俺が転生特典で望んだものはカレイドステッキ   作:白黒パーカー

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7話:耳郎サイド『耳郎と成果と騎乗兵』

 

 

 

ウチたちはただレスキュー訓練をしに来ただけなのに。

雄英高校の施設のひとつ、ウソの災害や事故ルーム、通称USJ。

そこで相澤先生と13号先生の説明を聞いていた時に事件は起きた。

 

「はじめまして。我々はヴィラン連合」

 

目の前にいるのは黒いモヤ。それもただのモヤではなく個性によって生み出されたもの。つまり、そこには確かに人がいる。

 

——ヴィランの襲来。

 

どういう方法で雄英高校の敷地内に入ってきたのかわからない。けど、紛れもなくウチたちの目の前にヴィランが現れたのだ。

 

僭越(せんえつ)ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせていただいたのは平和の象徴オールマイトに息絶えていただきたいと思ってのことでして」

 

 

平穏が崩れる音が聞こえたのは唐突で。

丁寧な言葉遣いで伝えられたのはオールマイトの殺人宣告。

ウチたちはヒーローを目指しているけどまだまだ学生。それなのにヴィランと対峙しなくちゃいけなくなった。

 

爆豪と切島が駆け抜けて黒いモヤのヴィラン攻撃をしたけど、霧のように散って躱されてしまう。

 

「私の役目はあなたたちを散らしてなぶり殺す!」

 

黒いモヤが膨らんだ。そのままクラスのみんなを覆う瞬間、ウチは見てしまった。

尾白を突き飛ばして代わりに黒いモヤに呑み込まれる箱守(はこもり)の姿を。

 

——助けなくちゃ!

 

自分でもなぜかわからないけど箱守を連れ戻すため精一杯手を伸ばす。だけど、その手はどこにも届いてくれなくて。

次の瞬間には、ウチの視界も黒いモヤで覆われてしまった。

 

 

 

 

 

 

「死ねやぁー!」

「死ねないっての!」

 

物騒な言葉を吐いて、こちらに迫ってくるヴィランの顔面に拳を叩き込む。

自分よりも華奢な女の子だから殴られるとは思ってなかったのか、目を白黒させて倒れ込むヴィラン。

 

ウチはそれを確認してから他の2人に声をかけた。

 

「2人とも大丈夫 !」

「私は大丈夫ですわ!」

「怖ぇ~!マジ今三途見えたマジ!」

 

声をかけた相手、ヤオモモは個性で作った棒を使ってヴィランの攻撃を防ぎ。上鳴は巨体の男から逃げるように悲鳴を上げていた。

うん、2人とも大丈夫そう。

ヴィランはウチに警戒して離れてるからすぐに襲われることはない。その間に少しだけ今回の件について分析する。

 

「さっきの黒モヤって、やっぱりワープの個性だよね?」

 

議題は黒モヤヴィランの個性と現状について。

あの黒いモヤを纏ったようなヴィランが放った黒モヤに呑み込まれて、気づいたらこの岩がゴロゴロしているエリアにウチたちは立っていた。。しかも、ヴィランらしきチンピラに囲まれるおまけ付きで。

近くにいたのはヤオモモと上鳴だけで、たぶんみんなはUSJの各所へバラバラに散らされてしまったのだ。

 

「くそ、他のみんなはどこに行ったんだろ。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そこでふと動きが止まる。

なんでウチは箱守のことを心配しているのだろうか。

アイツならそこらのヴィランにも負けはしない。もっと言ってしまえばウチのクラスでも強い轟や爆豪、常闇と同等かそれ以上の個性も強さも兼ね備えてるはずなのに、なんで真っ先に助けないといけないのか。

 

そんな考えに囚われてしまったのがいけなかったのだろう。

 

「耳郎さん!後ろにヴィランが一人近づいていますわ!」

「ッ ⁉︎」

 

ヤオモモの言葉で後ろから迫ってきたヴィランから距離を取る。振り返ればバレてしまったことを悔しそうにウチのことを睨むヴィランがいた。

 

「くっそー。あともうちょっとでガキを一人やれたのによォ」

 

索敵が得意なウチが気づけなかった。いや、それよりも。

ウチはなにしてるんだ!

頭の中が自分に対しての怒りでいっぱいになり、思わず歯ぎしりしてしまう。

今はヴィランとの戦闘に集中しなくちゃいけない場面なのに考えごとなんてして。

 

血が出ることも構わずに思い切り唇を噛む。

唇がズキズキ痛むしあごに血が滴ってしまうけどそのおかげで、少しだけ冷静になれた。

 

「バカだな、ウチは。箱守が心配ならさっさとヴィランたちを片付ければいいのに」

 

それに箱守のやつならまた突飛な方法でヴィランたちを倒してるはずだ。

 

自分を卑下しながら拳を握り、構えを取る。

それは箱守に教えてもらった戦闘スタイル。

 

「あ、なんだ急にやる気になっ——」

「ふっ!」

 

先手必勝。

足で踏み込み、まっすぐヴィランに近づく。ここに来てから今まで遠距離ばかりで近接格闘をしなかったウチの不意打ち。

 

「なっ!遠距離じゃないのかよ!」

 

当然、いきなり迫ってきたウチにヴィランは動揺して中途半端な迎撃体制をとる。箱守の言ってた通り、突然のことに対処できる人はほとんどいない。相手に攻撃する余裕を作るな。

 

「もういっちょ!」

 

走りながら、右耳のイヤホンコードをコスチュームのスピーカーに差し込むことで心音を爆音に変えて解き放つ。

テンパっていたヴィランはその音の衝撃に驚き、耳を塞いだ。

 

焦っている。でも、考える余裕がありそうだ。まだ攻撃の手を緩めるな。

殴る直前。トドメとばかりに左のイヤホンコードをヴィランの足元である地面に差し込み。心音を送り込めば。

 

「うぉっ!足元が崩れて」

「ハッ!」

「ぶべっ!」

 

足元の地面が砕け散り、バランスを保てなくなったヴィランは完全に余裕がなくなり、ウチは安全に殴り倒す。

 

「よし、完全なじゃないけどできてる」

 

これが箱守に訓練してもらって身につけた近接格闘。超攻撃重視の戦闘スタイル。やられる前にやる。つまり、ゴリ押し。

 

「……できた。耳郎さんこっちに来てください!」

「ヤオモモ?」

 

突然ヤオモモに呼ばれた。なんだろう?

ウチは左のイヤホンコードもスピーカーに繋ぎ爆音を流して、周りのヴィランが近づかないように牽制。

その間にヤオモモの元に到着した。

 

「時間がかかりますもの。大きなものほど!」

「ヤオモモッ⁉︎」

 

ヤオモモの背中がモゾモゾと膨らんだと思ったら、コスチュームが弾け飛んだ。

それはウチたちを覆い隠すぐらいのシートだった。

 

「厚さ100mmの絶縁体シートですわ。上鳴さん!」

 

その言葉で納得した。呼ばれた上鳴も一瞬ポカンとした顔をするが、すぐに理解したのか笑みを浮かべる。

 

「なるほどな。これなら俺はくそ強えからな!」

 

バチバチと今までと比べ物にならないほどの放電。それは少し前に蹴飛ばしてやらせた人間スタンガンとは比べ物にならないほどの威力と範囲攻撃。

絶縁体シートの中にいるウチたち以外はモロに上鳴の個性をくらっていた。

 

布を持ち上げて外の様子を見ればみんな焦げ臭そうにのびていた。

 

「耳郎さん。なんとか上手くいきましたね」

「ヤオモモ、そんなことより服が超パンクに!」

 

やり遂げた顔をしてるところ悪いけど、絶縁体シートを出したせいでヤオモモのおっぱ、胸がおっぴろげになっていた。

自分の顔が熱くなるのがわかる。

 

「また作りますわ」

「……発育の暴力」

 

箱守と同じかそれ以上のボリューム。

いや、男と比べるのもおかしいけどさ。でも、本当に同じくらい大きくて自分の胸元を押さえてしまい、羞恥と嫉妬が混ざった目でヤオモモを見つめる。

 

「上鳴もいるんだからせめて隠して……って大丈夫そうか」

 

視線の先にはウェイウェイと上鳴がアホそうな顔をしている。どうやら個性の使いすぎで頭がショートしてるみたいだ。

とりあえずここにいるヴィランは全員倒すことができたから、次の作戦を立てないと。

 

「ヤオモモは個性で服作り出して、あと上鳴は当分元に戻りそうもないから安全なところに連れてかないとか」

「そうですわね。私たちはともかく上鳴さんは現状ヴィランとの戦闘は厳しそうですもの」

「うん、そのためにも近くのエリアにいる子たちと合流したほうがいいかもし——」

「動くなお前ら」

 

その声で背筋がゾッとする。気のせいか冷や汗もかいたかもしれない。

声のした方を振り向けば、どこにいたのかヴィランが一人、上鳴を人質に取っていた。

 

「ウェ、ウェイ……」

「上鳴さん⁉︎」

「まだいたのヴィラン⁉︎」

 

うそ。どこにいたの?

いやそんなことはもう遅い。今一番やばいのは上鳴が人質に取られてることだ。

 

「個性は禁止だ。使えばこいつを殺す」

 

ヴィランは容赦なく拘束してないほうの手からバチバチと電気を弾けさせた。

そういうことか。同じ系統の個性だから、上鳴の個性をくらってもまだ動けているのか。

 

落ち着けウチ。余裕を作るんだ。

焦ってしまったらそれこそアウトだ。

とりあえず時間稼ぎをしないと。

 

「上鳴もだけどさ、電気系って生まれながらの勝ち組じゃん?」

「はぁ?」

 

ウチの話題に疑問の声をあげるヴィラン。

ウチだって自分でなにを言ってるのかわからないけど、他に方法も見つからないから口から出まかせを言ってしまう。

その間にイヤホンコードを背中からゆっくりと足のスピーカーに近づけていく。

 

「だってヒーローでなくてもいろんな仕事あるし引く手数多じゃん。なんでヴィランなんかやってんのかなって」

 

これさえ繋げればノーモーションでヴィランを狙い撃ちできる。

あともうちょっとでイヤホンがスピーカーの挿入口に差し込める、その瞬間。

 

「やめろ。気付かないとでも思ったか?」

 

今度ばかりは頬に冷たい汗が一筋垂れるのがわかった。

バレた。やばい、ウチの作戦が気づかれている。

どうする?もう無理やりスピーカーに差し込むか。それとも上鳴のためにも降伏するか?

 

 

思考が堂々巡りする中、ヴィランとアホ上鳴にどこからか()が巻きついた。え、鎖?

 

「へ?」

「ウェイ?」

 

疑問の声をあげる2人。

途端、鎖に拘束された2人が鎖に引っ張られて中に舞った。

 

「な、なんだよこれぇ!」

 

ウチと同じく状況が理解できていないヴィラン。そんなヴィランに近づくのは聞き覚えのある声。

 

「セイヤーー!」

「なべしっ!」

 

紫の閃光がヴィランに向かって衝突した。いや、違う。

あれは箱守だ。いつもの緑色の魔法少女衣装と違うから一瞬気づけなかった。

 

ヴィランを蹴り落とし、地面に着地した箱守は未だ中に浮かぶ上鳴目掛けて再び空に跳躍した。そのまま上鳴をキャッチ、お姫様抱っこだ。

 

『ナイスキャッチです!』

「ウェイウェイ」

 

チャリチャリと鎖の音をさせて着地する箱守。とりあえず上鳴にはあとでこお姫様抱っこのことでからかってやろう。

 

改めて箱守の姿を見る。

その姿は黒を基調としたボディコンで妙に大人の色気がある。片目は眼帯で隠されていて、上鳴を抱き上げる手には鎖のついた短剣を持っている。

そのままウチたちに顔を向けて近づいてくる。ってヤバい!

 

「ちょ、箱守ダメ!ヤオモモの服が破れてるから見ちゃダメ⁉︎」

「あんっ♡」

「ヴェッ⁉︎」

 

両手でヤオモモの胸を隠す。

強く押さえたせいでヤオモモから色っぽい声が出てしまった。ごめん。

箱守は箱守で変な声を上げて後ろを向いた。

 

「2人はケガしてないか?」

「え、えぇ。大丈夫ですわ」

「ウチもケガはないよ」

 

言ったらなんだかうるさそうな気がしたので、唇のことは黙っておいた。

 

「とりあえず無事そうでよかった。俺は他のみんなが無事か確認してくるから、上鳴のこと任せたよ!」

「あ、ちょっと待っ——」

 

 

上鳴を下ろした箱守はウチの話を最後まで聞かず、人間離れした跳躍で遠くに跳んで行ってしまった。

ウチは開けていた口を閉じて、ただ箱守が飛んで行った方角を見つめることしかできない。

 

「大丈夫ですよ、耳郎さん。箱守さんほどの強さならそうそう負けないですから」

 

ヤオモモが顔を赤くしながらも努めて冷静に声をかけてくる。

でも、相変わらずヤオヨロッパイは惜しげも無く晒されていた。

いつもなら顔を赤くしてチラチラ見てたけど、今はそんな気持ちがまったく湧かない。

 

ヤオモモは箱守なら大丈夫だと言った。ウチもそう思っていた。

確かに箱守は強い。戦闘能力も高いし個性もすごい。大抵のヴィランには負けないだろう。

 

でもなぜかウチの不安は止まってくれない。箱守を一人で行かせたことにすごい後悔している。

なんでそんなふうに考えてしまうのか、その理由はわからない。

 

でも、さっき箱守の顔を見たとき少しだけ思ったことがある。

誰よりも人を助けようとしていた箱守が一番、助けを求めているような気がした。

 

 

 

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