「えぇと・・・貴方が沖田総司氏で間違えないでしょうか?」
ここはギルドの受付、まだ朝早いので他の冒険者は殆どいない。
総司はフィンの言われた通りエイナ・チュールと言うハーフエルフの女性を訪ねる。
「はい、リヴェリアさんの紹介で来ました。エイナ・チュールさんとは、あなたですか?」
「えぇ、そうですけど・・・本当にダンジョンに潜るんでしょうか?」
リヴェリアから総司について軽く説明を受けていたが、やはりこの幼い少年が危険なダンジョンに身を投じるのは不安が残る。ついでに27歳だと言うのも疑問だ。
「はい、大丈夫です!」
その顔にはいつものように愛嬌を振りまきながらも、その目には昨日の失態は繰り返さないと言った強い意志を宿していた。
その意志を汲み取ったエイナはもう何も言わず、総司を一冒険者として敬意を評する。
「わかりました! では、今からダンジョンについて徹底的に叩き込みます。あちらの部屋でお勉強しましょう」
「よろしくお願いします!」
こうして総司はリヴェリアとフィンがいない間はエイナがダンジョンについて教える事となった。
そこから十数時間過ぎると空はすっかり暗くなり、ギルドからは疲弊仕切った総司が出て来た。
後で聞いた話しによるとエイナはアドバイザーとしてかなりスパルタで、それに耐えきれず逃げ出す冒険者も少なくないらしい。ここまで厳しいのは彼女が担当した冒険者に死んで欲しくないと言う心の表れだ。
「夕食には・・・間に合いそうにないなぁ〜」
昨日ダンジョンで稼いだ、約3500ヴァリスは本拠に忘れて来てしまった為、外食も出来ない。
「あれ? ねぇ君」
腹を空かし今日の夕食をどうするか考えながら街をさまよっていると、
彼の名前はベル・クラネル、【ヘスティア・ファミリア】に所属する駆け出し冒険者だ。
「・・・あ! あの時の使いっ走り!」
「合ってるけど初見でその評価は異論があるよ!?」
その後色々あってベルは総司の事情を聞き、2人で食事に行く事になった。
「助かりました。夕食どうしようかと思ってたんですよ」
「いやいや、困った時はお互い様だよ」
ここは【豊饒の女主人】と言う酒場、オラリオでも一二を争う人気店で今日も客で賑わっており、総司とベルはテーブルが空いておらずカウンター席に座っている。
この店の店員は皆可愛らしい容姿の女性でそれが評判に繋がっているようだ。もちろん料理の方も一級品だ。
ただし、その可愛さとは裏腹にかなり武闘派で、その中でも店主であるミア・グランドは従業員からも恐れられている。
そんな店で騒ぎや食い逃げなどしようものなら物理的に叩き潰される。
「あ、来てらしたのですね。ベルさん」
「シルさん。いつもお世話になってます」
シル・フローヴァ、薄鈍色の髪をした人当たりの良さそうな少女で、いつもベルに弁当を作ってくれるヒューマンだ。
「おや? そちらの方は、ベルさんのお知り合いですか?」
「まぁ、そんなところです」
2人の視線を気にせず目の前の料理を貪る。
「ほら坊主、そんなに慌てないでゆっくり食べな」
店主ミア・グランドが総司の目の前にドリンクを置く。
「よく食べる子だね。これも食べな」
そういうとミアはミートソースパスタを出すと、ベルは驚いた様子でミアに抗議する。
「あ、あの・・・頼んでないですよ?」
「遠慮しなさんな。じゃんじゃん金を使ってくれよ!」
「せめて本音は隠して下さい! それに総司もこんなに食べられないよねーーってもう食べてるし!?」
「
「何言ってるか分からないよ・・・」
ベルも諦めて料理を頬張る。
腹ごしらえも終わり、幸せいっぱいな顔をしている総司を影から見つめる女性、クロエ・ロロ。
彼女は
そんなクロエは今正に好みの少年に毒牙にかけようとしていた。
「もう我慢出来ないニャ! いただきますだニャ!!」
料理を食べている総司とベルに向かって一直線にダイブすると、総司はそれに気づき咄嗟にベルを後襟を掴んで椅子から飛び上がって避ける。
「な、なんですか、あなたは!?」
総司は女性からの戯れは受け慣れていたが、クロエのは常軌を逸していた為、本能的に全力で回避した。
「2人の美少年が仲良く飯を食っている姿を見て抑えろと言うのは、あまりにも酷な話しニャ・・・と言うわけで、いただきまーー」
「ーーやめなさい」
クロエの脳天に鉄拳制裁した女性もこの店の従業員、ヒューマンのルノア・ファウストだ。クロエに比べればかなりの常識人と言える。
「ルノア・・・痛いのニャ・・・」
「うるさい。2人ともごめんね、このバカ猫は後でシバいとくから」
「せめて尻を、尻だけでもぉぉぉーーー」
喚くクロエの頭を鷲掴みにして店の奥に姿を消してしまった。その光景を見ていた総司とベル、他の客は「まだやるつもりなのか・・・」と言いたげな顔をしていた。
一度空気を入れ替えベルは総司に訪ねる。
「そういえば総司も冒険者になったばかり何だよね。良かったら僕のパーティに入らない?」
「パーティ・・・」
それは先程エイナの授業で教わった。ソロでは限界がある、だからパーティを組んでカバーしあうのが生き残る手段の1つだと、口を酸っぱくして言っていた。
「そう、今は僕とサポーターの2人だけだから不安でね」
「なるほど、じゃあお世話になりますね、ベルさん」
「うん、よろしく!」
2人が熱い握手を交わしたのをシルは微笑みながら眺めていた。
「それにしても総司もエイナさんに勉強してもらってるなんてね・・・」
「ってことはベルさんも・・・」
2人は顔を見合わせるなり、深い深い溜息をつきながら顔を真っ青にする。
同じ地獄を味わった者どうし、地獄の番人について語り合いながらドリンクを飲み干す。