オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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勇者、勧誘する

花型のモンスター"食人花"をアイズ、ティオネ、ティオナ、レフィーヤの4人が激闘の末、討伐に成功する。そして現在はロキ・ファミリアの本拠(ホーム)、黄昏の館にて気を失っていた総司が目を覚ます。

ベッドに横になっていた総司は体を起こし、辺りを見渡す。

日本の部屋とは全く異なる内装、布団や灯り、着ている服まで何もかも初めて見る物ばかりだ。

 

「目が覚めた?」

 

椅子に座りながら、看病していたと思われるアイズが総司の顔を覗き込む。

 

「あの・・・ここは・・・?」

 

「ここは私達の本拠【黄昏の館】の空き部屋だよ」

 

それを聞いた総司は助けてもらったことを理解する。

 

「助けてくれた事には感謝します・・・でも、傷は・・・?」

 

先程の戦いで重傷を負った筈の体が既に全快している事を疑問に思う。

普通であればまともに動けないのだが、実は【万能薬(エリクサー)】と言うアイテムを使っており、これを使えば骨折や火傷が忽ち治ってしまう便利アイテムだ。

但し1本50万ヴァリスする代物で、オラリオ最大派閥のロキ・ファミリアと言えど簡単に使っていい物では無いのだが、命には変えられない為使用した。

 

「あ・・・」

 

アイズがその事を説明しようとしたところで慌ただしい足音が近づいて来る。

 

「あの子起きたー!?」

 

「こらティオナ、病み上がり何だから静かにしなさい」

 

勢い良く扉を開けたのはティオナだった。しかも何故か総司の新撰組の羽織を着ている。

ティオネの制止も聞かずに総司に走り寄る。

 

「君凄く強いんだね! ねぇねぇ、後で戦おうよ!」

 

ぐいぐいと来る様子に総司は若干引き気味だ。

それを見兼ねたティオネのゲンコツがティオナの脳天に炸裂する。頭を抱えるティオナを無視してドン引きしている総司に目をやる。

 

「全く、あのモンスター相手に1人で突っ込むなんて無謀よ。今回は私達が居たから良かったものの、本当なら死んでるのよ?」

 

「はい、ごめんなさい・・・」

 

因みにティオネは総司と10歳近く歳が離れているのだが、まるで近藤に叱られている感覚と一致して素直に謝ってしまった。とは言えティオネの言う事は尤もなので反論の余地はないのだが。

 

「分かったなら良いわ。ほら、ティオナもいい加減その羽織を返しなさい」

 

「はーい。あ、君の服はそこに掛けてあるから」

 

着替えを促されるとアイズ達は部屋から出て行き、総司1人が残された。

 

「ここに来てから驚いてばっかりだなぁ」

 

困惑しながらも隊服に着替え終わり、羽織とマフラーを着けたら、折れた打刀と脇差を帯刀する。

いつも通りの格好だ。

 

「着替え終わったね? じゃあついて来てー!」

 

何故着替え終わったタイミングを知っているのかはさて置き、鏡で髪を結い、服装を整えていると、急に扉が開きティオナに襟を掴まれた。

 

引っ張られている総司は引き摺られるどころか浮いている、女性でありながらこの凄まじい腕力にまたも驚く。

 

「連れて来たよー!」

 

総司が引っ張りだされた部屋は少し広く家具も殆どない、部屋と言うよりは広場の様な空間だった。

そんな部屋に新たに1人、ロキ・ファミリアの眷属、

小人族【勇者(ブレイバー)】フィン・ディムナ。Lv.6の第一級冒険者で、ロキ・ファミリアの団長である。

低身長で少年のような見た目をしているが実はアラフォー。

フィンの指示でティオナは部屋から退出する。

 

「さて、君がティオナが言っていた子だね? アイズ達から話しは聞いているよ。モンスター討伐の助力、感謝するよ」

 

「えぇと・・・僕はただ、あの怪物と戦いたかっただけなので・・・」

 

「なるほど・・・確か君はオラリオに来たばかりらしいね。行くあてはあるのかい?」

 

「正直に言うと無いですね。気づいたらこの町にいて、もう何がなんだか・・・」

 

総司は今、路頭に迷っていた。

都市名はわかったとは言え、日本の場所はわかっていない。尤も、ここは異世界なので日本と言う国は存在しないのだが。

 

「なら、ウチのファミリアに入らないかい?」

 

「ファミリア・・・?」

 

【ファミリア】とは神の眷族の意で、下界に降りた神が恩恵を与えた人々を集めた組織。ファミリアの主である神は主神と呼ばれ、主神の名を冠して呼ばれる。ギルドからIからSまで等級付けされ、等級が高くなるほどギルドからの徴税額も上がり、ダンジョン探索系のファミリアの場合は派閥の等級がD以上になると遠征の強制任務が課せられる。

そして主神が自身の血を背中に垂らす事によって神の恩恵、ステイタスを得られ、更に強くなる事が出来る。

 

食料生産を担う商業系、武器の生産や建築を担う製作系、医療系、ダンジョン探索系など、様々なファミリアが存在する。

 

「簡単に言うと神の眷属、と言うと堅苦しいな・・・うん、家族の様なものと思ってくれて構わない」

 

「家族・・・」

 

総司にとっての家族は新撰組だ。それ以外の家族は別に要らないと思っていた。

しかし行くあてが無く、居場所が必要なのも事実。加えてロキ・ファミリアには助けてもらった恩もある為、団員として働くのも恩返しの1つであると考える。

そして断る理由も特に無いので、フィンの提案に乗ることにした。

 

「迷惑じゃなければ、しばらくの間お世話になります」

 

「堅苦しいのは無しにしよう。僕はロキ・ファミリア団長のフィン・ディムナ。他は後ほど紹介するとして・・・まずは君の実力を見てみたい」

 

「・・・と言うと?」

 

ニヤリとフィンは笑みを浮かべ、隠していた剣圧が溢れ出す。

 

「今、ここで軽い模擬戦を行おう。あぁ、そういえば君の武器は壊れているんだったね」

 

そう言うとフィンは木刀を2本手に持ち、1本は総司に手渡す。

手渡された木刀を構え、鋭い眼光でフィンを睨みつける。

もはやその殺気は隠すつもりも無いと言った様子だ。

 

「・・・本気で行きますよ?」

 

「フフフ・・・とても模擬戦をする眼には見えないな」

 

「新撰組一番隊組長 沖田総司・・・参るッ!」

 

模擬戦を開始すると、いきなり全力のスピードでフィンの周りを駆け回る。フィンの事を格上だと認識した故の全速力だ。

残像が出来る程のスピードで撹乱する。この時でもフィンは木刀を構えずにいる。

しかし総司は構わず死角からの一撃を放つが当然の様に防がれる。

間髪入れずにフィンの反撃、顔面に迫る木刀を身を仰け反らせてギリギリで躱す。

一旦距離を置き瞬く間に間合いを詰めて、今度は真正面から打ち合う。

 

(凄いな・・・この段階でもうLv.1の上位クラスか・・・)

 

涼しい顔で防ぐが内心では驚いていた。

単純な剣技では総司の方が上手だが、それ以外の全てが劣っている。

数分にわたる打ち合いの末、総司は膝を地面に着き息を切らして全身に打ち傷が出来ていた。

やはり生身とLv.6とでは戦力の差があり過ぎた。

 

「そろそろ終わりにしよう・・・総司」

 

「そうですね・・・この技で終わらせます」

 

総司は立ち上がり構え直す。

 

(良い殺気だ)

 

フィンも総司の放つ殺気に反応して始めて木刀を構える。

総司の得意技【神速の三段突き】の構えだ。

研ぎ澄まされた意識と幕末史上最速を誇るスピードで繰り出される突きは、三回の突きが一回で突いたように錯覚させる。

 

(間違いない・・・彼は、紛うことなき剣の天才だ・・・!)

 

賞賛するフィンの思いとは裏腹に神速の三段突きを全て躱し、腹部に右薙ぎを打たれて総司は倒れ伏す。

そんな総司にフィンは笑顔で手を差し伸べる。

 

「君ならロキも快く入団を認めてくれるだろう。これからよろしく頼むよ。総司」

 

「こちらこそよろしくお願いします。フィンさん。必ず貴方達の誰よりも強くなります。覚悟しておいて下さいね」

 

「うん。楽しみにしているよ」

 

こうして総司はロキ・ファミリアに入団する事になった。

 

 

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