俺が転生特典で望んだものはカレイドステッキ   作:白黒パーカー

2 / 13
2話:入試試験『Last chanceの限定展開』

 

 

 

俺を転生させた存在は、俺が後々後悔することになるがどうしても実現したかったひとつの願いを叶えてくれた。

そして、そんな俺の未来を知っていて哀れんでいたのか、慈悲とばかりにたった1枚のおまけを授けてくれた。

それの名は——。

 

 

 

 

 

 

この世界に来て14年が経つが原作キャラに直接会ったことはほとんどない。

だから、今日この雄英高校で緑谷や爆豪などいずれ雄英高校に通う主要メンバーを見ることができたのが素直に嬉しかった。

声をかけることはできなかったけど、もしかしたら同じ試験会場にいるかもしれない。

 

「せいやァー!」

『標的、はっけ▲○‪✕‬?□ッ⁉︎』

 

そんな淡い想いを胸に、俺は本日何度目かわからないロボットヴィランを魔力の弾丸と化した拳で粉砕する。

飛び散る破片。

ふぅ、と息を吐いて額の汗を手の甲で拭う。髪の毛伸びると頭に熱が篭るから暑いなぁ。年中髪の長い女子ってホントすごい。

 

「3Pゲット。ルビー、これで何ポイント?」

『今ので69Pです』

 

トップの順位はどれぐらいだったかな?

確か爆豪がロボットヴィランの撃破だけで1位だったのは覚えてるけど、正確な数字までは覚えてない。

 

『いや〜、ソースケさんは相変わらずスタミナだけはバカみたいにありますよね』

「おいおい、ルビーさんや。それじゃあまるで俺がスタミナしか脳がない筋肉野郎じゃねーか」

『野郎以外は正解ですね』

「野郎も正解だよ、ばかルビー」

 

そんな軽口を叩けるぐらいには今の俺は余裕がある。やっぱり付けるべきはスタミナと筋肉だね。全人類が筋トレに励むべき。

もしFate界の聖杯を見つけたときは「この世全ての人間が筋トレをしますように」ってお願いでもしようかな。

 

『他の皆さんも頑張ってますね』

「まぁ、受験だからねぇ」

 

状況把握のために辺りを見渡すとロボットヴィランと受験生の戦闘で溢れかえっていた。

俺のすっぽんぽんな魔法少女変身シーンのせいでスタートが遅れてしまったと不安だったが、これを見る限りは大丈夫そうだ。

うん、悪いとは思ってる。でもこれもすべてルビーが悪い。

 

「もうちょっとポイント稼がないと。ルビー、まだ手付かずのロボットヴィランの居場所わかる?」

『ルビーちゃんにお任せあれ〜!目の前の通路を真っ直ぐ進んですぐ左側に複数ロボットヴィランが確認できます!』

 

ルビーに聞いた座標に行くと複数のロボットヴィランがたむろしている。これはちょっと量が多いか?

 

()()()は使いますか?』

「うーん……」

 

一瞬、ルビーの言葉に俺は細くムチッとした自分のふともも、そこに巻かれているカードケースに手で触れる。

前回の使用からとっくに時間も経ってるから、使えないことはないはず。

……だけど、

 

「大丈夫。一応これ奥の手だしまだ使わない。使うとしても限定展開(インクルード)までにする」

『たしかに夢幻召喚(インストール)だと詠唱に時間がかかりますからね。作戦はどうしますか?』

 

何体かのロボットヴィランが俺に気づいたのか、こちらに機体を向けてくる。

それに対して俺も使い慣れた構えをする。

作戦はもう決まってる。魔法少女らしく、シンプルで効果的なものが。

 

「全部動かなくなるまでぶん殴る」

『可愛い顔でものすごいバカなこと言ってますね〜。さすが脳筋』

 

パワーこそ王道。王道こそ魔法少女。

つまり、魔法少女は筋肉だった。

やっぱり筋肉ってすごいね!

 

「全力でぶっぱなす。(フォイ)——」

「よーし、私も頑張るぞー!」

「え?」

 

右手を限界まで引き絞り、ロボットヴィランに突っ込もうとした瞬間、なぜか進行方向から声が聞こえた。

目の前にはロボットヴィラン以外に人はいない。

 

誰もいないのになんで?

 

 

…………あっ。

 

1人だけいた。見えないのにそこにいるやつ。

そんなの原作キャラ、葉隠透ってやつが。

 

というか俺飛び出した体を今からじゃ止められないんですけど!

とりあえず攻撃だけは中断して、

 

「お、おいはが、っと、透明なやつそこどけ!」

「へ?ウソッ!早すぎじゃ、へぐっ!」

 

聞いてもいない名前を言ってしまいそうになり、どもってしまう。

そのせいで葉隠の反応が遅れてしまいビターンと激突する。

 

「ルビー、俺たちを包むように物理障壁!」

『わっかりました〜!』

 

お互いに躱すことができず俺と透明な彼女はもつれ合うようにぶつかり抱き合うように転がり続けて、しばらくして動きが止まった。

魔力で編んだ物理障壁で俺たちを包んだおかげでケガをすることはなかった。

 

ケガはしていないけど、今のこの状況、色々やばい。死んじゃう……。

体勢的に俺が彼女の下敷きになっているのだが、仰向けの俺の上に葉隠が向かい合うように倒れ込んでいるせいでいろんな部位が密着している。

女の子の甘い匂いが、顔が間近なのか彼女の吐息が頬をくすぐる。そして、なにより柔らかい彼女の感触。どこかで聞いた実際は超美人とか、見えてなくて本当によかった。

見えてたら即死していた。見えてなくてもヤバいけど。

 

ガッツがなければ即死だった。

 

けれど、それ以上に脳内エマージェンシーが発令している。

それは女の子になってしまった俺のおっぱいと完全透明になるために裸になった彼女の素肌おっぱいが押したり引いたり押し付けあったりしていることだ。

俺の魔法少女衣装だって胸元の布が薄かったり、腹だししているのだ。薄皮1枚ごしの感触。

むにむに、むにゅむにゅとお互いのおっぱいが触れ合っていく感触が試験中なのになんだか背徳的で、でも倫理的にやばくて、柔らかくて、もうありがとうございます。

 

バチバチと思考回路がスパークを起こしている。魔術回路を開いたときよりも目が白黒する。

どうにかして落ち着かないとおおおおおお。

 

『ハァハァ!いいですよ、ソースケさん!人には透明な彼女で見えなくても私のセンサーには見えてますとも。あぁ、女の子の体にされたソースケさんが全裸の女性に押し倒されて頬を赤くする。このシチュ、ありじゃないですか!』

「あ、そういうのはいいです」

 

目の前でパシャパシャ撮ってるステッキのおかげで落ち着いた。というかすっと冷めた。

あれだ、今回はありがたいから心の中だけでお礼はしてやるけど、次はないからな?

 

「はぁ。色ボケステッキ、ステイ。……おい、はが、あんた大丈夫か?」

 

俺の上に乗っかっている透明な葉隠に声をかける。本当に透明だから実感湧かないけど、このスベスベした肌の感触は俺の体と同じ女の子だ。

そんなしょうもないことを考えていると、葉隠がうっとうめき声をあげた。

 

「……いてて。びっくりしたぁ。……あ、みんなの前で素っ裸になってた人」

 

そんなストレートに言わなくても!

別に好きで全裸になってるわけじゃないし。ルビーに毎度強制的に変身させられてるの!

彼女の言葉に羞恥心よりもイラッとした気持ちになり、ふっと顔を逸らす。

 

「別に裸じゃないし、一瞬だし。常に全裸でいる人に言われたくないんですけど」

「はぁー⁉︎いつも全裸じゃないよ!」

「でも、いま全裸じゃん。信用ないな」

「うっ……」

『ちょっとお二人共〜、そんなしょうもないやり取りしてないでロボットヴィランから逃げなくていいんですか?』

「「え?」」

 

ルビーの言葉に固まる俺たち。

俺は辺りを見渡すと取り囲むように並んでいるロボットヴィランの数々が。

 

『標的確認』

『リア充発見!』

『ブッコロス!』

「チッ!おい、ちょっと逃げるから暴れるなよ!」

「わわわ、お姫様抱っこ⁉︎」

 

俺は筋肉にものを言わせて無理やり葉隠を持ち上げて、空に駆ける。

その寸前で、俺たちのいた場所はロボットヴィランが押し寄せているのが尻目に見えた。

 

「すっごーい!私たち空飛んでるよ〜」

 

どうやら葉隠はさっきの怒りよりも、空を飛んでいることにテンションが上がってるみたいではしゃいでいる。

魔法少女に転生した男が、真っ裸な透明少女にお姫様抱っこして空を飛ぶ。

うーん。シュール。これ以上考えてはいけない。

 

「まぁ、魔法少女だからな。空ぐらい飛べるよ」

「へー、珍しいし可愛い個性だね」

『あ、なんだか大きな敵性反応がでてきましたよー』

 

ルビーの言葉と同時にゴゴゴゴゴっと地鳴りが響いた。

あ、そういえば試験最後って0Pのロボットヴィランがでるんだっけ。

モヤのかかった記憶がまた一つ解放されると、ビルと同じぐらいの高さを誇る0Pのロボットヴィランが現れた。

 

「なにあのデカいロボット!」

「たぶん0Pのロボットヴィランだろ。お邪魔キャラって言ってたけどこんな最後に出すなんてな」

「逃げないとやばいじゃん!」

 

街を見下ろすと受験生たちがあの巨体から逃げるように離れていく。

あの巨体から元々離れていたり余裕そうな子もいるが、中には疲れや走るのが苦手な子もいるのか、遅れている受験生もいる。

 

俺にはまったくもって関係ない人たちだけど、やっぱり。なんというか、その、見過ごすことが。

 

「なぁ、俺ちょっとあいつらを助けるから降りてもいいか?」

「ねぇ、私あの子たちを助けにいきたいから下ろして?」

 

意見が重なって、透明な彼女の顔をじっと見る。

彼女は見えないけどたぶん俺と同じように俺の顔を見ているのだろう。視線を感じる。

少し沈黙して、それから同時に吹き出した。

 

「ぷッ、なんだか君ヒーローしてるね」

「現在進行形でヒーロー目指してるからな。それこそ透明っ子も人のこと言えないだろ」

「透明っ子じゃないもん。私には葉隠透っていう名前があるんだもん」

「俺も君じゃなくて、箱守想助(はこもりそうすけ)って名前があるからな」

「ごめんごめん、次は名前で呼ぶから。……ん、ソウスケ?」

『ソースケさんはこう見えて正真正銘の男の子ですよ』

「えぇーーーッ⁉︎」

 

今日一番の葉隠の驚き。

ルビーめ、余計なことを。

 

「ほら、ルビーも葉隠も試験時間ないんだからしょうもない無駄口は後!」

「しょうもなくないよ!私的に結構死活問題なんだけど!おっぱいとかおしり触られたりしてるんですけど⁉︎」

「知らん」

 

0P近くの道路にふわりと着地する。

葉隠はぶーぶー文句を言いながらも、逃げ遅れてる受験生を助けに行ったのか自分から声が離れていくのがわかる。

アニメや漫画を見ている時は体がエッチくて明るいクラスメイトってイメージが強かったけど、やっぱり彼女もヒーローなんだな。

 

俺は目をつぶって深呼吸する。よし、大丈夫。

 

「ルビー、()()()()()()使うよ」

『お、久々にやりますか〜。今回はどなたを引き当てることができるんでしょうかね〜』

 

俺はふとももに巻き付けたカードケースから1枚のカードを取り出す。

 

——クラスカード。

それはプリズマイリヤの世界、平行世界で作られた聖杯戦争用魔術礼装。

英霊の座と繋ぎ、置換魔術により力と技術を使用者本人に与える破格のアイテムだ。

 

そして、本家との違いをあげるのならこのカードを与えたのがエインズワースではなく俺を転生させたやつのもので。クラスが描かれているはずの場所は()()で満ちていること。

7騎のクラスどれとも該当しない。

けれど、それは問題ない。だってこれは一にして無限の可能性を秘めた希望なんだから。

 

「——霊基グラフィック回転、クラス固定開始」

 

俺の詠唱に空白のクラスカードが呼応する。

何も描かれていなかった空白に絵が落とされていく。

 

これは俗に言ってしまえばどんなサーヴァントとも接続できる万能カードだ。プリズマイリヤの七騎ではなく、カルデアのような幅広さ。

縁もゆかりもないのにそんなことができるのから、チートだと思う。

 

別にデメリットがないわけではない。再接続には時間がかかるし、自身の魔力だけでしか接続できないなどなど。さらにどのサーヴァントが呼ばれてくるのかもわからない。すべては時の運。クラスが連続して被らない以外はほぼ未知数。

 

まさに相手も自分ですらもわからない奥の手というやつだ。

 

「なんでアイツが俺にこれをくれたのかそれはわかんない。できるなら後悔する前にやめろって教えて欲しかった」

『後悔してますか?』

「——もちろん。だけど。ものすごく不服だけど俺はいま魔法少女だから。なら、やることは決まってる」

 

自分で納得して、後悔しながら魔法少女の力を使っている。

けれど、その在り方だけは誰よりも絶対に理解しているつもりだ。誰にも負けるつもりはない。言わせてやるもんか。

 

キッと目の前の巨体を見上げる。

試験のタイムリミットは迫っている。

0Pロボットヴィランもこちらに向かってきている。ルビーとの契約が切れない50メートル圏内。

——今だ。

 

「——霊基グラフィック固定終了」

 

クラスカードに描かれた絵は——槍兵(ランサー)だった。

 

「どんなときでも魔法少女は絶対にあきらめないんだから!——限定展開(インクルード)!」

『あいあいさー!』

 

カレイドステッキに槍兵(ランサー)のクラスカードをかざす。

光のスキャンとともにクラスカードがダウンロードされ、彼方の英雄の宝具を形にする。

 

「わ、ステッキが赤い槍になっちゃった」

 

いつの間にか戻ってきていたのか、後ろから葉隠の声が聞こえた。

けれど意識は眼前の巨体に向けられている。

ステッキはいつの間にか()()()に変わっていた。

 

何回かクルクルとその槍を手元で回した後、槍を構えて空を飛ぶためのタメを作る。骨が軋む寸前、己の体を限界まで引き絞る。数秒して足元のコンクリートが砕けた。

 

「——ゲイ、」

 

そして、真名を解放する。

——刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)

 

「ボルクッ‼︎」

 

地面をもう一度踏みしめて、俺は弾丸のように弾け飛ぶ。

空を駆けるように0Pロボットヴィラン目前まで飛行してあと少しで鋼鉄の体にぶつかる寸前。

俺は右手で握る槍で0Pロボットヴィランの硬い装甲を突き刺した。けれど、未だ心臓部に槍は届かない。

 

これは因果逆転の呪い。

心臓に槍が命中したという結果をつくってから、槍を放つという原因を作る。 すなわち必中必殺の一撃。

しかし、限定展開(インクルード)だからこそ、その力を完全に解放することはできない。

不完全な一撃。即死にいたることはない。ロボットヴィランは動き続ける。

 

——それなら俺が出来うる限りの補助をすることで即死に至らしめる。

 

狙った先は心臓部。刺さりが足りないというのならより深く押し込むまで!

赤槍を掴んでいた手を離し、拳を引き絞る。そして、高速で体内の魔力を回転させる。

 

「魔法少女だから、最後の最後まであきらめない!——全力全壊の砲撃(フォイア)!」

「殴るのッ⁉︎」

 

殴ります。

遠くからでも葉隠の驚く声が聞こえるなんて叫びすぎ。

 

シグルド式宝具展開により火力を増したゲイ・ボルクは0Pロボットヴィランの心臓部らしきところに目掛けて流れ星のように加速した。

命中してしばらく、ルビーが気を利かせたのかブーメランのように戻ってきた赤槍をノールックでキャッチ。なんか、かっこいい。

そして、0Pロボットヴィランは動力が切れて動きを停止した。

 

「試験終了!」

 

試験終了の合図が入る。

雄英高校ヒーロー科、実技試験はトラブルもあったが、最後はバッチリと決めてなんとか終了したのだった。

 

 

 

『ソースケさん、ルビーちゃんを殴るなんて酷いじゃないですか!』

「あ、ごめんなさい」

『今日は1日お説教タイムですよ〜!』

 

試験終了後、ルビーを殴ったことでお説教という名のお仕置きをもらったのはあとの話。

うぅっ、…………くっ殺!

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。