俺が転生特典で望んだものはカレイドステッキ   作:白黒パーカー

5 / 13
5話:学級委員長『男たちよ、Fly high!』

 

 

「ホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君らに……」

 

相澤先生の言葉にクラスのみんなが固唾を飲む。

妙に緊張感のある現状に俺は呆れながらも、先生の次の言葉を待つ。

 

「——学級委員長を決めてもらう」

『学校っぽいのきたー‼︎』

 

はい、やってきました。学級委員長決め。

 

しかし、これは楽しみいっぱいのイベントではない。

大抵、こういうのは生徒たちから忌避されがちなイベントだ。

普通科というか大体の学校ならクラスの雑務を任せられる。いわば都合のいい役どころ。そんなのどう考えてもめんどくさい。

 

よくクラスで話し合いをして決めるとか言ってるが、いざ話し合いが始まると誰も話さなくなる。それどころか内心では誰かやれよとか押し付けあって、結局最後はお人好しか誰もやらないなら私が、的な感じで決まるパターンが多い。

 

後は理不尽な推薦。別に俺個人の恨みとか辛みとかない。

 

 

……田中め。推薦して俺を学級委員長にしたこと一度死んでも、許してやらんぞ。

 

とはいえ、ここの生徒たちはひと味違う。ヒーロー科では集団を導くという、トップヒーローの素地を鍛えられることもあるらしく、今もクラスのみんなが俺だ私だと手を挙げている。

 

やる気のある生徒ばかりでお兄さん感激だなぁ。

精神年齢的にはもう三十路超えてるからおじさんなんだけどね、あははは。

 

「あれ、ソウスケくん学級委員長やらないの?」

 

自分で言っててソウルジェムが濁っていると、隣の席の葉隠が声をかけてきた。

 

「あー、まぁ、あんま興味ないし。向いてないだろ?」

「嘘だ。箱守(はこもり)は指示とか出すのすごいのに」

 

葉隠にやらない理由を告げると今度は後ろから声をかけられる。

振り返れば耳郎が複雑そうな顔で俺の顔を見ていた。

なんだよ、言いたいことがあるなら言えやい。

 

「戦闘とかは慣れてるけど日常で指示するのは苦手。雑務多いし、するのめんど……できる人がやるといいよね」

「本音、出てるよ」

『ルビーちゃんみたいですね!』

 

おっといけねぇ。ルビーの悪態が移っちった。

うっかりとてへぺろしてみれば、それを見て耳郎がイスごと後ろに引いた。やっぱり、あざとい仕草は可愛い女の子とおとこの娘の特権なんだなぁ。

 

つまり、アストルフォは可愛い。デオンももちろん。長くなるので以下略。

 

「まぁ、箱守が学級委員長になったらみんなのこと、こき使いそうで嫌だけどね」

「シャラップ、耳郎」

 

少し前までは勘違いして顔真っ赤にしていたくせに。今ではこうも図々しくなっちゃって。勘違いされないから全然いいんだけどさ。

 

そして、俺たちの様子を見てうーんと唸る葉隠。

 

「なんか2人とも仲良くなったね!」

「別に仲良くなんかなってないし」

「おい、耳郎。それ目の前で言われると傷つくやつ」

 

「——おい、私語は慎め。除籍処分されたいのか?」

 

そんなやり取りをしていると、相澤先生に睨まれた。

まぁ、バレるよね。俺の席一番前だから、当然俺の目の前にいるし。

 

『すいませんでした』

 

3人で素直に謝る。こういう時に限ってルビーは静かなんだから。

 

まぁ、話の流れは原作通り。

みんなが各々に手を挙げる中、飯田の投票が高々と提案される。もちろん飯田の右腕も高々とそびえ立ってたけど。

 

俺は誰に投票しようかな。……まぁ、原作だと飯田だったし、飯田に投票しよ。

俺はカキカキと投票用の紙に名前を書いた。

 

 

 

結果は、緑谷と八百万が委員長に決まった。

緑谷3人

八百万2人

飯田1人

 

「僕に1票だとッ⁉︎」

「ケロ、他に入れてたのね」

「自分に入れてなかったのかよ」

 

梅雨ちゃんと切島にツッコまれる飯田。

ここまではわかる。

 

箱守1人

耳郎0人

 

でも、これは意味がわからないよ。

 

「おい」

「……なに」

 

おい耳郎、目を逸らすな。お茶子もゼロ票だけど、投票したのお前だってわかってるんだからな。原作知識あるんだからな?

 

ただなにか俺はいま大切なことを忘れてる気がする。もしかして()()()()()()()()()()とかか?

モヤついててて、要領を得ない感じでもどかしい。

とはいえ、なにも思い出せないから、気にしても仕方ない。少なくともヴィランが天下の雄英にいきなり突入することはないはずだ。

 

俺と耳郎の目線合戦は朝のホームルームが終わるまでずっと続いた。

 

 

 

 

 

 

「お昼はなに食べよーかな」

『お肉料理はどうですか?』

「採用」

 

午前の授業も終わりお昼休み。

俺はルビーとともに食堂に来ていた。ちなみに耳郎や葉隠は誘ってない。

 

なんでまた1人で食堂に来てるのかって。

バカ野郎お前。仕事とかはともかくプライベートで女子を食事誘うのとか緊張するだろ。

 

というか、いまだに男子の友達いないとか俺、いくらなんでもコミュ障すぎでしょ。

 

『男友達はいないですけど、ライバルはこの前できましたね!』

「勝手に心読むなし。というかあれは一方的に宣戦布告されただけだし」

 

ルビーの言葉に顔が歪むのがわかる。

思い出すのはオールマイトのヒーロー基礎学。ヒーロー訓練の後、俺は轟に呼び出しをくらっていた。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

誰もいない場所に呼び出された俺は轟に睨みつけられていた。

 

『箱守』

『な、なに……』

『俺は正直、お前はふざけたやつだと思ってた』

 

お、これはもしかしてケンカ売られてるのか?

買わないけど。

 

『…………次は負けねぇ』

『…………』

 

その時の轟は執念に満ちていた。どこか粘つくような炎が灯った目で俺のことを射抜いてきたのだ。

そして、その目に映るのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()だった。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

「嫌なこと思い出した」

「まるで怖いお兄さんに睨まれて涙目になる幼女みたいでしたね」

「ロリはイリヤだけで十分」

 

もうロリコンでイリヤ。

いや、今はそれよりも、

 

「すげー、人混んでる……。これ座れる席ないんですけど」

『この学校、生徒数も多いですからねぇ』

 

ランチラッシュから注文した食事を手に席を探すのだが、なかなか見つからない。

我らボッチ救いの場所である聖域、カウンター席も全部埋まっている。ここは地獄か?それとも3つの試練を受けろとでも?

マジどこのエキドナですか。

 

というか妙に周りからの視線が痛い。知らないやつしかいないのに、なぜだ。もしかしてボッチは知らぬ間にボッチだけのオーラを発揮できるのか。

ステルスヒッキーとかやってみたい。

 

『単純にその料理の量が多いから、視線を集めるだけだと思いますよ?』

「だから、心読むなし」

 

俺の手には料理……をたくさん載せている()()()があり、小さなタイヤがカラカラと音を立てている。

 

「正直、これでも控えてるほうなんだけどな。本当はワゴン2個分で満足できるけどお昼は時間ないしね」

『それで控えてる……ワゴン2個分……』

 

ルビーがどこか震える声で相槌を打ってるけど、アルトリアや桜に比べたら少ないでしょ。

 

もう席も見つからないし相席でもいいか。

空腹で思考が回らず、カラカラとワゴンを揺らして席を探していると、2人席に1人で座る生徒を見つけた。

 

「あの、すいません。他に席が空いてなくて。相席してもいいですか?」

「……あぁ。別にいいぞ」

「いやー、助かっ——」

 

俺はお礼を言おうとその生徒の顔を見て

 

「あ」

「あ?」

 

その生徒——轟焦凍とエンカウントした。

 

 

 

 

 

 

「…………」

「…………」

『…………』

 

しんどい。沈黙のせいで胸がチクチク痛む。

なんで俺、轟と相席してご飯食べてるんだろう。ルビーは俺の現状を楽しむためにわざと黙っている。こんのくそステッキーめ。

 

目の前にあるお皿を次々と平らげながら、視線をちらりと前の席に座る轟に向ける。

轟は大好きな温かくないほうの蕎麦をズルズルとすすっていた。

 

と見てたら、轟の目がこちらを向いた。

 

「…………」

「…………」

 

目と目が合っても話さない。あら、まるで恋が始まる一歩手前みたい。

しかし、俺と轟は男子と男子。そんな俺たちの恋が始まればきっと清き腐女子たちがふふふと微笑むことでしょう。

 

そんな沈黙は嫌だ!

 

「……蕎麦、好きなのか?」

「…………あぁ」

 

話しかけたけど会話が続かない。

 

いやぁーーー!誰か、誰か助けて!

この氷の世界みたいな沈黙を溶かす個性持ちはいないのですかっ⁉︎

 

轟焦凍。個性【半冷半熱】。

 

そうだったね!目の前のやつが炎属性兼ね備えてましたね、こんちくしょう!

 

いや、別に俺は轟のことが嫌いなわけじゃないんだ。

轟が本当は優しい子ということも、後の未来にみんなのことを思いやる生徒になると知っている。

 

けど、知っていてもこの頃の轟と関わるのがなかなかキツい。

そもそも、俺を敵対視してるぶん、変に話し合っても拗れそうだし。

 

どうしようこうしよう。あたふたあたふた、していると食堂に唐突なアラートが鳴り響いた。

 

《セキュリティー3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください》

 

「へ?」

『おや?』

「なんだ」

 

突然の機械音声にザワつく食堂。

そこで頭のなかに()()()()()()()()が流れ込んでくる。

そうだ!飯田の委員長になる理由はこれだったんだ。

 

セキュリティー3は不特定人物の校舎内侵入。たしか報道陣が入ってきて……。

 

「こんちくしょう、そこからの記憶が思い出せない!」

 

この後、飯田が非常口をするのも委員長になるのも覚えてる。けど、他のことがモヤついてわかんねぇ!

 

その上、この人にもまれ続ける現状じゃ、コケないことに意識を向けるしかできない。

 

『まるで人の海みたいです。雄英の生徒は対応が早すぎて逆にパニックですね〜』

 

ルビーのどこか他人事のような感想。

人混みの中、俺と轟は人の波に呑み込まれてしまった。

 

「轟、大丈夫か?」

「あ、あぁ」

 

お互い体は鍛えてるほうだから耐えられてるほうだが、他の子たち特に女の子や運動が苦手な子が危ない。

これなら、飯田を待つより俺が魔法少女になって注目を集めたほうが、

 

「くそっ」

「轟ッ⁉︎」

 

視界の端で一段と強い人の波が俺たちを押してきた。

その弾みで轟が後ろ向きに倒れそうになるのが見えてしまった。

 

スローモーション。一瞬のことなのに視界がゆっくりと動く。それとは反比例して高速で流れていく思考。

 

別に轟はこの程度のことじゃ大丈夫。ケガしてもリカバリーガールが個性で治してくれる。

こんなことしても轟の反感を買うだけで、手を貸さないほうが1番の選択で——。

 

()()()()()()()()()()()

 

「ルビー!」

『魔法少女に高速転身ですね!』

 

叫ぶと同時に俺の体は緑光が纏い、いつもの魔法少女姿になる。

そのまま後ろに倒れる轟の体を支え、真上に飛んだ。

 

「ケガはないか?」

 

轟に声をかけてたが反応がない。もしかして頭とか打ったのか?

 

「大丈夫?とどろ——」

「……余計なことすんな」

 

空中に浮き不安げに聞くと、轟が冷たい言葉を返した。前髪に隠れて目は見えない。

 

「まぁ、そう言われるとは思ってたからさ。そこまでショックはないけど」

 

予想通り過ぎて拍子抜けしたぐらいで。

つい苦笑すると、轟の鋭い目が俺を睨む。

 

「……なんで俺を助けた」

 

それはまた難しいことを聞いてくる。

 

「なんでって」

 

ルビーみたいに茶化そうかと思ったけども、嘘も冗談もつけない雰囲気で聞かれるとそれもできない。

 

俺はしばらくまごついていたが、轟が目を離してくれないので諦めて目をつぶる。

今から言うことがなんだか恥ずかしくて顔が熱くなる。

 

「……ま、魔法少女は、人助けが当然だろ?」

「は?」

 

どこか呆れたような轟の声が耳に刺さる。

そのせいで余計に顔が熱くなった。

 

「お、おい!人が嘘つかずに、真剣に言ったのに!」

 

目を開けてしどろもどろに轟に文句を言ってしまう。

お前が言えって言ったのに!真面目に言ったのに!

 

「……ヒーローじゃねぇのか?」

「え?」

 

次の轟の言葉に驚き俺は口をポカンと開ける。

なぜなら、轟の声音に初めてトゲを感じなかったからだ。

それこそアニメで成長した轟は何度もそれを聞いてきたけど、直接は初めてだ。

 

「まぁ、なんというか……そうなんだよ。轟はもちろんヒーローだよな」

「……あぁ」

「たぶん、轟からしたら俺は敵みたいなものかもしれないけどさ。俺は轟とも仲良くしたい」

 

だからだろう。あんまり人には言えなかった本音がつい出てしまったのは。

恥ずかしくて顔をぷいと逸らす。轟がこっちを見てるかはわからない。

 

「…………」

「だから、まぁ、轟の気が済んだときはと、友、友達になってよ」

「…………考えとく」

「おう、楽しみに待ってる」

 

沈黙からの彼の言葉に思わず笑みを浮かべてしまう。

 

『なんだか、初々しいですね〜』

 

ルビーの言葉も今だけは心地よい。

この瞬間。なんとなくだが、俺と轟のギスギスした関係が少しだけ和らいだ気がしたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それでみんなが見ている前でいつまで焦凍さんを()()()()()()してるんですか?』

「…………へ?」

 

ルビーの言葉に体が固まる。そのままギギギと顔を下に向ける。

下を見下ろせばいつの間にかパニックはなくなり、俺たちのことを見上げる生徒たちでいっぱいだ。

 

「キャー!女の子にお姫様抱っこされる王子様よ!」

「絵になるわ!素敵!」

「お、おいあの女の子のパンツ見えてね?」

「見せパンだろ」

「ふ、ふふふ……」

 

「い、い、……いゃあああああ!」

 

食堂に響きわったのは非常口マークになった飯田の声と、俺のソプラノ声の悲鳴だった。

 

 

 

…………うぅ、くっ殺ッ‼︎

 

 

 




あとがき

想助と轟に黄色い歓声が届く中、飯田が非常口マークになったおかげで、無事学級委員長になりました。
そして、2人は体育祭を待たずしてファンクラブを作り上げた猛者。

頑張れ、想助!
パンツを見られても動じないメンタルを身につけて、
立派な魔法少女になるんだ‼︎
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。