか?』
「いや、その……」
痺れを切らしたように聞いてくるルビーの言葉に思わず声が詰まる。
周りに聞かれてたらどうしようなんて心配が頭を巡り、顔が赤くなる。って、女子か!
「さすがに人前で変身するのは、その……恥ずかしいんだけど」
『はーい、照れいただきましたー!』
「ちょ、今撮ったの消せよ!」
パシャリとルビーから音がしたから俺の写真を撮ったのだろう。
ほんと、コイツいい性格してやがる。
怒りで拳がふるふる震えていると、はぁー、とルビーがため息をついた。
『まったく、変身するしないなんて今さらじゃないですか』
「お、お前なぁ!毎度俺がどんな気持ちで力を使うのかわかってるのかっ⁉︎」
本当になんでお前を選んでしまったのか。
過去の自分に会えたなら全力でぶん殴ってやりたい。
どうにかして、ルビーを説得しないといけない。そんな意味もない無駄な思考を続けていると、
「——はい、スタート」
サラッと試験官が開始を告げた。
あ、ここは原作通りなんだ。
一瞬、戻ってきた記憶に思考がそれてしまった。それが今日一番の悪手。
『それじゃあソースケさん。試験も始まったことですし、バシッと魔法少女に変身しましょう!』
「お、おい話聞けよ、ルビー!俺、——男なんだぞ⁉︎」
『モーマンタイです!強制転身!』
「ルビーのバカあッ!」
★
大学4年の秋とともに交通事故でこの世を去り、転生するチャンスを得た。
行き先は僕のヒーローアカデミア。
神様的な存在にも会えたし、転生特典も貰えることで彼は調子に乗り、一つだけ、けれど致命的なお願いごとを叶えてしまったのだ。
『カレイドステッキがほしいです!』
それが第2の人生、後悔の始まりでもある。
★
——カレイドステッキ。
それはタイプムーン世界において、数少ない魔法使いキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグが作り上げた一級の魔術礼装だ。
手にしたマスターに魔力を無限に供給し、多元転身によって、並行世界のマスターのスキルをダウンロードさせることができる。
もちろんマスターの能力や資質が悪ければできることも減ってしまうという実力主義というかピーキーな礼装で。
プリズマイリヤの世界では魔法少女に変身するために使われていたものでもある。
おまけに素敵な人工天然精霊が搭載つきだ。ルビーちゃんサイコー(涙)。
まぁ、こんな説明をするってことは当然、俺がカレイドステッキを持っているわけで。
最初の質問の答えは遺憾ながらイエスと言わざるを得なくて。
ただ、少しだけ俺の予想と違ったことが一つだけある。
『——コンパクトフルオープン!』
ルビーの声とともに俺の体が優しい緑の光に包まれていく。
細胞の一つ一つが書き換えられていくような。それなのにくすぐったい感覚が全身に広がっていくのを感じる。
『鏡界回路、最大展開!』
目に見える変化はすぐに起きた。
光に包まれてすぐ、俺の体が別のものへと変化していく。
肩に届かないぐらいの髪がサラサラと腰まで伸びていく。中3男子の中では平均的な身長も一回り小さくなり、骨格が曲線を描くように丸みを帯びていく。そして、真っ平らな胸元が弾けそうなぐらいに大きく育つ。
さらに緑光は輝きを増し、体の表面でパチパチと弾けては、髪はポニーテールに結ばれ、優しい緑色の魔法少女の衣装が体を覆う。
最後に一際光が強く弾けたと同時に視野は広がり、俺の、魔法少女の変身が完了した。
辺りにはうっすらと緑色に優しく光る羽の数々。
浮いていた体が羽とともに軽やかに地面に降りる。静かに着地してから、ふるふると横に顔を振ると後ろで一束になった髪も一緒に揺れる。
どこにでもいる平凡で黒かった髪がアルトリアのように金色の髪にカラフルチェンジ。
程よくジャンプするとぷるんぷるんと胸も踊り出した。
…………変身しちゃったのか、俺。
はい、実は俺、魔法少女に変身すると女の子になっちゃうんです!
「死にたい……」
思わずガクッと膝をつく。
その衝撃で胸元の2つのメロンもぷるんと揺れて、心の
試験は開始しているのに、動く受験生はおらず、にわかにザワついた。
「おい、あいつ男だったのに女に変身したぞ」
「あれ個性?初めて見るタイプなんだけど」
「ていうか光で隠れてたけどさっき裸じゃなかった?」
「え、痴女?」
「いやいや、男だろ?」
「それとも変態?」
「いやぁあああ!聞きたくない!触れないで!そんな変質者を見る目で俺を見ないでぇええ!」
当然、受験生がすぐ近くにいる中、全裸真っ裸で変身すれば見られるわけで、ヒソヒソと周りから話し声が聞こえてくるのが俺の心を傷つける。
声も視線もシャットダウンするために耳を塞ぎ目を閉じる。自分の声が女の子らしく高くなっていて、なんだか目がじんわりと滲む。
別にこんなことで泣いてないし。ちょっと目汁が出ただけだし。
『ちょっとソースケさん。試験始まってるんですからさっさと行きましょ』
「もうっ、わかってるよ!」
ショックで忘れかけたが、試験官はとっくに合図を出してる。
周りの受験生がハッと気づく前に、地面を踏みしめてぐっと前に飛び込む。常人ではできないほどの飛躍。
そのまま着地することもなく、空中で加速して飛行に切り替える。魔法少女なら空を飛ぶくらいお茶の子なのだ。
「よし!」
パチンと自分で頬を叩いて、気持ちを切り替える。
確かにルビーの言う通り今は試験中。もっと集中しないと。そして、さっきの痴態もなにもかも全部なかったことにしないと!
「とりあえずロボットヴィランを探さないと、って」
空から誰もいない街を見下ろしていると、タイヤを回す1Pのロボットヴィランが2体を見つけた。
向こうもこちらを補足したみたい。
『標的確認!』
『ブッコロス!』
『ソースケさんやっちゃってください!』
「しゃらくせぇえ!
八つ当たり100パーセント。
ステッキ状態のルビーを左手に、高速でロボットの眼前に飛び込む。そのまま掛け声とともに魔力を込めて引き絞った右の拳をロボットの土手っ腹にぶち込んだ。
『ブッ⁉︎』
魔力ブーストされたおかげでロボットが簡単に全壊して遠くに飛んでいく。
追撃はいらない。
「そのまま
地面に着地すると同時につま先に魔力の刃を
もともと耐久度が低いのか、勢いのままにスパンとロボットの上半身が崩れ落ちていく。
「よし!まず2ポイント!」
『もー、ソースケさん。見た目とリアクションは女の子以上に可愛いのに戦い方が武闘派過ぎて魅力半減ですよ〜』
「魅力よりも確実性の高い火力のほうが大事」
手の中でルビーがぶんぶんと身体(?)をくねらせ文句を言う。
本来、
とはいえ、俺はあまり魔力の弾や斬撃を飛ばしたくない。
今は他に人がいないとはいえ、人に魔力弾をぶつけるのはまだまだ初心者な命中率の低さからして危険だ。もうちょい練習してからじゃないと。
その点、近接なら多少の加減ができるし調整も利くから良い。物理は正義。
それに、
「いいんだよ!男は誰だって肉弾戦に憧れるもんだから!」
ドラゴンボールとか好きな男の子なら憧れてくれるはず。
『ソースケさん、今は女の子ですけどね』
「シャラップ、ルビー!」
軽口をたたいて、次の標的を探して空に飛ぶ。
本当にどうして俺はカレイドステッキを転生特典に選んでしまったのか。
魔法少女になるのは精神的にかなりつらい。毎度心が折れる。
正直、今からでも転生特典のやり直しを要求したいぐらいだ。
だけど今の俺にはそれを実現する方法もない。
なら、今は前を向いて自分にできることをやるしかない、と思う。
こんな俺でもヒーローになりたいから。そんな夢を胸に、辱めを受けると分かっていても、ここに来たんだから。だから、なんとしても雄英高校ヒーロー科の試験に合格しないと!
『ねぇねぇ、ソースケさん!フレッシュピーチハートシャワーとか撃ちませんか?』
「撃ちません!」
まちカドまぞくの2期はいつやるんですか?
殺伐とした試験会場にそんなユルい会話が響いた。
あとがき、想助の魔法少女スタイルは見た目とカラーリングはリーファ(SAO)、衣装は環いろは(マギレコ)をイメージしてます。