オラリオに剣客がいるのは間違っているだろうか   作:銀の巨人

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死合い

リリの裏切りから数日がたった頃、ベルとリリは改めて契約する事になった。因みにリリは世間的には死んだ事になったそうだ。

そしてアイズ・ヴァレンシュタインがLv.6に昇格した事が公表された。その頃からアイズは早朝から本拠(ホーム)を抜け出しているらしい。何故かやきもきしているレフィーヤの姿があったが・・・きっと無関係だろう。

総司はと言うと相変わらずベル達とパーティを組んでダンジョン攻略。最近ベルの成長の早さに驚いている。

 

 

いや、それよりも1番の驚きは・・・

 

 

「行くよ、総司・・・!」

 

アイズが総司に向けて剣を構えている事だ。

 

遡ること数分前、食堂で夕飯を食べ終わり、庭のベンチで一休みしている時だった。辺りはすっかり暗くなり街灯の光が総司を照らしている。

 

「総司・・・」

 

「アイズさん、何か御用ですか?」

 

神妙な面持ちで此方に近づいてくる。それに総司も気づき、本拠(ホーム)内だと言うのに帯剣している事に疑問を抱くが、よく考えたら自分も帯剣していた。

 

「私と手合わせして欲しい」

 

藪から棒に勝負を持ち掛ける。Lv.6の第一級冒険者がLv.1の駆け出し冒険者に勝負を挑むのははっきり言って異様な光景だろう。

あまりにも力の差があり過ぎるのだが・・・

 

「良いですよ」

 

普通の冒険者なら挑まれても裸足で逃げ出す所なのだがこの漢は違った。

 

出した答えは微笑みと快諾。

 

ベンチから立ち上がると鞘に手を掛け抜刀の構えを取る。平静を装っているが内心では冷や汗が止まらない。

それを見たアイズは抜剣するがデスペレートを地面に刺し鞘の方を持って構える。

 

数秒の静寂が流れ、緩やかな夜風が2人の髪を微かに揺らす。

 

先に動いたのは総司、残像を残して姿を眩ませる。

総司の完全なる視覚からの剣撃は涼やかに受け止められる。初動も剣撃も全て見えていたアイズにとっては鞘で止める事など造作もない。

 

(峰打ち・・・!)

 

ふと気づいた峰打ち。これは飽く迄手合わせであり殺し合いでは無い事を示していた。

総司は後ろに飛び着地する。

 

「総司、本気を出して欲しい」

 

リリが裏切った日、そして怪物祭(モンスターフィリア)の日に見せた鬼の力、アイズが今まで気になっていた力を一度身をもって体験したいと考えて漸くそのチャンスが巡って来た。

 

「・・・!」

 

鬼子を使え。アイズはそう言っていると総司は気づいた。

 

「でも、あの力は遊び半分で使う物では・・・」

 

あの力は危険だ、相手にとっても自分にとっても。それを自覚している。敵に対してこの力を使う事は躊躇しない、しかし今目の前にいるのは同じファミリアの仲間だ。

 

自分より強いとは言え仲間には使えない。

 

「なら、遊びじゃない・・・としたら?」

 

持っていた鞘を地面に置いてデスぺレートを手に取ると、総司に切先を向け同時に剣圧が溢れ出す。並の相手なら呼吸困難に成程の剣圧に晒された総司は笑っていた。

 

「やっぱり良いですねぇ。死合いは・・・!!」

 

前世(むかし)の記憶が蘇る。幾百幾千の武人と剣を交わし意思を交わしてきた。そこに言葉は無かったが確かに感じた熱い信念。

全身の毛が逆立つ、血が沸く様に騒ぎ立てる、これが武者震いと言う奴だろう。体が燃え上がる様に熱く心臓の鼓動がはっきりと聞こえ己の血が加速するのが分かる。”鬼”から発せられる真紅の剣圧がアイズの凄まじい剣圧を僅かに押し返す。

 

「行くよ、総司・・・!」

 

「行きますよ、アイズさん・・・!」

 

デスぺレートを下段に構えたアイズと霞の構えを取る総司は同時に跳ぶ。互いの武器がぶつかろうとした瞬間2人は強制的に急停止させられた。

 

「鍛錬ならいざ知らず、殺し合いをするならば止めざるを得ないな」

 

総司とアイズの勝負はフィンとリヴェリアによって中断される。

 

「アイズ、第一級冒険者であるお前が何をやっている・・・それに総司、無謀と勇気を履き違えるな。その行動はダンジョンにおいて無謀に当たる」

 

「「ご、ごめんなさい・・・」」

 

リヴェリアに叱られたアイズと総司は肩を竦めてしゅんとする。

 

「リヴェリア、その位にしておこう。総司、実は話しがあって来たんだ」

 

「話し、ですか?」

 

「あぁ、数日後の遠征に君も参加してもらいたいと思ってね」

 

その言葉にアイズは驚く。まだ冒険者になってまだ1ヶ月程度しか経っていない駆け出しを危険な遠征に連れて行くなど有り得ない話しだ。主神のロキと幹部であるリヴェリアとガレスもフィンの提案には驚いていた。特にリヴェリアはフィンの正気を疑う程反発した。確かに今の総司は強さのみを見ればLv.2下位の領域に達しているが圧倒的に経験が少なくダンジョンに対する知識も不十分と言える。本来ならパーティメンバーと攻略を進め少しずつ知識と実力を付けて初めて上層から中層へステップアップさせるのがダンジョン攻略における基本の流れだ。

 

「50階層まで僕を含めた幹部数名とパーティを組んでダンジョンを進む予定だ」

 

将来的には51階層からの侵攻時のパーティに加えたいと考えている。総司ならきっと良い切込み隊長になれる。なので今のうちから遠征の過酷さを教えておこうと言うフィンの提案をリヴェリアは渋々受け入れた。

 

「どうだろうか?」

 

「面白そうなので行きます!」

 

ワクワクと笑顔で輝かせる目を見たリヴェリアは顔に手を当てて呆れ果てる。

 

「緊張感の無い奴め・・・」

 

「ははは、気負い過ぎるよりは幾らかマシさ」

 

リヴェリアの気苦労もフィンの苦笑いも知らずに総司はニコニコと笑い辺りを駆け回る。おそらく総司は遠征を遠足か何かと勘違いしているようだ。それはもちろんフィンとリヴェリアによって正しく訂正されたが楽観視した様子は変わらない。

しかしその眼は闘志に満ちており今迄よりもずっと強いモンスターと対峙する事に恐怖を覚えている。2人が知らぬ間に総司は成長していた、実力だけでなくダンジョンへの認識も改め、楽観していると見せかけて内心かなり警戒していた。

 

「詳しい話しは追って説明する。武器の手入れとアイテムの補充は忘れるな」

 

そう言ったリヴェリアは館中へ入って行き、フィンも後からそれを追う。それを見送った総司とアイズは再び2人きりとなった。

 

「凄いね、まだ入ったばかりなのに遠征に参加出来るなんて」

 

「えへへ、それほどでも〜」

 

褒められた総司は後頭部に手を当てて照れる。そんな様子を見たアイズはクスリと笑う。

 

「総司のスキル、もう少し知りたかったけどーーー」

 

「あれはスキルじゃないですよ?」

 

「・・・・・・・・・え?」

 

「・・・・・・・・アイズさん?」

 

確かに以前総司が食人花(ヴィオラス)と対峙した時はまだ神の恩恵(ファルナ)を授かっていなかった。スキルじゃないとしたらあの力は一体・・・

 

「総司、それって・・・私にも出来る?」

 

突如真剣な眼差しで総司を見詰める。その能力を身につければ自分も今以上に強くなれる。そう考えたアイズは居ても立っても居られなくなっていた。

 

「うーん、どうでしょう?昔から感覚でやってたので・・・」

 

総司の【鬼子】は天性の物。いつから出来ていたとか、どうやってやっているのかとか詳しい事は本人にすら分かっていない。最もやり方を聞いた所で再現はほぼ不可能に近いのだが。

 

「でも確か、近藤さん・・・僕を拾ってくれた人はこの力を僕の中に住んでいる鬼・・・【鬼子】と呼んでましたね」

 

「鬼子・・・」

 

自分には真似出来ないと悟ったアイズは落ち込んでいたが、その力の名称を復唱して更に興味を持ったようだ。

 

「あッ・・・総司、今日はありがとう。私はもう寝なきゃ・・・!」

 

何かを思い出した様子で礼を言ったアイズは急いで館内に戻って行き、それを見送った総司はベンチに座りもう少しだけ休む事にした。

 

「な、なんだったんだろう?」

 

 




アンケート締め切ります。投票ありがとうございました!

僕が考えた候補の中で総司のヒロインは誰が良いかのアンケートです。是非とも皆様の意見をお聞かせください。※このアンケートはあくまでも調査なので確定するわけではありません。予めご了承ください。

  • アイズ・ヴァレンシュタイン
  • アミッド・テアサナーレ
  • アリシア・フォレストライト
  • ティオナ・ヒリュテ
  • リュー・リオン
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