模擬戦が終わり一休みした後、フィンに連れられてロキ・ファミリアの主神であるロキのいる部屋へ案内された。
「ロキ、入るよ」
部屋に入るとベッドの上で胡座をかくロキがいた。赤髪で糸目、露出度の多い服装の割には色気を感じさせない女性だ。
総司は初めて神を見るが、人間とは異質の存在だと一目で分かった。
「おぉ〜その子をか? さっきまでやり合ってたんは。上の窓から見とったでぇ」
「見ていたなら話しが早い。彼を入団させたいんだけど、どうかな?」
「ええで」
随分とあっさり承諾したので総司は拍子抜けしてしまった。フィンは安心した様にホッとしていた。
「実力も申し分無いし、何よりその可愛らしい見た目に一目惚れしたわ! 名前は何て言うん?」
頬を赤く染め息を荒げる様は変態である。これが本当に神なのかと不信感を募らせながらも名前を告げる。
「沖田総司です・・・」
名前を聞いた途端一瞬ロキが固まり首を傾げる。まるで何か違和感を感じた様に考え込む。
ロキは沖田総司の名を知っていた、と言うよりは思い出した、の方が正確だ。
天界にいた頃、たまたま見ていた書物に沖田総司を始め、新撰組のメンバーやその歴史が記載されていたのを、パラッと読んだ程度だが覚えていた。
そしてその歴史上の偉人が何故ここにいるかも凡そ検討がついていた途端頭を抱えた。
「・・・ロキ?」
フィンが呼び掛けで驚いた様にロキが返事をする。
「ん!? あ、あぁ・・・すまんすまん。歓迎するで、総司きゅん!」
「は、はぁ・・・よろしくお願いします・・・」
総司は異様なテンションの上がりように困惑している。
「そうと決まればさっそく歓迎会やな! フィン、夕食の時にやるから皆にも言っといてな」
「分かったよ」
フィンは部屋から退出するとロキは若干申し訳なさそうに総司を見る。
「あぁ・・・夕食まで時間あるし、先に
何故同情の眼差しで見てくるのか分からず困惑していたが、言われるがままマフラーと羽織を椅子にかけ、着物を上半身だけはだけさせてベッドにうつ伏せになる。
ロキは総司に跨り、自身の血を垂らし背中に神聖文字を刻んでいく。
「よーし、出来たで!」
【沖田総司】
Lv.1
力 I 0
耐久 I 0
敏捷 I 0
器用 I 0
魔力 I 0
《魔法》
《スキル》
【
・殺戮衝動に駆られる度、又は鬼子を使用すると全てのアビリティを大幅強化する。
「お、最初からスキルがあるなんてラッキーやな!」
「スキル?」
「あぁ、今は気にせんでもええ。これから教わるやろうからな」
わけが分からないと言った様子できょとんとしている総司に悟られない様にロキは難しい顔でスキルを見つめる。
(殺戮衝動・・・こんな可愛らしい顔して何ちゅう恐ろしいスキルや!)
スキルは本人の本質や望みを反映する。基本アビリティ、魔法などを補正、強化する能力が一般的で、スキルの発現自体が稀であるが、中でも他にはない特殊な効果をもつスキルはレアスキルと呼ばれる。
つまり【鬼ノ魂】は総司の鬼子としての本質である殺戮衝動を反映して発現したスキルだ。これで鬼子が更に強化される。
(それよりも”鬼子”ってなんや? スキルでも魔法でも無い・・・だとしたらこれは総司だけの特殊能力か・・・?)
レアスキルなど、未知の存在を知った神は狂喜乱舞すると言うが、それはロキとて例外では無い。
(こりゃおもろい拾いもんしたなぁ。全く、飽きんわぁ・・・下界ってやつは・・・)
身体は抑えられても表情までは抑えきれず、狂喜じみた笑みを浮かべている。
「よし、総司きゅん。次はギルドに冒険者登録しに行くでー!」
ロキは背中から飛び降りて外出の準備をして、総司も着物を着直してロキの後ろをついて行く。
ギルドに行く道中、日が暮れ始めて怪物祭も既に終了しているようだった。モンスターが逃げ出す事件があった為、事後処理もあり従来よりも早く終了したようだ。
日中と比べると静けさがある町は少し寂しげだった。
しかしそんな町も夜になればダンジョンや仕事帰りの冒険者や町の若者達で賑わう事になる。
「・・・ッ!!」
「ん? 総司きゅん、どうしたん?」
ふと目に入った塔。これは【バベル】と言いダンジョンの真上にそびえ立つ白亜の摩天楼施設で、何と50階建てだそうだ。
「・・・ロキ様。あの塔の最上階って何かいるんですか?」
「あぁ・・・あそこにはフレイヤっちゅう神が住んでるんや」
総司の問いに対して嫌悪感を隠そうともせずロキは軽く説明する。
「あの色ボケ女神に食われんよう総司きゅんも気をつけや」
そんな軽口を叩くロキの言葉は総司には届いていなかった。バベルの最上階、そこから放たれるただ漏れの剣圧を総司は感知していた。
(この剣圧・・・多分フィンさんよりも・・・)
重く押し潰されそうな剣圧に耐えながらもギルドに向かう。その時一瞬だが視線を感じた気がしたが、気のせいだと思いそのまま歩く。
ギルドについたら怪物祭の後処理に追われる従業員に半ば無理矢理冒険者登録の手続きをさせているロキに総司は苦笑いしていた。
ーー同時刻、バベルの最上階。そこは頂点に君臨するファミリアの主神にのみ許された特権の証だ。
部屋は都市を一望できるように巨大な窓ガラスに、絨毯、ソファ、テーブル、本棚に至るまで全て最上級の物だろう。
そのソファに鎮座しているファミリアの主神《美の女神》フレイヤは珍しく上機嫌だ。
いつもは退屈そうに都市を眺めているだけだったが、今日は”特別な事”があった。
そんな彼女が偶然感じ取った気配、それは他の人類や神々と比べると明らかに異質の存在。
その存在を凝視する。と言ってもここは最上階なので姿までは見えはしないが、それでも視線を感じさせるには十分だった。
「ねぇ、オッタル。今・・・」
「何でしょう?」
オッタルと呼ばれた猪人はオラリオ最強の冒険者で唯一Lv.7に到達した者で、二つ名は【
「・・・いえ、何でもないわ」
途中で取り消した言葉にオッタルの頭を疑問符が埋め尽くす。
対するフレイヤは新たな発見とばかりに小さく微笑みをこぼした。